4-国境付近 東の森林付近の村 村長宅の前 有尾族の少女
あ、いらっしゃませ村長さんのお客様ですか?
中にいますけど取次ぎますね、え?その前にわたしのお話ですか?
あ、はい有尾族です。しっぽあります。
あ、いえ、もともとは国境の向こう側、南部側に住んでいました、国境から10日くらい歩く位の場所です。
有尾族の集落があったんです、南部地域は人族以外は蔑まれていますから、集落だけで完結する感じでしたね。
その、襲われたんです。
多分兵隊さん達なんだと思います、その身なりが良い感じだったので。
ほんとはどうなのか、なんでなのかとか、理由はよくわかりません。
ただ急に20人くらいやってきて、長と何か話したと思ったら殺戮が始まりました。
ほんとになにがなんだかわかりませんでしたし、今でもわかってません。
集落には150人以上以上いたんです、でも生き延びて・・・逃げ出せたのは10人位です。
夜中に国境を越えて、この村にたどり着きました。
村に残ったのはわたしだけです、他のみんなは北の大きな町に向かいました。
この村には良くしていただいたんです、お腹いっぱい食べさせてくれて、北へ行ったみんなに町までの食料を持たせてくれました。
わたしは恩返しがしたくて、この村にお仕事はないですかって聞いたら村長さんが雇ってくれたんです。
今は幸せなんだと思います、国境を越えただけで差別されなくなるなんて知りませんでした。
でもほんとに今が幸せなのか考えちゃう時があります。
集落で普通に暮らせていればどうだったんでしょうか、何も起こっていなければ、家族もいて・・・
あ、ごめんなさい、今の暮らしになにも不満はないんです。
酒場の奥さんとか市場のみなさんとか、気さくに話しかけくれます、たまにお菓子くれたりするんです。
子供じゃないんですけどね、でも、うれしいです。
いえいえ大丈夫です、ちょっと思い出しちゃったけど、忘れるなんて出来ませんから。
はい、じゃあ村長に取次ぎますね。