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第2話 麻呂!! サッカーしようぜ!!

 漆黒に染まった白川は、さながら地上の天の川、星々を映し煌びやかに輝く。

 晩春に見る空としては異例なほど、澄み切っている。平安神宮の緑を暗がりに見つけられるほど。

 絹が夜風に擦れる音は、風流である。滑るような歩行の足さばきもまた、風流。権上中田麻呂こと麻呂は、令和の街道にあっても平安貴族だった。

 目立たないということが、不可能。バカ殿に類似したスタイルの男が、地中海を連想させる男を従えて歩いているのだ。日本で最も着物と外国人を見慣れている京都市の人々でさえ、擦れ違いざまには二度見を禁じ得ない。

 「稚拙かな、比ぶべくなく、都の美、しかし心は、懐かしきかな」

 「お見事な和歌でございまする」ロナルドは両手をもんだ。「して、その心は?」

 「京の都を思わせるも美しさは足元にも及ばない街、そう評したのでおじゃるよ」

 「ここが、京の都でございますが。京都府京都市、正に都でございますが」

 「おーじゃおじゃおじゃ」おーほっほっ、の切り口で、麻呂は笑った。「ロナルドよ、冗談は服装だけにするでおじゃる。京の都でおじゃるぞ? 平安京でおじゃるぞ? この街の百億倍は美しいでおじゃるよ」

 日本に移り住んで三年以上になれば、愛着も湧こうというもの。ロナルドにとって、京都市は既にホームタウンであった。

 「俺はマドリードにもロンドンにも住んだことがありますがね」こめかみにデカい血管が浮かび上がっている。「その二大都市と比肩するほどに京都市は美しい街ですよ」

 「庶民のそちに雅は分からぬでおじゃるか」やれやれ、と麻呂は首を振った。「喜ぶがよいでおじゃる、ロナルド。今宵の月は美しく、麻呂は気分が良い。雅の何たるかを少しだけ教授してやるでおじゃる。この街の景観を損なっている無数の稚拙、例えばあの石造りの建物群、あれをそちはどう評価するでおじゃる?」

 「あれは石造りではなく鉄筋コンクリートです」ロナルドは片眉を上げた。「評価も何も、普通のマンションやら施設やらじゃないですか。普通、としか評価のしようがありませんよ」

 「アイアンマッスルだかコンフォートだか知らねぇでおじゃる。石造りは石造りでおじゃる」近代の知識を、麻呂は受け入れなかった。「あれを普通と評価している時点で雅の欠片も分かっていないでおじゃる。いいでおじゃるか、この街を真に美しくするためには、石造りの建物を全て木造に建て替える必要があるのでおじゃる。当然、建築様式はキヨマロ建築でおじゃる。それこそが雅、すなわちトレンドでおじゃる」

 「はぁ、そうですか」ロナルドは気のない相槌を打った。「そうですか、はぁ」

 「次は、あの松明でおじゃる。あれをそちはどう評価するでおじゃる?」

 「あれは松明ではなく電灯です。評価も何も、普通の街灯じゃないですか。普通、としか評価のしようがありませんよ」

 「デンツウなんか知らねぇでおじゃる。松明は松明でおじゃる。あれを普通と評価している時点で雅の欠片も分かっていないでおじゃる。いいでおじゃるか、この街を真に美しくするためには、松明を全て取っ払う必要があるのでおじゃる。夜は眠るもの。不要なエネルギーを消費しない節制こそが雅、すなわちトレンドでおじゃる」

 「はぁ、そうですか。そうですか、はぁ」

 「次は、この石畳でおじゃる。これをそちはどう評価するでおじゃる?」

 「これは石畳ではなくアスファルト舗装です。評価も何も、普通の道路じゃないですか。普通、としか評価のしようがありませんよ」

 「アスカだかチャゲだか知らねぇでおじゃる。石畳は石畳でおじゃる。これを普通と評価している時点で雅の欠片も分かっていないでおじゃる。いいでおじゃるか、この街を真に美しくするためには、石畳を全て引っ剥がす必要があるのでおじゃる。そうして、替わりに玉砂利を敷くのでおじゃる。あるいは白砂を。それこそが雅、すなわちトレンドでおじゃる」

 こいつ、ラリっているのか? とロナルドは思った。いちいち言うことが正気じゃねぇ。ボケをかましている? いや、全てマジで言っていやがる。それくらい、分かるさ。ヒューマン同士、それくらい分かるさ。こいつ、ラリっている。

