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メスガキ転生  作者: KaZuKiNa919
第六章 逆襲のクイーンスライム!
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第42話 欲望のオーグ

 「逃がすな! 必ず仕留めろ!」


 オーグは杖を振り回しながら、必死の顔で号令する。

 一行から全力で逃走するのは黄金色に光り輝くゴールドスライム。

 その名の通りメタル系スライムの亜種で、身体を黄金で構成しているのだ。

 オーグの顔は完全に金の亡者、素早さに魔法でブーストしたエルミアは斬り込むが。


 「はぁ!」


 ガキィ!


 エルミアは舌打ちする。渾身の一撃もコアにギリギリ届かない。

 ゴールドスライムはなんとか攻撃を凌ぐと、小さな穴に飛び込んでいった。


 「あーもう! ちっくしょー! 逃げられたーっ!」


 くーやーしーいーっ! と地団駄(じだんだ)を踏む。

 金づるに逃げられ、ひと目も憚らず悔しがるメスガキエルフは愛らしかった。


 「ははは、欲をかけば逆に損するでありますよ」


 そんな金持ちの言を聞くと、これだからボンボンはとオーグは恨めしくメルを睨みつける。

 物欲センサーはオーグには味方しなかったようだ。


 「つか、一番攻撃力高いのはメルなんだから頑張ってくれよぉぉぉ!」

 「努力はするでありますが、やはり足ばかりはどうにも……」


 メルは装備が重い分足が遅い。

 メタル系スライムは総じて動きが素早いので追いつけないのだ。

 それでも足はオーグより早いのだから、基礎は良いのかもしれない。


 「よし、その重たい鎧を脱げ! そうすりゃ速くなるだろう!」

 「でもそれ防御力が下がるであります! 騎士の誇りに懸けてそれは断固拒否であります!」


 鎧を脱いだ騎士など騎士ではないという風にメルは拒否した。

 メルの癖に生意気な、と歯軋りするが、人間誰しも譲れないものはあるのだ。

 オーグにとって金銀財宝が何よりも大事なのと同じ、メルも白銀の鎧と剣は命よりも重い。


 「おーい、こっちに宝箱あったぞ」

 「宝っ! ひゃっほーい!」


 オーグは宝という言葉を聞くと、一気に悲観した顔もあっという間に喜色を満面浮かべ、ハイテンションで発見したエルミアの下に向かった。

 エルミアが発見したのは木製の宝箱。

 宝箱には若干装飾が施されており、中身はなにかオーグは喜々として宝箱の前で前屈みになった。

 多少は鑑定の技能(スキル)を持つリンは宝箱の前で屈むと、罠の有無を確認した。


 「鍵は掛かってない、罠は……ないみたいね?」


 リンは短剣を宝箱の口に差し込むと、ゆっくりスライドさせた。

 なにかがカチリと引っかかれば罠がある証拠だが、なにも引っかかるものはなかった。

 オーグはリンに確認を取ると、リンは無言で頷く。


 「それじゃ、宝箱オープン!」


 オーグが宝箱を開けるとき、リンは短剣が僅かに湿っている事に気づく。

 まさか、リンは慌てて叫んだ!


 「お頭駄目! それは――!」

 「――――へ?」


 オーグがリンに振り返った。

 だがその瞬間宝箱の中から青いスライムが飛び出し、オーグに襲いかかる。


 「うぷ! んん!」

 「お頭!」

 「不味いぞ、くっ!」


 オーグはスライムに全身を覆われると、息ができない。

 スライムはオーグの全身を這い、穴という穴から侵入しようとした。

 エルミアはオーグからスライムを引き剥がそうとするが、液状のスライムは掴めない!

 逆にスライムはエルミアにまで襲いかかり、腕から、胸、そして下腹部、太腿と絡みついてくる。


 「スライムならコアを!」


 リンは直ぐに宝箱の中を覗き込む。宝箱の底には赤いコアが見えた。

 リンは迷わず短剣をコアに突き刺すと、スライムはドロドロのローションのようになって溶ける。

 間一髪オーグは助かると、呼吸できるありがたみに目を真っ赤にして、息を荒くした。


 「はぁ、はぁ、助かった……んん」


 全身ローション塗れのメスガキエルフは産まれたての子鹿のように立つことが出来なかった。

 そしてオーグのあられもない姿にメルは顔を真っ赤にして、後ろを向いた。


 「み、見てないであります! 本当に見てないでありますよ?」

 「見てないってなんのこと……?」


 オーグは胸が丸出しになっていると気づいていない。

 胸の谷間にまでローションは染み込み、それはもう見せられないものだ。

 エルミアも同様で、ローション化したことで、胸元の服が透け、ドロドロであった。


 「うぅー、スライムめぇ、よくもやってくれたなー」


 エルミアは拳を握ると、スライムごときに屈辱を受けたことに怒りをこみ上げる。

 辱めを受けたのだ、許せるものではない。


 「あんな変わったスライムもいるのですわね」

 「ミミックスライムであります。狡猾な魔物であります」


 ミミックスライムは宝箱に寄生し、開けた者に襲いかかる。

 擬態系のスライムの一種で、一瞬で覆い被さり相手を窒息させて捕食する危険な魔物だ。


 「エルミア、お頭を助けるならまずコアをやるの」

 「オーグを助けたくて頭からスッポ抜けた」


 オーグのことになると知能が低下するエルミアは反省した。

 冷静に宝箱の中に隠されたコアさえ破壊すれば無害なのだから、冷静さは重要だ。


 「少し休憩でしょうか?」

 「うぅ、冷たい……」


 オーグは身震いすると凍えていた。

 空洞内は少し肌寒く、スライムローションがオーグの体温を奪っていく。

 このままでは凍傷もあり得る。

 直ぐにリンは暖をとる準備に取り掛かった。


 「火の魔石だけど、これに魔力をほんの少し込めて」


 リンはタオルで包んだ小さな魔石をポーチから取り出すと、オーグに渡す。

 オーグは言われた通り魔力を込めると、火の魔石が赤熱し始める。

 簡易的な暖房だ。オーグはありがたくその熱にあやかった。

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