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7/13

似てる2人

 騎士からボコボコにされてから約3ヶ月。

 俺は休まず今日まで朝8:00から夜20:00まで体作りと剣を最低でも1万回を振ってきた。

 振り続けると同じ時間でも回数が多くなる。

 少しずつ少しずつ成長してるんだな、俺も。

 だから、今では素振りは3万回がベースになってる。


 国王親衛隊のアンドレアさんと召喚された時に居た獣人のジャッジさんが手合わせをそれぞれ週1、俺からしたら週2で相手をしてくれる様になった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「アンドレアさん!行きますっ!!」


「よしっ!来いっ!!」


 ガンッガンッガンッガンッ

 ガンッガンッガンッガンッ

 木刀と木刀がぶつかり合う。


「勇者殿、まだだ!!もっとだ!もっともっと」


「ウォォォォォ!」


 ガンッガンッガンッガンッ

 ガンッガンッガンッガンッ


「ふぅー。今日はここまでにしようか。雄治殿は素晴らしいな。」


「ありがとうございます。でも、これだと戦場で屋久に立ちませんね……」


「いや、全てでは無いにしろ。通用するとは思うぞ?しかし、失礼ながら召喚されたあの状態から良くここまで強くなったな。私は正直、驚いてるよ。」


「ハハハ、剣しかありませんから。それに魔法は使えませんから。やっぱり無能は無能…ですね…?」


「そう、自分卑下するな。貴殿は立派な勇者だ。誰が何と言おうが偉大な勇者なんだ。それに、貴殿の想像と比べたら遅いのかもしれないが、少しずつ着実に努力は実を結んでいるぞ。」


「そうだと…いんですけどね……」


「回復魔法を掛けるよ?」


「いえ、結構です。」


「ん?何故だ?その顔の腫れも直ぐに治るよ?」


「はい。魔法の凄さは身に染みてます。ですが、これは戒めと自分を好きになる為の物なのでこのままで大丈夫です。」


「…そうか……」





「あの~、ジャッジさんは木刀は使わないんですか?」


「あぁ俺か?俺は使わないよ。俺の武器はこの自分の拳だ。」


 えっ!?

 マジで!?


「ハハハハハハハハ、心配するな、お前は木刀を使え、俺は拳で行く。俺の心配は無用だ。だから全力で来い。」


「よーし。行くぞ勇者!!」


「はいっ!!」



 ガンッガンッガンッガンッダンッドンッカッダンッカッ

 ダンッドンッカッダンッカッガンッガンッガンッガンッ

 ダンッドンッカッダンッカッガンッガンッガンッガンッ

 ガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッガンッ

 ダンッドンッカッダンッカッガンッガンッガンッガンッ



「ここまでにしよう。しかし、思った以上に動けるな♪良い運動になったわ♪」


「まぁそれは、ジャッジさんの俺に対するイメージが無能だから低かっただけですよ。ハハハ」


「お前は直ぐに後ろ向きな発言をするよな。そういう意味で言ったんじゃ無い。お前はちゃんと成長している。親衛隊の俺が言うんだから間違いない。」


「そうだと良いんですけどね……」


「だから、大丈夫だ。このまま真っ直ぐに突き進め(笑)お前はお前なんだ。」


「はいっ!!」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇


 1万回も最初はキツかった……

 手の平に血豆みたいのが出来て潰れての繰り返し。

 腕も色んな箇所がつるし、途中で腕が上がらなくなるしで滅茶苦茶キツかった。

 何が原因かはしらないけど3日1回の頻度で全身の皮が蛇の脱皮みたいになってベッドが皮まみれ(笑)


 後、顔の腫れは少し引いたかな…

 まだ、全然腫れてるけど(笑)


 でも、全部馴れた、と言えば嘘になるけど1万回を最低目標にしてそこから2万回、3万回って回数こなせると嬉しいんだよね。

 なんか、頭がおかしくなってる気がするけど…(笑)


 後は、3ヶ月の間で17歳になりましたー!!

