白衣の天使と不死身の狂戦士①
いらっしゃいませ!
ご来店ありがとうございます。
前回のお話。
<なごみ家>で発生したギルドマスターの座を巡っての争い。
ナゴミヤさんの代わりを務めるのは、ハクイさんとヴァンクさんです。
「一枚目は<節制>、二枚目は<剣の7>、三枚目には<剣の王>が出ています」
ギルドマスターのナゴミヤが企画した「みんなでコヒナさんに占ってもらおう!」というイベント。
「一枚目、<節制>には杯から杯へと水を注ぐ天使が描かれています。あっ! ハクイさんにぴったりですね!」
ギルドの新人であるコヒナはそう言ってにっこりと笑った。
この頃のコヒナは占いの時にもいつも同様の良く言えばはきはきとした、悪く言えばガチャガチャとした騒がしいしゃべり方をしていた。
「二枚目のカードは<剣の7>。こっそりと剣を盗み出そうとする人物が描かれたカードです」
言われてハクイは少しどきりとする。盗もう等という気はさらさらないのだが。
「一枚目に節制、二枚目に剣の7が出ていると、苦しい思いをしてるかもしれません」
「苦しい思い?」
盗まれた方じゃなくて盗んでいる方が苦しい思いをしているというのはどういうことだろう。
「罪悪感、ですね。<節制>は調和や自制を指すカード。一枚目に節制が来る人はズルとか怠けるとかいう不誠実が大嫌いなのですが、二枚目のカードはまさにそのズル、怠け、不誠実を指すカードなんです。周りからはしっかりしていて責任感があると思われているのに、自分ではズルをしていると思いこんでしまう。ハクイさんにはそんなところ、無いですか?」
「まあ、多少はね」
ハクイは曖昧に肯定した。仕事上ではよく感じることだ。自分は少し神経質に過ぎるのかもしれない、と。だがネットゲームの中で言われれば別の意味に捉えてしまう。罪悪感なら確かにあるのだ。
「三枚目のカードは<剣の王>。剣を持った王様です。ソードは理性を示すスート。剣の王は理性で国を治める王様です。このカード一枚では冷静な判断や鋭い洞察力を示します」
「ズルや不誠実をするとその王様に見抜かれるってことかしらね」
「ううん、それよりも冷静でいなさいというアドバイスの意味が強そうです。他の解釈としては、キングは大人の男の人を指します。理性的で鋭い男の人との出会いとか、そういう方に頼ったり相談するといい、という解釈にもとれます。周りにイメージに合う方いますか?」
剣の王。
それは理性の王だという。しかし「剣の王」と聞いてハクイがイメージしたのは理性で国を治める王ではなく、むしろ逆。大剣一つで全てをねじ伏せてしまうような野性味に溢れた王の姿。
「いいえ、全然いないわね」
「じゃあこれから出会うのかも!」
「そうだったらいいわね」
この先に理性的な王が現れて自分を諭してくれるというならありがたい話だ。
「纏めますと、ハクイさんは真面目過ぎます。ハクイさんが少しズルをしても、手を抜いても問題は起きませんし、起きてもハクイさんのせいじゃないです。それでも納得できなければ理性的な男の人に相談して見て下さい。こんな内容になります」
「なあに、それw」
思わず笑ってしまった。酷い結果だ。占いをして貰って「誰かに相談してください」などと言われるとは思わなかった。しかし、その内容は確かにハクイの心を軽くした。
「ねえ、そんな人がもしいたとして。私が頼るのはその人の負担にならないのかしら」
「あ、そういうとこですよ! 頼らないで自分を責めちゃうの。やっぱりハクイさん真面目過ぎなんですよ。二枚目のカードはズルを示しますが、もっとズルしてもいいんですよって言う意味にもとれます。見つかったら思い切り甘えちゃったらどうですか?」
簡単に言ってくれる。きっとこの子は甘えるのが上手なのだろう。この子に甘えられる方も悪い気はしないのだろう。羨ましいことだ。
