④時給
事実を基にした創作です。3500円は事実です。
・アルバイトについて④時給
2026.X
冬のある日、私はドラッグストアで買い物をしていた。
ふと、お店でかかっている音楽(お店のテーマソング的なものです)が普段と違うような気がした。普段の音楽の上にさらに別の音楽が乗っているような感じで、曲が変わったのだろうかと思ったが、すぐに気がついた。誰かの携帯電話の着信音が鳴っているだけだ。テーマソングは早々変わるものではないだろうし。
アパートに戻り、携帯電話を確認すると不在着信が入っていることに気づいた。
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働き出してから1か月くらいたったころで、仕事と人間関係に慣れてきたところだった。ひと月耐えたという事実から、3月まではなんとかやり過ごせるだろうという自信が生まれていた。
着信は以前働いていた派遣会社の営業の方からだった。私はしばらく折り返すことができなかった。以前というか、最後の派遣先でいろいろあり、犯罪者扱いされ、そのことについての何かしらの連絡だろうと思ったからだ。
というのもそんな風に派遣先と揉めるような人間にまた仕事を紹介することはしないだろうと考えていたからだ。けれど、勇気を出して折り返してみると、なんてことはない話で、いい求人を紹介できるのだけれど、今どうしているか確認したかった、とのことだった。
「あれからどうしていたか」と聞かれたら、「自殺しようと思っていた」と正直に言おうか迷った。けれどそんなことを言ったところで、困らせるだけだし、それを伝えるということは心配してほしいだけなのではないか、と思うと恥ずかしくて言えなかった。(まあ書いているんですけどね)
今は倉庫でアルバイトをしていて、3月末までは辞めることはできない、ということを伝えた。それなら仕方がないということで話は終わりそうだったけれど、私にしては珍しく言いたいと思ったことを言っておくことにした。
「なんかあの……自分でアルバイト探してみて思ったんですけど、派遣で働いてた時よりもかなり時給低いものしかなくて(自分にできそうなものは)……、なのですごい、○○さんには(時給の交渉を)頑張ってもらっていたんやなあと、思って。ええ、本当、ありがとうございました」
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201X.夏
私は無職だった(いつもの)。
とりあえず新米を集荷する短期アルバイトをしながら、これからどうするかを考えることにした。私は求人情報誌から応募し、派遣会社経由で、運送会社で働くことになった。(この派遣会社は冒頭の会社とは別です。)派遣会社の仲介はあったけれど、とくに派遣社員になった、というわけではなくて、普通のアルバイトだったと思う。
あるとき、他のアルバイトの方たちは直接、運送会社のアルバイトとして雇われ働いているという話しを聞いた。つまり、お金の流れはこういう感じになる。
私 :運送会社 → 派遣会社 → 私
他の方:運送会社 → 他の方
なんか別段分かり易くもない気もしますが、伝えたかったのは、間に派遣会社が入っているか否か、ということです。
そして、関わる人が増えるということはつまり……。
「えっ……皆さん、そんなに金もらってるんですか」
私の日当は8500円だったが、他の方は1万2000円もらっているそうだった。
【12000-8500=3500】 ※単純に計算した場合です。
(あ、あれ……俺の3500円は……?)つまり、そういうことです。説明不要ですね。
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米の集荷のアルバイトは、農家の方の家から30キロ(だったと思う)の米袋をトラックに積んで集荷場所にて下ろすという、そういった作業だった。私の働いていた会社ではトラックの荷台(平ボディと呼ばれるタイプで屋根はない)に積んでいたけれど、他の会社では商用バンに積んでいるところもあった。
昔はそこまで気にならなかったけれど、商用バンの方が絶対に辛いと思う。屋根があって狭いと作業は格段にしんどくなるに違いない。今の私なら腰をやってしまうだろう。
トラックに乗って移動をする時間が結構長くて、その間いろいろ話したりした。前記のことをドライバーの方(社員)に話したこともあった。
「いや、でもこんなに(給料)違うとは思いませんでした」
運転手の方は笑って
「かと言って、今から変えるわけにもいかんやろ。勉強代やと思うしかないわな」
「それは、そうなんですけど。でも3500円ですよ……」
若いころの私は思った。3500円もあれば、なんだって買えるじゃないか、と。
(なんでもは無理ですが)
そのアルバイトの期間はひと月で出勤日数は20日くらいだった。だから7万円くらいの差が出ていたことになる。
