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一番楽しいこと ①

いらっしゃいませ! ご来店ありがとうございます。

暑いですね。暑いって言うかもう熱い。ずっと体に熱が残ってる感じがします。皆様もおからだお気を付けくださいねー。

 ネオオデッセイの舞台となるユノ=バルスム。そこは正義が敗北し、邪悪が蔓延る世界。


 ユノ=バルスムは過去に何度も終わりの危機を迎え、その度にかろうじて終わりを回避してきた。


 終わりの残滓は隙あらば世界を浸食しようとくすぶり続けている。


 世界の終わりに対抗するため、善性の化身たるボナは最期の力を使い、異世界から邪悪を払う勇者を召喚することを決意した。


 ボナに召喚された勇者たちは世界の終わりの残滓である迷宮に赴き、モンスターを退治することで世界を守っている。


 世界の終わりは確かに邪悪なものだろう。善性の化身であるボナさんや私たち勇者がこれと戦うのは当然だ。



 だけど。



<月光洞イブリズ>は世界に安定したエネルギーを届ける事を夢見た科学者たちの失敗によってできたのだという。


<大氷結孔ウモ>の人工精霊ウモさんはいずれ力を失ってしまうボナさんの負担を軽減しようとして作られた。


<竜巣トイフェル>が世界の終わりのきっかけになったのは人が住処を広げようとして神にも等しい最古の竜を怒らせたからだ。


<不死王宮ハロス>のノクラトスさんは人の蘇生を夢見る研究者だった。


<枯渇浸森モグイ>のアブダニティアさんは娘さんの幸せを願って傷ついてしまった神様だ。


<魔封殿ディアボ>のテレジアさんについては謎が多いけど、彼女自身が世界を守った勇者だという伝説まである。


 何処かで誰かが間違えたことで世界の終わりは引き起こされた。はじまった世界の終わりは回避しなくてはならない。


 でも世界の終わりは、そのきっかけは本当に邪悪だったんだろうか。


 善性の化身であるボナさんは世界の終わりを回避するために私たち勇者を召喚したのだという。


 これは本当に善なることだろうか。私たちはボナさんが求めた善なるものだろうか。


 召喚された私たちは強力で、残滓とはいえ世界の終わりを一人で退ける事すら可能だ。


 もしかつての世界の終わりのように、ボナさんが間違えていたとしたら。ボナさんが信じた勇者たちが善なるものでなかったとしたら。



 次に起きる世界の終わりは、一体誰に止められると言うんだろうか。



 ■■■



『ただいま~』


 お仕事から帰ってきた私は早速ネオオデッセイの世界にログインした。


『お帰りなさい』


 ギルドチャットには返事が一つだけ帰ってくる。


『あ、レナルドさん。ただいまです~』


『さっきまでブンプクさんとショウスケさんいました』


『そうなんですね~。入れ違いになっちゃっちゃいました~』


『うん』



 レナルド君は最近またインの増えたブンプクさんとショウスケさんに懐いていてよく三人でお出かけしている。私も時々同行させて貰う。


 レナルド君はなんだかんだでギルドになじんでしまった。私としても大事な後輩だ。


 最初に会った時はほんとどうなるのかと思ったけど。最初っていうかうちで私の部屋にレナルド君がいた時。あの時はほんとびっくりした。びっくりっていうか、レナルド君には悪いけどとても怖かった。


 お部屋の件については私から直接言うと良くないかな、ということでブンプクさん経由で遠回しに伝えて貰った。ただブンプクさんなので遠回しにはならなくってレナルド君がまた「ごめんなさいごめんなさい」モードに入ってしまったりもしたけど。


 ごめんなさいモードのレナルド君をブンプクさんに宥めて貰いつつ聞いたところによると、レナルド君はギルドハウスを探検していたのだそうだ。で、たまたま私の部屋にいる時に私がログインしたのだ。


 レナルド君にしてみれば「ここがギルドハウスですよ」と紹介されたところを探検していたら入っちゃいけない部屋があったなんてびっくり仰天だったろう。可愛そうなことをしてしまった。


