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辺境領主の魔導変革記 ~魔力結晶と魔導列車で、世界の経済と物流を支配する~  作者: Nami


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第41話(最終話) そして世界は繋がる



 帝都ガレリアの中心で、巨神『ティターン』が咆哮を上げた。

 その声は単なる音波ではなく、大気を震わせる衝撃波となって周囲の建物を粉々に砕いていく。

 全長五〇〇メートル。

 見上げるほどの絶望が、右腕を振り上げた。


「滅びよ、アステリア!」


 ヴァレリウスの声と共に、巨神の拳が振り下ろされる。

 それは核攻撃にも匹敵する質量兵器だ。

 だが。


「……遅いな。ウチの重機の方が速い」


 私は操縦桿を倒した。

 『ギガ・ドリル』が唸りを上げ、巨神の股下をスライディングで潜り抜ける。

 ドォォォン!!

 拳が地面を叩き、巨大なクレーターを作るが、私たちは無傷だ。


「総員、解体工事開始! 手順(段取り)通りに行け!」

了解ラジャ!」


 私の号令に、世界最強の現場チームが動いた。


 まず動いたのは、リリーナだ。

「特別ダイヤ発動! ……特急『デリバリー・ボム』、定刻通り通過!」

 彼女が遠隔操作する無人の装甲列車が、最高速度で突っ込んでくる。貨車には満載の火薬。

 それが巨神の左足の爪先に激突した。

 ズドン!!

 巨神がバランスを崩し、よろめく。


「今じゃ! 畳み掛けよ!」

「合わせますわ、サクヤ陛下!」


 空中からは、小型機に乗ったシルヴィアと、機竜の背に飛び乗ったサクヤが、魔法と斬撃の嵐を浴びせる。

 『聖光・断罪剣ホーリー・スラッシュ』と『桜花・千本桜』。

 二人の合体攻撃が、巨神のカメラアイ(目)を潰し、視界を奪う。


「ぐっ、小賢しいハエどもめ……!」

 ヴァレリウスが焦燥の声を上げる。


「トドメだ! カイト、回転数限界突破オーバードライブ!」

「おうよ! エンジンが焼き切れても知らねぇぞ!」


 私は『ギガ・ドリル』を急旋回させ、姿勢を崩した巨神の背後を取った。

 狙うは一点。

 膝関節の裏側、装甲の継ぎ目だ。


「どんなに巨大な建造物でも、動く以上は『関節』がある! そこが弱点だ!」


 私は魔力をドリルに注ぎ込んだ。

 

「土木魔法奥義――『螺旋貫通スパイラル・ブレイク』ッ!!」


 ギャギギギギギギギッ!!!


 ダイヤモンドの刃が火花を散らし、古代の超金属を削り取る。

 数秒の拮抗。

 だが、私の魔法による「劣化促進」と、カイトの機械の「物理破壊」が合わさり、ついに装甲が悲鳴を上げた。


 バキンッ!!


 膝のシャフトが砕け散る。

 巨神の巨体が支えを失い、轟音と共に崩れ落ちた。


「な、なんだと!? 神の機体が、土木機械ごときに!?」

「ただの機械じゃない。……みんなの想いを乗せた、未来を拓くドリルだ!」


 私は倒れた巨神の胸部装甲にドリルを突き立て、強引にこじ開けた。

 そして、コクピットへ単身飛び込んだ。


          ◇


 制御中枢。

 ヴァレリウスは、スパークする計器の中で、銃を私に向けていた。

 だが、その手は微かに震えていた。


「……なぜだ。なぜ、貴様の技術はこれほど強い。恐怖による統制こそが、最も効率的ではないのか」

「効率的かもしれない。だが、脆い」


 私は歩み寄り、彼の手から銃を取り上げた。


「恐怖で縛った鎖は、いつか錆びて切れる。……だが、利便性と信頼で繋がった絆は、切れない。私の鉄道も、通信も、全ては人を幸せにするためにある。だからこそ、世界中の人々が私に力を貸してくれたんだ」


