1、蛍光灯について
事実を基にした創作です。
1、蛍光灯について
201X.08
アパートの蛍光灯が点かなくなった。
1KのK(一応キッチンの部分なのだけれど、玄関から居間に至るまでの廊下、その左右にキッチンとユニットバスがあるという感じの所)の部分の照明で点かなくなってもさほど困ることはなかった。流し台、レンジフードファン、それに土間に部分照明があったからだ。
それはそれとして蛍光管か点灯管が古くなったのだろうと思い、自分で交換してみることにした。
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①蛍光管の交換 → 効果なし
②点灯管の交換 → 効果なし
となると、蛍光灯のなにか基部の部分(安定器とか?)の故障だろうか。そうだとしたら私の手に負えない、と諦めたのだけれど今から思えば早計だったかもしれない。
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そこまで困らないとは言っても、壊れたままにしておくのはなんだか落ち着かないので、アパートの管理会社に連絡して修理を依頼した。
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202X.03
どうして急に時間が飛んだ(Ⅹとして伏せているけれど10年弱飛んでいる)のかというと、連絡はしたものの誰も修理に来てくれなかったからだ。そのうち来るだろう、と思っていたのだけれどいつまで経っても来てくれなかった。夏だから電気屋さんも忙しいのかもしれないと思っているうちに、催促をするのも面倒になってしまった。実際そこまで困らないわけだし。
けれどこの時、気まぐれでまた連絡してみた。管理会社の方は初めて聞くような態度だった。10年ちかく経っていたから、そういうものなのかな。なんとなく今回も業者が来ることはないんじゃないか、とあまり期待していなかった。けれど予想に反して1週間後には業者の方が来てくれた。
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蛍光管と点灯管を交換してみたが直らなかったので、基部の方の故障なのではないか(所詮、素人意見なのだけれど)ということを一応伝えた。
業者の方は最初から本体ごと交換するつもりだったらしく、手際よく元ついていた蛍光灯を取り外しているようだった。私はプロの作業をものすごく見たかったのだけれど、ジロジロ見られているとやりにくいだろうと思い奥の部屋で時間をつぶしていた。
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暫くして、蛍光灯をまるごと取り替えたけれど、直らなかったと伝えられた。
では、この故障の原因は何なのだろうか。
・蛍光管 → ちがう
・点灯管 → ちがう
・基部の部分 → ちがう
なんだと思いますか。私はわかりませんでした。
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結論から言うと、スイッチ(おそらく接点)が駄目になっていた。(基部も、つまり両方壊れていた可能性も考えられるけれど)
私にはスイッチを疑うという発想が全くなかったので恥ずかしくなった。やはりプロをすごいですね。
こういう時、先入観を持って行動するのが一番駄目なんだろうな、と私は反省した。目立つものしか見えていなかった。
スイッチの手持ちがないということで業者の方は取りに戻られた。私は申し訳なくなった。そもそも蛍光灯本体を交換する必要があったのだろうか。余計な仕事をさせてしまったのではないか。
こういう時ってどうなんだろうか。余計な手間をかけさせてしまったし、コーヒーでも渡した方がいいんだろうか。だが見知らぬオッサンから飲み物を渡されるのは結構怖いのではないだろうか。そもそもコーヒーが嫌いかもしれない。
迷ったけれど私は最寄りのコンビニまで走った。
(うおお、間に合えー) ※ 危ないので走るのは止めましょう。
普通に間に合って、渡すことができた。飲んでもらえたかは分からないけれど、もう渡せたのでそれでいい。
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ある日の風呂上り、吸水マットの上で足の水を吸い込ませながら、交換された蛍光灯をぼうっと見上げていた。
これはあれみたいだな、と思った。
もともとついていた蛍光灯は、長方形(逆富士型と呼ばれるそうです。知らなかった)で二本、直管の蛍光管がついているタイプだったのだけれど、新しくついた蛍光灯は形状が違った。
そもそもこれは蛍光灯なんだろうか。つぶれた球形のカバーを外すと、かなりの数のLEDが光っているのがわかる。LEDの時点で蛍光灯ではないような……気がする。けれどいまいち断言できないことをわかったように言うのはやめておこうと思う。
元の蛍光灯の土台の部分が、長方形に少し凹んでいて、丸いライトからはみ出て見えていて、図記号の蛍光灯にそっくりだった。
あの記号ってそういうことだったのか。
いや、そんなわけないか。(そんなわけないです)
完
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。