 誰からも祝われなかったけど……

 まだまだ、おめでとうって言われたい年なのにー


 今日も日課の素振り

 飽き無いのか?と言われれば、まぁ飽きるし飽きてるけど、これしかないからやるしかないという。

 週2はアンドレアさんとジャッジさんの手合わせがあるからまだましだけど……



 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ

 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ

 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ



 無能の悲しい現実……

 トホホ……

 でも、魔法を捨てたのは良かったかもしれないな。

 あのまま、魔法の訓練してたら精神がイカれる。間違いなくイカれる。


 剣は振って振って振り続けてると少しずつ成長してる感じがわかる。ちゃんと実感出来る。剣だけじゃなく、体力作りも同じ。成長の実感って大切なんだって感じたわ。




 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ

 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ

 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ




 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「レイシア、またここに居たの?」


「何?アイナ。私に何か用?」


「いや、いつもここでアイツの訓練を眺めてるから気になっただけ~」


「そう。」


「しかし、アイツも良くやるわね~本当に。たださえ才能無しの無能勇者って城中じゃ有名なのにさっ!!」


「取り消しなさいっ!!」


「ッ!……何よ、急に大声出さないでよ。」


「悪かったわね。でも、取り消しなさい。雄治様に対してのその言葉は取り消しなさい。失礼にも程があるわよ。誰も好き好んで無能として召喚された訳じゃないわよっ!!」


「…」


「でも、彼はその事を受け入れて元居た世界と違う人、違う価値観、違う文化、違う食事、全く違う生活の中で必死に、懸命に毎日毎日毎日毎日毎日毎日戦ってるの。貴方にわかる?貴方がもし、彼が居た世界に無能として召喚された時に同じ事が出来るのかしらね?」


「…」


「彼の苦しみは私もわからないわ。一応、これでも聖女だから。私達は生まれた時から神の祝福を受けエルフにも匹敵する魔力量と回復魔法の適正を授かったわけだから。その中でも貴方はどう?歴代の聖女の中でも天才、神童と持て(はや)された貴方に彼の苦悩などわかるわけないわ。でも、そんな人間が知らない世界に急に呼ばれて無能になったら、どうなるのかしらね♪?まぁ嫌味を言うつもりは無いわ。貴方も今一度、彼に対する評価と接し方を考えた方がいいわよ。それと、私は忙しいの。邪魔しないでくれるかしら。」


「…何よ……もぅ……」



 まだまだ青いわね、アイナ。

 貴方は凄い聖女かもしれないけどその状態では追々、後悔する事になるわよ。


 貴方が軽視している物は聖女としてではなく、人として重要な物よ。


 リリアさんが言っていた。

 剣や魔法は鍛練次第で比較的上達しやすい、と。

 だが、彼の様な心の強さは鍛練では鍛えられないと。


 私もそう思うわ。


 先代勇者がそうだった様に、生まれた時の才能や場された時の才能は運でしかない。

 それを活かすも殺すも自分次第。


 アイナ、貴方はこのままでは先代勇者の後を追うこ

 事になるわよ。


 別に貴方がどうなろうと私が知った事ではありませんがくれぐれも、この世界の迷惑にはならないでくださいね。



「あれっ!?レイシアさん。」


「あら、リリアさん。こんにちは。」


「こんにちは。レイシアさんもでしたか?」


「えぇ、時間が許す限りですが、ここに来るのが日課になってしまいました。」


「そうですか、あっそう言えば、聞いていいのかわかりませんが、さっきアイナさんとすれ違ったんですが、何か怒ってる感じが…何かありましたか?」


「大丈夫ですよ。アイナの件は先程、彼女がこちらに来て雄治様を揶揄しまして、それを注意したんですよ。彼女は聖女の中でも特別ですから雄治様を理解出来ないのでしょう。ですが、彼女に取って必要なのは雄治様が持つ心の強さなんですけどね…」


「そんな事が……」


「まぁ私も雄治様の強さは理解出来ますが、苦悩まではわかりません。ですから少しでも彼を支えたくてこの場に……何も出来ませんけどね…」


「それは…私もです。何も出来ない自分が嫌になります。恥ずかしながら雄治との訓練が無くなって味気無いというか、楽しみがなくなりました。彼の成長と訓練している姿にどれだけの元気を貰っていたか……失ってから気付きました…」


