キャット・ザ・チャリオット 3
遅くなりました!
キャット・ザ・チャリオット第三部、おとどけします!
「む、お前誰だにゃ」
ゲートから出て来た<ナナシ>という子猫はひとしきり師匠に文句を言った後、私に気が付いたようで足元をふんふん、と嗅いで回る。
私的にはあなたは誰なんですかなんだけれどそれを口にしていいのかどうかわからない。獣の王だって師匠が言ってたし。
「あ、猫さん。この人が俺の弟子のコヒナさんだよ」
「猫さん?」
師匠は子猫のことを猫さんと呼んで私を紹介してくれた。ええと、猫さんはプレイヤーさん、なのかな?
「そうそう、この人は猫さんだよ」
「人じゃねーにゃ。猫だにゃ」
なんだ、どういうことだ。
「猫さんはね、猫なんだけどゲートくぐってこっちに来たらしゃべれるようになったっていう設定の猫さんだよ」
「せってーじゃねえにゃ! 事実にゃ!」
わあ、師匠の友達っぽい。
なるほど、<変身>の魔法か。何の為にあるのかと思ったけど、こんな使い方をするのか。
……使い方?
「お前かにゃ。なごみーの弟子と言うヤツは。物好きにも程があるぞにゃ」
「む、そんなことはないですよ。師匠はいい師匠です」
「にゃにゃ、まあ怒んなにゃ。物好きだってだけだにゃ」
思わず言い返してしまったけど、悪気があってと言うわけではないようだ。師匠とは親しい付き合いなんだろう。
師匠もへらへら笑っているし。
「猫さんなんですか? ナナシさんではなく?」
表示されてる名前はナナシさんなんだけど、師匠が猫さん猫さんと呼ぶのでちょっと気になって聞いてみた。
「名前かにゃ。オレは野良だからにゃ。名前は一つもなくてにゃ」
ほほう。そういうことですか。
「ヒトツモナクテニャさん? 変な名前ですねー」
「!! こっひー、お前いいヤツだにゃ!」
気に入られたらしい。足をぺしぺしと叩かれた。こっひーは多分私のことなんだろう。
「おし、これやるにゃ」
そう言って猫さんが渡してくれたのは大きな大きな魚だった。<ロイヤルパーチ>と言う名前で、重さが316と表示されている。とんでもない大きさだ。私のステータスでは持って歩くのも厳しい。
「これは、どうすれば」
「ん、食えにゃ。遠慮はいらねーにゃ」
食え、と言われてもなあ。
「ええと、生でですか?」
「焼いた方がうめーにゃ。なごみー、焼けにゃ」
猫さんはお刺身より焼き魚派のようだ。
「はいよ。コヒナさん貸して」
師匠にロイヤルパーチを渡すと師匠もその大きさに驚いていた。
「おわ、でっかいな。これ食べていいの?」
「お前には食わせねーにゃ。焼く係にゃ。330越えを出してきたから心配するなにゃ」
「マジでか。今月も大賞は猫さんだねえ」
「まーにゃ」
良くわからないやり取りを聞き流していると師匠が解説してくれる。
「えとね、月一回釣りのコンテストがあってね。魚ごとに一番大きいの提出した人に賞金がでるんだよ」
そういうのもあるのか。
「賞金はどのくらい貰えるんですか?」
「10万ゴールドだっけ?」
「そだにゃ」
「おおー」
10万ゴールドとなればかなりの大金だ。これは釣り道を究めるのもありかもしれない。
「ただし、一位になるために費やす時間で、猫さんなら100万ゴールドは稼げる」
「……おお」
「うっせーにゃ。釣りは漢のロマンだにゃ!」
私には釣りは少々ハードルが高そうだな。リアルだとそれなりにできるんだけど。
師匠がロイヤルパーチを焼いてくれて、10万ゴールド弱相当の焼き魚を二人と一匹でお召し上がりになった。なんとも贅沢な話でございますわ。
「んで、何でこんなとこで飯くってるんだにゃ。ここ<ディアボ>の二階じゃねーかにゃ」
「飯食ってる理由は猫さんが魚出したからだけど、ここにいる理由はコヒナさん結構強くなったから、三階に進んでみよっかなって。手伝って」
「なんでオレがそんなめんどくせー事しないとなんねーのにゃ」
「あう、すいません」
語尾の「にゃ」に隠れて見落としそうだけど、猫さんの話し方はちょっと怖い。
でもそうですよね。いきなり自宅にゲート出されて手伝ってって言われたら「なんで!?」ってなりますよね。すいません。全部師匠が悪いんですよ。
「あ、コヒナさん心配しなくていいよ。猫さんのこれ全部ツンデレだから」
「おい、変なこと吹き込むんじゃねーにゃ」
「俺がいるから取り合えずごねてるだけで、実は手伝いたくてうずうずしてるから」
「うおい、変な事 言うんじゃねーにゃ!?」
「え、ええと?」
ど、どっちだ?