 悲劇を繰り返さぬようにということで。なんと私の部屋のドアには鍵が付けられた。家主である師匠は別として、このドアを開けられるのは私だけである。


 何という特別感。


 ちなみにギルドメンバーと猫さん以外は入ることが出来ない玄関の仕様とは違い、カギがかかっているだけなのでドアを開けてしまえば他の人も入れる。食虫植物たちで綺麗に飾ったお部屋をギルドの人たちに見て貰うこともできるわけだ。


 レナルド君の前にギルドに加入した「リオンさん」は一向にログインしてこなくなった。ただ、師匠によるとあれはレナルドさんだろうとのこどだ。


「そうなんですか?」


「うん。うちに入りたいなんていう人そうそういないだろうからさあ。もともとコヒナさんのファンだろうとは思ってたんだよね」


「私のファンですか? ブンプクさんじゃなくて?」


 ブンプクさんのファンだと言うなら納得がいく。ベテランだし、優しいし、レナルド君も良く懐いている。それに実は<骨董屋>として知られる有名プレイヤーだ。でも私なんぞ歴一年のぺーぺーである。


「ブンプクさんあんま町行かないからねえ。占いやってたコヒナさん目当てだったんじゃない? ギルド選びのきっかけなんて些細なもんだからね。ネオデも暇してる人多いし面白そうなことやってる人には近づいてみたくなるもんだよ」


 そういうものかな? 本当だったら嬉しい。私だけじゃなくブンプクさんやリンゴさんの縁にもつながったということだ。


 リオンさんに加入したいと言われた時、最初師匠はリンゴさんに恨みを持つ人じゃないかと疑ったのだそうだ。リンゴさんは殺人犯(PK)なので恨みを持ってる人はいる。ギルドに紛れ込んでリンゴさんに復讐しようとした人も実際過去にいたんだという。


 ゲームのシステム上人殺しが出来るエリアは限られているので、殺されるのが嫌ならそこに近づかなければいい。


 逆恨みも甚だしいと思うけど、それは私がPKに恨みを抱くより先にリンゴさんに会っていたからかもしれない。PKに殺されたことないしね。一人で対人エリアなんか行かないし、リンゴさんと一緒だと潜伏状態を解いて現れたPKさんが愛想よく声をかけてくれたりする。


 なので私から見たPKさんたちのイメージは強面の上級生だけど実はお兄ちゃんの友達、みたいな感覚だ。それにPKさんのなかにはPKであることに誇りと言うか職業意識を持っている人も多くてお話を聞いてみるとなかなか面白い。お化け屋敷のお化けみたいな感覚なのかな? 後日占いのお客さんとして来てくれた人もいる。


 もちろん全部のPKさんがリンゴさんの友達と言うわけではないから対人エリアに行くときは十分気を付けなくちゃいけない。対人エリアで殺された時には装備品を一つ取られてしまうのだ。コヒナソードや真・バルキリーコヒナの鎧を取られてしまってはショックどころの騒ぎではない。


 その気になればリンゴさんを通じて「裏ルート」から買戻しをすることもできるみたいだけど、その時はとんでもないお値段になってしまうからね。


 なおギルドのメンバーは対人エリア以外でも殺害可能だけど、殺された時には死んでしまうこと自体以外に特にデメリットはない。ただこれは設定によって変えることもできるらしい。対人エリアで殺された時と同じように、死亡時に装備品を一つ奪われてしまう設定にもできるのだそうだ。


 昔はこのシステムを悪用してギルドに入会した後に殺害、蘇生を繰り返して装備品をはぎ取ると言う悪質行為も横行していたという。今はギルド加入時に警告メッセージが出る仕様にはなっている。それでも確認しないで加入してしまったとか、確認はしたけど大丈夫だと思ったなどの理由で時々被害があるとか。気を付けないとね。


 ちなみにリンゴさんに復讐するためにギルドに潜入した人は、潜入には成功したもののリンゴさんにこてんぱんにやられて捨て台詞を履きながら脱退していったそうだ。さもありなん。


 尚、この人の潜入の成功についても師匠は初めからうすうす気が付いていたらしい。その上で加入を認めた。なんでかというとリンゴさんを殺してあげたかったからである。その逆恨みさんでは全然役者が足りなかったけど。


