最強伝説トマホーク次郎
第11章「国の鬼ルルバンバルルバ」
雲が澄んでいる。真っ青な空だ。インテリポンコツシティの姉妹都市である893マイタウンには快晴の空が泳いでいた。郊外の村には怪鳥ポッポポルルポの羽ばたく音が響く。ポッポポルルポの眼下には死骸があった。鮮血が流れているにも関わらず、蛆虫が身体中でせわしなく動いている。地中に朱色が染み渡り、気化され、辺り一面熱気を帯びたような異臭が散布されていた。そこにはただ一つのみ、足跡が残っていた。
893マイタウンの郊外には2つの村がある。パッフリカケズ村とクコムネサノヘ村だ。湖が領土の半分以上を占めていて、舟による物流がこの村の収入源。クコムネサノヘ村には13人の住民が残っており、血の繋がりなく、村民ひとりひとりが、家族の一員として扱われていた。温暖な気候、豊かとは言えないものの十分な食物が恵みとされ、運航の祈願として村には宗教が形成されていた。
ソネレノは舟旅の支度を急いでいた。舟は決まって日が出て、数時間とたたないうちに出港するが、彼はノロマで、馬鹿ときた。考え事があると歩きだし、挙げ句の果てには散歩をしていたのだと、思い付くままに考えを巡らせるきらいがあった。
そして今日もいつも通り、隣人のケテホに急かされ、舟に足を運んだ。
季節は冬だった。快晴の空が川の水平線と交わり、区切りない青さが視覚を奪った。草花や木々の緑葉も寒さに順応しているかに思えた。寒風が頬を滑らせ、深々と着こんだ斑点柄をふるわせる。舟は岸へと止まり二度と動くことはなかった。