ギアショップ
――翌朝。
マユとクレアの二人に迫られてえちえちする夢を見てしまった。妙にリアルで生々しかったし、なんかとっても気持ち良かった……。
幸せな余韻に浸っていたが、違和感を感じて自分の股間に意識を集中した。なんか濡れてる。これはっ!? よもや粗相をしてしまうとは……。
俺に抱き着いて眠っているクレアをそーっと離して、一人洗面台へと音をたてないようにして向かう。そしてパンツを脱いだ。クレアに気が付かれる前に洗わなくては。
「カイト様、下半身丸出しで何をしているのですか?」
背後からクレアの声が聞こえた。
「な、何でもないっ!!」
「まさか、カイト様……。夢せ……」
「わー、何でもないってば!!」
「私が洗っておくので、カイト様は替えのパンツをはいて来てください」
「あ、ああ、分かった。……じゃなくって、自分でするから!!」
「遠慮しなくていいんですよー。でもよかった、カイト様は私に欲情してくれていたんですね。昨夜は裸で抱き着いたのに襲われなかったから、カイト様は私に魅力を感じないのかと思いました」
クレアはニコニコと笑いながら俺からパンツを取り上げて洗い出したので、仕方なくシャワー浴びてきて服を着たのだった。
それにしても、オウデルさんの家から出るときに着替えも何着か貰ってきたのだが、やはりかさばる。俺もマジックバック欲しいな……。
* * *
クレアは動きやすそうな服に着替えていた。昨日マユに貰ったやつだな。この格好も可愛い……。
宿屋の食堂にクレアと向かうと、マユは既にいたので同じ席に座る。
「カイト、クレアとしたの?」
「え、何を?」
マユの問いに聞き返すとクレアが答える。
「していません」
「そっかー、まあ、どっちでもいいんだけどね!」
マユはほっと胸をなでおろして笑う。
「カイトは私の事が好きなんだよね?」
俺が笑顔を見せつつ「うん大好き」と答えると、クレアが割り込んできて言う。
「私の事も可愛いいと……、カイト様の好みであると褒めて下さいました」
「もちろんクレアも可愛いよ。二人とも大好き。だからずっとこのパーティーで冒険者をやれたらいいなぁ」
マユは俺に抗議するかのように半眼で見る。
「二人の女の子に好きって言うなんて、カイトはやっぱり悪い男だよね」
マユの言葉にクレアは強めの口調で反論する。
「カイト様はとても優しくていい方だと思います!」
なんか変な空気になってしまい、二人は黙り込んで朝食を食べていた。
* * *
今日もダンジョンに行くつもりだが、その前にやっておきたいことがある。
マユはまだ自分のスキルの本当の能力を知らない。知っていた方がいいだろうから、部屋に呼んで彼女のスキルの本当の力を説明した。
それを聞いたマユは、自分のスキルの本当の力に信じられないと言った様子だった。
「私のスキルにそんな力が……」
「ハズレスキルどころか大当たりスキルだよ。もっと自信持って」
「そんなこと言ってくれたのカイトが初めてだよ……」
マユは目を潤ませてほんのり頬を染めている。うん、可愛いな。
「クレアの件もそうだけど、なんでカイトは鑑定眼鏡でもわからない事が分かるの?」
「俺はなんでも鑑定できるから」
マユは「へー」と俺の顔をまじまじと見つめる。
どうにか納得してもらえただろうか?
「カイトっていろいろ不思議だよね」
「惚れた?」
「さぁ、どうだろうね?」
マユはニコッと可愛い笑みを浮かべてはぐらかす。俺はマユに惚れてるけどな!