 既に、腹は決まっていた。麻呂をラ・リーガに送り込みサッカーを終わらせる、そう腹は決まっていた。心中の気分だ。麻呂が死んだら俺も死ぬ。

 茨の道なれど、それしか道がないのであれば、進むしかない。

 『ラリっていようが構うものか! サッカーが強ければ全て許容される、それがサッカーの世界じゃないか!』

 白川が鴨川に混ざった。せせらぎが強くなった。

 夜をこめて、とは和歌やベルばらに愛用されるパワーワードだ。駅周辺、夜のとばりに属するのは、夜をこめる刹那の人々。これは全国共通である。

 喧騒を抜ければ、静寂。黒猫の黄色い瞳が横切って、住宅の生け垣に消えた。

 「輿を呼ぶでおじゃる。麻呂はもう足が棒でおじゃる」

 「直に我が家でございます。もう少々ご辛抱ください」

 その言葉通り、直にロナルドの住まいが視野に入った。

 「あのマンションの八階が私の住まいでございます」

 「ロナルド! 貴様、生意気でおじゃるぞ!」麻呂は激怒した。「庶民の住まいは竪穴式住居と決まっておるでおじゃろうが! それを、あんな七重塔のまがい物のような場所に住みおってからに! 庶民は庶民らしく地に這いつくばっておれでおじゃる!」

 「おめぇさん・・・・・・」過ぎた暴論に、怒りを通り越して、唯々呆れる。「無茶言うねぃ」

 いざ、新景観政策のギリギリを攻めるマンションへ。入り口の自動ドアは、すんなり通過した。お次は、エレベーターだ。

 「こいつで八階まで行きます」

 「ロナルド、謀るなでおじゃる。こんな風呂殿みたいな場所に突っ立ったまま階を上れるわけがないでおじゃろう」

 煩いのを無視して、八階のボタンを押す。

 「おうふ!?」エレベータが上昇して、麻呂は喘いだ。「何でおじゃるか、これは!? 下腹部からナニカがこみ上げてくるでおじゃる! こんなの、初めて!」

 「エレベーターですからね」今日初めて、ロナルドは愉快な声を出した。「正常な反応です」

 さすがはお高いマンション、エレベーターも高速だ。あっという間に、八階に到着。

 ホテル顔負けの内廊下を通って、ロナルドの部屋にダイレクトエントリー。

 その部屋には、確かな女っ気があった。インテリアの全てに愛嬌があるのだ。中年男性が一人で暮らす場所など世紀末の趣であるのが常。ロナルドが女と同居しているのは疑いようのない事実であった。

 小物一つとってみても、インスタ的。照明器具、加湿器、アロマ器具、エトセトラ、インスタ的。死語を用いるのであれば、シャレオツである。見栄えを追求した空間は、万人受けを狙い、狙い通りにいった、住まいのテンプレート。しかし、そんな現代の美的センスに異を唱える者がいる。そう、平安貴族である。

 「醜悪極まりない部屋でおじゃる」肥溜めのど真ん中に立っているかのように、麻呂は顔をしかめた。「過剰に配置された物、物、物。その精神性からして下品でおじゃる。更には、それらの物がどれもこれも自己主張をしているわけでおじゃるから、空間が喧しく感じられるのでおじゃる。これじゃあ心は休まらないでおじゃるよ。正に平安の対極」

 「妻のセンスです」ロナルドの声は冷めていた。「若い女のセンスです。俺たちのようなオヤジには到底、理解できない」

 「出家させろでおじゃる。こんな俗物的なセンスの女房は出家させろでおじゃる」

 「妻の稼ぎで生きているのです。出家なんてさせられない」

 薄手のカーテン、その隙間から色濃い星空が覗いた。

 麻呂は鼻を鳴らし、リビングのソファであぐらをかいた。

 「ロナルド、紙と筆をよこすでおじゃる。空が近い。良い歌が浮かんできそうでおじゃる」

 「ローテーブルの上にメモ帳とボールペンがあるでしょう。そいつを使ってください」

 そう答えながら、ロナルドはキッチンに立った。ハイカラな調味料、ハイカラな魚介類、ハイカラな野菜類、パスタを用意する。

 「墨はどこでおじゃる?」

 「墨なんかいりませんよ。上部のノックボタンを押せばいいだけです」

 パエリアパンにオリーブオイルを引いて、後は具材とパスタを焼いて煮る。適当なタイミングで、調味料をパッパするのも忘れない。

 「うほ! 先っちょの黒光りしているものが出たでおじゃる・・・・・・ほう! これはなかなか便利な用具でおじゃるな。筆のような詫び錆びは望むべくもないが、書き留める程度ならば十分でおじゃる」

