できたよっ!! 好感度3000倍の薬っ!!
「ハァ?」
思わず耳を疑った、好感度3000倍の薬だって?
薄い本には沢山出てくる感度3000倍なら、いや分からないけれども。
分からないけれども、こっちと比べればまだわかる。
「何言ってんだ、オマエ。徹夜しすぎて頭が変に、もとから変だったな」
「ねぇ酷くない!!? あと変じゃないし!! これも立派なファッションだぁよ!!」
「どこの世界に頭にアンテナ付けてる女子高生がいるんだよッ!! それがファッションになるのはΨ難な世界だけだ!!」
「なら飲むんだぁよ!! それで実証してやるぅ!!」
無理矢理押し付けてくる液体はヤバそうな色で輝いている、間違いなく飲み物じゃない。
というか、コイツの作る代物はみんなそうだ。
味噌汁に始まりインスタントラーメンや卵掛けご飯、ドリンクバーで混ぜ合わせたジュースに液体窒素。
物理法則や制作手順を無視して全部、ショッキングな色になる。
「もぉー!! 我儘言わない!! ソレに原液から希釈してるし身体に害はないんだぁよ!! 安心するんだぁよ!!」
「お前の語尾に『だぁよ』が付いてるときは嘘だ!! ソレに原液から希釈して好感度3000倍っていうのは色々オカシイだろうが!! こんなところに居られるか!! 俺は教室に帰らせてもらう!!」
科学部室の前から全力で駆け抜ける、部活はしていないが身体能力には自信があるのだ。
とてもではないが引きこもり陰キャの科学部長が勝てる相手ではない、ハッハァッ!! ざまぁみやがれ!! !?
そう思いながら駆けだした瞬間に感じたのは、向かう風の冷たさではない。
やけに柔らかい、例えるならマシュマロのような柔らかさ。
或いはデブの丸々太った腹、ソレに包み込まれるような感触が体を包み。
ぶつかった彼女と一緒に、廊下に倒れたらしい。
しかも、俺が押しつぶされる形で。
「熱烈なハグをどうもありがとうございますわ、それで? 一体どうしましたの?」
「グェ」
「乙女に伸し掛かってその言葉、酷くないですの?」
「うっわ、サイテーなんだよ」
女性二名からの非難の視線、違う!! これは俺の意思じゃない!!
そう叫びたい言葉を喉元まで飲み込んで、一旦目の前の女性を確認する。
この高校の男女混同体重ランキング第1位、女性に限ればブッチギリ堂々第一位の玲雨さんだ。
体型はもうドシンプルにボンボンボン、ドラム缶よりは凹凸がある程度の容姿をしている。
そのうえで身体能力は普通に高い、所属している女子空手部では毎年県大会を優勝しているといった話を聞く。
勉強も学年トップクラスの文武両道天才超人、そして大企業の社長令嬢。
俺の顔は青ざめた。
脳内を駆け巡る未来、あとさっき口から出た暴言。
高校中退、バイトに明け暮れる日々、就職するときに残る汚点、うつ病、引きこもり、etc……。
これからの未来が走馬灯のように駆け抜け、全身から力が抜ける。
終わった……、俺の人生。
「とりあえずソレを抑え込むんだよ!! コレを飲ませたいんだよ!!」
「嫌だッ!! 死にたくない!! 押しつぶされて薬物飲まされて死ぬのは嫌だ!! ッ、グゲェ!! 痛いッ!! 重いし痛いッ、痛いよ!! 死ぬ、死ぬって!!」
「あら、レディ相手に酷い言葉ですこと」
「良い感じなんだぁよ!! これを飲むんだよ!!」
にやにやと最悪な笑顔を浮かばせながら、サイケデリックな色で輝く液体を口に流し込んでくる。
味は思いのほか美味しい、柑橘類の清涼感と砂糖を煮詰めた甘ったるさ。
その直後にゲロ以下の匂いが口の中を蹂躙し始め、吐き気と眩暈に頭痛を発症させる。
はっきりわかった、コレは最低最悪の毒物だ。
「うげ、くっせぇですわ!! なんですのソレ」
「好感度3000倍のお薬なんだよ!! 匂いは気にしないことをお勧めするんだぁよ」
「あばばばばば」
「お、白い泡を吹きだしてるんだよ? この感じだとそろそろ漏らす気がす────」
俺は、気絶した。
目を覚ました時はすっかり見慣れた保健室の天井で、何故か俺の服は体操服になっていたが余り気にしないことにする。
しかし気絶した前後の記憶がないのに、玲雨さんに謝らなければならない気がするな……。
ハーゲンダッツで許してくれるかな? 無理かな、流石に。
追記
許してくれた。
あと何故か哀れみの目を向けられていた、納得いかない。




