番外編二 真冬のバカンスは白猫と共に 後編
テーブルの上にはマフィンが山盛りになった皿、ティーポット、カップが二つ置いてある。
シルビアーナが小説に集中していたので、リリは声をかけるのを遠慮したのだろうが……。
「ふふ。私の白猫ちゃん。構われなくて寂しくなっちゃったのね。声をかけてくれたらよかったのに」
シルビアーナの膝枕で眠るリリに話しかけるが、目覚めない。警戒心の強いリリには珍しいことだ。
(そういえば、こんな風にじっくりリリの寝顔を見るのは初めてだわ。うふふ。可愛らしい寝顔ね)
シルビアーナはここぞとばかりに寝顔を見つめ、頭を撫でて銀髪の感触を楽しんだ。
(柔らかい猫っ毛。色も私より温かみがあるわ。瞳も太陽みたいな黄金色だから、笑うと初夏に咲くマーガレットみたいなのよね。眠っている今は、日向ぼっこしながら寝てる白猫みたい。私の恋人は本当に可愛いくて美しいわねえ)
シルビアーナはうっとりと愛しい恋人を見つめ、指先で頬を愛で、猫にするように顎を撫でてやった。
「うー……んん……んふふ……」
くすぐったいのか、リリは声をこぼしながら身じろぐ。ふわふわ柔らかい髪がくすぐったくて、まろい頬が可愛くて仕方ない。
肌もまた、シルビアーナの肌とは違う感触だ。柔らかいが張りも強く、シルビアーナの指を押し返す。
数日前。リリから『シルビアーナの肌は淡雪か絹のよう。繊細で、少しでも爪を立てたら傷つきそうで怖い』と、言われたのを思い出す。
言葉通り、リリはとても優しくシルビアーナに触れる。激しく触れたのは、初めて口付けたあの日だけだ。
大切にされているのはわかっているけれど、シルビアーナはもっとリリの生々しい欲望に触れたかった。
だから、昨夜の寝台の上で少し煽ってしまったのだ。
『リリ、もっと貴女の思うまま強く触って噛んで吸っていいのよ。私、貴女になら爪を立てられたいし傷つけられたいの……』
リリは真顔になった後、激しくシルビアーナを求めた。
その結果、繊細なシルビアーナの肌にはいくつもの赤い痕が残ってしまったのだった。
それに満足しつつ、シルビアーナは少し残念だった。
リリの真似をして肌を噛んだり吸ったのに、リリの肌には痕が残らなかったのだ。シルビアーナはリリに比べれば非力であり、リリの肌が強すぎるせいだろう。
「私も貴女に痕をつけたいのに」
「なら練習しようよ」
ハッ!と、気づいた時には右手首を掴まれていた。
悪戯な黄金色の瞳がこちらを甘く見つめる。
リリは自らの襟ぐりに指をかけ、首筋から胸元を見せつける。豊かな胸がぽよんと揺れた。
「いっぱい触って噛んで吸って。爪も立ててね。私もシルビアーナからの痕と傷が欲しい」
「ちょ、リリ。まだ昼間よ?それにマフィンと紅茶が……」
「可愛く誘ったのはシルビアーナじゃない。マフィンは後で食べれるし、紅茶は温め直してミルクを入れたらいいよ。だから、ね?ご主人様の邪魔をせずに待っていた白猫に、美味しいご褒美を頂戴」
シルビアーナの右手を、リリの舌がいやらしく舐めて指をしゃぶる。それだけでシルビアーナの身体に火が着く。
「あっ……誘ってない……のにぃ……!というかリリ、貴女いつから起きて……あんっ……!」
ちゅっと音を立てて指を開放し、リリは上目遣いでシルビアーナを見つめた。
「……本当に嫌?ここで止める?」
シルビアーナはしばし沈黙したが……。
「……いじわる。やじゃない。やめないで」
愛しい白猫の手管に溺れ、サンルームに甘い鳴き声を響かせたのだった。
次の日も別荘から出られなくなったのは言うまでもない。
リリに痕がつけれたかどうかは、シルビアーナとリリだけの秘密だ。
おしまい。
明日も番外編を更新します。よろしくお願いします。
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