 アクセントにパセリを添えて、はい、フィデウアの出来上がり。

 「スペイン料理です」フィデウアをローテーブルに置いて、言った。「どうぞ、麻呂様」

 刺激的な香りであった。サフランだ。サフランが利いている。

 カルチャーショックは、においから始まる。麻呂は、奈良の大仏みたいな顔をした。

 「食えと申すでおじゃるか、このエキゾチックを」

 「自分で言うのも何ですが、死ぬほど美味い」クッションに尻を置き、言う。「騙されたと思って、食うてみぃ」

 鼻孔を犯されていた。唾液が過剰に分泌されて、よだれになる。欲していた。かつ丼に対するメンタルセットでがっつきたい、欲求。しかし、そこは平安貴族だ。プライドがある。薄味を嗜んできた自負がある。においからして調味料まみれの料理を易々と口にしたりしない。

 「箸すら見当たらないでおじゃる」難癖をつけたいがためだけに、麻呂は言った。「手づかみで食えと? そんな下品なことは出来ないでおじゃる」

 「フォークがあるでしょう」

 「フォーク? お化けでおじゃるか?」

 「千賀投手じゃねぇ。食器です」

 麻呂は、生まれて初めてフォークを握った。

 「この先っぽを頭部にぶっ刺せばよいのでおじゃるか?」

 「ダンプさんじゃねぇ。食器です」

 時間稼ぎは、空しく終わった。

 ロナルドが、エビを咀嚼した。食欲をそそる音色が部屋に響く。

 耳まで犯されて、麻呂は到頭、がっついた。

 はくたくや索餅は食したことがあった。しかしそれらは麺の原型でしかなく、パスタなんていう麺の完成形は、文字通り初体験。

 繊細な生糸を以てして口内を愛撫されるかのような、食感。思い出す。初体験の相手、源典侍を思い出す。延歴19年、十二歳の夏は、三十歳以上も年上の彼女に愛でられた夏だった。熟女ゆえの、技巧。骨抜きになった夏だった。あの快感を思い出す。

 うどんでもあるまいに、喉越しまでなめらか。そんなところまで源典侍そっくり。

 味覚が、ブーストした。感慨によって。

 「泣くほど美味いのかい?」

 「泣いてなんかいないでおじゃる。調味料が目に染みただけでおじゃる」

 エビも、口にする。殻ごと食らう、合理的な栄養チャージ。貝類も、口にする。さすがにこいつの殻は無理だ。

 海の幸、噛めば噛むほど、口内が磯、磯も集まりゃ、シンフォニーかな・・・・・・そんな和歌が成立するほどに広がった磯は、麻呂の視覚にまで作用した。

 「優美な水面が見えるでおじゃる」幻であった。「琵琶湖でおじゃるか?」

 「そいつはきっと、地中海です。スペインを感じてもらえてよかった。中国産の魚介類ですがね」

 食が、進んだ。進んで、進んで、パセリまで食べて、完璧な完食。

 「認めねばならないでおじゃる」麻呂は、恭しく合掌した。「食事だけは、平安京を上回っているでおじゃる」

 「そいつは、どうも」

 スマホを見る。もう20時だった。

 「葵の奴、遅いな。パスタが不味くなっちまう・・・・・・麻呂様。まだ、食べます?」

 「苦しゅうない。食ってやるでおじゃる」

 そうして、すんなりと二人前を平らげた麻呂であった。

 「大食漢ですね。華奢なお体をなさっているのに」

 「FC藤原との試合があったでおじゃるからな。あの激戦の後ともなれば腹も減ろうというものでおじゃる」そう言って、遠い目をする。「800回に迫ろうかという空前絶後のラリー合戦、あの試合の決着は、どうなったのでおじゃろうか・・・・・・麻呂は何故、このような蛮族の地におるのでおじゃろうか・・・・・・平安京にはいつ帰れるでおじゃろうか・・・・・・」

 不安は、伝染する。ロナルドもまた、一抹の不安を抱いた。

 「麻呂様」不安を解消すべく、発声する。「サッカーは、ご存じでございますよね?」

 「ロナルドよ。麻呂は蹴鞠のプロプレイヤーでおじゃるぞ。サッカーは蹴鞠のプラクティスの一つ。やり尽くしているおじゃるよ」

 訳が分からなかった。訳が分からないがゆえに、もう一歩踏み込んだ質問を投げてみる。

 「オフサイドについて、どう思われますか?」

 「弱者のためのルールでおじゃる。強者である麻呂にとっては邪魔なだけのルールでおじゃる」

 『完璧なオフサイドの解釈! 大丈夫! こいつはサッカーを分かっている!』ロナルドはガッツポーズを決めた。『異常なまでに浮世離れしているから、サッカーを知らないんじゃないかと不安になったが、杞憂だった! サッカーさえ分かっているならこっちのものだ! こいつが何処の誰だろうが関係ないぜ!』

