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帰還


 ブリュさん大丈夫だったかな?

 今日は確か仕事か…

 10:00からって言ってたよな。

 でもその前に家に行ってみようかな?


 でも、流石に手ぶらは…

 何しようかな?


 薬草!!

 薬草を届けるのを理由に会いに行こう。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇


 ブリュさん達の家が見えてきた。

 微妙に薬草採取できる場所から遠いんだよね(笑)



 迷惑かな?


 喜んでくれるかな?



 ん?

 何か聞こえる?


「ねぇブリュはさ、あの人の事が好きなんじゃない?」


「何でっ!そうなるのよ!!」


「だって、勇者様の話をする時の貴方は幸せそうだもん。」


「…」


「いいじゃない。勇者様。」


「あっありえない。だって人種族だよっ!!私達は龍神属よっ!!助けて貰ったから少し親切にしてただけよっ!!もう行くわっ!!」


「ちょ待ってよ。ブリュ~(笑)」



 え?




 ガチャ


 えっ!?

 嘘でしょ!?今開けたら…



 あっ!?


「あっ!?」


「…」


「…」


「…」


「…」



 声が出ない。

 声を出さないと。

「あー。昨日の今日だったんで、だ…大丈夫かなって……」


「えっ……ありがとうございます。」


 渡して帰ろう。

 早く帰りたい……


「これっ!もしよかったら……」


「ありがとうございます……」


 よし。

 渡す物は渡せた。


「じゃあ……」

 タタッタタッタッ逃げる様にその場を後にする雄治。


「まっ…」

(待って……声が…出ない…よ)




「んー。ブリュ誰か来たの?」


「ど……どうしよう…」


「どうしたのブリュ顔が白いよ?」


「さ…さっきの会話…雄治さんに聞かれちゃった…」


「えっ!?」


「…」


「はっ早く追わないとっ!!」


「…う……ん。」


「そっか、仕事があるもんね、私が見つけてくるよ。」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇


 ハァハァハァハァハァハァ


 ハァハァハァハァハァハァ


 別に帰ったからって何かあるわけでも無いのに。


 その場から逃げたかった。

 ただ、それだけ。


 ハァハァハァハァハァハァ


 ハァハァハァハァハァハァ



「どうしたの雄治?」


 何で、コイツと鉢合わせするかなー。

 マジで。

 どっか行けよ天才さん。

 友達いねーのかよ。

 マジで邪魔。


「…」


「雄治…大丈夫?」


 キッショ。

 何でコイツ雄治呼びになってんだよ。

 コイツ昨日の件で何、距離縮めてんだよ。


 こっちはお前の顔なんて見たくないのに。

 どっか行けよ。

 俺の視界に入るなよ。


「…」


「雄治」


「うるさいなっ!!1人にしてくれっ!!」


「…」



 アイナを追い払い自室のベッドに入り込む雄治。



 ポタ


 ポタ


 ポタポタ


 ポタポタポタ


「…うぅうぅ……」


 苦しいよ。


 またこの感じだ……


 胸が痛いよ。


「うぅうぅ……うぅ…うぅ」


 また、恋してたんだ。

 知らない間に恋してたんだ……

 暫く、しないって決めたのに……

 自分との約束を破って…


 …


 ブリュさんの事が好きだったんだ。

 だから、こんなに苦しいんだ。

 だから、こんなに胸が痛いんだ。


「うぅうぅ……うぅ…」


 そうだよな、俺は人種族だし。

 龍神属のブリュさんからしたら迷惑だよな。

 たぶん、龍神属の人からしたらデスタックさんとか、パルクみたいな人が好みなんだろうな…


 ポタ


 ポタ


 ポタポタ


 ポタポタポタ


 くそ……


 少し上手く行ったら、またこれだよ…


 何も…


 何も…何も……楽しくない。


「うぅうぅ……うぅ……」





 はぁー。

 もう駄目だ。

 スッキリしないな……


 泣いても泣いても泣いてもスッキリしない。




 トントントン!


