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武術大会

 うへぇ~。

 緊張する~。


 国王を前にするのは馴れないわ。

 死ぬまで馴れないと思う。

 断言してもいい。馴れない。


「勇者殿、頭を上げよ。この世界を救う為に日々の鍛練、誠に感謝する。」


 何て言うんだってけ?

「あぁ~。有り難き幸せ?」


「フハハハハハ。ハデルよ、もう崩してもよいな?」


「えぇ、充分でごさいましょう。」


「うむ。それに、今は儂とそなた、ハデルに親衛隊の3人しかおらぬ。礼儀作法などあっても無いような物じゃ。」


 この人、滅茶苦茶良い人なんだよな~

 なんか、もっと嫌な国王とかだよね?普通は。

 この人じゃなければ、俺って今頃、死罪か島流しの刑だよね?


「それに、こちらは助けて貰う立場じゃ、勇者殿にこちらの都合を押し付けて申し訳ない。」


「いえ、それは別に気にしてませんので…」


「それでじゃ、今から2ヶ月後にバラガン帝国で武術大会が開催されるのじゃが…勇者殿……雄治殿、出場してみてはどうかと思ったんじゃ。」


「武術大会…?」


「ハデルよ。頼む。」


「はい。武術大会とは我々、ガイル王国とバラガン帝国が開催する魔法ありの武術大会でございます。歴史は先代勇者ダーディムが現れ、我々とバラガン帝国が同盟を結んでからになりますので今大会で2度目の開催となります。」


「いや~。俺でても、すぐ負けるんじゃ…だってこの国からもアンドレアさん達、親衛隊の人と国王軍の人達も出るんですよね。」


「えぇ、ですが親衛隊の皆様は出場はしませんよ?この大会は先代勇者ダーディムに対抗するべく、新戦力の確保があくまでも最優先事項なのです。謂わば、ダイヤの原石を発掘する為の物です。なのでバラガン帝国にいる指折りの戦士達も出ません。というか出れません。出場資格がありません。」



 なるほど…

 と、言うことは?

「では……全員弱かったり?」


「フフフ、そうでもありません。ガイル王国に居る腕に自信がある戦士も、バラガン帝国に居る戦士達も最終的には、国王軍に所属する事を夢見ているのです。優勝賞金は100万と国王軍への推薦状です。ですので彼らからすれば絶好のアピールの場になります。全員、血眼(ちまなこ)になって優勝を目指す事でしょう。」


 無理じゃね?

 どう考えても、俺が優勝出来る可能性あるの?

 賞金100万か~。


 勇者として毎月100万の給料が魔法で管理している俺の個人口座に振り込まれてるから、あんまり賞金自体の旨味と言うかありがたみ、みたいのは感じないんだよな~。

 物価とかは転生してから城の外に出てないからわからないけど、元居た世界とそんなに変わらない気がする…城の中にある大きな食堂みたいな所でコーヒーが一杯で130円。カレーが550円、カツ丼が650円だから。


 まぁ、俺は勇者だから無料なんだとさ。

 だから、口座に100万が毎月貯まっていく。(笑)しかも、税金も全て免除なんだって(笑)

 最高だぜっ!!


 でも、この世界の若者からすれば、有難い話なんだろうな。100万と国王軍か…


「えっと~今のお話だと、私が優勝出来る可能性って…ほぼほぼ無いんじゃ~」


「雄治は直ぐに後ろ向きになるよな。お前は優勝出来るラインにはいるぞ?少なくてもガイル王国から出場する若者の中では1番、勇者出来る可能性があるぞっ!!」


「そうだぞ!?勇者殿の過去を考慮すれば後ろ向きになってしまうのも無理は無いが、優勝候補筆頭で間違いない。私達親衛隊が貴殿の実力は保証する。」


「ジャッジさん…アンドレアさん。」


「うむ。で、どうかの?雄治殿。」


 出てみようかな?

「はいっ!!謹んでお受けします。」


「ありがとう。雄治殿。」


「では、私はこれで失礼します。」





 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「後は、幸運を祈るだけじゃな。」


「えぇ。彼ならきっと、大丈夫です。」


「そうですね。信じましょう。」


「はい。信じるしかありません。」


「うむ。大会当日は儂も行く、護衛はアンドレアと騎士にお願いしようと思う。」


「はっ。承りました。」


「ジャッジ殿は私とこちらで彼の幸運を祈りながら武勇のお土産を楽しみにしていましょう。」


「もぅ、なんだよ~国王様~。俺も雄治の武勇を見たかったですぜ~!!」


「フハハハハハ(笑)そうだろ?そうだろ?そう思ってたんじゃ(笑)じゃが、そなたまで儂の護衛に連れていくと城が手薄になり警備が恐ろしい事になるからの、ここは儂の顔に免じて我慢してくれ。」