 この話はリンゴさん本人からも聞いたことがある。


 殺人者であるリンゴさんにはいつか正義の味方に討伐されるという夢があるのだそうだ。さすがリンゴさん、考えることが人と違う。全然痺れない憧れない。


 この夢叶うかどうかというと、今のネオオデッセイの環境では難しいと言わざるを得ない。対人用のスキル構成ではモンスターを倒すのが大変だし、そもそも退治すべきPK自体が少ないのだ。対人専門の正義の味方なんて成り立たない。もしいるとすればそれはPKさん。つまりリンゴさんそのものだ。


 そんなリンゴさんもモンスター相手だと普通に死ぬけどね。一人なら死なないのかもだけど。危なくなったら逃げちゃえばいいし、わざわざ死ぬような所に行かなくてもいいし。


 でもいくらリンゴさんが強くて殺されたい願望を持っていたとしても、ギルドに殺人犯が混じるのはちょっと怖いなあ。


 リオンさんがレナルド君を加入させたというのも考えてみれば怖い。リオンさんがレナルド君で、レナルド君がいい子だったから良かったけど、いつの間にか怖い人が入っていたらと思うとぞっとする。


「でもなんだかんだみんな強いからねえ。リンゴさんクラスの人ならともかく、にわかのギルドPKなんか案外勝っちゃうんじゃない? 俺以外はだけどさ」


 まあたしかに師匠はにわかPKには勝てないだろうな。ダメージ当てられないからね。


 でも実は我がギルドにおいて、リンゴさんクラスの本物のPKに一人で「勝て」ちゃうのはリンゴさん以外では師匠くらいのものなのである。えへん。本物のPKからは逃げ切ればこっちの勝ちだからね。PKに襲われて逃げ切れる人って、ギルドの外にもそんなにはいないらしいよ! えへん!


 マディアの町でお店の準備をしているとレナルド君もやってきた。


「コヒナさんおかえりなさい」


「レナルドさん改めてただいまです~。占いしていきますか~?」


「ううん、見に来ただけ。ダンジョン行ってきます」


「は~い、行ってらっしゃい」


 レナルド君はショウスケさんやブンプクさんに戦い方を教えて貰ってダンジョンの深い所までも一人で行ける。迷子率も考慮すると私より先にボスのソロ討伐を達成してしまうかもしれない。頑張らないと。


「コヒナさんこんにちは」


 レナルド君を見送ろうとしている所に声を掛けてくれたのは<マッキー>さんという方だった。マディアの町でよく見かける人で、何度か占いのお客さんになってくれたこともある。


「マッキーさん~、いらっしゃいませ~、こんにちは~」


「こんにちは」


 レナルド君もマッキーさんに挨拶する。ブンプクさんの言いつけ通りちゃんとマッキーさんの方を向いてお辞儀をしていた。えらい。でもマッキーさんは丁寧な挨拶をされて面食らってしまったみたいだった。


「あ、どうも……」


 マッキーさんはレナルド君に気が付かなかったのだろうな。ちょっと距離もあったし私とレナルド君が知り合いだと思わなかったのかもしれない。


「マッキーさん、こちらレナルドさんです~。うちのギルドの新メンバーなんですよ~」


「あ、そうなんですね。それはどうもこんにちは」


「はい、こんにちは」


 レナルド君がまた丁寧にお辞儀をした。


「あれ、コヒナさんのギルドって<なごみ家>ですよね? ハクイさんとか<骨董屋>さんとかがいる」


「そうです~。ハクイさんとブンプクさんご存じなんですか~?」


「はい。ハクイさんに助けて貰ったことがあって。<骨董屋>さんは有名人ですし」


「そうだったんですね~」


 言われてみればハクイさんもブンプクさんも有名人だ。ファンがいるって聞いたこともある。リンゴさんやショウスケさんもそれぞれの界隈では有名プレイヤーだし、ヴァンクさんは裸パンツだし猫さんは猫さんだ。うち有名人多いな。平凡なのは私と師匠くらいのもんじゃないか。


「<なごみ家>ってギルドメンバー募集してたんですか?」


「え? ええと~? 」


 マッキーさんに言われてちょっと戸惑う。


 マディアの町でもギルドメンバーの勧誘をしている人達は時々見かける。どうすればメンバー増えますかっていう相談を受けたこともある。あのときは占いしている所にたまたま入るギルドを探している人が通りかかってめでたしめでたしだったっけ。


