ギルド<なごみ家>へ、ようこそ ! 1
ご来店ありがとうございます!
本日もよろしくお願いいたします。
テレジアさんに会った翌日。
ログインするとそこは師匠の家の私の部屋だった。となりの部屋に師匠の気配がする。私は思い切り自分の部屋のドアを開け放った。
ばーーーーん
「師匠、ギルドに入れてください!」
こういうのは勢いだ。
「へっ?」
自宅の工房でお洋服を作っていたらしい師匠は私の突然の登場に驚いていた。
「ギルドに入れてください! 師匠、ギルドマスターなんですよね?」
もう一度お願いを繰り返す。
「何で、あー猫さんから聞いたのかあ」
その通りだ。昨日の猫さんのお話だとこっちから言えば入れてくれそうな感じだったんだけど。
「駄目ですか?」
「いや、駄目ってわけじゃないんだけど。うち変な人ばっかりなんだよ」
「変って、師匠よりもですか?」
「ううん。みんな普通にゲームやってないっていうか……。今、普通に俺を変な人呼ばわりしたな?」
「自覚無いんですか?」
「ある ////」
あるのか。何嬉しそうにしてるんだ。
「悪い人たちじゃないんだけど。 でもみんなマニアックっていうか、ベテランすぎて趣味に走ってて濃いんだよ。普通にネオデやるなら他のギルドの方がいいと思うんだよね」
なにやら寂しいことを言われている気がする。新人が入るとやりずらいのだろうか。
「私が入ったらお邪魔ですか?」
「いや、そんなことは無い。みんな喜ぶと思うし。寧ろ呼べって言われてるし」
なんだ、他のギルドの方も私のことは知ってるんだ。
「では何が駄目なんですか?」
「いや駄目なんじゃなくてね。さっきも言ったけどさ。ネオデ普通に楽しむなら他の所の方ができる事多いんじゃないかって」
「?」
「だからさ、スキル育って新人卒業したら大手のギルドとかに入った方が楽しいんじゃないかなあとか」
ははあ。猫さんが言ってたのはこのことか。変人の自覚があるから心配ってことだな。要はいつもと同じで私に気を使ってくれてるってことなんだろうけど。師匠、それは多分ちょっと違うと思います。
「私は師匠のギルドに入れて欲しいのですが!」
「うっ」
私が入りたいと言って、他の方も来いと言ってくれてるのに何を困っているんだこの人は。
「じゃあ、仮ってことで。いつでも抜けられるってことで試しに入ってみるかい」
予防線凄いな。 でもそこのギルドマスター、師匠なんでしょう? 多分楽しいですよ、そこ。
「はい!是非!」
元気に返事をすると、師匠からギルド勧誘のシステムメッセージが届いた。
system: 『ギルド<なごみ家>に入会しますか?』
ギルド名、なごみ家て。師匠の名前まんまじゃないか。
yesを選択すると、システムのウインドウにギルド加入したことが表示される。
system:<コヒナ>が加入しました。
そのシステムメッセージの直後、大量のチャットが画面に飛び込んできた。
ヴァンク :『おおっ、やっときたか!』
ブンプク :『え、新人さん? すご~~!』
ショウスケ:『はじめまして。どうぞよろしくおねがいします』
ハクイ :『えっ、何?、誰!?』
リンゴ :『マスターの弟子っていう人だね。宜しく』
ハクイ :『何それ!』
ナゴミヤ :『はいはい、みんな静まりたまえ。コヒナさんは一月前に始めたばかりの新人さんで、僕の弟子だよ』
ブンプク :『え、ほんとの新人さん? わ~~、わ~~~』
ハクイ :『はあっ!? 聞いてないわよ! なんで黙ってたのよ!』
わあ、大歓迎。これはギルドメンバーにだけ聞こえる回線なんだな。こちらもご挨拶せねば。
コヒナ :『こんにちは、はじめまして。ナゴミヤさんの弟子のコヒナです。まだ何もわからない新人ですが、どうぞよろしくお願いします』
ハクイ :『!』
ブンプク :『か、可愛い~~!』