「甘えるのって難しいわよね。何処まで甘えてもいいのか、とか。向こうの負担になるかもだし」
「大丈夫です。ソードのキングはただ優しいだけの人ではないです。強く理性を持った人ですから、負担になるようならちゃんと教えてくれますよ」
それなら安心だ。もう少しの間甘えさせて貰うのもいいのかもしれない。
「旦那にでも甘えとけばいいだろ」
「うるさいわねヴァンク。それが出来たら苦労しないのよ」
「ま、そりゃそうか。ガキもいるし大変だよな」
ヴァンクが笑った。いつものやり取りだ。果たしてこの男は奥さんに甘えたりするのだろうか。奥さんに甘えられたりするのだろうか。
ギルドの中で既婚者はヴァンクとハクイの二人ということになっている。だから結婚していることの悩みや育児についての愚痴などを言えるのはお互いだけだ。
そういうことになっている。
この日、ギルドメンバーの一人であるリンゴはログインしていなかった。そのことに安堵する。彼だけは知っているのだ。酔っていた時に偶然会ったせいで、うっかり本当のことを話してしまったから。
ギルドメンバーの一人のヴァンクが結婚すると言い出した時、何故か華蓮のアバターのハクイの口から出た嘘を、リンゴ以外は皆今でも信じている。
続けていたらいつの間にか自分にも子供までいることになってしまい、話を合わせるのが大変だった。知識はあると思っていたが、子供を育てたことのない人間にとって、子育てという物が如何に未知のモノなのか思い知らされた。
ハクイこと敷島 華蓮に子供はいない。夫も、いない。
■■■
敷島 華蓮は欠陥人間である。
ギルド<なごみ家>のメンバーは誰一人としてそれを知らない。むしろギルドの中では常識人と思われている節がある。ブンプクなどはそう思っている代表だろう。
だが本当の華蓮は幸せな結婚をして幸せな家庭を築いていこうとしているブンプクの相談に乗れるような人間ではないのだ。
華蓮は一つのことにしか集中できない。何かに集中すると他のことがおろそかになってしまう。他のことは二の次に、「遊び」になってしまう。華蓮自身にその気は無くても相手にそう取られてしまえばそれは事実だ。その「遊び」が華蓮にとってどれほど大切だったとしても。
結婚は一度した。若気の至りというヤツだ。だが自分はそういったモノには向いていなかったようだ。仕事一辺倒のハクイの元から、夫だった人は去っていった。短い結婚生活の間に子供が出来なかったのはせめてもの幸いか。あるいは当時の結婚生活を考えれば当然の結果か。
華蓮は看護師をしている。仕事に誇りを持っている。人の命に係わるその仕事には一片のミスも許されない。仕事中に気を緩めることがあってはいけない。
そのためには休める時には休み、気分転換だってするべきだろう。しかし休みの日に何かをするというのは難しい。何かをするには準備が必要で、この準備がまず華蓮には難しい。休みの日、不規則な仕事で生活リズムが狂っている華蓮が目を覚ます頃には、大抵の店は既に閉まっている。世界とは多くの人に合わせてできているのだ。
むしろ携帯端末の操作一つで温かくておいしいご飯にありつけることをありがたく思うべきだろう。
そんな華蓮の息抜きはネットゲームである。
ネットゲームはいい。最高の遊びだ。準備がいらない。出かけなくてもいい。いつでもできる。自分のペースでのんびりと、あるいは逆にしっかりとやりたいことを。思うように遊ぶことが出来る。何よりミスが許される。何をしてしまっても取り返しがつく。
この世界では、人の死すらも取り返しがつく。
元々は普通にゲームをやっていたが、ある日蘇生術という奇跡がある世界でそれに失敗するのがたまらなく嫌に感じてしまった。そこで関連するスキルの全てを再上限まで上げることにした。
本気で「ゲーム」を楽しむのならばこのスタイルは不便なのかもしれない。だが忙しい仕事の息抜きとして、本気の「遊び」としてなら悪くない。
