表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/85

魔王リーゼロッテ

 自身の居城の戻った魔王リーゼロッテの視点。




 転生者カイトとその一味に軽く挨拶して来た私は、城の上空に転移して戻ってきた。


 この城は、女神様にもらった私の住処である魔王城。よく漫画とかにある、おどろおどろしい闇の魔城とかじゃなくて、死に戻りとか転生したお姫様が住んでいそうな、中世ヨーロッパ風のファンタジーな美しい城だ。




 私が空から降り立つと、気付いたしもべたちが片膝をついて首を垂れ迎える。


「おかえりなさいませ! リーゼロッテ様!」


 女神様曰く、彼らは魔族らしいけど人間と見た目は変わらない。それも全員が私好みの美形の男だ。いい気分で城内を歩いていると、一人の男が私の前に現れる。


「お帰りなさいませ。リーゼ様、いままでどちらに?」


 私の前に立つことができるのは、魔王軍の中でも、『ディアージェス』と呼ばれる特別に強い幹部達だけだ。それぞれが二つ名を持っていて、見た目も他のしもべたちと比べるとワンランク上のカッコ良さを誇っている。


 私に軽く頭を下げ声を掛けるこの男は、ディアージェスの一人『貴公子』ラフィード。私好みな美形だけど、口うるさいのが玉に瑕なのよね。


「女神様の言っていた異世界人の様子を見に、ちょっとね」


 私の答えにラフィードは目を見開いて「なんですと!?」と声を上げる。


「今回は無事に帰れたからよかったものの、その異世界人と一緒に勇者もいるのですよ? 勇者と戦うのは、しっかりと鍛錬し力を使いこなせるようになってからと、あれほど申し上げたではありませんか」


 ラフィードは説教を始めたので、適当に聞き流していると、もう一人イケメンが登場。この男も同じくディアージェスの一人『鏡像』イグニスだ。


「おいおい、ラフィード。そんなだとリーゼ様に嫌われるぜ?」


「イグニスー、ラフィードがいじめるのー」


 私が甘えた声でイグニスに抱き着くと、イグニスは私の頭を撫でてくれる。


「よしよし、可哀想に。リーゼ様を虐める奴は、この俺がお仕置きしてやりますよ」


 私がイグニスの胸に顔を埋めて「えーん。お願いー」と、声をあげると、ラフィードは慌てた声で言い募る。


「待ってください! 私は決してリーゼ様を虐めているわけでは!!」


 絶世の美男子が、私の一言で慌てている姿を見るのは楽しい。なのでもう少し遊んでみる。


「ラフィードが、私の為を思って言ってくれてるのは分かってるよー。でもぉ、頑張って戦って来たんだから、少しは褒めてくれてもいいと思うのー」


 ラフィードはイグニスから私を奪うように抱き寄せる。そして先ほどとは一転して、幼子をあやすような口調に変わる。


「そうですね。リーゼ様はよく頑張りました。偉い子です。後でお菓子をあげましょう」


 ふふ……、前世ではこんなことはありえなかった。全く素晴らしい世界に転生させてくれたものだわ。


「そういえば、あとの二人はどうしたの?」 


「私なら、ここに」


 振り返るとディアージェスの一人『常闇』バルガロスが優雅に礼をしている。こいつも当然イケメンだ。バルガロスは顔をあげると、すっと私に近づいて顔を間近に寄せる。


「リーゼ様、霊体に僅かですが傷が……?」


「ああ、勇者の仲間に斬られちゃった。でもすぐに魔法で治したから大丈夫」


「肉体は治っても霊体は痛んだままですよ。まだ痛むのではありませんか?」


 そう言って、バルガロスは私の首筋に口づけし、舌をペロリと這わせた。私は「ひゃう!」と思わず変な声が出てしまうが、バルガロスは微笑む。


「これで痛みは消え去ったでしょう」


 身体の芯が熱くなるのを感じる。私はバルガロスにしがみつき、耳元に口を寄せた。


「ありがと……、なんかさ、ちょっと感じちゃった」


「ならば、今夜は私を指名してください」


「ちょっと待った! リーゼ様、今夜は俺とって約束を忘れてるでしょ?」


 声の方を向くと、四人目のディアージェス『魔拳士』レクトールがいた。物欲しげな熱のこもった視線を私に向けている。他の三人の顔をチラリと見ると、ラフィードもイグニスもバルガロスも私に熱い視線を向けている。


 前世のカースト底辺陰キャ女子だったころに妄想してした、イケメン達が私を取り合うというシチュエーションが実現してしまった。


 気分が良くなた私は「ねぇ、みんな。私って可愛い?」と四人に聞いてみた。


「もちろんです! リーゼ様の可愛さは世界一です!」

「そんなの当然でしょ? むしろ可愛すぎて辛い」

「はい、とても可愛いですよ」

「最高に可愛い!」


 全員が口々に私を可愛いと褒めちぎる。背筋にゾクッとした感覚が走り、気分がさらに高揚する。やばい、癖になりそうだ。


「じゃあさ、私のこと好き?」


 四人は声を合わせて「大好きです」と間髪入れずに返事が来る。


「ならさぁ、私の為に死ぬ覚悟はある?」


 僅かな迷いもなく「無論でございます!!」と力強く答えるイケメン達。


「く、ふふふ……! ははは、あは! あーっはっはっはっ!!」


 体の芯から込みあがってくる笑いを抑えきれない。私はつい大声で、馬鹿みたいに笑ってしまった。


 ほんっと最高! まったく、素晴らしい世界に転生させてくれたものだわ!! 女神様に言われた通りに勇者とアイツを殺せば、この生活を続けられるんだ。近いうちに必ず成し遂げて見せるんだから……!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 魔王とはいえやっぱ人間ね。 欲望に際限がない。ある意味悪役としてはナイスチョイスだな。そしてそれはカイト側も言える……主人公と悪役は表裏一体を別の意味で表現してますね(ΦωΦ)フフフ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