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辺境領主の魔導変革記 ~魔力結晶と魔導列車で、世界の経済と物流を支配する~  作者: Nami


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第36話 宣戦布告と世界同時侵攻



 万国博覧会の閉幕から三日後。

 王都アステリアは、まだ祭りの余韻に浸っていた。

 だが、その平穏は、私の執務室に設置された『緊急通信機ホットライン』の、鼓膜を突き破るような警報音によって粉砕された。


 ジリリリリリリリリリッ!!!


 赤い警告灯が明滅し、早朝の静寂を赤く染め上げる。

 私は跳ね起き、受話器を引ったくった。


「こちらアルス。状況は!」


『こ、国境警備隊司令部です! て、敵襲! ガレリア帝国軍が国境を越えました!』


 通信兵の声は裏返り、背景には爆発音が轟いている。


「規模は!?」

『分かりません! ですが、速い……速すぎます! 敵は徒歩ではありません! 我が国が敷設した鉄道網を使い、装甲列車と……見たこともない「鉄の戦車」で雪崩れ込んできています!』


 ――やられた。

 私は唇を噛んだ。

 ヴァレリウス皇子は、博覧会で私の技術を見て学んだのではない。

 すでに準備を終えた上で、「どれだけ使えるか」を確認しに来ただけだったのだ。


「砦はどうなった!」

『たった今、陥落しました! 開戦からわずか一時間です! 通信、切ります、これ以上は……ああっ!』


 プツン。

 通信が途絶え、無機質なノイズだけが残った。


          ◇


 私は直ちに別邸の地下にある「総合指令室」へと駆け込んだ。

 そこにはすでにリリーナ、カイト、シルヴィア、カエデが集結していた。

 壁一面の巨大スクリーンには、アステリア王国の地図が表示され、国境線沿いに無数の赤い光点――敵影が表示されている。


「状況を整理しますわ!」

 リリーナが蒼白な顔で指示棒を振るう。


「現在、帝国軍は陸・海・空の三方向から同時侵攻を開始。……その戦術は、かつてアルス様が国境紛争で見せた『電撃戦』そのものです!」


 地図上の赤い矢印が、恐ろしい速度で王都へ向かって伸びている。


「東部戦線。……敵は鹵獲ろかくした鉄道車両と、自走式の『魔導戦車』師団を展開。時速六〇キロで進軍中。このままだと、あと一二時間で王都圏に到達します」


「海上はどうだ?」

「ポート・ロイヤル沖に、帝国の鉄鋼艦隊が出現。……私の『オオワダツミ』を模倣した、全鋼鉄製の戦艦が五隻です。港は封鎖されました」


 カイトが悔しそうに拳を机に叩きつける。

「クソッ! あいつら、いつの間にあんな数を……!」


「そして、空です」

 シルヴィアが震える声で告げた。

「レーダーに巨大な反応。……ヒルデガルド皇女率いる機竜軍団です。その数、五〇〇。目標は、この王都アステリアへの直接爆撃かと」


 陸海空、完全な包囲網。

 しかも、使われている兵器はすべて、私の技術の「コピー」だ。

 私が世界を便利にするために作ったインフラが、今は敵の侵略を助ける高速道路と化している。


「……私の責任だ」

 重苦しい空気が部屋を支配する。

 王城からは、「どうすればいいのだ!」という混乱した通信が入ってきている。古い頭の将軍たちには、このスピード感のある戦争は理解できないだろう。


 対処できるのは、この技術の生みの親である私だけだ。


「……責任を感じて落ち込んでいる暇はない」


 私は顔を上げ、全員を見渡した。


「敵は私の技術を盗んだ。だが、彼らは『ハードウェア』をコピーしたに過ぎない。……それを動かす『ソフトウェア』と『運用ノウハウ』までは盗めていないはずだ」


 私は指令卓のメインスイッチに手をかけた。


「ヴェルダン・グループ総帥として命令する。……全事業、通常営業を停止。これより『戦時特別態勢コード・ウォー』へ移行する!」


 バチンッ!!

 スイッチが入ると同時に、指令室の照明が赤から青白く切り替わった。


「リリーナ! 鉄道管制システムを掌握しろ! 信号機とポイントを遠隔操作し、敵の列車を『行き止まり』や『ループ線』に誘導しろ! 脱線させても構わん!」

「了解しました! ……ふふ、時刻表を乱す不届き者たちに、遅延地獄を味わわせてやりますわ!」

 リリーナが不敵な笑みで通信機に向かう。


「カイト! 『オオワダツミ』と瑞穂の援軍を要請! それと、例の『新兵器』の封印を解け! 模倣品コピー本物オリジナルの性能差を見せつけてやれ!」

「へへっ、合点だ! 工場のラインを全開にするぜ!」


「シルヴィア様、カエデ! 空の迎撃だ! 『スカイ・アーク』を旗艦とし、王都の制空権を死守せよ!」

「はい! アステリアの空は渡しません!」

「御意。……主の敵を、影より討つ」


 全員の目に、絶望の色はなかった。あるのは、自分たちの作り上げた技術への誇りと、それを悪用する者への怒りだけだ。


 私はマイクを握り、全軍……いや、全世界に向けて放送を開始した。


『――こちら、アルス・フォン・ヴェルダン。……ガレリア帝国軍よ、聞こえているか』


 私の声は、ラジオ電波に乗って、進軍中の敵戦車の車内や、機竜のコクピットにも届いているはずだ。


『君たちは、私の作った道を通り、私の作った技術で攻めてきた。……だが、忘れるな。その道の「管理者」が誰なのかを』


 私はモニターに映る、冷徹なヴァレリウス皇子の顔を思い浮かべながら言い放った。


『インフラを制する者が世界を制する。……その意味を、骨の髄まで教えてやる』


 宣戦布告は返された。

 これは国と国の戦争ではない。

 「模倣された軍事力」対「創造されたインフラ力」の、技術総力戦だ。



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