ヴァンク :『ナゴミヤ、今何処だ。ナゴミヤの家か?』
ナゴミヤ :『はいはい。お静かに。そんなわけでいまから歓迎会やるよ! 暇な人はうちに集合!』
ヴァンク :『暇じゃないヤツいるのかよwww』
ハクイ :『あんたと一緒にしないでよ! 行くけど!』
ブンプク :『ええ~~、待ってよ~~~。ああもう。言ってくれたら準備しといたのに~~』
師匠が歓迎会を宣言してすぐ、庭に三人のアバターが転移してきた。
リンゴさん、ハクイさん、ヴァンクさん。みんなギルドチャットで名前を見た人たちだ。
リンゴさんは女の人で、赤いケープに着いたフードを目深にかぶっている。白いブラウスの上から真中を紐で締める赤い胴衣にロングスカート、その上からエプロン。手には籐の篭バック。
赤ずきんちゃんだ。女の人と言うよりは女の子と言った方が合ってるかもしれない。
ハクイさんも女の人。白いワンピースに白いケープ、それに白のミトラ帽。銀色のメガネがかっこいい。こちらはコスプレ看護師さんだな。
最後のヴァンクさんは男の人。ヴァンクさんが三人の中で一番目立っている。
筋肉もりもりで背中に大きな両手剣。でも特筆すべきは服装。いや服装と言っていいかどうか怪しい。だって服着てないし。上半身裸で下半身もパンツだけ。防御力が心配だな。防御力以外もいろいろ心配だな。
師匠に散々予防線を張られていたしこの程度で引きはしないけど、インパクト強すぎて他の二人も中々にインパクトがある服装なのに頭に入ってこない。
少し遅れてもう一方現れた。ショウスケさん。男の人でフルプレートに片手剣と盾という騎士スタイルだ。
「丁度今ブンプクと一緒に狩りしてたんです。ブンプクは歓迎の準備してくから先はじめててとのことです」
ショウスケさんが師匠に向って言う。
「そっか、ブンプクさんに悪いことしちゃったね」
「いや、ブンプクも好きでやってるんだしいいんじゃないかと」
「そう? じゃあ、お言葉に甘えてはじめちゃうかね。ではみんな適当に座ってね」
そういうと師匠は庭にある大きなテーブルのお誕生日席に座った。師匠がちょいちょい、私を手招きして隣の席を指すのでそこに座らせてもらう。
私の反対側の隣に赤ずきんちゃんのリンゴさんが嬉しそうに座ろうとしたけど、ナースのハクイさんに「あんたはこっち」ともう一つ隣に押しやられた。私の隣にはハクイさんがそのまま座る。
りんごさんは「ち」とつぶやいたけど、大人しく従ってハクイさんの隣に座った。
私の向かいにはパンツのヴァンクさん、その隣に騎士のショウスケさん。実に対照的な二人だ。
お誕生日席の師匠を除けば男性陣と女性陣が大机を挟んで向かい合ってる状態。
何だか合コンみたいな並び方だ。
「じゃあ、ブンプクさんは来てないけど始めちゃおうかね。ええと、今日はよろしくお願いします。じゃあ、早速自己紹介いっちゃいましょうか」
師匠の言い方も何か合コンみたいだな。
「んじゃ、ブンプクさんまだだからコヒナさん最後ね。それぞれ得意なこととヤバいところを解説してって下さい。ではヴァンクさんからどうぞ」
師匠の言葉に向かいの筋肉パンツことヴァンクさんが立ち上がる。
「ヴァンクだ。ナゴミヤが弟子を取ったっていうからずっと会わせろって言ってたんだけどな」
「そうなんですね。よろしくお願いします!」
ヴァンクさんはパンツ一丁だけど私のことを既に知っていて歓迎してくれているようだ。ありがたい。
「俺が変わってると言えば攻撃力に特化してるってことくらいだな。このギルドの中では珍しい常識人だ。他の奴と違って妙な趣味や隠し事はない。気になることがあれば遠慮なく聞いてくれ」
そうか、隠し事はないのか。もう少し隠してもいい気もするけど。
「気になることがあれば」って明らかに振りだし。まあ、そう言ってくれてるのだからお言葉に甘えて聞いておくか。
