持ってない 挿絵有
食事を終えテンプーレ亭を後にして泊まる所を探す。今日はお金に多少の余裕があるのでグレード高めの宿にした。
受付でマユが三人部屋を頼んでいた。
「マユ、俺と同じ部屋でいいの？」
「私もカイトの彼女なんでしょ？」
マユは俺にグイっと顔を近付けて言う。俺は虚を突かれて動揺してしまった。
「カイトがそんな顔すると私が恥ずかしいでしょ！」
マユが俺の手を引っ張って歩き出すと、クレアは俺の空いている方の手を握る。仲良く三人で部屋へと向かった。
部屋に入ると大きなベットが一つ設置してある。
この世界では三人部屋ってこういうものなのか？
「受付の子が気を利かせて、こういう部屋にしてくれたんだよ」とノエルが答える。
そうなんだ……。クレアとは昨日一緒に寝たが、マユとも一緒に寝るのかと考えると緊張してきた。
とりあえず、壁際に設置してある三人掛けのソファーの真ん中に腰掛けた。
マユはローブを脱いで俺を見る。
「カイトはこんな格好の子が好きなんでしょ？」
今までローブの下に隠れていた露出多めなファンタジー衣装に、俺は視線を釘付けにされてしまった。
クレアもローブを脱いで俺を呼ぶ。
「カイト様！ 私も見てください！」
クレアはクルリとその場で回り、ミニスカートがふわりと揺れて見えそうになる。
「どう？」 「どうですか？」
二人はほのかに顔を紅潮させて俺に感想を求める。
「二人とも最高に可愛い……」
俺の顔は緩み切っている事だろう。それを見た二人は満足げに微笑んだ。
可愛らしい二人の姿を眺めていると、抱きしめたい、キスしたい、その先も……、と欲求が高まってしまう。
つい妄想を膨らましていると、二人は俺の目の前まで近づいて来た。
マユは前かがみになって、ソファーに座っている俺の間近で視線を合わせる。
「見てるだけで満足しちゃった？」
目の前で声を掛けられ、ハッと我に返った俺は思わず目の前にいるマユに抱き着いた。華奢な身体はぴったりと吸い付くように密着して気持ちいい。
嫌がるそぶりは無い。一旦抱きしめる腕を緩めて、マユの顔を見ると頬を染め目は潤んでいる。
様子を伺いながら顔を寄せるとマユは目を閉じた。
マユの唇に俺の唇をそっと触れさせてみた。
マユの腕が俺の首に回り、二人の唇はより密着する。
一気に気分が高まった俺がマユの体に手を這わせようとすると、「ちょっと待って」と言うので、俺はピタリと手を止める。
「……シャワー浴びてくるね」
マユが俺から離れシャワールームに向かった。自分の心臓が高鳴っているのが聞こえる。
ふとクレアを見ると、物欲しそうな顔で俺を見ている。
俺は立ち上がってクレアを抱き寄せると、クレアは俺に唇を合せて押し付けた。
柔らかい唇の感触で頭がぼーっとしてしまう。
二人してソファーに腰掛け、抱き合いながら幾度となくキスを交わしているとマユが戻ってきた。
「私よりもたっぷりイチャついてるじゃない！」
俺とクレアは慌てて離れる。マユが頬を膨らましている。
「クレアもシャワー行ってきて」
マユの指示にクレアが「はい」と返事をしてシャワールームに行くとマユは俺の隣に座る。
「カイトの夢がハーレムなのは知ってる。それでもカイトの事が好きになったんだから、私以外の子に手を出してもなるべく我慢しようと思う。でもクレアばかり可愛がったら妬んじゃうよ」
「ああ、気を付けるよ」
「それにしても……、カイトは何か不思議な力で私達を惚れさせているんじゃない？ 二股するような男に惚れるなんてね」
う、正解。バレたのか？ 平静を装いつつマユの顔色を窺う。
「だとしたら軽蔑するよね？」
「ふふ、冗談だよ。この胸の高鳴りが偽物だなんて思えないもの」
どうやらバレてはいないようだな。ホッとした。
それにしても、こんな可愛い子が俺のことを好きになってくれるなんて、とマユの顔を見つめていると、マユは俺に身を寄せ抱き着いて、柔らかい唇を押し付ける。今日のマユはとっても積極的だ。
マユの舌が俺の口に入り込んできた。なにこれ、気持ちいい……。
思考が停止したまま至福の時間が流れた。
しばらくして、クレアが戻ってきたので離れる。
「さ、カイトもシャワー浴びておいで」
マユに言われ俺もシャワーを浴びに行く。
出てくると、二人はベッドに横になっていたので二人の間に寝転んだ。
両隣には超絶級の美少女が横になっており、息遣いを感じる程にくっついている。
これっていいんだよな？ 俺は恐る恐る手の甲をマユの胸に当ててみた。
するとマユは俺の手を掴んで手のひらを自分の胸に押し付けた。
うわ、柔らか……。ノエルさん！ これＯＫな奴だよね！？
「完っ全にＯＫでしょ。さっさとヤりなさい」
そういえば、この世界に避妊の概念はあるのか？
「あるよ。今日行ったギアショップにも衛生商品のコーナーに並んでいたけど」
ええっ？ 買っときゃ良かった！ って言うか教えてよ！？
「そんなこと言われてもねぇ。カイトはヘタレっぽいから、彼女たちとこんなに急接近するなんて私にも予想外だったし」
ぐぬぬぬ……。
頭の中でノエルと問答していると、マユが甘く囁く。
「カイト、しないの？ 私なら覚悟はできてるよ」
クレアも俺の腕に抱きついて囁く。
「私もカイト様になら身を捧げたいと思っています」
「う……、したいけど、アレ持ってない」
「そっか、ならお預けだね。明日は買ってこようね♡ おやすみ」
マユは俺の頬にキスして目をつむってしまった。
「カイト様、外に出せば良いのでは？」
「う……、俺ＤＴだからそんな高度なテク多分無理……。それにあんまり意味ないって聞いたことがある……」
「そうですか……、残念ですが、明日を楽しみにしていますね」
クレアも俺の頬にキスをして目をつむってしまった。
ここまで来てお預けとは、何たる不覚……。
悶々としていたが、疲れていることもあり眠りにつくことは出来た。
とてもいい夢を見れたこともあり、翌朝はすっきり気持ち良く目覚めることが出来た。……が、二人が目を覚ます前に一人シャワールームへ行きパンツを洗うのだった。
