援軍要請
あの後、大会は中止になったけど、翌日に表彰式が開催されて特別にMVPとして優勝賞金を貰えた。
MVPだって、俺初めて貰ったわ!元の世界でもスポーツとか中学の時に部活でやってただけだったし、なんか嬉しい。
まぁ、賞金の使い道は今の所は……無いな。
国王軍への入隊も既に入ってる様な物だから、まぁどうだろうね…正直、嬉しくは無いよね?…他の特典とかの方が嬉しいかな?(笑)でも、喜んでおいた方がいいのかな?
俺達は表彰式の後、直ぐにガイル王国に帰還した。
国王様も報告と今後についての話し合いがあるから世話しなくしてるし、バラガン帝国も赤龍の被害が凄いらしく復興に力を入れないといけないんだとさ。当たり前だよな。
「雄治っ!おかえり!!お前大丈夫だったか!?なんか、嫌な感じがしたから心配してたんだ!!」
「いや~まぁ……ジャッジさんの予感当たってます!(笑)」
「はっ?当たってる?どういう事だ!?」
「まぁジャッジよ。勇者殿も疲れているだろうから休ませてやれ。」
「あぁそうだなアイス。悪いな雄治。」
「コイツ、ずっと雄治が!雄治が!って五月蝿くてな、許してやってくれ。」
「何言ってんだ!!アイスッ!!」
そうなの?
ジャッジさんって最初は怖かったけど優しい人だな。
なんか、嬉しいな。
「いえ、私は気にしてませんから。ジャッジさん、もし、よかったら今から手合わせどうですか?」
「おぉ!いいぜ!!でも、雄治は大丈夫か?」
「はいっ!私は大丈夫です。」
「なら、訓練場に行こうぜっ!!」
「はいっ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「あっレイシア。おかえりー」
「アイナ、ただいま。」
「どうしたの?なんか浮かない様~な、晴れ晴れした様な難しい顔してるわよ?」
「えぇ。」
「で、何かあったの?」
「魔人が現れたの。」
「まっ魔人!!!」
「そう。魔人が雄治様の対戦相手の龍神属に魔石を埋め込んで凶暴化させて大変だったわ。」
「でも、アンドレア様とレイシアが居たんだから倒せたって話?」
「いいえ。魔人は最終的に逃げたわ。それに、私は国王様達の護衛を勤め、アンドレア様は龍の大群との戦闘に向かったわ。黒い魔石を埋め込まれた龍神属を倒したのは雄治様。それを私は眺めてるしか無かった。」
「そう。でも、良かったじゃない。五体満足で帰って来れたわけだし。あの、無能勇者もやるじゃない。」
「アイナッ!!何度も言ってるでしょ!彼は無能じゃないって。彼が居なかったら私達はここには居ないかもしれない……それだけ、黒い魔石を埋め込まれた龍神属は脅威だった……私1人じゃ太刀打ち出来ないわ。」
「…」
「それを、彼は何度も何度も立ち上がって最後には勝利しました。それがどれだけ凄い事か。アイナもあの場に居たら肌で実感していた事でしょうね。」
「…」
「前にも、言ったけど貴方が彼と同じ立場になった時に彼の様な強さを持ち合わせる事が出来るかしらね?それが答えよ。良い?アイナ、良く聞きなさい。本当の強さとは剣、魔法では無いわ。心の強さの事よ。」
「…」
◇◇◇◇◇◇◇◇
あれから、アンドレアさんも、ジャッジさんも忙しいみたいだな。週一の訓練には付き合って貰ってる。なんだかんだ、優しい2人に俺は感謝してる。
ただ個人的に気になってるのは、訓練の際に聞いた話で、バラガン帝国、南の砦…確か…ライルって所に誰か派遣されるみたいな話が出てるらしい。
理由は魔人の狙いが強靭な龍神属にある事が前回の襲撃で予想されてライルが魔の森から近いから 、ライルに住んでる龍神属を魔人から守る意味合いがあるらしい。
俺的に龍神属に助けなど、いるのか?が疑問だが…
疑問だな……
疑問しか無いよ……
ガイル王国にも南の砦はある。
アスファルトって名前なんだってさ。
そこにも当然、人々が暮らしていてレイシアさんと、アイナ以外の聖女が2人、常勤してるらしい。
俺はあった事ないけど~。
魔人の狙いが龍神属。だから自国の砦よりも、バラガン帝国の砦に派遣される。
向こうのバラック大帝も援軍要請をしてるらしい。向こうは向こうで人手不足なんだとさ……
理解は出来るが、派遣されるとなると大変だよな。
生活スタイルとか違うだろうし……
それを国王様も親衛隊の人達も連日、話し合ってるらしい。
まぁ、みんな慌ただしく働いてると言う事だな。
俺は……
俺は……まぁ…その……ね~?
