只の無能
「では、早速で悪いのだが雄治殿には鑑定士により鑑定をお願いしたいのだが…いいだろうか?」
「えっ!?あっはい!!何をすれば?」
「勇者様は鑑定士の水晶両手でを挟む様に触って下さい。そうすれば鑑定が出来ます。」
「わわかりました。」
頼むよ、マジで。
読んだ漫画じゃこういう時は大抵強いチート能力を授かってるから、俺もその路線…だよね?
ちょっと不安だけど、大丈夫でしょ!?
チートを使って世界を救う。その路線、その路線。
「出ました。」
はいっ来たー!!
チートお願いしますっ!!
色々とあって頭が追い付かないので簡単にチート能力だけくださいっ!!
「何もありません。」
「は?」
「え?」
「えっ!?」
「「「なっ!!」」」
「そ…そんな筈はもう1度鑑定を!国王様、これは何かの間違いですよ。」
「そうだなハデルよ……」
嘘だろ……
間違いと言うか…
冷静に考えれば何も感じないもん。
強くなってるって実感とかイメージが全く湧かない……普通にこの世界に来た感じ。
俺……ヤバくね?
普通に処刑とか…あるんじゃね………?
「やはり、何もありません。」
「そんな馬鹿な事があるのかっ!!」
王様が怒鳴っている。
「落ち着いて下さい。国王様。え~と、何も無いと言うのは魔法のスキルの事か?」
「いえ、才能の事です。魔法はおろか剣すらまともに振れないでしょう。」
「馬鹿…な。」
「勿論。努力すれば道はありますが……我々が求めていた人材では…無いと言う事でしょう。」
「…」
気まず。
結構ヤバい…よね?どう考えてもヤバい。
国王様も他の人も落胆の2文字が顔に書かれてる。
いやー。これ、俺が悪いのか……?
「もはや、打つ手無しか…」
「国王様、僭越ながらこの者を育てるのは如何でしょうか?前回の勇者は何でも直ぐに出来ました。だから、道を踏み外しました。ですが、この者は何も出来ない。なら、私達でしっかりと育てるのは如何でしょうか?その過程で何か素晴らしい能力が発見出来たり、開花する可能性もございます。」
青い瞳にミディアムパーマを靡かせタイトなヘッドバンドを着けたお洒落騎士の様な人間の男が口を開く。
誰なんだ、あの人は?
カッコ良い人だな~
イタリア人?いや、フランス人ぽいよな~
「しかしな……う~む。」
「国王様、僭越ながら私もアンドレアの意見に賛成です。彼が優れていれば彼の力を頼り、駄目なのであれば元に戻るだけです。元々、今回の勇者召喚は奇跡に近いのです。彼に望みを掛けながら私達は私達で出来る事をやりましょう。」
エルフの女性が口を開く。
「そうだな…そうするしかあるまい。」
「それに、新型魔力兵器がもうそろそろ出来ますぜっ!!下を向く理由なんて何処にもありませんぜっ!」
獣人?の男が口を開く。
「そうですよ。国王様。まだ新型魔力兵器があります。悲観してはいけませんぞ。」
「そうだな。よしっ雄治殿と新型魔力兵器の2当流で立ち向かうのみだ!!」
「その粋でございます!!」
騎士の男が口を開く。
「では、早速だが雄治殿に部屋を案内しよう。特訓は明日からとしよう。」
「はい。畏まりました、国王様。では勇者様、私がご案内します。」
(あれが、勇者様?)
ヒソヒソヒソヒソ
(うん。勇者様よ)
ヒソヒソヒソヒソ
(服装が私達と違うもん)
何か嫌な感じだな…
貶されてる訳じゃないけど、目立ちたくないし。
はぁー。どうせ、あの人達も俺が無能だって知ったら今度は貶すんだろうな……
◇◇◇◇◇◇◇◇
「勇者様、こちらです。」
でかっ!!お姫様の部屋みたいじゃんか!
「良いんですか?」
「勿論です。これから過酷な強度の高い訓練が待っておりますゆえ、しっかりと休んでください。勇者様には伝説の勇者ガレス・ガイルに匹敵する勇者になって頂かなくてはいけないので。」
強度の高い?……過酷?
今、過酷って言った?
伝説の勇者?
無能なんでしょ!?俺。
そんな奴が伝説の勇者になれるわけないでしょ!?
「ハハハハ、わかりました。ありがとうございます。」
嫌なんだけど。帰りてー。
でも、帰りたくは無いな…今は
いや、帰った方がいいのか?
心配してくれる人って俺に居るのかな?
