表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

アネモネに捧げる小さな物語

深海ニ咲ク花

作者: 咲藤 ユキ

ずっと、孤独だった。


私は誰にも愛されなかった。愛されてはいけない存在だと思っていた。


貴方に、出逢うまでは。




母が殺されから隔離され蔑まれ、ただ月を眺める日々だった。


私はこの命が尽きるまで、ずっと此処に居るものだと。


存在意義のない私は、ただ静かに、この鼓動が時を刻むのを止めるまで、ただこうして、何も出来ずにいるのだと、そう思っていた。




突如として小部屋に入って来た騎士と女性が、私を立たせて歩かせる。


もたつく足を何とか動かして歩いた先には、眩い光を放つ豪華な部屋だった。




全身を磨かれ、香油を塗られる。優しくて甘い、亡くなった母と同じ匂いがした。


着飾る私を見て、母は何を思うだろうか。




引きずるように連れられた場所は、大きく広々としたホールだった。


シャンデリアが輝き、かつても私は此処に立ったことがあった。




私は何処かへ売り飛ばされるのだろう。隅の方に佇んでいたら、貴方と目が合った。


こんなに高揚した気分は初めてで。


いつか貴方に、攫って欲しいと毎晩願った。




ある満月の夜、貴方は突然現れた。


辛うじて顔を出せる程の高さにある、鉄格子付きの窓を、あっさりと、簡単に破壊した。




「今宵の月は一際輝いて魅惑的だ。君の時間を貰えないか?」




私は微笑んだ。




「私も、あなたを待っていたの。どうか私を離さないで。」




愛しい貴方の腕の中で、私は深い眠りに落ちた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