第二話 太陽の女神は元カノの娘でした?
銀色の光が世界を覆う。
俺――月神ルーメスは、またしても無自覚に世界を照らしてしまっていた。
「うわあ……また俺、光りすぎちゃった?」
山の向こうでは嵐が止まり、干ばつの大地には雨が降る。
地上の女神たちは歓喜に泣き、俺はただ困惑するばかり。
「いや、ほんと、俺、またなんかやっちゃいました……」
そのとき、眩い光が天上から降りてきた。
赤く燃える太陽の光――まるで直接俺に対抗するような勢いで、世界を焼きつける。
「――ルーメス!」
声と共に現れたのは、黄金色の髪と瞳を持つ女神。
まるで太陽そのもののような存在感。
彼女の名はソレイユ・フレア。
光の王国の頂点に立つ女神であり、地上では「太陽神」と呼ばれていた。
「太陽神……? え、俺、なんか悪いことしました?」
「悪いこと? あなた、世界の夜を独占して、光の秩序を乱してるじゃない!」
彼女の声には怒りが込められていた。
だが、その瞳の奥には、どこか懐かしい光がある。
「あれ……この光、どっかで……」
思い出す。
現世――会社のオフィス。
課長として俺を追い回した、あの顔。
「……え、マジで……?」
「ふふ、覚えているのね、ルーメス」
ソレイユは微笑む。
「私はあなたの……“元カノの娘”よ」
「は? なにそれ!? 前世設定やめろ!」
俺は頭を抱えた。
月神になったばかりなのに、なぜこんなややこしいことに……。
ソレイユはさらに言った。
「あなたが無自覚に光りすぎるせいで、光の王国は混乱している。
私が止めなければ、太陽信徒たちの信仰も揺らぐ」
「いや、俺、信仰とか、統治とか無理……」
俺の意識は混乱の極みだ。
でも祈りをくれる地上の女神たちの顔を思い出すと、目を背けるわけにはいかない。
「……わ、わかった、話し合おう! その前に光、少し落とすから!」
俺が月光を少し抑えると、地上では夜の景色が戻り、太陽の光も落ち着いた。
「……ふふ、少しは賢くなったみたいね」
ソレイユは言いながら、月の地表に降りてきた。
その体は輝き、風を巻き込み、まるで月と太陽の接触そのものだった。
「これからは夜と昼のバランスを考えて、力を使うこと。わかった?」
「……は、はい……」
俺はヘトヘトになりながらも、彼女の威圧感に頷くしかなかった。
だが、地上の女神たちは黙っていなかった。
「ルーメス様、私たちの祈りを……!」
ルーナ・セレナやノクティアの祈りが、月に降り注ぐ。
祈りの力が俺の体をさらに強化し、ソレイユの光とも微妙なバランスを取る。
「……あれ、これ、俺、ハーレム戦争の渦中にいる?」
どうやら祈りをくれる女神たちの嫉妬と太陽勢力の威圧が混ざり合い、
俺の周りは常に緊張状態らしい。
「……いや、まだ状況整理してないのに、俺、またなんかやっちゃいました?」
こうして、月神ルーメスの地上生活はさらに複雑になった。
祈りで力を得る日々、太陽の女神との微妙な戦闘、
そして増え続ける女神たちの好意……
――ああ、俺、これ、間違いなく史上最強にして最モテの月神ライフだ。
だが、まだ誰も知らない。
太陽神ソレイユは、ただ単に“敵”として現れたわけではなく、
月と太陽――夜と昼の均衡を揺るがす、隠された力を持っていることを。
次の夜。
月神ルーメスは、再び祈りの中で覚醒することになる――




