21、面接官の方と少年について
※ 今回は過去に書いた小説について、言及しているところがあるのですがそういうのがあったんだ、という感じであまり気にしないでください。いまさら気にされる方もいないと思いますが展開のネタバレもあります。
21、面接官の方と少年について
2024.9
10年近く乗っていた車を乗り換えた。
今度の車は以前の車よりもエンジンの力は上がっていたので、今まで行きたかったけれど躊躇していたところにも行ってみることにした。
長野県のビーナスラインと呼ばれる道路を走ってみたかったので、美ヶ原高原の道の駅を目的地として行ってみることにした。地図検索でそのあたりを見ていると「サモトラケのニケ」と書かれた地点を見つけた。
なぜ? と思って詳しく見てみると、『美ヶ原高原美術館』にニケ神の像の複製が展示されているそうだった。私は以前からニケ神の像を見てみたかったのだけれど、海外旅行する勇気も金銭的余裕もなく、ということで諦めていた。(本当に見たいのならあれこれ言い訳するべきではないとは思うのですが)
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ビーナスラインは想像していたよりも峠道でいろいろ大変だった。ただ、私のことだからビーナスラインのつもりで別の山道を通ってきた可能性も否めない。
そしてついにニケ神の像を見ることができた。
綺麗な人(神)だと思った。
周囲を回っていろいろな角度から見てみる。綺麗だと思った。(私は感想の語彙が全然ないです)
展示してくださった皆様、ありがとうございます。
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頭部と両腕がないからか、ダゴン神の像のことを思い出した。
以前書いた小説で、主人公の少年とダゴン神が戦う場面があるのですが、その際ダゴン神の両腕と頭部が戻ったばかりで、接合面が完全ではない。ということを書き足そうと考えたのですが、いまさらいいかと直していませんでした。(今も直していません)
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2011.夏
私は就職活動の面接で東京に来ていた。
ゲーム会社の脚本家の募集に応募してみたら書類選考に通った。というより通してくれた、という印象が私にはあった。私自身あまり自信がなかったからだ。
履歴書などの他に、A4用紙10枚以内で会社の代表作、その次回作のシナリオを書かなければならなかった。その時書いたのが、ゴーレムとピグマリオンのシナリオだった。(応募時とはタイトルが違います)どうしても内容的に、洪水や海が関係してくるということもあって、不謹慎と取られるかもなと不安だった。
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面接のとき、学生は私一人だった。
これは、私が最初設定された面接日に行けなかったからだと思う。当日に高速バスで東京に行くつもりだったのだけれど、台風で運休になって、たしか電車も運休かもしくは間に合わなくなったのだと思う。そういうわけで面接日を別に設けて頂いた。
こういう所が私の駄目なところだと思う。本当に真剣だったら、こういう事態も考慮して前泊しておくべきだったのだ。他の応募者の方はみんなそうしていたのだと思う。
そういうわけで、あまり心証はよくないだろうなと、思っていた。面接というのは緊張するものだけれど、今回はそういうのもあって余計に怖かった。
面接は午後からだったけれど、朝一番のバスに乗って、東京で時間を潰していた。皇居や平将門公の首塚に行ってみたりしていた。脚本家の面接というのが、なにを聞かれるものなのか想像できなかった。(こういうところがもう、という感じですが)
なにか聞かれたときのために、被造物の造物主に対する反逆がどうこう、ということを考えて言おうと思っていたのだけれど、掘り下げられていなくて中身はなかった。言う機会はなかった、これはこれでよかった。
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面接は駄目だった。
失言をしてしまったというのもあったけれど、なにより誰がどう見ても私は有能な人間には見えなかったこということが、主たる原因だったと思う。私が面接官でも1次面接を通さないと思う。
どんな本が好きかとか、どんなことに興味があるか、いままで遊んだゲームの改善してほしい所はあるか、どれくらい本を読むのかを聞かれた。(私はそこまで本を読まなかった。よくそれで、という感じですよね)他には即興でお題のシナリオを考えたりというのもあった。(もちろん駄目でした)
私はなんでそんなことを聞こうと思ったのか、(テンパっていたからですが)自分の書いたシナリオのいいところを聞いてしまった。厚かましいですよね。
面接官の方は、読みやすかったのと、その代表作のゲームらしい雰囲気があったことを褒めてくださった。私はとても嬉しかった。プロの方に褒めてもらえたというのも嬉しかったけれど、そもそも感想をもらったこと自体初めてだったので嬉しかった。
あとになって、内容を褒められていないということに気づいた。
その方は面接が終わった後、外まで見送りしてくださって、それも嬉しかった。けれど、それはお客様対応というやつなのかもしれないとも思った。
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当然、1次面接落ちだった。けれど、いい経験ができたと思った。
他に1つだけ内定を頂いているところがあったので、(脚本とは全く関係のないところです)そこでお世話になることにして、就職活動を終わりにした。私は就職活動が嫌だった。(勝手ですが、皆さんは無理のない範囲で頑張ってください)
そうすると何もすることがなくなった。
面接官の方に他に聞かれたことがあった。
それが、小説は書いていないのか、ということだった。私は小説を書いてはいたけれど、どれも形にならなかったので、その通りに言った。あとで思ったけれど、脚本家になりたい人間が小説も書いていないというのは、どうなんだろうか。やはり書いていたらよかったのかなと思って、応募したプロットを基に小説を書いてみることにした。その時はなんとか完結させることができた。
これは初めから、最後までプロットが完成していて、そこに肉付けする形で進めたから、というのが大きいと思う。