「えぇ、それは大丈夫です。国王様が居なくても、しっかりと守ってみせます。」


「後は一応、聖女を1人同行させようと思うとるのじゃ。レイシアとアイナ…どちらに任せようかの~。」


「なら、レイシア殿が良いのでは?」


「ふむ。アンドレアよ、理由わ聞いても?」


「レイシア殿の方がアイナ殿と比べ雄治殿と打ち解けているからです。少しでも雄治殿が過ごしやすい様に努めるならばレイシア殿、一択かと。」


「うむ。ハデル、ジャッジは如何か?」


「私もレイシア殿でよろしいかと。」


「俺も異論無しですぜ。」



 フフフ。


 不思議な少年ですね。


 戸川 雄治。


 無能な勇者として召喚された彼が少しの間でこうも歴戦の猛者達の心を鷲掴みにするとは。


 これはこれで嬉しい誤算であります。


 これも、彼の日々の鍛練の賜物でしょうね。


 仮に、優勝出来なくても私は彼を祝ってあげたい。

 魔法も使えない彼が体1つで武術大会に出ると言うことがどんなに険しく危ない事か。


 それでも、我々は彼に少しでも前向きになって欲しい。自分の力を過信し過ぎてはいけませんが、過小評価も良くはありません。


 今大会で彼の今までの努力を自分の目で耳で肌で感じて自信を付けて欲しいものですね。


 この、ハデル・フィークリス。貴方の力を信じておりますぞ。井の中の蛙、今こそ大空と大海を知り暴れる時が来たのですぞ!!


 フフフ。


 とは言うものの、1番は無事に少しの自信を付けて、帰って来てくれれば御の字です。


 雄治殿、私はいつまでも貴方を……





 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ

 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ


 武術大会か…

 通用するかな?


 出来る事をやらないと……


 アンドレアさんもジャッジさんも言いたい事は理解出来るけど、期待すると駄目だった時の反動が大きいから、期待させないで欲しいよな……


 でも、身体強化が使えないけど、大丈夫なのかな…

 そこが、心配なんだよな…


 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ

 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ




 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「レイシア殿、やはりこちらにおりましたか。」


「これはこれは、アンドレア様。どうされました?」


「レイシア殿に頼みがあるのだが…」


「はい。私で出来る事なら…」


「もうじき、武術大会がバラガン帝国で開催されます。そこに雄治殿が出場されます。そこで何か合った時の為に聖女1人を同行させよう。と言う話になり、私は貴殿を推薦したのだが、如何ですか?」


「…私で……良いのでしょうか?」


「私は貴殿しかいないと思うのだが…」


「ですが…私は雄治様に回復魔法は拒絶されてますから……」


「それは、私もですよ……あれは戒めとして残してる、と彼の口から聞きましたから。私の回復魔法も拒絶されてますから(笑)」


「…そうですか……だと、私に出来る事は…」


「えぇ、ですが何か不足の事態に陥った時に聖女の力は必要になります。それに、アイナ殿と比べるとレイシア殿の方が雄治殿と打ち解けられている気がしてな、私達は雄治殿に優勝をして欲しい。優勝して自分に自信を持って欲しい。彼の今までを考慮すれば後ろ向きになるのもわかる。ですが、少し…本当に少しでいいので自信を付けて欲しい。ですから、大会中は少しでも雄治殿が過ごしやすい様に周りを整える必要があります。それを考慮するとアイナ殿よりレイシア殿の方が適任と私は判断しました。如何ですか?レイシア殿。」


「…はい。私でよろしければお願いします。」


「ありがとう。心から感謝する。大会当日は私も国王の護衛としてバラガンに向かいますのでよろしくお願いします。」


「それは、心強いですね。よろしくお願いします。」


「それにしても、雄治殿の素振りはいつ見ても惚れ惚れしますね。」


「えぇ、ずっと見てられます。」


「私は初めてです。こんなにも他人に熱狂しているのは。彼を見てると何だか…自分も士気が上がります。(笑)元気付けられますよ、彼を見ていると。このまま、我々の願いのまま雄治殿には優勝して欲しいのですが……」


「えぇ、熱狂しますね。フフフ、私もその1人です。(笑)他者を巻き込んで、自分の味方に止まらず狂信的な信者にしていく教祖のような求心力。それを、少なくとも現時点ではこの世界を救う為に公使なされてます。フフフ、素晴らしい人間性ですよね。逆境を跳ね返す強靭な精神。何度も何度も這い上がる強靭な精神。全て彼の彼だけが持ち合わせる素晴らしい能力です。」


「えぇ。神の御加護が有らん事。」


「雄治様に神の祝福を。彼ならきっと優勝を始めとした素晴らしい結果をもたらせてくれますよ。」


「信じますかね?」


「フフフ、信じましょう♪♪」


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