休み?みたいな感じ。
ちょっと疲れたし。
でも、日課の体力作りと剣の素振りはやってる。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「うむ。どうしたもんかの~」
「やはり、ライルには雄治殿と聖女の組み合わせがベストと考えます。」
「そうだの~。こちらの戦力を割くわけにはいかんからのう~。雄治殿とレイシアに任せるか…」
「国王様。なら、私はリリアを推薦します。国王軍の騎士として雄治殿の剣術の師として、これ以上ない存在かと思います。あの、龍神との戦いを見るからに雄治殿は氣を扱えるまでになりました。なので、聖女の魔法に固執する必要は無いかと…」
「アンドレアよ。確かにリリアはうってつけよのう~。」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「リリア、ちょっといいか?」
「はい。アンドレア殿。如何なさいました?」
「今、バラガン帝国南の砦ライルに我々への援軍案が出ている。」
「ライルに…ですか?」
「あぁ、魔人の狙いが龍神属と予想してだが…そこで雄治殿は間違いなくいくつも事になると思う。」
「雄治…がですか?」
「あぁ、自国でも無い領土を我々、親衛隊が援軍に行く事などありえない。だが、現在は友好国として同盟を結んだバラガン帝国に援軍としての最低限の戦力を持ち我々の顔立てが出来る存在として雄治殿は筆頭だ。そこで、私は雄治殿とリリアを推薦しておいた。可決されるかはわからないが、迷惑だったかな?」
「いっいえ!迷惑など……」
「私は騎士としての君は素晴らしい事はわかっている。だが、君はもう少し自分の声を聞いたらどうだろう?余計なお世話だが、君は雄治殿の事が…」
「えぇ……」
「なら、無事可決した際には色々と励むといいぞ。その方が、私は嬉しいな(笑)」
「はい。お心遣い、ありがとうございます。」
「いや、武術大会にレイシア殿とアイナ殿のどちらを同行させるか?と国王様が悩まれていた際にレイシア殿を推薦したからな。」
「フフフ。ありがとうございます。」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「よし、皆の者集まったのう~。」
「「「はっ。」」」
「では国王様、お願いします。」
「まだ、正式に発表するのは後になるのじゃが、ライルに向こうて貰うのは雄治殿とレイシアに任せようと思う。それで、リリアにはアスファルトの守護について貰おうと思っとる。」
夜な夜な国王、ハデル、親衛隊3人の合わせて5人は誰が援軍としてライルに行くか内密に話し合っていた。
「私は賛成です。いくら、魔人の狙いが龍神属とは言え、アスファルトの守衛も怠る訳には行きません。アスファルトは聖女お二人とリリア殿に任せ、ライルは雄治殿とレイシア殿に任せましょう。」
「うむ。親衛隊の3人の意見はどうじゃろう?」
「意義無し。」
「俺もです。」
「私もです……」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「雄治殿、レイシアよ。2人にはバラガン帝国南の砦ライルに援軍として向かって貰いたいのじゃ。」
マジかよ…
俺かよ……
「はい。わかりました。」
いや~。
生活とか大丈夫なの?
待遇とかは?
「雄治殿…どうじゃろ……?」
行きたくねー。
「えっ!?あ~あ……」
「雄治殿…何か心配でも?」
「え……まぁ……その、待遇とかってここと同じとかですかね?いきなり、豚小屋みたいな所で過ごすとか無いですか?」
「フハハハ。それはないじゃろ。援軍として行く訳じゃからな。砦とは言え武術大会で受けた様な待遇じゃ。もし何かあればレイシアを通して魔法で連絡して貰って構わん。」
なら、大丈夫か…?