「雄治…ごめん。国名様が呼んでる……もし、体調が悪いなら、もう少し後にしてもらう?」



 国王様か…

 それは行かなくちゃな……


「いや、今行く。」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇



「雄治殿、呼び出してすまない。一応バラック大帝から話は聞いておる。そなたとアイナのお陰でライルが守られたと。それにそなたは魔人の幹部を1人を倒したと。」


「いえ、私1人では無理でした。横に居る聖女アイナと龍神属の皆さんにご協力頂いたからです。」


「フフフ。そうかそうか。それでなんだが、バラック大帝と協議の上でライルには雄治殿かアイナのどちらかの常勤でよいという話になってなどうするかのう?」



 えっ!?

 帰れるの?

 なら、帰ろう。


「なら、国王様。アイナ殿がこの場には適任かと。私は召喚された時よりも強くはなりましたが、アイナ殿と比べ周りを活かす魔法も使える様になった訳ではありません。」


「アイナよ、そなたもそれでいいか?」


「えぇ……」


「では、雄治殿には帰還してもらうとしよう。日程は明日の10:00でどうかの?」


 よし、帰れる。

 ここに居たくない。

 今はここには居たくない。


 早く帰りたい。


「国王様、これからは駄目でしょうか?」


「何か用でも?」


「いえ、特別な用はありませんが、早く国王様を始めとした城内の人にお会いしたくて…」


「フハハハハ。そうかそうか。なら直ぐに準備する。30分程、待ってくれるか?」


「えぇ、その間に荷物をまとめます。」


「うむ。」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「ねぇ…ねぇ雄治……」


 何でコイツは人の部屋に勝手に入って来てんだよ。

 マジでうぜー。

 魔法の訓練でもしとけよっ!!


 あっコイツ天才だったわ!

 訓練する必要ないんだった!!

 羨ましいー。


「何だよ!」


「その………今まで本当にごめんね。」


「また、それ?」


「うん。だって私、最低だったし…」


「気にしてないと言えば嘘になるけど、別にいいよ。許すよ許すから、出ていってくれないか?」


「…」


「まぁ俺は戻るし、天才のお前はここに残る訳だから暫くは会えないし会う必要も無いだろうけどな。まぁお互いにとってベストな選択だよな♪お前ずっと俺の訓練に付き合うの嫌そうだったもんな。ごめんね。いや、ごめんなさい。まぁ俺も氣をそこそこ習得出来たから、回復魔法もいらないし、今後はお前だけじゃなく、聖女全体に迷惑になる事も無いと思うぞ。今まで本当にごめんね。」


「…そんな……事……」


「よし、これでOK。じゃあ、俺は帰るから。今さら嫌味を言うつもりも無いし喧嘩をするつもりも無い。またどっかで……は、いらないな。お互い毛嫌いしてるわけだからな、じゃあな。」


「…」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇



「おぉ!雄治殿、久し振りじゃ。」


「えぇ、国王様。無理を聞いて頂きありがとうございます。」


「無理じゃないぞ?雄治殿とこうやって会える訳だからな。」


「ありがとうございます。」


「お帰りなさいませ。雄治殿。」


「ただいまです。ハデル殿。」


「雄治殿、お帰り。」

「雄治、お帰り。」

「勇者殿、お帰りだ。」


「皆さんただいまです。」


「それで雄治殿、デスタック殿に頼まれた剣は出来ておるぞ?確か刀?という武器だったかな?」


「えぇ。」


「ハデルよ。」


「はい。こちらです。」


「ありがとうございます。」


「よし、雄治!!手合わせしようぜ!!」


「はい。お願いします。」


「ズルいぞ!ジャッジ。私も雄治殿と手合わせをしたい。」


「なら、3人でどうですか?」


「そうしよう。」

「そうだな。」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇


「ジャッジさん、今、氣の放出時間延長の訓練をしてまして使っていいですか?」


「勿論だ。なら、俺も魔法を使おう。」


 カンッカンッカンッガンッカンッガンガガンッガガッ!!

 ガンッガンッカンッカンッガンッ!!


