レベル上げ2
――翌朝。
気持ちのいい朝だ。
上体を起こして隣で眠る二人の美少女を眺める。
マユが瞼を開け俺と目が合う。
「カイト、キスして」
マユのおねだりに微笑みながら応える。
「カイト様、私にも……」
控えめに声を掛けるクレアにもキスをした。
夢の一つが叶ってしまったと幸せを噛みしめるのだった。
* * *
朝食を済ませダンジョンに潜る準備をしていると、クレアが尋ねる。
「今日もカイト様に変身をした方が良いのですか?」
クレアのレベルも上がってるはずだし、今日は俺に変身しなくても行けるんじゃない? とノエルに確認してみた。
「効率で言うとカイトに変身した方が良いけど、無理じゃないよ」
それなら俺の姿でいるより、可愛いクレアの姿でいる方が俺のやる気が出るからむしろ効率は上がるだろう。
「変身しなくていいよ。クレアの姿のままで行こう」
クレアは「はい」と返事して着替えはじめた。クレアの全部を見てはいるものの、目の前で着替えられるとちょっと困るな。
準備を終えた俺達は、時短の為に冒険者ギルドの敷地内に設置してあるポータルから、ダンジョンへ行くことにした。
ダンジョンに直接転移する人はそれほど多くないのか、ポータル施設内は空いている。便利だがお金がかかるので、ある程度の収入が見込めなければ使わないんだろうな。
20階層3万イェン、30階層10万イェン、40階層50万イェン……と高くなっていく。40階層なんて三人で行くだけで150万イェンもかかるのか。
ノエルのおかげで100万イェン以上の収入は見込めるので、今日は20階層へポータルでいき、そこから30階層を目指すか。
ポータルを使用して20階層に来た。20階層ともなると人はほとんどいない。他の人を気にしないで狩りが出来そうだ。
サイクロプスは昨日さんざん倒したのでもう慣れた。出てきたやつから順に軽く切り捨てて進んで行った。
順調に奥へと進んで行き、現在25階層。
ここのモンスターはケーブスコーピオ。全長2m程の大きさのサソリ型モンスターで、堅い外皮に覆われ、両手にはごつい鋏があり、毒を持った尻尾がある。
何度も切らないとダメージが通らないので反撃を喰らってしまうが、アイギスの盾は毒も完全防御してくれるので安心だ。
マユとクレアはそうはいかないので下がってもらう。
マユの聖光を受け続けているエクカリバーは徐々に力を取り戻しているらしく、クレアが振ると刃から煌めく星が飛び散ってモンスターを切りさく。俺が必死に戦ってようやく一体倒せるケーブスコーピオも、クレアの一振りで数体倒している。
マユの神聖魔法はこの階層のモンスターでも一発で蒸発させるほどの威力だ。
不意に囲まれても安心ではあるが何ともやるせない。
ケーブスコーピオを倒すと手のひらに収まる程度の大きさのコアが落ちる。これは高く売れそうだ。
30階層に到着。この階層はこれまでよりも天井が高く開けた空間となっている。
出現するモンスターはソードリザード。体長4~5mはありそうな巨体に鱗の一枚一枚が剣のように鋭くとがっており、体当たりなどされようものなら切り刻まれそうだ。
俺はアイギスの盾で無傷だろうけど。
巨体に似合わない俊敏な動きと、剣のような鱗を撃ち出す攻撃のおかげで、近づいて斬りつけるのも難しい。何とか間合いを詰めて斬りつけても、硬い鱗を叩き斬るのはかなり難儀だ。俺は一体倒すのも必死だ。
そんな俺を横目にマユは神聖魔法でソードリザードの硬い刃の鱗をものともせず貫通して、一撃で消滅させている。
クレアも離れた位置からエクスカリバーを振って光の刃を飛ばし、数回命中させると倒せている。
倒すと、「ゴトッ」と音を立ててリンゴより少し大きいくらいのサイズのコアが落ちる。
俺も二人に負けないように戦い続け、何体も倒し慣れてきたところで、ついにレベル45になった。
今日はここまでにして帰るか。
と、その前に、ノエルに聞いて高く売れそうな岩をアイテムボックスに収納しなくては。
* * *
30階層のポータルを使って冒険者ギルドに帰り、裏の広場でアイテムボックスから岩を出して鑑定してもらう。
鑑定おじさんは今日も驚いてくれた。
「この岩は、オリハルコンが多く含まれている!? あんたらこれをどこで?」
「30階層でたまたま……」
「30階層でオリハルコンがこれほど含まれている岩石を発見できたのか? 運がいいな……」
俺の顔をジッと見る鑑定おじさん。怪しまれている? でも不正はしていないので堂々としている。
「運がいいだけじゃ無いな。何か特別な探査系のスキルを持っているんだろう。これからも期待してるぜ」
看破されたか。このおじさんも大勢の冒険者を見ているベテランみたいだから分かるのかもしれないな。
コアも今までよりも高く買い取ってもらえたようで、合計で1200万イェンにもなった。インフレだ。
受け取った金額に驚いたマユが溢す。
「ザッコスのパーティにいたときでもこんなに稼げなかった」
「マユもクレアも強いからね。俺達ならもっと稼げるようになるよ」
「カイト様の御心のままに」
クレア……。君は王に仕える騎士かなんかか? と心の中でツッコむが、可愛いので頭を撫でておいた。
* * *
――その夜、宿の部屋にて。
ベッドに横になる俺の両隣りには、たっぷりイチャついて疲れ果て、寝息を立てる美少女がいる。
俺は寝付くことが出来ずに天井を眺めている。
明日はザッコスと決闘か。なんか全く負ける気がしないけど、実際どうなの?
「100%楽勝だね。レベルが同じでも、カイトは能力の上昇幅がケタ違いだからね。負けようとしても負けられないから」
やっぱりそうか。
あの時の悔しさを思い出しギュっと拳を握り締める。
マユを突き飛ばし、酷い言葉を掛けて悲しませたザッコスに、しっかりお仕置をしてやろうと再確認したのだった。