「ヴァンクさんはどうしてパンツ一丁なのですか?」
思い切って聞いたのに師匠は「wwwwwww」と爆笑していた。リンゴさんは「聞くんだ、そこ……」と何やら感心している。だってせっかくだし。
「おう。何故パンツ一丁か、だな。答えは一つ。システム上の制限でパンツは脱げないからだ」
「なるほどー」
ふむ。予想のナナメ上の答えが返ってきたぞ。ナイス、システム上の制限。
「ちょっと! コヒナちゃん引いてるじゃない!」
「いえ、大丈夫です!」
「ええっ?」
ハクイさんが心配してくれたけど、別に困ることでもないし。
「大丈夫なんだ……」
リンゴさんも感心してくれている。
そりゃ私だってリアルでパンツ一丁の男の人がいたら困るけれど、ゲームのグラフィックだしね。
「せめて歓迎会の間は下くらい履きなさいよ」
「服なんて着てられるか。肌を晒してないと剣が鈍る」
「そんな効果があるんですか!」
ハクイさんは尚も私に気を使ってくれるが、それよりもヴァンクさんのお話が興味深い。
「あー、裸にそんな効果無いからね。あれはヴァンクさんの趣味だよ」
師匠が教えてくれる。
「えっ、そうなんですか!?」
ちょっと信じかけたぞ。危ない。
「そうだ。システム上の効果はない。だがアバターに衣服を着せないことで緊張感を高めることはリアルでの精神を研ぎ澄ますことに繋がり」
「おお!」
そうだよ。精神状態と言うのは確かにプレイに影響する。あり得るかもしれない。
「いや、そんな効果無いからね?」
ないか。ないな。師匠のつっこみに我に返る。信じるとこだった。危ない危ない。
「ナゴミヤ、俺この子ちょっと心配だ。もっとしっかり色々教えてやれ」
言い出しっぺの筋肉パンツ、ヴァンクさんにも心配されてしまう。
「すいません! 気を付けます!」
「いや、なんかその、ごめんな?」
「?」
ヴァンクさんにも謝られてしまった。教えていただいてむしろこちらがお礼を言うべきところだと思うんだけど。
「ヴァンクさんは『狂戦士』だよ。攻撃力異常特化だから、鎧着てもあまり意味ないんだ。回復スキルも入れてないから、怪我したら蹲って自然に治るの待つしかないし。しかも回復促進もないから凄い時間かかる」
「それはなんだかとても大変そう、と言うか難しそう、というか」
随分と変わったプレイスタイルだ。
「ダメージなんざ受けなきゃいい話だろうが。その前に倒せば済むことだ」
「なるほど?」
流石にそういうわけにはいかないだろうから、これもヴァンクさん流の冗談だろうか。
「ああ、これは冗談じゃないよ。ヴァンクさんは……。そうだな、レッサーデーモンなら一撃?」
「まあ、レッサーならな」
「えっ、一撃!?」
一撃って、あの一撃!? とんでもない強さだった猫さんだって一撃とはいかなかった。
「レッサーだぞ? グレーターデーモンなら2,3回は切らないと無理だ」
「えええっ!? そんなことできるんですか!? 見てみたいです!」
「……ナゴミヤ、この子スゲエいい反応するな」
「でしょー?」
師匠は偉そうにしている。褒められたのは私ですよ。
「ヴァンクさんは向かうところ敵なしだけど、先制攻撃食らったらアウトなんだよね。特に魔法だと躱すってわけにもいかないし」
「うるせえ、詠唱前に叩っ切ればいいんだろうが。殺るか殺られるかだろ、戦いってのは。先にデカいの当てた方が勝つ。当然だろ」
グレーターデーモンを2,3回で。攻撃力に特化させるとそうなるのか。極めたなら「ダメージを受ける前に倒す」だって冗談じゃないのだ。
パンツ一丁は伊達じゃない、と言うことだな。
でも、鎧や服がシステム上本当に意味なかったとして、それを着ない理由にはならない。ヴァンクさんは気が付いてないようだけど、服には他にも大事な仕事があるからね。
ふんふん、流石師匠がマスターを務めるギルドだけのことはある。一人目からなかなかに濃い。
