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爛れ顔の聖女は北を往く  作者:
3.聖女、ダンジョンに入る

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43.初ダンジョン探索

 洞窟で夜を明かした翌朝、ヴィルに縄で繋がれたお散歩スタイルのまま、シャナは初のダンジョンに足を踏み入れていた。

 さすがに動きにくいので縄を外しては、という意見も(主にシャナから)あったのだが、「落とし穴なんかの罠があるかもしれない」というヴィルの一声にエドガーが即座に賛同したことで多数決によりこのスタイルが可決された。

 実際、罠ではないが入ってすぐに転がっていた小石を踏んで転びかけた。咄嗟にヴィルが縄を引いたおかげで事なきを得たのでもう何も言えない。大人しく繋がれることにしたシャナである。いのちだいじに。


 ダンジョンの入り口は巨木の複雑に絡み合った根と根の洞にできており、三人の内で一番小柄なシャナでも身を屈めなければ入れそうにない大きさだった。ヴィルなど明らかに肩幅がサイズオーバーしている。

 こんなところにどうやって入るのかと思ったが、そこはやはり魔法なんてファンタジーが溢れる異世界においても摩訶不思議なダンジョンである。

 ヴィルが洞に手を突っ込んだかと思えば、そのまましゅるん、と吸い込まれた。シャナは「ぎゃあ!」と悲鳴をあげたが、エドガーは見慣れているのかシャナの声の方に驚いていた。

 不自然なほど黒く、先の見えない洞の闇の向こうへとつながるロープがあらかじめ決めておいた合図を伝え、確かにこの先にヴィルがいるのだとわからなければ、とてもじゃないが指先すら入れられなかっただろう。

 躊躇いながら指先を洞にちょっと入れてみたら、瞬きの合間にダンジョン内へ放り込まれていた。引っ張られるような感覚も何もなく、目を開けたら木々に囲まれた山中から昨夜野営をした洞窟のような場所に立っていて、シャナはぽかんとしてしまったのだった。

 

 野営をした洞窟はただの横穴だったが、ダンジョン内はアリの巣さながらに曲がりくねり、いくつかの分岐路を過ぎたあたりでシャナは道を覚えるのを諦めた。

 床も天井も壁も全部同じ土で、ところどころにぼんやりと光る苔が生えているおかげで視界は確保されているが、進めど変わらない景色に方向感覚はとっくに失っていた。

 先頭を行くヴィルの足に迷いはないのだ。きっとこの人間離れしたS級冒険者様なら目的地まで迷わず行ける。

 なお、道中出てきた魔物はネズミ型のものばかりで、ヴィルが文字通り蹴散らして進んだ。ブルドーザーかよ、というシャナのツッコミは後ろに続くエドガーの手前、声にすることは控えられた。



 シャナにはいつ階層を移動したのかもわからなかったが、迷いなく歩を進めていたヴィルが「この先が最下層だ。少し休憩してから入るぞ」と足を止めて言うので一行はその場に腰を下ろした。


「どの辺が次の階層に繋がってるの?」

「あの土が隆起した先。魔力が凝って空間が歪んでるのがわかるか?」


 ヴィルに指さされた先、ぼこりと隆起した土塊の向こうへシャナは目を凝らした。

 薄明るい苔に照らされた道が洞窟の奥へと伸びている。


「んん? あー、ウン、ハイ、あのー……ね、ウン。アレね。ウンウン」

「エドガーはわかったか?」

「よくわかんないです!」

「シャナ、見習えよ」

「はい……」


 ちょっとした出来心でした、とシャナは肩を落とした。ヴィルがよろしい、とばかりに背を叩く。

 エドガーが目を輝かせて「やっぱり魔法使いだと魔力の凝りとかわかるんだね」と追い打ちをかける。もうやめて、シャナのライフはゼロよ。


 休憩し心に深刻なダメージを受けたシャナだが、体力は回復しただろう、と躊躇う間も与えられずに最下層へと足を踏み入れることとなった。やはりどうにも扱いの悪さを感じずにはいられない。

 とはいえ到着した最下層はこれまで歩いてきた洞窟然としたダンジョン内と変わりなく、やはりとところどころにヒカリゴケが群生した一面の土壁であった。

 入った途端に強敵が襲い掛かってくるだとか、凶悪な罠の類なんてものもなく、シャナは若干の拍子抜けを覚えた。後から続いてきたエドガーも同様にふ、と詰めていた息を吐いたのが伝わってきた。

 ヴィルは相変わらずダンジョンに入る前どころか、街中にいる時と変わらぬ自然体に見える。そこにベテランの風格というものを感じた。


「そんなに緊張しなくても、強い魔物の気配はないぞ」

「みんながみんな、気配を読むとかいう特殊技能持ちだと思うなよ」


 ここまで同様、出てくる魔物も鼠系が主で兎や蛇系の魔物も混じっているが、やはり先頭のブルドーザーが文字通り蹴散らして進むおかげでシャナとエドガーはただついていくだけである。本当に

 資源としても特にめぼしいものはないようで、商人の知識を持つエドガーはちょっとがっかりしていた。

 憧れの冒険者になったものの、商人としての仕事は好きなのだろう。エドガー本人の気質も人懐っこく気遣い上手なので営業向きだとシャナは思うが、かといって利を追うのには向いていないとも思えた。

 

(そういえば)

 

 故郷のイェーレブルーへ帰るとは聞いているが、帰郷後はどうするのかと、ふと思った。

 冒険者を続けるのか、両親の店を継ぐのか、それとも他にやりたいことがあるのだろうか。

 シャナもイェーレブルーに着いた後、しばらくは冒険者として生活費を稼がねばなるまいが、そのまま冒険者としてヴィルのように生きていくことはできないだろう。何か仕事を見つけて、街の中で慎ましく生きていくことになる。

 いや。そうしたいと思っているが、もしも王城からの追手がかかれば、また旅に出なければならないかもしれない。今度はきっと国を越えることになる。


 それは冒険者としてか、それとも他の何かになっているのかはわからないが――。


(きっと、ひとりぼっちだ……)

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