戦闘力は殆どなく、その場で作成するゴーレムで倒せる敵としか戦わない。モンスターに殺されて霊体となってしまった者を探してダンジョンの深い階層を彷徨う。別に死んだって構いはしない。装備品を一個失うだけだ。回収できずに失われたとしても困るようなものは持ち歩かないし、そもそもそれがハクイのネオオデッセイの楽しみ方だ。
そんなことを続けていると、ハクイはいつの間にかネオオデッセイの世界で<辻ヒーラー>あるいは<白衣の天使>という名でそこそこ知られる存在になっていた。
しかし酷い二つ名だ。辻ヒーラーはともかく、「天使」はない。そんなモノにはなれない。華蓮もハクイもそれぞれの世界であがく人間でしかない。
<辻ヒーラー>は誰に強制されたわけでもなく、自分が好きでやっていることだ。それでもありがとう等と言って貰えれば嬉しくもなる。ネットを通じで出来上がる仮想の世界に自分の価値を見出せる。
だが名が知れればそんな自分の行動は当たり前のことになっていく。
「さっさと直せ」 「なんで回復してくれないの」 「蘇生遅いんだよ」
好きでやっていることだ。こんな言葉を気にする必要はない。
「看護師なのに人の苦しみが分からないの」 「こっちは病人なんだけど」「明日旅行に行くので治らないと困るんですが」。
自分で選んだ道だ。生き方だ。ゲームの中でも、現実でも。
だけど。
ネオオデッセイの世界で、知らないプレイヤーを蘇生するために無茶をして自分が死ぬのは当たり前のことだろうか。
現実世界で他人が楽しむ為に自分の心をすり減らすのは当たり前のことだろうか。
そこまでが当たり前のこととして。
何故できないと罵倒されるのは、本当に当たり前のことだろうか。
人の命は重い。何よりも重い。間違いない。だが、私の命はどうなのか。
敷島華蓮は完璧主義者である。他人の幸せを心から願い、それに尽くすものである。
だが残念ながら天使ではない。ただの人間だ。
だから、仕事で疲れ切った体、気分転換のためにログインしたネットゲームの中で、幽体になって自分の死体を見下ろせば、ついそんなことを考えてしまう時もある。
□□□
初めて<ナゴミヤ>と<ヴァンク>という二人に出会ったのは<竜巣トイフェル>の奥深く。幽霊状態だった二人の蘇生をしたのがきっかけだった。
「蘇生ありがとうございます! ハクイさんですね。お一人ですか? 良かったら一緒に遊びません?」
生き返るなり話しかけてきた<ナゴミヤ>は奇妙な身なりをしていた。魔法使い系らしく杖を持ってはいるものの、町にいるNPCのような恰好だ。恰好が奇妙なら言うことも奇妙だ。ダンジョンを回って蘇生をしていれば礼を言われることはあるが、一緒に遊ぼうなどと言われたのは初めてだった。
「またお前は誰彼構わず……。暇だったら付き合ってくれ。こいつ攻撃力なくてしんどいんだ」
その日は少々疲れていたのだろう。もともと自分のプレイスタイルが他人と違うことに引け目があったハクイは、もう一人の大剣を持った方、<ヴァンク>の言い草に思わずカチンときてしまった。
「攻撃力がなくたってべつにいいでしょ。蘇生して貰っておいてその言い方なんなの?」
「ん?」
「えっ?」
言い換えされると思っていなかったのか、二人は困惑したようだった。
「私に戦闘力ないからってあなたに迷惑かけたかしら?」
「おい落ち着けって。べつに無理に付き合ってくれって言ってるわけじゃないんだ。暇だったらってだけで」
「はあっ? 暇? 暇じゃなかったら蘇生しちゃいけないわけ? モンスターを退治するのは大事だけど、蘇生は暇人のすることだってわけ? ほっときなさいよ。貴方たちだって遊んでるだけでしょう!」
蘇生して貰っておいて突然難癖をつけてきた。ハクイはその時そう思ったのだ。
「え、えええ? 違う、違うよ⁉ 戦闘力がないのは俺」
「はあっ?」