「私もです……訓練が終わってから雄治様とお話が出来なくなって、味気無いです……なんか私達…似てますね……」


「そうですね…この苦しい感じはいつ頃晴れますかね?」


「……それはわかりません。明日かもしれませんが一生晴れないかもしれません。皮肉な物です。生まれた時から祝福され聖女として活動している今、多くの人を助けて参りました。でも今、目の前に居る自分がもっとも助けたいと思っている人を助ける事も支える事も出来ないなんて…聖女失格です…」


「なら、私は騎士失格ですね……彼を守る事が出来なかった訳ですから……もっと彼の内面に精神的に寄り添っていたら結果は変わっていたかもしれませんし……」


「やはり……似てますね私達……」


「えぇ、でも、私はレイシアさんより気付くのが遅かったです。彼の強さを。あの時、報告した際にハデル殿に言われて私は彼の置かれてる立場と精神的な所を考える様になりました。もう少し早く気付いていれば……」


「そこを悔いても始まりませんよ。なら、次に活かしましょう。私も彼に対する後悔は山程あります。だから、同じ過ちを起こさぬ様にそれを心と頭に刻んでおります。」


「レイシアさんも充分、強いですね……」


「強くはないですよ?夜になると彼を思い出して寝れなくなります。」


「フフフ、私もです。」


「やっぱり似てますね♪」


「フフフ、ですね♪」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「で、勇者殿はどうだ?アンドレアよジャッジよ。」


「はっ。素晴らしい成長速度です。まだ実践には送り込める状態ではありませんが成長速度には目を見張る物があります。」


「ジャッジは?」


「はっ。私もアンドレアと同様の意見でございます。後、もう少しで軽度の魔人相手なら戦えると感じております。」


「おぉ誠か!!」


「国王様、やりましたね♪」


 国王とハデルは嬉しさのあまり抱き合っている。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「なぁアンドレア。」


「どうした?」


「勇者について、実際にどう思う?」


「さっき国王様に報告した通りだが?」


「いや、そうじゃねーよ。アイツの成長速度からしたらもう少しで……」


「あぁ。私も感じている。このまま行けば、私達ですら相手にならない。」


「フンッ!一緒か。後は、身体強化に変わる何かがあればだな…魔力が無いから氣は無理だしな…」


「氣か……まぁ、無い物ねだりしても意味が無い。彼に対する侮辱すら感じるだろ?まぁ氣でも何でも変わる物があれば間違いなく魔人に…いや、ダーディムにすら勝てる可能性がある。」


「確かにな、無礼だな。今のは忘れてくれ。だが、間違いなくアイツは俺達の希望だ。」


「間違いない。」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇


 PM21:00ハデルは自室で紅茶を飲んでいた。


「良い香りですね~」


 ゴクゴク

 美味しいですね♪


 それにしても、彼の成長速度には驚かされますね。ただひたすら剣を振るう。そこに迷いは無い。


 彼は既に自分の生きる道を決めたのでしょう。


 自分には剣しかないと。


 ただ、龍や魔人を相手にするとどうでしょうか?

 皆様が言っていた身体強化がないと肉弾戦は厳しいのでしょう…


 うーん。

 私なんかが考えても意味はありませんが…


 でも、私の目に狂いは無かったでしょう?

 彼は偉大な人間だと。


 まぁ、私の目は良くも悪くもですが……

 先代勇者ダーディムも見抜けましたが、私では、どうにもなりませんでしたし……


 なんと言うか……

 先代も雄治殿も目が吸い込まれるくらい漆黒な瞳をしておりましたが雄治殿は何処か…メラメラと炎の様な情熱みたいな物と最初から現状を直ぐに受け入れて立ち上がる強さみたいなのを感じ取れましたから。


 同じ瞳でも全然違う者ですね。

 ですが、全て真逆の2人。


 1人は優秀な勇者として召喚され自分の殻に閉じ籠り世界を牛耳ろうとする者。


 1人は無能な勇者として召喚され自分の殻を定期的に突き破り世界を救おうと立ち上がる者。


 どうか、2人が合間見える時が来たら彼に慈悲がありますように。



 彼こそが救世主なのです。
















 作者より

 ☆ありがとうございます。

 本当に嬉しいです。

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