居たとしても今は……
帰りたくは……無い…な。
◇◇◇◇◇◇◇◇
雄治の初めての特訓は王国軍が使用する訓練場で行われた。
剣士の訓練が週3。魔法使いの訓練が週2。
「貴様の指導をする事になった。リリア・マーベルだ。リリアと呼んでくれ。普段は王国軍の騎士として任務に当たっている。」
「戸川 雄治です。よろしくお願いします。」
スパルタ系女子だ。絶対、厳しいよ……
もう、挨拶からさて嫌だもん。
「こちらは、貴様が傷を負った時に回復してくれる聖女様だ。」
「レイシア・アズナブルと申します。よろしくお願いします。」
レイシアさんか、綺麗な人だな~。
あんな人と付き合えたら人生薔薇色だろうな。
「アイナ・テプールよ!よろしく。てか、勇者なんだからある程度の回復魔法くらいは使えるんじゃないの?」
コイツは性格悪いな……
コイツ嫌いコイツ嫌い
「申し訳ない。勇者としてこの世界に召喚されて日が浅いからまだなんです。それに、これから私が魔法も使えないくらいビシバシ鍛えるのでご尽力お願いします。」
「えぇ、私達に出来る事なら何でも言ってください。勇者様への協力は怠りませんから。」
レイシアさん優しい。
「彼女達は毎回どちらかが、回復係として貴様の訓練に付き合う。何か質問はあるか?」
「いえ。特には。」
「よし、先ずはこの木刀で素振り1000回だ。終わったら場内100周だ。先ずは体力から身に付けないとな。」
1000回!100周!!
もう無理~。
帰りたい…
「終わるまで返さないぞ?」
マジかよ…
シュシュシュシュシュ
シュシュシュシュシュ
ハァハァハァハァ
シュシュシュシュシュ
シュ986シュ987シュ989シュ999シュ1000
ハァハァハァハァ
「終わったー!!」
「よし、回復をお願いしてもいいか?」
「はい。」
「雄治様、お疲れ様です。回復魔法」
色々と癒される~。
でも、まだ100周が残ってる……
8:00から初めて振り方とか色々教わって13:00。
マジで日が暮れる。
「ありがとうございます。」
「いえ、これも勤めですから。」
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
後、2周。
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
よし、ラスト
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
「終わったっ……ハァハァハァ。」
「よし、今日の分は終わりだ。日々の積み重ねで体は変わる。鍛練を怠るなよっ!では、以上だ。」
「ありがとうございます。お疲れ様です。」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「私が君の魔法教育の担当になったセブルス・レイジアだ。魔法学院で校長をしている。よろしく頼む。」
青い長髪のエルフの男性が口を開く。
「よろしくお願いします。」
「君は魔法を使った事は?」
「ありません。」
「元の世界では?」
「魔法自体が無かったです。」
「そうか。なら、魔力を練る所から始めるとしよう。魔力は青い。こんな感じだ。」
「ハァァ!!」
凄い青色のオーラみたいのがセブルスさんから出てる。こんな、肉眼で見える物なの?
凄すぎじゃない?セブルスさんが特別なの?それとも、この世界ではこれが普通なの?
どっち?
「ううぉうあぁぁぁおぉぉぉ」
「そうだ、腹を絞めて喉の方に持ってくる感じだ。」
「うぉぉぉおぁぁぁぁぁぁぁうぅぅあぁぁぁぁ」
「絞れ!絞れ!もっとだ!!」
「ハァハァハァハァ。」
「掴めそうか?」
「正直……全然です。」
「そうか、だがこれは基本だ。これが出来ないと魔法が使えない。何としてもここだけは出来る様にしよう。」
「はいっ!」
「うぁぁおぉあぁぁぁぁぁぁあうおぉぉぉ」
何で何も無いんだよっ!!
頼む魔力っ!!
少し。本当に少しでいいから。
「ぐぐぐっぐぐ」
「あぁぁぁあぁぁぁぁぅおぉぉぉぉぉああおぉう」
「ぐぐぐっぐぐ」
畜生……
何も無い……
何も…何も出ないし感じない……
無能にも程があるだろ…俺……
「ハァハァハァハァハァハァハァハァ。」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「それでセブルスよリリアよ雄治殿はどうかの?」
国王。
「お役に立ちそうですか?」ハデル。
「「…」」
「2人共、正直に申してみよ。」国王。
「はっ!正直な所……彼には魔力がありません。何か呪いでも受けてるんでしょうか?全く魔力が練れない。このままだと、魔法は使えません。」
「リリア、剣の方は?」
横からアンドレアが口を開く。
「はっ!私もセブルス殿と同じ意見にございます。光る物が…現在は何1つありません。」
「……どうしましょう?…」
セブルスが困惑気味に尋ねる。
「う~む。」
「まだ、時期早々と言う事で如何でしょうか?国王様。まだ、始めたばかりですし……」ハデル。
「…そうだな……」