 ラリっていようが構うものか! そう断じた価値観にブレはなかった。サッカー至上主義ゆえの、狂気。ロナルドは正しく、狂っていた。

 「腹も満ちたし、眠るでおじゃるか」麻呂が大きなあくびをした。「ロナルドよ。帳台はどこでおじゃる?」

 「まだ20時を過ぎたばかりですぜ?」

 「日の入りと共に眠り日の出とともに目覚める。それが人間というものでおじゃる。今宵は夜更かしが過ぎたくらいでおじゃるよ」

 「申し訳ありませんが、チョウダイ、とやらは家にはありません。掛け布団を持って参りますので、今日のところはソファでお休みください」

 そうロナルドが言い終わったのと同時に、玄関で物音がした。

 「ただいま、ロナルド」若い女の声だった。「あれ? 何、この履物? 鴨沓?」

 「妻が帰ってきたようです。紹介いたします。お休みになられるのは、その後で」

 リビングに入ってきたロナルドの妻は、令和的なアジアンビューティーであった。白人に寄せた、あのアジアンビューティーだ。SNSに無数に生息する、あのアジアンビューティーだ。大きな目、すっきりと通った鼻筋、遊びの余地がある唇、ほっそりしたフェイスライン。縄文人とも渡来人とも似ていない、しかし遺伝子は縄文と渡来をブレンドしたのみというアンビリーバブル。驚くべきことに、これで無加工だ。メスを入れていない、化粧もしていない、天然。それで白人的? 冗談だろう? いや、冗談ではない。これぞアジアの神秘。

 「え!? 誰!?」麻呂とのファーストコンタクトに、驚愕する。「バカ殿様!? おじゃる丸!? どっちのコスプレ!?」

 「葵の上!?」麻呂もまた、ロナルドの妻とのファーストコンタクトで驚愕していた。「なぜ葵の上がこのような蛮族の地に!?」

 「妻と面識があるのですか?」

 ロナルドの問いに、麻呂は、葵の上、とつぶやくばかりだった。

 「葵」ロナルドは妻に目を向けた。「君、この方とお会いしたことはある?」

 「ないよ。コスプレイヤーの知り合いとかいないし」

 葵は、ジャージ姿であった。そのマニアックな趣に目をとめて、麻呂は安堵と失望の入り混じった息を吐いた。

 『体のラインが丸見えでおじゃる。こんな変態同然の格好を葵の上がするはずがないでおじゃる』

 そうして浮かべた笑みは自傷的、すなわちニヒルであった。

 「失礼をば、麗しいレディ」麻呂は葵の手を取った。「想い人にそっくりだったので、取り乱してしまったでおじゃる。麻呂は左ウイング大臣権上中田英麻呂が嫡男、権上中田麻呂でおじゃる。以後、お見知りおきを」

 躊躇なく、取った手の甲に接吻をする。平安貴族を逸脱した、欧米ムーブであった。

 「わぉ! 情熱的ね! スペインを思い出しちゃう!」子犬に舐められたかのように、葵ははしゃいだ。「ロナルド、この方、古いお知り合い?」

 「今日、知り合ったばかりさ」抜いた白い腕毛を、ロナルドは吹いて飛ばした。「ご紹介します、麻呂様。妻の東郷葵です」

 「葵です。金閣寺高校で日本史を教えています。権上さん? 中田さん? それとも、麻呂様って呼ぶのが正解ですか?」

 「麻呂、と呼んでくれでおじゃる」

 「分かりました、麻呂」

 その声に、麻呂は嬌声で応じた。膝から崩れ落ちる。頬が、熱を持っていた。

 「大丈夫ですか!?」

 「大丈夫でおじゃる。君が声まで想い人にそっくりだから、彼女に呼ばれたような気がして、失神しそうになっただけでおじゃる」

 「本当に好きなんですね、その人のことが」

 「世界一ピュアなラブでおじゃる」高い純度が、煌めきとなって声に表れていた。「幼いころからずっと、好っきゃねん」

 「素敵・・・・・・」

 得てして救いのない世界である。だからこそ、人は純愛を賛美するのだ。パートナーの有無など関係ない。むしろパートナーがいるからこそ、純愛がファンタジーであることを実感してしまう。

 結婚して、四年。葵も人並みに純愛に飢えていた。その飢えを満たしてくれた麻呂は、イケメン俳優よりも尊い存在だ。

 人見知りをしない、そんな両者の性質も相まって、二人はもう仲良しだった。

 「掛け布団を持って参りました」いつの間にかリビングを出ていたロナルドが、戻ってきて早々、言った。「ごゆっくりお休みください、麻呂」

 「無粋でおじゃろう、ロナルド!」麻呂は激怒した。「こんなにも素敵な女性がそばに居るというのに、寝ておられるかい! それと、麻呂を呼び捨てにしてよいのは位階が三位以上の高貴な者と美女だけでおじゃるぞ! さらっと馴れ馴れしくしてるんじゃないよ、この庶民のオヤジが!」

