第一夜 俺、また世界照らしてました?
――まぶしい。
そう思って目を開けた瞬間、俺は悟った。いや、悟るしかなかった。
俺、光ってる。
しかもその光が――地平線の向こうまで届いてる。
いや、正確には俺の体から放たれてる。
そして眼下には、信じられないほど青くて広い惑星。
地球……じゃない。
「え、ちょっ、待って。俺、どこ? なんか丸いし高いし、ていうか重力感じないし。
……あれ? もしかしてこれ、星? 俺、星!? いや、月っぽくね!? 俺、月!?」
叫んだって音は返ってこない。そりゃそうだ。宇宙だもんな。
けど俺の声(?)はどうやら思念として地上に届くらしい。
下を覗くと、山の上にある神殿のような場所で、何人もの女神(らしき存在)が祈っていた。
「――あぁ、月神ルーメス様。今宵もその光、麗しゅうございます……!」
(ルーメス? 誰? 俺のこと!?)
そう、どうやら俺は「ルーメス」という名前の月神として崇められているらしい。
異世界に転生した結果、神格持ち天体ボディを手に入れてしまったのだ。
……話は少し戻る。
俺の名前は佐久間 悠。
日本の片隅でブラック企業に魂を吸われていた、ただの社畜。
夜中まで資料作って、上司に「努力が足りない」とか言われて、
最後に残ったのはコンビニの冷えた唐揚げと、「もう無理」の一言。
そんな俺の最期は、まさかの「照明器具の落下」だった。
……いや、会社の蛍光灯って、あんな刺さるもん?
気づいたら視界が白くなって――次に見たのがこの星空。
あのときの“光”って、これの伏線だったのかよ! いや伏線強すぎだろ。
それから数日。
(※時間の感覚は曖昧。というか月に「日」はない)
俺はどうにかして“月”としての生活を始めた。
太陽と会話(※ノリのいい兄貴分)し、星々に挨拶(※隣の住人)し、
地上の様子を眺めるのが唯一の楽しみだった。
そんなある夜。
地上の神殿で祈っていた女神たちの一人が、俺に直接語りかけてきた。
「――ルーメス様、どうか……我らの国をお救いください!」
その声は、まるで俺の脳内に直接響くように届いた。
次の瞬間、月の表面に光の紋章が浮かび上がる。
「な、なんか勝手にスキル開放されたぞ!?」
目の前に浮かぶ文字。
> 【ルーメス・スキル】
> 月光干渉(Lunar Link):祈りの対象から、願いを具現化できる。
「……おいおい、まさかこれ、“神頼み”をリアルに叶えるスキルってことか?」
俺は軽く光を放ってみた。
すると地上では――干ばつに苦しんでいた大地が、一瞬で雨に潤った。
「きゃああっ! ルーメス様が……応えてくださった!」
「いや……マジで? 俺、またなんかやっちゃいました??」
地上が歓喜に包まれる。
祈りの声が増えれば増えるほど、俺の力も上がる。
そして夜ごと、女神たちは俺に語りかけてくる。
「ルーメス様、私の願いを叶えてください」「この身を、あなたの光に捧げます」――
……おいおい。
異世界で月になったはずなのに、これもう完全にモテ期の銀河版じゃねぇか。
だが、俺はまだ知らない。
この星には、太陽の信徒たち――“光の王国”が存在し、
そこでは「月神ルーメスは偽神」と呼ばれていることを。
そして――
その太陽の女神が、かつて俺が救えなかった現世の上司の娘であることを。