「じゃあ、次はショウスケさんね」
ヴァンクさんの隣に座っていた騎士スタイルのショウスケさんが立ち上がった。
「ショウスケです。ええと、ヴァンクさんみたいな個性はないです。スキルは……。スキルも普通です。すいません」
何故かショウスケさんは謝る。
「ショウスケさんはうちで一番強いよ。猫さんと同じくらい強い」
「おお、そうなんですね!」
猫さんは「なごみ家」の皆さんと交流あるんだな。
「いやいやいや、そんなことは。ナナシさんと比べられては困ります」
ナナシさんて誰だっけ。あ、猫さんの事か。そう言えばそんな名前だった。
「そうでもないと思うけど。ショウスケさん、ドラゴンスレイヤーだし。」
「ドラゴンスレイヤー?」
師匠の解説に興味をそそられる名前が出てきた。
「うん。一番強いモンスター<最古竜セルペンス>をソロで倒した人のことだよ。システム上の称号じゃなくてプレイヤー間で言われてるだけだけど」
「うおおお、かっこいい!」
そうか、この世界には<ドラゴンスレイヤー>が実在するんだ。すごいな。いつか私もその称号を手にしたりできるかな。
「いや、運が良かっただけで。ドラゴンスレイヤーというならヴァンクさんやブンプクもそうですし」
「ヴァンクさんもドラゴンスレイヤーなんですね!」
筋肉パンツ恐るべし。
「いや、俺はセルペンスをソロで倒しただけだ。ドラゴンスレイヤーじゃない」
ヴァンクさんがちょっと悔しそうに言う。
「???」
あれ、セルペンスをソロで倒した人がドラゴンスレイヤーじゃないの?
私が「?」マークを連打していると師匠がその意味を教えてくれた。
「ヴァンクが言っているのはね、セルペンスを倒した時にはセルペンス用にスキルや装備を調整して臨んだって意味だよ。普通はそれでもドラゴンスレイヤーでいいんだけどね」
「なるほどー」
ヴァンクさんのこだわりってことか。
ショウスケさんはいつもと同じスキル構成、同じ装備で倒したから凄い、と言うわけだ。
「それだけじゃねえ。あの時俺はっ……。鎧を着ていたっ!」
「はいはい、そうだねー」
ヴァンクさんの血を吐くような叫びを師匠はさらっと流した。ヴァンクさん的にはスキルだけじゃなく裸で倒さないと倒したことにならないのか。パンツ道は奥が深い。
「強さにも色々あるんだけど、ショウスケさんが凄いのは同じ装備、同じスキル構成で全てのモンスターをソロで倒したってとこ。ドラゴンスレイヤーだけじゃなくて、デーモンスレイヤーでジャイアントスレイヤーで、って挙げてったらきりないんだけど」
昨日のバルキリーコヒナの鎧の時に師匠には装備を使い分けろと言われた。ゲームならばそれが当然。でも、一つのスタイルで全てのモンスターを打ち取ったというのは最強の在り方の一つだろう。
「それは、凄いですね……」
「いやいや、一応勝ったことがあるってだけで、死んじゃうことも多いですから」
そう言いつつもショウスケさんは嬉しそうだった。
「コヒナさんと同じ片手剣と盾のスタイルだから色々教えて貰えばいいよ」
「はい! よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いします、コヒナさん」
ショウスケさんが席に着くと、丁度誰かが転移してきた。
さっきお話に出ていたブンプクさんと言う方だ。
女の人で、桜色の着物に袴、腰には日本刀を佩びている。和風の剣客? みたいなスタイル。
「おっ待たせ~~。あっ、コヒナちゃん初めまして!よろしくね~~」
「初めまして、よろしくです!」
「か、可愛いい~~~~」
ブンプクさんがそう言いながら机の上に色々お料理を並べだす。
わわ、凄いご飯。ピザ、色鮮やかなサラダ、凄い大きなお魚の丸焼きとか、豚の丸焼き。さらにクッキーやケーキ、様々な果物を使ったスイーツまでが大きな机に所狭しと並ぶ。