 「分かりました・・・・・・」ぶん殴ってやりたい感情を抑えつつ、言う。「麻呂様・・・・・・」

 「さあ、葵殿」自分の隣に座るよう促しながら、言う。「楽にして、存分にくつろいでくれでおじゃる」

 「私の家なんだけど・・・・・・」葵は頬をかいた。「ありがとう、と言っておく」

 四季が狂い始めている日本である。いかに新緑が目に涼しくとも、夏同然の気候に汗ばむのは必定。そこに代謝の良し悪しは無関係だ。

 至近距離、ジャージから醸し出されるスパイシーな香りは、嗅覚という原始的な機能を刺激して、獣の部分を揺さぶった。

 「梅の香が合いそうでおじゃるな」理知で野生を抑え込もうとする、平安貴族の紳士ムーブであった。「今度、麻呂お手製の練香をプレゼントするでおじゃるよ」

 「私、汗臭かった!?」葵は顔を真っ赤にした。「ごめんなさい! サッカー部の練習が終わって、そのまま着替えもしないで帰宅したから!」

 「臭くない。香ばしいでおじゃる」紳士ムーブであった。「唯、レディの嗜みとして、香を心得ておく必要はあるでおじゃるよ、葵殿」

 「麻呂、すごい香の匂いがするもんね」鼻をすんすんする。「これもお手製?」

 「荷葉ベースの麻呂スペシャルブレンドでおじゃる。お気に召したのであれば、こいつも今度プレゼントするでおじゃるよ」

 陸の香に、海の香が混じった。ロナルドが調理を始めたのだ。またもや、フィデウアである。

 「いいよ、ロナルド!」葵は立ち上がった。「適当にカップラーメンでも食べるから!」

 「君の金で生かしてもらっているんだ。飯くらい用意させてくれ」

 寂しい言葉に、小さな頭は力なく垂れた。

 麻呂の瞳が、憂いた。

 「相思はぬ人を思ふは大寺の餓鬼の後方に額づくがごと」

 「笠郎女」葵は、笑った。「麻呂、ストレート過ぎ」

 「君は、どこまでも想い人にそっくりでおじゃる」

 ロマンスが欲しいって? そうだ京都、行こう。ここに、ロマンスがある。ただし、イケメンに限る。

 麻呂がどれだけムードを作ろうとも、葵が浮かべる笑みは、愛玩動物に向けるそれでしかなかった。

 出来立てのフィデウアを、ロナルドがローテーブルに置いた。葵は、女の顔になった。

 『本当に、どこまでもそっくりでおじゃる』

 ロナルドが窓を開けた。入り込んできた風で照明が遊んだ。葵のえくぼは深まった。

 パスタを、時計回りで巻き付ける。そのフォークさばきは恋人の髪を玩ぶかのようであった。

 吐息で、熱を冷ます。垂れた前髪を耳にかけ、目をつぶる。すすらない。パスタは、すすらない。ラーメンの文化圏に生息するヒト科が陥りがちな罠、そんなものには引っ掛からない。米を口に運ぶ要領で、麺を口に運ぶ。後は、咀嚼する。音もなく咀嚼する。一口サイズずつ口に運んでいるのだ。音を殺すことなど、容易。

 素人でも分かるほど熟練した食事作法に、麻呂の表情は曇った。

 「葵殿。そなた、生まれも育ちも平安京ではないのでおじゃるな」

 「うん。東京生まれのスペイン育ち。麻呂は?」

 「長岡京生まれの平安京育ちでおじゃる」

 「キャラの話じゃなくて」

 「キャラもくそもないでおじゃる。麻呂はれっきとした平安貴族のファーストジェネレーションでおじゃる」

 「なり切るねぇ」葵はくすくすと笑った。「おじゃる言葉も使っているし、おじゃる丸のコスプレだよね」

 「おじゃる丸? そんなイカした名前の御方は存じ上げておらんでおじゃる」

 「そうか。権上中田麻呂っていうキャラのコスプレだよね」そう言って、スマホを操作する。「あれ、検索で引っ掛からないや。オリジナルキャラクターなのかな? まあ、いいや」

