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メスガキ転生  作者: KaZuKiNa919
第七章 転生教団の闇
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第48話 とある復讐者の物語

 むかしむかし、といっても本当は十数年位のむかしだそうです。

 新しく誕生した城塞都市メメントには、様々な人種や民族が移民としてやってきました。

 人族、エルフ族、小人族、獣人族とにかく様々です。

 彼らは力を合わせて、荒れ果てた大地を開拓し、異民族の侵入を防ぐ壁を建て、人が住むための建物を建てていきました。

 けれども、彼らは貧しく、時に飢饉、時に疫病が襲ったそうです。

 可哀相な彼らは誰も助けてはくれませんでした。

 貴族様も、貧民への支援は微々たるもので、その結果メメントは今日の退廃と享楽の猥雑な都市へと発展しました。


 貧富の差は拡大していき、ハーレムと呼ばれる貧民街はいたる所に存在しました。

 そしてそこにある少年が暮らしていたのです。


 少年は妹と一緒に貧しく暮らしていました。

 両親は疫病で失い、妹は体が弱くてベッドから起き上がれない程衰弱していたそうです。

 少年はそんな妹の為に必死で働き、妹の体が良くなって、一緒にお日様の下に出ることを約束しました。

 けれども少年がいくら働いても、稼げるのは微々たるもの、妹の顔はやつれ、日に日に衰弱していきます。

 そんな妹の手を少年は優しく握り、ただ神様に祈りを捧げました。


 ――どうか、俺はどうなってもいい。だから妹を助けてやってくれ、と。

 神様がはたして存在するのか、それはまぁ置いておきましょう。

 ともかく少年は妹の為ならなんでもする強い少年に成長しました。


 けれどもこの世界は残酷です。神様はゲイのサディストだから、悲劇もポップコーンムービーに変えてくる質の悪い奴です。

 ある日、朝早くから出稼ぎ労働者に混じり過酷な労働を終えて、クタクタになりながら少年はハーレムの一角にある粗末なバラック小屋に帰ってきました。


 「帰ったぞ……ミィ? ミィ?」


 粗末なベッドだけがある小屋の中で少年は妹に呼びかけます。

 ですが今日は声が帰ってきません。

 不審に思った少年はベッドを覗くと、そこには冷たくなった妹ミィが眠っていました。


 「オニイチャン、オニイチャン」


 信じられない。少年は後ずさると顔を真っ青にしました。けれども少年はもっと信じがたい物を目撃してしまいました。

 ベッドの側に見たこともない野良犬がいました。

 毛並みは最悪で、こちらも体中が怪我だらけの酷い野犬です。

 ですが不思議なことにその野犬、普通な「ワンワン」と鳴くものですが「オニイチャン、オニイチャン」と鳴いているのです。

 こんなおかしなことがあるのでしょうか? 少年は不思議と大人しい野犬に手を伸ばします。


 「オニイチャン、オニイチャン」


 野犬は少年の干からびた手に優しく頬ずりします。

 少年はまともに声も出ず、ただ、その答えを理解しました。


 「ぁ、ぁ……! なん、で? なんでミィが犬に? か、神様……俺達が、俺達兄弟が何をしたって言うんだこのクソ野郎がぁーっ!!!!」


 少年は慟哭しましたが、野犬は「オニイチャン、オニイチャン」とその顔を、涙を舐めとりました。

 その野犬はミィであって、ミィではない。

 そう……それは魂が混ざり合い、ミィと野犬が融合した存在でした。

 反魂の法………それは少年が復讐鬼となり、執念によって得たとある教団の凶行だと知るのでした。




          §




 カランカラン。

 いつものベンの店、朝一番に来客は訪れた。

 店主のベンはグラスを丁寧に磨きながら、視線を客に送る。

 入ってきたのは暗紫のフードで顔を隠した陰湿な青年だった。

 ベンは初めてきた客に若干訝しむ。しかし客であるならばそれ相応に応じなければならない。


 「いらっしゃいませ」

 「……なにか、軽いものを」

 「軽いものね……おたく見ない顔だね」


 ベンは厨房からサンドウィッチを持ってくると、青年に差し出す。

 青年は無言でサンドウィッチに喰らいついた。

 陰気な雰囲気を(かも)し出す青年に、ベンは表情には出さないが、ある予感がした。

 裏稼業……ベンも元盗賊団龍のキバの構成員、人のことはとやかく言えないが、青年にはどこか凄みのような物を感じる。


 (この街アウトローは多いけど、こいつなんか雰囲気が違うんだよな)


 城塞都市メメントはこの規模の都市で見れば相当治安が悪い街だ。

 発展が早すぎて、人口は爆発するように増加し、その結果どうしようもない悪党みたいな奴らが集まってしまった。

 その中の一人が自分なのだから笑えない話だが、青年にはあまりアウトロー特有のギスギスした空気はないと感じる。

 ただこの青年が無言で発する『凄み』はベンをして異質に感じさせるには充分だ。

 まるで研ぎ澄まされたナイフだ。でもどこかで会ったろうか?


 「ねぇ、おたくどこかでお会いしませんでした?」

 「……ごちそうさま。代金は置いていく」


 しかし青年は取り合わない。一切世間話さえ付き合わない様はアウトローにしても一匹狼すぎるだろう。

 ベンはやべー奴には極力関わるなと、自分の臆病さ(チキン)に言い聞かせ、言及はしない。

 青年は代金をカウンターに置くと、直ぐに店の出口に向かった。


 「……ありがとうございましたー」


 ベンは代金を受け取ると、青年は店を出ていった。

 改めてあの青年、どこかダウナーというか虚無感を感じさせるが、それでいて鋭いナイフのような凄みがあった。

 どこぞの暗殺者かなにかと勘違いさせるものがあった。だがちらりと見えた青年の顔は、思ったよりも幼さを感じさせた。

 あの感じどこかで見た気がするが……ベンは唸るも答えは出てこない。

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