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これは別に派遣会社に文句を言いたいとかではないです。システム上そうなると思いますし、派遣会社の方も「直接応募したら給料あがるよ」とは、分かっていても言えないでしょうし。ただこんなことがあったというだけで、いつも通り私を笑ってください、という話です。
こんなに分かり易く比較できるケースはレアで、いつか書きたいと思っていたので書けてよかったです。
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普通に考えたら、新米(集荷)アルバイトみたいな感じで、関わる人が増えれば増えるほど、最終地点まで届くお金というのは減っていきますよね。
でも、求人情報誌をパラパラめくるとわかると思うのですが、一般的に派遣会社を通して働く場合と、介さずアルバイトをする場合の時給、比べてみると前者の方が高い場合が多いというか、ほぼそうだと思います。
実を言うと今の仕事の時給は、10年ほど前に派遣で働きだしたときの時給よりも低いです。
それは、仲介料を差し引いてもなお、そちらの方が高かったというだけのはなしなのかもしれません。でも、なんというか、そういうのってあり得るのかなあという疑問があるんですよね。まあ、実際あり得ているんですが。
これは私の勝手な考えなのですが、派遣会社が頑張っているのと同時に、アルバイトを直接雇用する企業は可能な範囲で人件費を削っているのかなと。
それだったら派遣でいいやってなる人も多いかもしれません。
ただやはりいいことばかりではなくて、急に解雇されたり、内部告発をしたら犯罪者扱いされたり(しつこい)、賞与がなかったりとか(ある派遣会社もありますが)、なんか社員の中には下に見てくる人がいたり、どこにも落ち着けなかったり、といったデメリットもあるとは思いますが。
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結局私にどちらがいいとかいうことはできないのですが。
派遣社員で働いていた職場は結局2つしかないですし、たまたまそこがそうだっただけという可能性も十分ありますしね。
派遣に登録していると営業の方が、勝手に、といったらあれですが、できそうな仕事を見繕って紹介してくれることがあります。向こうとしても、人を遊ばせておくより働かせた方が、利益が出て助かるわけで。一般に公表されていない求人とかにも応募できたりとかもあるみたいですし。自分に自信を失っている方にはあっているのかもしれません。でもこれは転職エージェント(私は利用したことがない)とかでも同じかもしれません。
冒頭の電話では、条件は結構いいのがあると言われて、今のアルバイトの期間が終了したらまた頼もうかと思ったのですが、やはりどうしても嫌なことを思い出してしまうというか、考えてしまうので前の派遣会社に戻るのは、今のところは、よそうと思っています。
企業と労働者、その間にさらに人が介在する構図、というのも今では良し悪しがあるような気がしていて、……なんかまあ、そんな感じですね。
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私はフルタイムのアルバイトは今回が初めてだったのですが(というかフルタイムだと思わずに応募したのですが)、待遇が基本的には社員準拠なのではないかと思っていて、割と安心感があっていいものだと思いました。私がなかなか引っ越しできなかった理由の一つは派遣だといつ首を切られて、次にどこに行くのか分からなかった、というのがあります。けれど今はこの勤務地から移動とかはないようなので、その点も結構いいなあと思いました。
ただまあ、給料は書いていた通り、一人で生きていくには十分ですが決して高くはありません。けれど、賞与もあるようですし、トータルで見るとそこまで派遣社員のころと変わらないのかもしれません。
もちろん、これらはすべて長く続けることができればの話ですが。
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自分の1時間の値打ちがどんなものなのか、と考えてみたりしました。
でもまあ、1200円/hのところで働けば1200円だし、730円/h(2008)で働けば730円というだけの話であって、この差は何から生じているのかと言えば、仕事内容、強度、企業の業績、あるいは最低賃金とか……でも基本は仕事内容ですよね。
前の仕事と今の仕事、時給は違っても、毎日同じ時間を消費しているのだと思うと、やはりどうなのかな、とか考えます。
時給が200円上がれば、毎日実質無料で映画を観に行けますよね。さすがにそこまで見たいものの数はないし、体力的にも厳しいですが。映画でなくても外食をしたり、もちろん使わずに節約してもいいですし。お金があるに越したことはないですしね。
何が言いたいのか、書いていてよく分からなくなりました。結局今回は3500円のくだりを書きたかっただけかもしれません。
皆さんが働く前には、よく調べてみてください。
(完)
読んでくださってありがとうございました。