「あー、あんた<辻ヒーラー>か。知ってるよ。わりい、こいつのこと言ったんだ。人のプレイスタイルにケチは付けるつもりはねえよ。俺も大概だからな」
大剣でナゴミヤを指しながらヴァンクが言った。ログを確認すると確かに戦闘力がないと言われたのは自分ではない。
「いやあ、俺攻撃力なくてさあ。一人だとモンスター退治できないんだよね」
「……」
へらへらと笑うナゴミヤの言葉が嘘でないなら、何故トイフェルの奥まで来られたのか。大剣の方、ヴァンクという男は相当な手練れということだろうか。だとすれば、わざわざ足手まといを連れてくるのは何故なのか。
実際ヴァンクはこれまでの間に何度もモンスターに殺され、その度に装備品をはぎ取られてしまったのだろう。今は大きな剣以外何も装備していない。
「あなた、それでいいの?」
余計なこととは思いつつ、つい聞いてしまった。
「嫌ならこんな馬鹿とつるまねえよ。俺も自力で回復できねえしな」
「はあっ⁉ あなた達一体どんなスキル構成してるの⁉」
「別にいいだろ、好きでやってんだ」
そう言われてしまえば返す言葉もない。自分のプレイスタイルも大概だ。
「んじゃ、話もまとまったことだし行こうかあ。ハクイさんよろしくね」
なぜ今の流れで話がまとまったことになるのか。しかもそれを言い出すのは足手まといのナゴミヤの方だ。
いや、そうではないのかもしれない。この二人はいいコンビなのかもしれない。
なんだか、言い返す言葉を考えるのも馬鹿らしくなってきた。
いや、ちがう。
なんだか少し、このコンビに混ざることが。
そもそもさほど悩むことでもない。初めて顔を合わせたもの同士でパーティーを組んで遊ぶのは、ネオオデッセイの醍醐味ではなかったか。
「わかったわよ。よろしく。とりあえずヴァンクさんの装備品を取り返すところからね。相手は何? 」
「ん?」
「えっ? あなた装備盗られたのでしょう?」
「あー、違うんだよハクイさん。ヴァンクはね、装備品落としたんじゃなくて、それで全部なんだ」
「は?」
全部とは。
「失礼なこといってんじゃねえよ。替えの剣は何本も持ち歩いてるぞ」
替えの剣?
「え……、じゃあ鎧は?」
「ねえよそんなもん。鎧なんか来たら剣が鈍るだろが」
ネオオデッセイにそんな設定はない。鎧を着なければ当然受けるダメージは大きくなり、不利にしかならない。
「はあああああっ⁉ あんた何考えてんの? ここ、トイフェルの第三階層よ⁉」
「いいんだよ着てなくて。俺は<狂戦士>だからな」
「狂戦士ってそういう意味じゃないでしょう⁉」
「いや、そういう意味で言ってねえよ⁉」
「だいじょぶだいじょぶ。ヴァンク強いから」
そういう問題ではない。だが言い返すのも疲れる。やはりそこに少しだけ混じる別の感情。
「……まあいいわ。私も蘇生と回復しかできませんからね。その代わり何回死んでも生き返らせてあげるわ」
しかしそのおよそ三十分後。ダンジョントイフェルに<辻ヒーラー>ハクイの絶叫が響き渡ることになる。
「あなた達、一体何回死ねば気が済むのよ!」
自分で言う通り攻撃力のないナゴミヤはひらひらとテレポートで飛び回っては竜たちを挑発し、その後ろからヴァンクが切りかかる。攻撃に特化したヴァンクは自分から切りかかれば強いが、攻撃を受ければ一撃で死んでしまう。その直後、竜をさばききれなくなったナゴミヤも死んでしまい二人そろって自分の元にやってくる。
「いやー。ハクイさんがいると思うとつい」
何度も全滅しそうになりながらの無茶苦茶な戦闘。
無数の竜たちとの戦闘の中で、ハクイはその日二人を何回蘇生したか覚えていない。うんざりだ。うんざりしつつも。
だからそのことに気が付いたのは、二人と別れてログアウトした後だった。
二人は何度も死んでハクイに蘇生されていた。本当にうんざりするほど蘇生した。しかし、あれだけの数の竜と戦ったというのに。
その日、ハクイ自身は一度も死んでいなかったのである。