スキルの能力を理解したことで、今後は自身を卑下しないようになればいいのだが。
さて、ダンジョンに行く前にもう一つやっておきたいことがある。
「俺もマジックバックが欲しいんだけど、普通に買えるの?」
「冒険者用ギアショップで買えるよ。この近くにもいくつか取り扱っている店はあるよ」
「一個買っておくか。クレア用の服も買わないとね」
というわけで、買い物をすることにした。
* * *
マユの案内で冒険者用ギアショップに来た。
街の大通りに面した大きな店舗で、大型のスポーツ用品店のような雰囲気だ。広々とした店内には様々な商品が陳列されており、多くの人が買い物をしている。
武器コーナー、防具コーナー、ヒールポーションやマジックポーションなんかの薬類コーナー、服や靴にダンジョンに持って行く用の食料に水などなど、実に多彩な品ぞろえだ。マジックバッグは専用のコーナーがあった。
「冒険者用ギアメーカー御三家、ニッサム、ホムーダ、トヨルダってのがあって、それを選んでおけば品質に間違いは無いよ」
俺はマユの説明に「なるほどね」と感心しながら、マジックバッグの商品棚の前で頭の中でノエルに聞く。マジックバッグどれを買えばいい?
「あそこの茶色いやつにしたら?」
ノエルに言われた通り茶色のマジックバッグを手に取る。するとマユが言う。
「ホムーダの型落ちモデルだね。茶色は可愛くないから不人気なんだよ。でも容量が50ℓで10万イェンか。普通は1ℓあたり1万イェンくらいだから、かなりの掘り出し物だね。色が気にならなければ性能的には問題ないと思う」
「じゃあ、これ買うよ。他にも服とか欲しい」
今度は服のコーナーに来た。
下着と変わらない薄さなのに、モンスターの攻撃を止める。シールドテック。そんな売り文句の商品が目立つところに展示してある。お値段は800万イェン。買える訳ない……。
それはいずれ買うかもしれないが、今はクレア用の普通の服が欲しいな。
「クレア、適当に自分の服を買ってきて」
「カイト様はどのような服がお好みですか?」
「ミニスカ、ニーソで上はノースリーブ。でも、他の男にクレアの素肌を見せるのは嫌だから上に何か羽織っておいて、俺達だけになった時にそれを脱いでじっくり見せて欲しいなぁ」
とりあえず自分の性癖をぶちまけてみた。
「肌の露出の多めの服がお好みなのですね。承知しました。普段はローブを羽織っていればよろしいのですか?」
「うん、そうだね」
するとマユは「へー」と漏らしながらこちらを見る。そしてマユとクレアは服を物色しに行った。
俺も自分の服をいくつか買うことにした。
両手に服を抱えて来た二人と合流して、会計を済ますと全部で18万イェン。昨日稼いだとはいえ、オウデルさんに貰ったお金が減ってしまった。今日も頑張って稼がなくては!
買った物をマジックバッグに入れていると、クレアとマユが声を掛けてきた。
「カイト様、着替えたいのですが」
「私も着替えてくるよ」
買ったばかりの服を持って二人は着替えに行った。
しばらくして戻ってきた二人は、膝丈よりも少し長い程度のフードの付いたローブを着ている。歩くと薄手のローブが揺れて、前面のローブの隙間からはミニスカートとニーソの絶対領域が覗いている。
「どう、でしょうか?」
「へ―、可愛いね……」
俺が親指を立てて褒めるとクレアは嬉しそうに微笑んだ。
「私も!」
マユもクレアと同じように両手を広げて俺に見てほしそうにしている。こちらも負けず劣らずの可愛らしさだ。
「素晴らしい……」
再び親指を立てて褒めるとマユも嬉しそうに微笑んだ。
ローブを着ている冒険者は少なくないので、特に変わった格好というわけでは無いと思う。そもそもマユもクレアも美少女だから何着ても可愛いよね。
二人の美少女が俺に可愛いと思われたいのか、と考えると嬉しさがこみ上げてきた。
「さあ、今日もしっかり稼ぐぞー!」
目的の物を買いそろえた俺達は、ダンジョンに向かうのだった。




