春色のワンピ
今日は久々にイラスト付きです(*^^)v
イラストはこのお話の主人公の奏ちゃんです。
実母が出て行って……父や私自身が施した三つ編みが壊滅的だったので私は自分の髪に八つ当たりしてハサミでジャキジャキに切り落とした。
それ以来、私はショートヘアを貫いていたのだけど高校へ上がってからは髪を伸ばし始めた。
別に高校デビューしたかったからでは無い。
女がぶっ壊れていた私が女の子らしくありたいと願うのは義兄と義母に出会ったからで……
せめて見てくれだけでも“らしく”なりたくて……先ずは髪を伸ばす事にしたのだった。
伸ばしている最中は中途半端さがみっともなくて、家の中でも帽子を被りたいほどだったけれど我慢の甲斐があって毛先がブルゾンの襟に掛かる様になった。
そうブルゾンの……
制服を着ている時には何とかJKらしくなって来たとも思えるが、クローゼットの中の私服は僅かでしかもボーイッシュなものばかり。
でも、可愛い服って??
聞けるとしたら瞳ちゃんにだけど……瞳ちゃんも義兄の事が好きみたいだから、やっぱ聞けない。
それじゃあ!とググってみたけれど、こんな可愛らしい服が私に似合うのだろうか?
『甘えてみようかな』
頭の中に不意に浮かんだこの言葉に、私の胸はキュン!とした。
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私とのデートのお願いに快く応じてくれた義母の装いは大人としての品を保ちつつ可愛らしさがあり、とても素敵だった。
こんな人と再婚できた父は本当に果報者だと思う。
並んで歩くと私だってドキドキするくらいだ!
その義母が選んでくれるお洋服はどれもキラキラしていて……「私にはとてもとても……」と怖気づいたのだけど、フィッティングルームの鏡の前で義母に横に立って貰えると、どの服も自然に見えた。
「とっても可愛いよ!」と囁かれ、耳まで赤くなったのは……私の片想いの相乗効果なのかもしれない。
好きな男の子の実の母からこの様に囁かれたのだから……しかも私はその母に憧れているのだから……
「お義母さんが選んでくれたワンピースどれも可愛くて迷っちゃうよ!」
「えっ?! 一着しか買わないの?」
「うん」
「どうして?」
「だって、お洋服買う為だけにバイトしてる訳じゃないから……」
「ええ~っ!! 私の夢を叶えてくれないの?」
「夢って?」
「私の夢はね!いつか女の子が生まれたら、その子とデートして可愛いお洋服をいっぱい買ってあげるって事だったの! 前の主人が亡くなって、もう女の子を産める事は無いから……その夢は悠耀が結婚するまで取っておこうって思ったのだけどね」
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「ちょっとおしゃれなカフェで親子デートするのが夢だったの!」
図らずも義母の夢を叶える事になってしまった私は、両手いっぱいの“ショ袋”のお礼にと、義母をカフェに誘った。
お揃いでオーダーしたのは『ルビー ショコラ シンフォニー フラペチーノ』で……甘酸っぱいベリーとチョコづくしを味わう。
「さっきお義母さんが言ってた……『兄さんが結婚するまで』ってどういう事?」
「気になる?」
「うん」
「それはね……悠耀が結婚したら私に娘ができる訳でしょ?」
「うん」
「そしたら娘とデートして、娘に合うお洋服をいっぱい買ってあげられるじゃない」
「そっか……」
「どうしたの?」
「その……悠耀さんのお嫁さんになる人に悪いなあって」
そう返したら義母はクスクスと笑った。
「悠耀の初恋って小学校三年生の時の……隣の席の女の子でね。悠耀が図工の時間に描いたその子の似顔絵は春色のワンピを着ていたよ。そう!今日、あなたが一番お気に入りだったのも春色のドレスワンピだったよね」
不意を突かれた私はまた耳まで赤くなった。
そんな私の左手に義母はそっと手を重ねて言ってくれた。
「きっと奏ちゃんが……私の夢をみんな叶えてくれるんだね。ありがとう」
だから私は……義母の手の上に自分の右手を重ねてお願いした。
「いつまでもいつまでも私のお母さんで居て下さい」
そうして私達は目に涙を溜めたまま微笑み合った。
あったかいお話って難しいですね(^^;)
このお話は「義兄のいる風景」 https://ncode.syosetu.com/n4287jp/ のスピンオフ作品です。
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