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私事について  作者:
39/49

・お詫び、意味について

【お詫び】

 前回私は、オリオン座は判ると書いたのだけれど、暫くしてから、なんだか嫌な予感がしてしまい、調べなおしてみた。その結果、私はオリオン座も判っていなかったということがわかった。

 私の頭の中にあるオリオン座は、『8』の字、砂時計のような形をした星座だった。けれどそれは間違いだった。オリオン座はもっと多くの星から構成されていたのだ。

 私は恥ずかしくなくなった。判るって書かなければよかった。もしかして……と不安になり、カシオペヤ座と北斗七星も調べてみた。こちらは大丈夫だったので安心した。

 とにかく私はオリオン座が判っていませんでした。すみませんでした。そして、正しいオリオン座を多分、覚えきれない。というのは私の眼と脳の問題だ。

 とにかく嘘を書いてしまったことを謝ります。すみませんでした。


――――


・選挙、意味について

 先週(2月初週)、車を運転しているとき前に停車している商用バンが選挙カーであることに気が付いた。最近結成された党だったはずだけれど、どういう政策を掲げているのかはよく知らなかった。本当に選挙するんだ……と思った。


 2026.2.7夜(雪)

 2月8日は大雪の予報が出ていたのを忘れていた。

 さすがに今さら期日前投票もできないだろうしと諦めて、雪の中出かけることを決める。それはそれとして、もう一つの大きな問題(むしろそれ以上に重要な問題)は、誰に投票すべきかということだ。


 近所の通りに選挙ポスターが貼ってあるのを見かけたけれど、ほとんど名前と写真と意気込みしか情報はなかった。

 仕方がないので、公約とかを調べるかと思い、(でもどうせ守られなかったりするんだよなあとか思いながら)インターネットでサイトを見てみたのだけれど、なんだか頭が痛くなってしまった。詳細は伏せるのだけれど、疑心暗鬼になってしまい、誰も信用できなくなってしまった。


――――


 【意見が一致しない場合 投票したくない】


 カタカタとキーボードを叩いてこんなことを検索してみる。検索結果の一番上に出てきたのはAIによる回答だった。これは表示しないようにする方法があるそうなのだけれど、私はそうはしていない。たまに煩わしく感じるときもあるけれど、なんとなく親近感を覚える部分があるからだろうか。

 ただ、今回の場合、AIは正しく私の求める回答を与えてくれた。(大体こんな感じの内容でした)


『投票したい人物がいない場合は、逆に考えて、当選してほしくない人物以外に投票するとよいでしょう。最善を目指すのではなく、最悪を回避すると考えてみてはどうでしょうか』


 なるほど……そういう考え方は聞いたことがある。民主主義はそういうものだ、と。でもなんか嫌だな。その考え方で投票するなら、当選してほしくない人に投票する方式にしてほしい。なんか後ろ向きな感じはするけれど。


 もし、全員に当選してほしくない場合はどうだろうか、と思ったけれどそれに対する回答はなかった。さらに質問もできるようだけれど、私は検索をしたことはあっても質問をしたことはなかった。


『投票に行くことが無意味だと感じますか? 確かにあなたの一票で大勢は変わることはありません。ですから、選挙に行かず、休日の時間を大切にすることは合理的な選択です』


 意外だった。もっとなんというか、選挙に行こう! みたいな、真面目なノリを想像していたけれど……そうか、合理的なのか。無意味なのか。


【自分の存在 意味ある】


 と検索すると例によって、相談窓口を紹介されるだろうと高を括っていたけれど、優しい回答が返ってきた。これは想像していなかった。けれど、それは果たして合理的思考に基づく回答だっただろうか。


――――


2026.2.8(雪)


 私のしているアルバイトは、基本的に土日祝は出勤でシフトが組まれている。そういうわけで、朝、選挙に行き、戻って、車の雪をおろしてから出勤、という流れになる。まあ、意味のない行動をとった場合は、ということだけれど。


 選挙券(正確には投票所入場券と呼ばれるものらしい)をハガキから切り取り、コートを着て、長靴を履いて出かける。ちらほら乾いた雪が降っていたけれど、傘は面倒なので持って行かず、フードをかぶって出かける。

 寒いし、雪も積もっていた。面倒くさいと思った。(行かなければいいのに)


 私の投票場所は近所の小学校の体育館だ。

 車で行くこともできるけれど、体育館の駐車場に入る道が結構狭くて、すれ違いが困難で、この雪ならばもうできないだろう。道路わきにできた雪の山で視界も悪いだろうし、気を遣うのが嫌なので歩いていくことにする。足もとは悪いけれど距離的にも大したことはないし。

 受付で手続きを済ませると、まず衆議院小選挙区の用紙が渡された。注意書きには候補者以外の名前を書かないでくださいと書かれていた。白票は駄目だ、とは書かれていなかった。私はしばらく悩んで、自分の名前を書いて投票した。


――――

 

 それから最高裁裁判官の国民審査。

 私はこちら側のことを全く考えずに来てしまった。全員に×をつける。

 というのも全くこの人たちのことを知らないからだ。(これは私が調べなかったのが悪いです)全然知らない人を信用するとは言えないし、その方が不誠実だと思うのだ。

 もし何かあった時『でもお前は×をつけなかったじゃないか』と糾弾されるのが嫌だという思いもある。むしろこちらが強い。

 それに結局、私が×をつけても、まず間違いなく信任されるだろうという思いもある。これがもし私が×を付けると罷免されるというのなら×をつけるかとても迷うだろう。自分の一票に大した意味がないと自覚しているから、こんな行動がとれるのだ。

 こういうときこそ白票にすべきだと思うのだけれど、白票だと信任したことになってしまう。


――――


 比例代表には入れたい党があったのでそこに投票した。結果は……。


――――


 もちろん私が立候補しているわけもないから、自分の名前を書いても無効票になるだけだ。ああ、こういう奴いるんだよな、という感じで処理されて終わりだろう。


 今まで自分の名前を書いたことはなくて、AIの言う所の最悪を回避するという意識で投票してきた。けれど今回の選挙ではもう本当に、誰にも入れたくなかったのだ。なんだかいろいろ馬鹿馬鹿しくなってしまった。


 AIは間違えていた。あるいは故意に嘘をついてくれたのかもしれない。(そんなことができるのかは知らない。そもそもAIは私のことを知らない)他の人のことは判らないが、私が存在していることに意味はないと思う。ただ行動には意味があるかもしれないし、意味を無理やりに与えることもできるだろう。


 私は自分に投票できるだろうか。どうせ意味がないのなら、自分のためにこの場を使うことにした。


 私は今まで自分を信頼して来なかったけれど、それは間違いだったと思う。

 過信であれば間違いだけれど、それは程度問題であって自分を信じるという行為そのものは間違いではないと思う。私はできる限り過不足のない範囲で、自分を信じるべきだったと、後悔している。

 

 もしかしたら自分が自分に一票を入れたという事実が、いつかどこかの段階において、ギリギリ踏みとどまる力をもたらすかもしれない。あるいは自分が一票を入れるにふさわしい人間になるべきなのではないかという、そういう、自己に対する強制力になるかもしれない。あるいは評価に見合うように、努力するとか。

 それで自分を補強できるのなら、意味のあることだと思う。


 アパートに戻り、濡れた靴下を履き替えて、車の雪を下ろしてアルバイトに出かけた。


(完)


ありがとうございました。

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