 でもうちでは募集してないと思うなあ。うち変な人ばっかりだし。


「特に募集はしてないと思いますけど~?」


「でもレナルドさんは新メンバーなんですよね? 」


「そうです~」


 レナルド君は変な人仲間です。


「じゃあ僕も入れて貰えませんか?」


「え、えええ?」


 じゃあって言われてもなあ。困ったぞ。ハクイさん最近ログインしてないし、レナルド君の時もそうだったけど私一人で判断していいことじゃないんだよ。


『レナルドさんどうしましょう』


 ギルドチャットで隣にいるレナルド君につい助けを求めてしまう。そんなこと言われてもレナルド君もこまるよね。わかってる。でも溺れる者は沼スライムも掴んでしまうものだ。


『こまっているなら入れてあげたいです』


 優しいなレナルド君!


 でも私たち二人で決めるのはやっぱりなあ。


「私達ではわからないのでギルドマスターに聞いてみて下さい~」


 とりあえず逃げよ、と思ったのだけどマッキーさんは間髪入れずに返事を返してきた。


「<なごみ家>のマスターに紹介してもらえるんですか⁉ いつですか⁉」


 ……えっ。


 いや、紹介って。うちのマスター、そんな大層なもんじゃないですよ?


「ええといつもインが遅いのでいつになるか~」


「……なるほどそう言うことですか」


 本当のことを言ったのだけどマッキーさんは露骨にがっかりしてしまった。


 いや違うよ?


 期待させといて本当は会わせる気がないとかそう言うのじゃないよ? 確かに逃げようとはしたけど。マッキーさん多分勘違いしてるけど、うちそういうギルドじゃないよ?


「いえ~。多分今日も来ると思います~。ただリアル事情で帰って来るのが遅いだけなんです~」


「あっ、そうですよね。<なごみ家>のマスターですもんね。リアルも色々とお忙しいですよね」


「ええと……」


 多分違う。確かに師匠はリアル忙しいっぽいけど。


 うちの師匠は控えめに言ってもいい人だと思う。


 色んなこと知ってるし、優しいし、一緒にいると楽しいし、背高いし。二次会で知らない人から狙われてそれに気が付かないという困ったとこもあるけど、そこもまたいい。顔も中々でイケメン俳優のナントカさんに似てる。猫さんも「お、おう。だいぶイってんな」と同意してくれた。


 でもマッキーさんの想像とうちの師匠は多分違う。


「じゃあマスターさんいらっしゃるまでここで待っててもいいですか!」


「え、ええと、それは構いませんが……」


「ありがとうございます!」


 マッキーさんはそう言うと椅子に座っている私の隣の地面に腰を下ろした。あ、そこで待つんですね。


 レナルド君は無言で私たちの様子を見てたけど、やがて私を挟んでマッキーさんと反対側の隣に座った。うん、出かけるタイミング逃しちゃったよね。「じゃ、僕ダンジョン行ってきます」って言いだしずらいよね。ごめんね。


 私だけ椅子に座ってるのも申し訳ないのでお二人にも椅子をお渡しした。占い屋さんを出すときは団体のお客様用に数脚持ち歩いているのだ。


「お、これはかたじけない」


「ありがとう」


 街中で三人同じ方向に椅子並べて座ってるのも、これはこれで妙な光景だな。面接試験の会場みたい。


「ギルドマスターさん、どんな人なんでしょう。楽しみだなあ」


「あははは~」


 ほんとどんな人なんでしょうね~。あんまり期待しない方がいいんじゃないかな~。


「ナゴミヤさんは優しい人です」


 隣のレナルド君がマッキーさんに教えてあげているけれど、これはブンプクさんから聞いたのを言ってるだけだ。レナルド君と師匠って時間帯のせいであんまり被らないんだよな。