■■■
数日後、ハクイは再びダンジョン<トイフェル>へとやってきた。
トイフェルは最も攻略難易度の高いダンジョンであり、ハクイが活躍する機会も多い。自然足が向くことも多くなるのだが。
この日の行先にトイフェルを選んだのは「もしかしたら」という期待があったのかもしれない。
トイフェルの第三階層。トイフェルは階層の数こそ少ないが非常に広く入り組んでいる。死人が発生しやすいルートを歩いているとしばらくしてアバターの死体を見つけた。会ったことがない相手だ。しかし肝心のアバターの本体、死体を残してうろついているはずの幽霊の姿がない。
周辺を回ってみるとおびただしい数のを発見した。トイフェルは攻略難易度が高いダンジョンであり死亡率も高いがこれは異常だ。
死体が増えて行く方向に進んでいくと一体の幽霊に会った。この状況について何か知っているかもしれない。蘇生すると名前の表記が<プレイヤーズゴースト>からアバターの名へと変わる。
名前と、その姿には見覚えがある。
「おう、<辻ヒーラー>じゃねえか。助かったぜ」
「あなた!」
大剣と下着だけを身に着けた<狂戦士>、ヴァンクであった。
「この死体の数、一体何があったの?」
「それが、ヴェルミスが巣から出ちまったみたいでよ」
「はあっ⁉」
<地竜ヴェルミス>はトイフェルでも最古竜セルペンスに次ぐナンバー2の存在。他のダンジョンのボスに匹敵する強さを誇るモンスターだ。
「しかもよりによって出口塞いでやがる」
「はあっ!!⁉」
「俺に文句付けんじゃねえよ」
「別につけてないわよ!」
ヴェルミスの出現場所は固定であり、通常広いスペースを持つ自分の「巣」から出てくることは無い。そもそもヴェルミスを討伐するにはその広さが必要なのだ。爪と牙をかいくぐり、空いた長い胴を横から攻撃しなくてはならない。
何かの間違いでヴェルミスが狭い通路に出てきてしまえば討伐難易度はセルペンスを上回る。
「アンタ<狂戦士>なんでしょ。倒せないの? 蘇生なら何回でもしてあげるけど」
「無茶言うんじゃねえよ」
自ら<狂戦士>を名乗るヴァンクにわずかな期待を込めて言ってみたが即座に否定されてしまった。当たり前か。そんな馬鹿なスキル構成のアバターがいるわけがないのだ。
となればヴェルミスが気分を変えて自分の巣に戻るのを待つか。最悪出口から少し離れてくれれば脱出は可能か。どちらかがおとりになればヴェルミスを引きはがすことが出来るかもしれない。
それは自分の仕事だろう。折角蘇生したヴァンクに死なれては困るし、死んで回収できなくなったとしても困るものは持って来ていない。
その提案をしかけた時、<狂戦士>が聞いてきた。
「なあ、あんた<辻ヒーラー>なんだよな?」
どくん。もしかして、この<狂戦士>は「できる」のか。
「ええ、そう呼ばれてるわね」
どくん。もしかして、この確認は先ほどの自分の問いと同じ意味か。
「ひょっとしてなんだけどよ。あんた、<無限バーサーカー砲>、出来たりするか?」
どくん、どくん、どくん。
それはネオオデッセイの中で語られる一つの伝説。<バーサーカー>のスキルの仕様と<蘇生>の処理の際に生じるラグを利用した「理論上は」可能とされる無敵の必殺技。
人は恐怖からくる心臓の高鳴りを、別の感情に勘違いする場合があるのだと言う。おそらくこの時華蓮の身体に起きたのは同じような現象だったのだろう。
つまりは、好きなゲームの中でやってみたかったことが出来るかもしれないと期待している、ただそれだけのこと。
「ええもちろん。あなたができるのならね」
お読みいただきありがとうございました。
すいません、前回と同じような引き方を……。次回はのっけから戦闘の予定です。予定です(二回)
その次回の更新ですが、リアル事情でまた少し間があいてしまいそうです。
また見に来ていただけたら、とても嬉しいです。