 大らかであった。故に、ほのぼのする。

 日常系みたいな時間が、流れた。

 「ごちそうさまでした」フィデウアを完食して、葵は言った。「今日も美味しかったよ、ロナルド。ありがとう」

 ベランダで京都タワーを見詰めていたロナルドは、白光の残像に目を瞬いて、それから、葵に笑みを向けた。

 「聞いてほしいことがあるんだ、葵」そう言って、葵の真ん前まで行き、正座する。「俺、働くよ」

 「本当に!?」飛び上がるように、立ち上がる。「気持ちのほうは、もう大丈夫なの!?」

 「心配を掛けたね。もう大丈夫だ。立ち直ったよ」

 「良かった・・・・・・」腰が抜けたかのように尻を落とし、ソファに全体重を預けて、葵は涙を浮かべた。「ロナルド、良かった・・・・・・」

 「君が時間をくれたおかげだよ」

 「それで、どういうお仕事をするの?」前のめりが過ぎて、ローテーブルに膝をぶつける。「警備? 運送? 介護?」

 「代理人さ」淀みなく、ロナルドは言った。「サッカーの代理人さ」

 イマジンしてほしい。四十代の無職のパートナーが突然マンガ家になると言い出したらどういう気持ちになるか、イマジンしてほしい・・・・・・はい! その気持ち! その気持ちです! 葵が今、味わっているのは、そういう絶望感です!

 嫌な汗が滲み出て、ジャージが湿った。

 「代理人になるなら、当然、FIFAのライセンスは取得済みなんだよね」藁にも縋る思いで、言う。「私の知らないところで勉強をしてたんだよね、ロナルド」

 「なんだよ、結局ライセンス制に戻ったのかよ。四年もサッカー関係のニュースを見ていなかったから、初めて知った」あっけらかんと、言った。「まあ、ライセンスはこれからどうにかするさ」

 得てして、行き当たりばったりは未来形で語られるものなのだ。全てが、これから、であるならば正当な否定の対象にはなりえない。この無敵とも言える特性によって、人類は、これから、に希望を抱き、そして、地獄を見てきたのである。

 余りにも湿るものだから、上着を脱いだ。肌着に、うっすらとブラジャーが透ける。麻呂を犬っころ扱いしているからといって、無防備が過ぎる。

 既に葵は、冷静さを失っていた。

 「サッカー以外にも、生き方はあるじゃん!」絶叫に似た声だった。「世の中には、色々な仕事があるじゃん!」

 「俺はサッカーで全てを失った」中年でありながらも、少年のような眼光を放つ。「サッカーで全てを取り戻す。それだけだ」

 ヒステリーとは無縁の人生を送ってきた。三歳からスペインで暮らし始め、生来の大らかさに拍車が掛かり、八歳の時にはもう、シエスタとオリーブオイルで感情をコントロールする術はマスターしていた。生粋のスペイン人を以てして、アオイはわてよりもスパニッシュやねん、と言わしめる大物。17歳、初めてのデートの時には、例によって例のごとく公衆トイレのペーパーが切れていて、彼氏にインスタのストーリーで、ティッシュ持ってたらトイレ入ってきて、と救助を要請した。それくらいの大物。この世のほぼ全てを許容できる、だからこそ、人生をなめ切った高校生を相手どる日常でさえノーストレス、いつだって寛容でいられた。そんな葵が、湧き上がる怒りに顔を歪めている。憎しみによる怒りではなく、悲しみによる怒り。愛が深いからこそ、怒りもまた強いのだった。

 ショートボブに整えた自身の艶やかな髪を、葵はかきむしった。

 「この麻呂様をラ・リーガに送り込むのが俺の仕事だ」ロナルドが、火に油を注いだ。「俺が、俺たちが、サッカーを終わらせる」

 きぃー! という声を、葵は生まれて初めて発音した。ローテーブル上にあるアロマ器具を乱暴につかむ。一万円以上したやつだ。それでも、構うものか、ぶん投げてやる。インフルエンサーがおすすめしていたのを適当に買っただけだ。思い入れも何もねぇ。

 サッカー畑の人間とは思えないほど、良い振りかぶりだった。上体を大きくひねる。トルネード投法だ。

 窓ガラスをかち割る算段でアロマ器具を放そうとした、刹那に、葵の目に映ったのは、俯せに身を伏したロナルドの姿だった。

 土下寝だと、認識できた。驚愕が、葵の体を硬直させる。アロマ器具が放たれることは、なかった。

 ロナルドのことは、夫のことは誰よりも分かっている。カンテラーノの頃から知っているのだ。覚えている。21年前、セグンダBグループ1の優勝がかかった試合、前半38分でピッチに立ったロナルドは、その二分後にレッドカードをもらったのだ。十八番の殺人スライディングを放ったわけではない。審判との口論の末にローキックを放ってレッドカードをもらったのだ。圧倒的なまでの落ち度である。しかし、ロナルドは決して頭を下げなかった。審判にも、チームメイトにも、コーチ陣にも、サポーターにも。そういう男なのだ、ロナルドは。プライドが高すぎる男。人に頭を下げるくらいならマンサナーレス川に身を投げるような男なのだ。それが、今、土下寝をしている。頭を下げる、その最上級である、土下寝だ。