「ハァハァハァハァハァハァ」


「まだまだ行きますよっ!!」


「クッ!」


「おい、雄治…お前……強くなりすぎだろ!」


「そうですか?」


「あぁハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」


「なら、ライルに行った甲斐がありましたね。」


「ハァハァハァハァハァハァ生意気な奴だな(笑)ハァハァハァ。」


「よし、ジャッジ!交代しよう。雄治殿次は私が相手をするぞ。」


「えぇ、アンドレアさん、お願いします。」


 カンッカンッカンッガンッカンッガンガガンッガガッ!!

 カンッカンッカンッガンッカンッガンガガンッガガッ!!


「ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」


「まだまだ!!」


 カンッカンッカンッガンッカンッガンガガンッガガッ!!

 カンッカンッカンッガンッカンッガンガガンッガガッ!!


「ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」


 カンッカンッカンッガンッカンッガンガガンッガガッ!!

 カンッカンッカンッガンッカンッガンガガンッガガッ!!



 雄治の木刀の剣先がアンドレアの顔の前に止まる。


「…参った……」


「ありがとうございました。」


「いや~しかし雄治殿、どんな成長スピードをしているんだ?ライルに行く前とは別人じゃないか!?」


「だろ?アンドレア。コイツは強くなりすぎだよな?これだけ強ければ魔人の1人くらいは余裕だよな~。」


「そうだな。だが、倒した魔人は幹部と聞いている、赤い魔石を埋め込んだ。」


「えぇ。そうです。自分で四将とか言ってたので四天王みたいな感じかと……それで、武術大会を襲った魔人が1人と後他の奴が2人居るって事ですね。」


「やはり、そうか。別に雄治を疑っていた訳では無いが、そうなってくると魔人を叩くのはやはり今の方が良さそうだな……」


「あぁ。間違いない。3人とダーディムか……その、ダーディムも恐らく傷が癒えていないという前提で話をすれば今が好機だろうな。」


「あぁ。」


「雄治殿、赤い魔石の魔人はどれくらい強い?貴殿1人で、倒せたか?」


「いえ、1人では流石に……」


「そうか……」


「なら、やはりプランAだな。」



 プランA?

 何か色々と練っていたのか…


「あぁ。」


「あのー。プランAとは?」


「あぁ。それは俺達、親衛隊3人がかりで赤い魔石の魔人を倒すというプランだ。1番理想は1人に対して1人が理想だったんだが…」


「だが、それでもどう転ぶかわからない。相手は龍や黒い魔石を使い龍神属を眷属に出来るのだろう?勝機はあるが、わからない。」


「えぇ、油断大敵ですね。」


「油断するほど余裕はねーよ!!お前じゃねんだから!!」


「確かにな(笑)」


「そうですか…?」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 ハァハァハァハァハァハァはい。


 雄治様が帰って来た?


 逢いたい。


 ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ


 ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ



 教会で人々の治療をしていたレイシアの元に使者から雄治の帰還が伝えられた。


 時間いっぱい勤め、急いで城内の雄治を探す。

 そこに、いつものお淑やかな聖女レイシアの姿はなかった。


 ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ


 雄治様。


 雄治様。


 ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ



「ハァァァァ!!」


「いや、参った参った!!本当に強くなったな雄治。」


「ジャッジさんとアンドレアさんのお陰です。」


「よし、今日はここまでにしよう。」

「そうだな。ありがとな雄治。」


「えぇ。ありがとうございました。」





 雄治様っ!!



 ◇◇◇◇◇◇◇◇



「雄治様っ!!」


 ん?


「雄治様、帰って居たのですね?」


 レイシアさんか…

 暫く会っていなかったから、一瞬だれの声かわからなかったわ(笑)。


 どうしたんだろう?

 …

 あっアンドレアさんの心配してるのかな?