「ナゴミヤさんっておっしゃるんですか。 自分の名前ギルド名にしちゃうなんてやっぱりすごい人なんですね」


「うん」


 うんて。レナルド君よくわかってないでしょ。


「あ、あははは~」


 師匠早く来て下さい。このままではマッキーさんの中の師匠が大変なことになってしまいます。



 □□□


 レナルド君は嬉しそうにマッキーさんにブンプクさんのことを教えていた。マッキーさんの方も有名プレイヤー<骨董屋>の意外な一面を知れて楽しそうだ。ブンプクさんの馬車に乗せて貰った話を聞いた時にはマッキーさんは本気で羨ましがっていた。レナルド君も得意げに御者台からの眺めについて話している。


 ううん、この人なら一緒にいても楽しそうだな。ちょっと安心。でもそれはそれとして、こんな風に三人並んでると占いのお客さん入りずらいと思うんだよなあ。


『ただいまあ~』


 やっと師匠が帰ってきた。ギルドチャットの挨拶に返す間もなくすぐにマディアの町に本体がやってくる。


「師匠お帰りなさい~」


「おかえりなさい」


「ただいま~、ってなにこれ占いストリート⁉」


 三人で並ぶ私たちを見て声を上げる。違います。占い師は私だけです。


「師匠~。こちらのマッキーさんがギルドに入りたいと」


「ええっ⁉ 何でっ⁉」


 この間もやったなこの流れ。


「こんにちは。マッキーと申します。ナゴミヤさん、お会いできて光栄です」


 堅い。マッキーさん堅いよ。この人そう言う人じゃないよ。


「あ、あ~どうも、こちらこそ光栄です……?」


 ほら。そんなこと言われたことないもんだからテンパっちゃってるじゃん。


「師匠、マッキーさんは昔ハクイさんに助けられた方だそうです。後ブンプクさんのことも知ってるそうです」


「あ、あああ~、そう言うことですか。でもハクイさんは今あまりログインしてないですよ?」


「ええっ、そうなんですか? 何故です?」


「さあー? リアル事情らしいですが」


 多少知ってはいるんだけど、師匠マッキーさんとは初対面だからね。リアル事情とか本人いないところで話すものじゃない。


「で、でもたまにはいらっしゃるんですよね?」


 マッキーさんハクイさんのこと大好きだな。


「あー、来ますけど週イチくらいかな。それにうちのギルド、他のメンバーもイン少ないのであんまりお勧めしないって言うか」


 師匠がまた一生懸命予防線を張っている。これは意地悪してるんじゃなくてがっかりさせたくないのだ。楽しませられる自信がある時の師匠はぐいぐい来てうざい位なんだけど。


「でも週イチはくるんですよね? 」


 ほんとハクイさん大好きだな!


 もしかして占い屋さんに顔出してくれてたのもハクイさん目当てだったのかな? もっと早く知ってればいっぱいログインしてた時期もあったのになあ。


「あー、二週にいっぺんくらいかも……」


 レナルド君が来た日以来ハクイは来てない。あれから十日くらいたっているし嘘じゃない。今後のこともわからないからね。でもマッキーさんの決意は固かった。


「それなら是非加入させて下さい。なんでもします」


「あ、いや~。特に何もしなくてもいいんですが……。俺も何もしてないし……」


 師匠はこのところ以前にも増して帰りが遅いからね。お疲れなのだ。無理しないで下さいね。


「……どうしても駄目でしょうか」


「え⁉ え、いやいやいやいや」


 マッキーさん的には師匠が頑なに入隊を拒んでいると思っているんだな。何か理由を付けて断ろうとしている的な。


「ええと、入隊自体は構わないんですが」


「ホントですか!」


「はあ、その。でもうちのギルドほんと変人ばっかりでして。それに今インしてる人数も少ないですからあまり楽しくないかもしれませんよ」


「なるほど、 そういうことでしたら私、頑張ります!」


 マッキーさんは何を頑張るつもりなんだろう。


「あ、ええと……。ハイ……俺も頑張ります……」


 師匠は何を頑張るつもりなんだろう。


 ぴろりん、とシステム音。


 System:<マッキーがギルドに加入しました>


 こうして<なごみ家>に新たな仲間が加わったのでした。

お読みいただきありがとうございました!

次回の更新はさほどお待たせしない予定です。例によって一話にまとまらなかったので二話なったせいですね。見直ししまして近く投稿させていただく予定です。

また見に来ていただけたらとても嬉しいです!

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