 胸が、キュンとした。母性に似た、庇護欲。葵の怒りは、消え去った。

 「頼みがあるんだ、葵」

 ロナルドから頼み事をされるなんて、今まで一度もなかった。お酒を買うお金が欲しくたって、ずっと黙っている男なのだ。だから四年もの間、十日に一度くらいの頻度で、夫の財布に一万円札を二枚ずつ、忍ばせてきたのだ。

 胸が、キュンキュンした。母性に似た、独占欲。葵はもう、うっすらと笑みを浮かべていた。

 「君が監督を務める金閣寺高校サッカー部を、明日一日だけ、俺に貸してほしい」

 「貸すって、なぁに?」甘い声だった。「分からないわ、ロナルド」

 「金閣寺高校サッカー部は一軍と二軍に分かれているだろう。二軍のほうに麻呂様を加えて、紅白戦を行いたいんだ」

 「無茶よ・・・・・・」困惑のうちにも甘美を覚える。「駄目だったら、ロナルド。インターハイ予選が来週から始まるのよ。紅白戦なんかして怪我でもしたら目も当てられないわ」

 「見極めなければならない。麻呂様のサッカーを見極めなければならない」駆け引きなど皆無の、愚直であった。「ボールコントロールだけのプレイヤーか否か、見極めなければならない」

 「さっきから黙って聞いておれば、ロナルドよ」麻呂が口を挟んだ。「この麻呂にサッカーを、すなわちプラクティスをしろと言っておるのでおじゃるか?」

 「作用でございます」土下寝を止め、恭しく麻呂と向かい合う。「麻呂様にはサッカーをプレイして頂きたく存じます」

 「おーじゃおじゃおじゃ・・・・・・プラクティス!?」ヒップホップのアクセントで、麻呂は言った。「麻呂は今日、FC藤原との決勝戦に挑んだのでおじゃるよ。それなのに、貴様はプラクティスの話をするのかでおじゃる? 麻呂が命を懸けている試合の話ではなく、プラクティスの話? HAHAHA! プラクティス!? プラクティス、プラクティス、プラクティス。試合の話もせずにプラクティスの話って、それは人でなしのすることでおじゃるよ。蹴鞠の根幹にある試合の話は無しで、欲しがるのはプラクティスの話ばかり。過程ばかりを求めて結果をガン無視。これがどれだけイカれた事か分かるでおじゃるか? プラクティスが大事なのは分かっているでおじゃるよ。体格的に恵まれていない麻呂が、プラクティスの大事さを分からぬはずがないでおじゃろう。血反吐を吐いてきた。それなのに、この期に及んでプラクティスの話って。スタジアムで麻呂は何をしてた? 試合を見たことくらいあるでおじゃろう? いつだってラストゲームのつもりで全てを捧げる麻呂を見たでおじゃろう? でも今、麻呂たちはプラクティスの話をしているのでおじゃる。試合に問題があったって、プラクティスの話をしているのでおじゃる。麻呂のゲームが悪くなっていたとしても、それはプラクティスの話なのでおじゃるか? 実際の試合の話は無しで? ほんの僅かな間だけプラクティスを離れて、麻呂のゲームの質が落ちるのでおじゃるか? 源光はプラクティスしなくて、麻呂はプラクティスして、お互いダメージを受けるのでおじゃるか? 麻呂だけがダメージを受けてきた。血反吐を吐いてきた。麻呂はプラクティスをサボっていないでおじゃる。それなのに、この期に及んでプラクティスの話って。プラクティス、プラクティス、クソくらえでおじゃる」

 「そんな、アイバーソンみたいなこと言わんでください!」今度は麻呂に対して土下寝をする。「この通りです! サッカーをプレイしてくださいませ!」

 「麻呂を動かせるのは天皇だけでおじゃる。庶民の貴様がどれだけ懇願したところで何事も聞き入れぬでおじゃる。それが平安貴族というものでおじゃる」

 断固たる決意であった。平安貴族とはどうあるべきか、既に心が決まっている。武士道ならぬ、公家道。日本男児の頑固さ、そのルーツは平安時代にあったのだ。これでは梃子でも動かない。

 一方の、ロナルド。伊達にスペイン人をやっていない。無敵艦隊のDNAはしっかりと受け継いでいる。しかしそのDNAは、文字通りDNAレベルで、処女のクイーンに打ち砕かれていた。力による現状変更、そんな蛮行に及ぶメンタリティなど、ファシズムが台頭しない限り持ちようがない。故に、手詰まる。取り付く島もなければ、手詰まる。