後は……
「龍神属の人って何を食べるんですか?」
「フハハハ。一緒じゃ。我々、人種族もドワーフもエルフも獣人も一緒じゃ。もしかしたら、生活スタイルが少し違うかもしれないが、基本的には我々と一緒じゃ。」
「まぁ……なら、私は大丈夫…です。」
「恩に着る。出発は3日後。そこから3ヶ月を目安に頼む。」
3ヶ月か……
長い様な、短い様な。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ハァァァァァ!!」
駄目だ……
これじゃ雄治様に迷惑かけてしまう…
もっと強くならないと。
もっと、もっと。
氣を身に付け始めた雄治様の隣に立つには回復魔法だけでは足りない。
攻撃魔法で雄治様をサポートしないと隣に……側に居る資格が無い。
武術大会での勇者雄治と龍神属パルクとの戦いを見て今までに無い感情を覚えた1人、聖女レイシアは武術大会から帰還後、自分の時間を見つけては密かに第3魔法訓練場にて1人で特訓をしていた。
「はぁぁはぁぁはぁはぁはぁ」
私が1番、苦手な攻撃魔法。
練る速度も威力もアイナには到底及ばない。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁぁはぁ」
でも、私も……
私も……
雄治様みたいに…
諦めずに足掻けば、何とかなるかも……
魔法には攻撃魔法、守備魔法、強化魔法、回復魔法、生活魔法の5種類がある。
人それぞれ、同じ魔法を唱えても魔法が放たれる速度、威力、魔力の消費量、同時にどれだけの魔法を放たれるかを対象に考える平行構築。これらを基準に自分の適正を導き出す。
レイシアの得意且つ最も適正がある魔法は生活魔法、守備魔法 、強化魔法の3種。
魔力量が多く最も魔法に愛されている、と言われているエルフ属ですらレイシアと同じくらい適正がある人物は多くは居ない。
それでも、今のレイシアからすれば適正ガチャに失敗したという思いが強いかもしれない。自分が得意とする魔法は全て雄治には必要無い。全く必要とされない。武術大会の時に自覚はした。本来、魔法を次のレベルにする為の物と言われていた氣を、魔法を使えない、もしかしたら魔力すら無い少年が体内から凄い量の氣を放出して強敵を退けた。
何度も何度も己を奮い立たせながら、立ち上がり最終的に強敵を退けた。まるで、物語の主人公の様に。勇者のように。
レイシアにとっては最終宣告に等しい。
腫れた顔も血豆まみれの手も雄治は自分の氣で治せる様になれば攻撃魔法が不得意な聖女など雄治の周りには不必要なのだから。
「はぁはぁ…まだ…まだよ!!」
「ハァァァァァ!!」
遠い……
雄治様…
私が悪いのはわかってる。
もっと彼の心に寄り添えれば。
今頃、1番近くに居れたのに…
でも、また…
また、私にその優しい笑顔を見せてくれるなら…
今度こそは。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「フフフ。雄治様、これがケーキと言う物です。この世界では食後か今の時間帯にお茶と共に嗜む物なんですよ。」
「へぇ~。これがスタンダードのケーキですか?」
「えぇ。そうですよ。もしかして雄治様の世界にもケーキはありましたか?」
「はい。私の世界ではこれは焼きチーズケーキと言われてました。スタンダードのケーキはクリームと苺を使った物です。」
「そのような物が…」
「はいっ後はモンブランとかチョコレートのケーキとか(笑)想像してたら食べたくなってきました(笑)」
「モンブランですか?チョコレートのケーキですか?モンブランは想像出来ませんが雄治様が仰る事ですから美味しいのでしょうね♪」
「えぇ、いつかレイシアさんにも食べさせてあげたいです(笑)」
「その時が来たらぜひ、お願いしますね♪」
「ハハハ(笑)、よしっ!!レイシアさんに奢ってカッコつけられる様に頑張りますよっ!!」
「フフフ。楽しみに待ってますね♪」
◇◇◇◇◇◇◇◇
あの時の日常が当たり前だと思っていた馬鹿な私。
どれだけ、あの時間に救われていたか…
何の能力も無い勇者として別の世界に召喚され、おそらく本意ではない訓練に、日々明け暮れながらも私と…私とお茶をして飛びっ切りの笑顔を向けてくれた彼を……
私は勘違いしていた…
私が雄治様の……謂わばストレス抜きをしていると……私とのお茶の時間で少しでも彼は前向きになっている、と。
でも、実際は違った。
聖女なのに助けて貰ってたなんて…
それなのに、彼の心は助けられなかった…
ごめんなさい。雄治様。
本当に馬鹿な私。
後悔しか無い。
また、雄治様とご飯が食べられるなら。
また、雄治様とお話が出来るなら。
諦めない。
私は諦めない。
騎士達にボコボコにされた直後から雄治の心が自分から離れた事を瞬時に理解したレイシアの心は今、焦りしか無い。
訓練が終わってからの2人だけの時間は無い。あれ以降、2人だけで話をした事もない。誘ったとしても、今の雄治からは承諾される気配は毛頭無い。
そこに追い討ちをかける様に氣を身に付けてしまった雄治には聖女としも自分は必要とされない。
聖女としても1人の女性としてもレイシアは淵に立たされていた。
作者より
改めての補足です。
ガイル王国 南の砦 アスファルト(雄治の国)
バラガン帝国南の砦 ライル (龍神属の国)
ゴチャゴチャして来ましたので…
簡潔にまとめます。
ガイル王国に召喚された雄治は武術大会での腕を買われて自国の砦ではなく他国に築いてある南の砦に行く事が聖女レイシアと決定したと言う話です。
作者より
いつもの時間だと投稿出来るか不安だったのでこの時間に失礼します。