そしてそれをインターネットに上げることにした。(これは小説家になろう様ではなく別のサイト様です)こんなことを言うのは恥ずかしいけれど、面接官の方に褒めてもらいたかったのだと思う。結果はあまり読まれなかったし感想もつかなかった。
でもまあ0でないなら十分ですよね。
そして2020年にその投稿サイト様が閉鎖されるということになって、なくなるのは悲しいなと思い書き直したもの(見直すとさすがにマズいと思う点が多々あった)がゴーレムとピグマリオンです。今更ギルガメシュ叙事詩のはなしを書いてもなあ、とは思ったのですが。まあ2011年から、読まれはしなかったけれど、存在はしていたのでいいかなと思いました。
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2012~
それから小説を少し書いていたのですが、応募しても1次選考も通らないことがほとんどで(というか1度しか1次選考に通ったことはないです)、ネットに上げてみて感想が書かれている!と思ってみてみたら、ボロクソに書かれていたり(書き方は悪かったけれど的は射ていたと思います。なので感謝すべきだったと思うのですが、今もそうですが心が弱かった)して、当然の結論として、もう書かなくてもいいか、と思いました。時間はかかるし、私ではお金がもらえるわけでもないし。ただ、しばらくするといいつも、こんなことを思いました。
いやでも俺、面接官の方に褒めてもらったしなあ(読みやすさをね)。万人に受けるものはないだろうし、一人につまらないと言われただけでやめてしまうのはどうなんだ。
同じ一人の意見なら、私にとっては面接官の方の言葉の方が重かったのです。そもそもただのお世辞だったかもしれないのですが、まあそこはもう、分からないことだからいいんです。
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そして今に至るという感じです。
ずっとその会社のゲームは買い続けるつもりでした。(面接官の方は現役です)
ただ私が年を取ったせいか、現実がマズいことになって楽しむ余裕がなくなったせいか、最近は買っていなかったりします。もう私は終わったんだな、という感じがして悲しいといえば悲しいです。けれど、これはまあ道理だと思っていて、ゲームのターゲット層から外れてしまったというのが一番大きい要因だと思います。私自身、なにもない自分のような人間をターゲットにするよりも若い人や外国の方に楽しまれる作品を作ってくれた方が、なんというか正しいと思います。
面接官の方と話せてよかったです。
今文章を書いているのも面接官の方のおかげです。ありがとうございました。
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他にその方から頂いたアドバイスに、主人公に名前を付けた方がいいというものがありました。特にデフォルト名のないゲームだったのですが、たしかにシナリオを初めて人に見せるのならば主人公には名前が付けられていた方が、イメージがしやすいですよね。名前から受ける印象というのも大きいですものね。なるほど、と思いました。
(完)
下の方に使用しなかったプロットを書いておくので、興味のある方はよかったらどうぞ。
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使わなかったプロット(私の能力的にも書けなかったもの)
すべて小説の中の設定で、実際の叙事詩、神話とは関係ありません。
・最後の戦いが終わり、ナカト(主人公)と遺跡の人々だけが残った分岐。
・ナカト、居心地の悪さを感じながら暮らす。遺跡の人たちが生き残る結果となっていたことは嬉しいが、そこに自分は存在すべきではないと常々考えていた。
・深夜、ナカトが一人でいるところに、見たことはないが見覚えのある人物がやってくる。
遥かなるウトナピシュティムが、かつてアルル神が戦士エンキドゥを作ったことを真似て、自己の意志を持つ人形を作ろうと試みたことがあった。しかし、ゼロから意識を作ることはできなかった。試作はしたものの、特に自意識を持つ存在が必要ではなかったため、そのまま保管されていた。(人形の外観はナカトが夢で見ていた戦士エンキドゥに酷似している)
大勢の人々の思念か、遺跡の人々が導くを求めていたためか、それとも別の何かが理由なのか、人形は起動する。そして、人形は「ナカトは存在するべきではない」という判断を下す。
交戦となり、ナカトは人形を破壊してしまう。
・その行為に自分の本質を見たように思い、置き手紙を残し遺跡を去ることに決める。
舟を作り、破壊した人形だけを乗せて出ていく。
・辿り着いた島で、人形の墓を作る。
ナカト、その存在に名前がなかったことに気づくが、名付けることはしなかった。その資格もないと考えたからだ。ナカト、自死を考えるが、やめる。
・ナカト、それからは誰もいない島で、毎日墓に参り、静かにのんびりと暮らす。
毎晩、焚き火をしているとマーラ神(ナカトと鏡写しの姿)が現われる。マーラ神は煩悩を持った人間がいないと存在できないので(小説の中での設定です)、いまさら敵対する理由もなかった。ナカトもマーラ神のことが嫌いというわけでもなく、神の前では自分を偽らずにいられるので、話すことを楽しみにしているところがある。
(会話)
「あなたは僕が死んだら、消えてしまいますか」
「ほかに居ないんじゃ……まあそうなるだろうな」
「消えたくない、ですか」
「俺は、あのとき止めなかっただろ」
「……」
「お前に心配されるほど……つーか、お前の心配しろよ」
「……」
「ずっとここで暮らすつもりか」
「はい、一人でいるとすごく気が楽なんです」
「ふーん。……そうかい」
/
「遺跡の連中は、煩悩のない人間を集めたってはなしだが、……これから生じる可能性もあるかもしれないしな」
「それはないと思いますけど」
「どうかな……」
「逆に、悪い人間が……いい人間になることはあるんでしょうか」
「俺に聞くなよ」
――数年後――
ある日、島に一艘の船が辿り着く。
そこにダニエルとアレクサンドラの姿を見つけて、ナカト、理由もわからないまま涙が止まらなくなる。
その様子を木の枝に腰かけて眺めているマーラ神。ナカトと同じ顔でヤレヤレといったふうに微笑む。
(プロット終わり)
登場してくださった神々に感謝します。ありがとうございます。
読んでくださってありがとうございました。