 今更であるが、美しい土下寝であった。全身、淀みなくストレート。そんな美の極地に、ほころびが見え出す。震え出したのだ、全身が。

 俯せであるからこそ、ロナルドは人知れず、泣いた。

 褪めた紫色の露が煙って、儚く消える。アロマ器具の誤作動だった。

 徐に、葵がロナルドの真横に座した。そうして、そのまま前のめりに横たわる。

 「麻呂。私からもお願いします」夫も顔負けの美しい土下寝であった。「サッカーをしてください」

 「いいのか、葵?」土下寝のまま少し顔を動かして、妻を見る。「貸してくれるのか、サッカー部を?」

 「指導者失格ね」夫の目を真っすぐに見詰める。「だけど、私にとって一番大切なのは、ロナルドだから」

 ワイフっていいな・・・・・・そんな風に、ロナルドは初めて思えた。涙の量も純度も、増した。

 独り身にとって最も腹立たしいもの、それは、夫婦愛である。権上中田麻呂、22歳、未婚。平安貴族としてはレアな御一人様だ。必然、憤る。結婚式でもあるまいし、他人のラブなんて見たくねぇ。結婚式ですら耐え難い拷問だというのに。直刀があったら切り付けているところだぞ。

 怒りの余りに表情筋がパンプアップして、筆舌に尽くし難い相を形作る。サッカーなんか絶対にやってやらないでおじゃる! サッカーなんか絶対にやってやらないでおじゃる! そう腹に決めて、不貞寝を決め込もうとする。

 『その前に、視姦してやるでおじゃる』手に取った掛け布団を放り投げ、葵の背面を見下ろす。『ラブを見せつけてくるような性悪女は、目で犯してやるでおじゃる』

 汗で吸い付くような肌着は、奥にある肌色をはっきりと透かした・・・・・・染みも吹き出物も見当たらない、白桃のような肌。食べちまいたいでおじゃる。真上から見ても分かる背骨の優美なS字は、大殿筋の健全さを示している。食べちまいたいでおじゃる。華奢な割に、デカい肩甲骨。オランダ人女性の足みたいにセクシーだ。食べちまいたいでおじゃる。おや? うなじに見えるは、ほくろ・・・・・・このほくろは!

 『位置も形も大きさも、葵の上と全く同じ!』麻呂、驚愕。『見間違う訳がないでおじゃる! 親の顔より垣間見た、葵の上の後姿! うなじが露になるラッキースケベも幾度もあった! 見間違う訳がないでおじゃる!』

 惚れるな、惚れさせろ。人生を有利に生きたいのであれば。惚れたら、奴隷。自由は失われる。

 愛した女の面影が強まって、堅固だった決意が、ブレた。

 「お願いします、麻呂。サッカーをしてください」

 女の勘、そんなものはフィクションだ。魔女狩りのころからアップデートしていない、人類の誤った共通認識だ。麻呂のブレを見逃さずに発声できたのは、偏に、高校サッカーで四年以上も指揮を執った経験によるもの。ゾーンがズレたら間髪入れずズレを突く、そんな細胞レベルで染み付いているサッカーの鉄則は、そのまま人生に応用がきくのであった。

 「麻呂。お願い」

 駄目を押され、麻呂は天を仰いだ。

 「くやしいけど、麻呂は・・・日本人なんだよ・・・な」

 天岩戸が案外と簡単に開かれたのは、神話上の事実である。我らが天照大神でさえ、悲しいかな、結構ちょろいのだ。その精神性は、日本人に脈々と受け継がれている。ましてや、麻呂は平安貴族。令和の人間とは比較できないほど日本書紀に近しい存在だ。俺たちはちょろい!! それを自覚しているからこそ、許容できる。女で決心を曲げる、そんな自分を愛せる。

 フルマラソンを完走したかのような清々しい顔で、麻呂は膝を着き、葵の肩にそっと手を置いた。

 「頭を上げるでおじゃる、葵殿。サッカー、やってあげるから」

 「本当に!?」頭板状筋と僧帽筋を駆使して、葵は麻呂と目を合わせた。「ありがとう、麻呂!」

 華やかな笑みが、他の男のためにあるものだと分かるから、余計に心に染みる。愛とは、残酷だ。平安京で嫌というほど味わっていたというのに。

 名残を惜しむことさえ出来ず、触れていた手は侘しく離れた。

 「ロナルド! 酒を持って来いでおじゃる!」

 「お休みになられるのでは?」

 「飲まずにやっていられるかい!」

 物理的な人数は慰めにならない。孤独に震える声は、朧月のようだった。

 夜はまだ、始まったばかり・・・・・・。

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