 別に手合わせだし、アンドレアさんが本気を出したら俺なんて。相手にならないのに…


「えぇ、先程。」


「ご無事で…ご無事で何よりです。」


「えぇまぁ、ジャッジさんもアンドレアさんも手合わせなので怪我はしないかと……」


「いえ、そうではありません。ライルから無事に帰られた事についてです。」


「あぁ、勘違いしてました。ありがとうございます。」


「…雄治様っ!!ライルは如何でしたか?」


「まぁ……普通です。」

 低い声で返事をする雄治。



 何が聞きたいんだ?

 よくわからないな。

 何で俺に構うんだ?


「雄治様…」


 レイシアの声を遮り口を開く雄治。

「あのっ!!レイシアさん。私は大丈夫ですよ?それにアンドレアさんは今さっき帰られましたよ?」


「えっ!?…何でアンドレア…様が?」


「では、私はこれで。」


「待ってください。どうしましたか?雄治様。」





 どうしましたか?か……

 それは俺のセリフじゃね?

 何が聞きたいのかわからんし。


 ふぅー。

 もういっか。

 もう全部いいや。


 なんか、わからないけど今、レイシアさんに心配されても別に嬉しくないし。


 むしろ、不愉快にも近い。

 もう、どうでもいい。

 どうでもいい。


 この人の声が好きだった事も、笑顔に惹かれた事も食べ方も話し方も俺にとっては……あの時の俺にとっては癒しだった。


 過去は否定したくない。否定しても俺がレイシアさんに恋をしていたのは変わらない。


 だから、傷付けたくない。大事な大切な俺の過去であり、宝物だから。


 でも、今は……

 もう、どうでもいい。


 なんか、今は顔も見たくない。

 終わりにしよう。

 全部…

 全部、終わりでいいよ、もう。




「ふぅー。レイシアさん、もう隠す必要も無いので言います。別にレイシアさんに迷惑になる事はないと思うので……私はレイシアさんとリリアさんが好きでした。女性として意識してました。あわよくば、2人の内どちらかと男女の関係になってみたかったです。最低ですよね?私はそういう人間です。でも、私にはアンドレアさんみたいにカッコ良くもなければ、セブルスさんみたいに品もありません。それに強くも聡明でもありません。」


「えっ!?」


「まとめて無いのでグダグダですけど…今までありがとうございました。私は私で大丈夫です。向こうでアイナにも伝えましたが、氣をそこそこ習得出来たので、回復魔法も不要になりました。レイシアさん達、聖女の皆さんの手を借りる心配も無くなりました。本当にこれまでありがとうございました。レイシアさんもお体お気をつけください。それでは失礼します。」


「あっ……ま」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 声が出ない…


 待って。その一言が出てこなかった。


 雄治様……



 たぶん…

 見限られた……


 私を拒絶するような、冷たい目に低い声…



 雄治様、私の事を好きだったんだ…


 私達、両思いだったんだ…


 ポタ


 ポタ


 私も好きです。ってあの時、言えれば違ったかな?

 でも、声が出てこなかった…


 ポタ


 ポタ


 もう、雄治様の世界に私は居ない。

 今まで見た事ない、雄治様の表情と声色…

 それを感じた瞬間に私は口が開かなかった。


 ポタ


 ポタ


 もう、一緒にご飯を食べることも、笑う事も出来ないよね…


 ポタ


 ポタ


 私が何かしたのかな?

 記憶に無いけど…


 でも、雄治様を支えられなかったから、一緒か…

 雄治様…

 雄治様…


 また、お話がしたいです……

 また、貴方のお話が聞きたいです…


 ポタ


 ポタ


 アンドレア様が、関係してる…?

 でも、なんで?

 なんでアンドレア様の名前を?

 わからない。

 もしかして、何か誤解を…?

 でも、確かめようがないよね?


 ポタポタポタポタポタポタポタ


 ポタポタポタポタポタポタ



 雄治様、私も貴方の事をお慕いしておりました。


 貴方の強靭な精神力と大きな大きな優しさに私は惹かれていました。

 傷だらけの体から屈託の無い優しい優しい笑顔に私は癒されておりました。


 貴方に私は救われておりました。


 貴方に出逢えた事、全て感謝しております。


 ありがとうございました。



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