「わー、凄いですね! お料理ってこんなに色々出来るんですね!」
「ん~~、いい反応ありがと~~。まだあるからいっぱい食べてね~~」
ブンプクさんはそう言って空いていたドラゴンスレイヤーのショウスケさんの隣の席に座った。
「ブンプクさんありがと。んじゃ、丁度いいから自己紹介のご挨拶どうぞ」
「あ、私? はいはい。ブンプクです。<なごみ家>へようこそ。私以外のメンバー、色々と濃くてびっくりするかもだけど、みんな悪い人達じゃないからね~~」
ブンプクさんも普通の人っぽい。ショウスケさんも強いけど普通の人っぽかったし。というか普通じゃなさそうなのはヴァンクさんと師匠くらいだ。
「気をつけろよ。こんなこと言ってるけど一番やべえのはブンプクだからな」
見た目的にはいちばんヤバそうなヴァンクさんが言う。
「えっ、そうなんですか?」
「ヤバくないよ~~。そういうヤバさじゃないから安心してね~~?」
ブンプクさんがひらひらと手を振る。ブンプクさんは自分でも完全に否定しきれてないことに気が付いているんだろうか。ヤバさにも種類があるらしい。
「ブンプクさんはこの世界でも五本の指に入るアイテムコレクターだよ」
「アイテムコレクター?」
師匠がまたも魅力的なキーワードを出してくる。
「ブンプクさんは大きな家を三つ持っていてその家の全部が隙間なく置かれた激レアアイテムで埋め尽くされてるんだ」
「家が三つ!?」
この世界の家という物は途方もなく高い。小さい家でも私が手に入れられるのはいつになるかわからないというレベルのものだ。
「うん。界隈では<骨董屋>っていうあだ名で呼ばれてる有名人だよ。家三つって聞くとみんなびっくりするけど、飾られてるアイテムの中には一つで家が三つくらい建つ値段が付くのや、ガチで値段が付けられないものもあるんだ」
「そんなアイテムがあるんですか!?」
「んふふふ~~。気になる?」
こんな話聞いて気にならない冒険者がいるだろうか。
「はい! 見てみたいです!」
「んふふ~~。そっかそっか~~。今度ゆっくりうちの博物館案内するね~~」
激レアアイテムの博物館に住んでいるなんて、確かにヤバい人だ。ヤバくて凄い人だ。
「是非お願いします!」
元気に答えたけど、なんだか周りが静かになったような。ん、気のせい?
「あー、ブンプクさん。その時はお手柔らかにね?」
師匠が遠慮がちに釘を刺す。ん? ん? どういうこと?
「やだな~~。ナゴミヤ君は心配性で~~。新人さんを困らせるようなことしないよ~~。ね~~、みんな~~?」
ブンプクさんは不満そうにそう言ったけど、誰も返事を返そうとしない。というか目を合わせようとしない。これは危険な予感。少々早まったかもしれないぞ。
だれもブンプクさんに返事を返さないでいると、ブンプクさんはすくと立ち上がって向かいに座っていた赤ずきんちゃんのリンゴさんの所まで歩いて行った。
にゅっとリンゴさんのまえに横から顔を突き出す。
「ね~~~、そうだよね、リンゴちゃん~~~~~?」
至近距離で笑顔を向けられたリンゴさんはのけぞり、目をそらした。
「う、うん」
言わされた感たっぷり。おお、怖いぞ。さっきまでの優しいお姉さん風の語尾の「~~」が、何故か今は凄く怖い。
「ほら~~、リンゴちゃんもこう言ってる。みんな大げさなんだよ~~。安心してね、コヒナちゃん~~」
「は、はい」
ぐるりん、とこっちを振り向くブンプクさんの笑顔に、私はそう答えるしかなかった。
まだ自己紹介半分なのに、濃いなあこのギルド。自分で書いといてなんですが。
今日全員紹介できると思っていたのですが、長くなったので分けさせていただきます。
次回はさほど時間を置かずに更新できる予定です。
また見に来ていただけたらとても嬉しいです。