 私はモニターを指差した。

 そこには、アステリア軍だけでなく、帝国の市民たちまでもが、暴走する巨神を止めるために瓦礫撤去を手伝っている姿が映っていた。


「見ろ。世界はもう、繋がっているんだよ。……君の時代遅れの野心が入る隙間なんてない」


 ヴァレリウスは呆然とモニターを見つめ、やがて力なく膝をついた。

「……私の負けだ。……見事だ、ヴェルダン公爵」


 私は制御盤に手を当てた。

 ティターンの動力炉は暴走寸前だ。破壊すれば帝都が吹き飛ぶ。

 なら、直すしかない。


「土木魔法・最終術式――『エネルギー循環・再構築リノベーション』!」


 私は暴走する破壊エネルギーを、帝都中の送電網へと逆流させるバイパスを構築した。

 破壊の光が、温かな生活の明かりへと変換されていく。

 巨神は静かに活動を停止し、ただの巨大なモニュメントへと変わった。


 空が晴れていく。

 長い、長い戦いが終わった瞬間だった。


          ◇


 ――そして、五年後。


 世界は一変していた。

 アステリア王国とガレリア帝国は講和条約を結び、国境は消滅した。

 今や大陸全土に張り巡らされた鉄道網と、空を行き交う飛行船、そして瞬時に情報を伝える通信網により、世界は一つの巨大な経済圏となっていた。


 王都アステリアの中央駅。

 その駅前広場には、私の銅像……ではなく、ツルハシを持った作業員の像が建てられている。

 今日は、世界一周鉄道の開通式典だ。


「アルス様! もう、また油まみれになって! 式典用のタキシードに着替えてください!」


 控室に飛び込んできたのは、美しく成長したリリーナだ。

 彼女は今やヴェルダン・グループの総裁として、世界経済を牛耳る女帝となっている。

 そして、その左手の薬指には、私と同じ銀の指輪が光っている。


「いいじゃないか。俺はあくまで技師だ」

「ダメです。今日は私たちの大事な日でもあるのですから」


 そう、今日は式の後に、私たちの結婚披露宴も予定されているのだ。

 といっても、相手は一人ではない。


「そうじゃぞアルス! わらわの白無垢姿、とくと見るがよい!」

 瑞穂から駆けつけたサクヤが、艶やかな衣装で抱きついてくる。彼女は退位し、国を民主化して私の元へ嫁いできたのだ。


「私も……新しいドレス、似合いますか?」

 少し大人びたシルヴィアが、恥ずかしそうに頬を染める。彼女は王籍を離脱し、今では世界的な歌姫兼研究者だ。


「主よ。……警備は完璧だ。あと、初夜の準備も」

 カエデが天井から降りてきて、真顔で親指を立てる。


 ……正直、世界を救うより、この四人の嫁たちを幸せにする方が大変そうだ。

 だが、悪くない。


「よう、旦那! ……いや、総裁!」

 カイトがシャンパンを持って入ってきた。彼もまた、世界最高のエンジニアとして名を馳せている。


「準備万端だ。……で、次はどこに穴を掘るんだ?」


 私は窓の外を見上げた。

 青い空。その先にある、無限の宇宙。


「そうだな……。地上はもう狭すぎる」


 私は懐から、新たな設計図を取り出した。

 それは、大地と宇宙を繋ぐ巨大な塔の図面。


「次は『上』だ。……宇宙エレベーター(軌道エレベーター)を作るぞ」


 全員が目を丸くし、そして吹き出した。

 呆れ顔、でも最高に楽しそうな笑顔で。


「本当に……貴方という人は!」

「退屈しなくて済みそうじゃ!」


 私の内政チートは止まらない。

 道がないなら作ればいい。

 世界を、星を、そして未来を繋ぐために。


 汽笛が鳴り響く。

 私たちの新しい旅が、今、始まる。



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