「ち。まあいいにゃ。 手伝ってやるにゃ。仕方なくだからそこ忘れるなにゃ」
「こんなこと言ってるけど、個人チャットで『あとでフォローしといてね』って言って来てるからね」
「やめろにゃ! 信じたらどーすんのにゃ!」
猫さんはもう一回、仕方なくだからにゃ!と念を押してきた。
とりあえず口調程怖い人ではないようだ。
「はい。今日はよろしくお願いします、猫さん」
私も師匠に習って猫さんと呼ぶことにした。ヒトツモナクテナさんじゃ長いからね。
「んじゃ、これだと戦いづらいからにゃ。オレも変身するかにゃ」
「変・身」という掛け声とともに猫さんがにょにょにょ、と大きくなって猫耳と猫ひげを付けた人間の女の子の姿になった。
おお、変身した! 女の子になった! 猫さん女の人だったの!?
さっき漢の浪漫の話してなかった? リアルは男の人だということ?
一体どういう順番で驚けばいいんだ!
「変身、ですか?」
「む、もっと驚けにゃ」
「いえ、驚きすぎて何に驚いていいかわかんないんです」
「こっひー、お前、いいやつだにゃ!」
人間になった猫さんがばしばしと肩をたたいてきた。ええと、ありがとうございます?
「猫さんはいつもは<変身>の魔法で猫に変身してるんだけど、今それ解いたんだよ」
「ちげーにゃ。人間に変身する魔法を使ったんだにゃ」
「そうだったそうだった。そういう設定なんだよ」
「せってーじゃねえにゃ。事実だにゃ」
「そうそう、事実っていう設定なんだよ」
<変身>の魔法は変身したら解かない限り変身したままになるということか。
「それと、猫さん女の人だったんですね」
「ちgっげー---にゃ! 」
何気なく言ったら怒られた。まずかったろうか。リアルの詮索をしたわけではない、と言い訳をしようとしたけれど
「女の人じゃねーにゃ。メスの猫にゃ」
くっ、そこか。
「いや、それはさすがに……。ええと、犬とか猫とかも男の子女の子っていってしまうので……」
「そーか。なら許してやるにゃ。しかし人間呼ばわりは許さねーにゃ。次やったらこするにゃ。めっちゃこするにゃ」
こするってなんだろう。引っ搔くんじゃないのか。
「わかりました。気を付けます」
こすられると困るので素直に謝っておく。
「あんまり気にしなくていいよ。全部ツンデレだから」
「ちっげええええええーーーーーー-にゃ!」
「今も、気にするなって言えって個人チャットで」
「やめろにゃああ!!!」
……なんだか師匠の言ってることの方が本当の気がしてきた。
ディアボ三階。
時折ある石で出来た悪魔像は二分の一ぐらいの確率で動く。モンスターのガーゴイルだ。ガーゴイルは堅いけれども魔法は使ってこないし一人でも戦える。
綺麗な状態で残っているおどろおどろ魔法陣からはガーゴイルやヘルハウンドが湧いて出てくるけれど、このあたりには一対一なら負けはしない。
手ごわいのは、時折現れる真っ赤な悪魔 <レッサーデーモン> だ。
山羊か羊かわからないけどどっちかの顔と二本の角。蝙蝠の羽。三角に尖ったしっぽ。正に悪魔だ。ザ・悪魔。タロット的に言うとザ・デビル。デーモンだけど。
人間なんか簡単に引き裂いてしまいそうな鉤爪は見るからに恐ろしい。でももっと恐ろしいのは魔法。レベル3火球をがんがん撃ってくる。
さっき戦ったエスカルゴなんとかソースというびっくり人形ほどじゃないけれど、お墓のリッチと同格かそれ以上の強さ。防御力も高い。
でも師匠の支援を受けて輝く私の剣はその堅い皮膚をも切り裂いてダメージを与える。
強力なモンスターとの闘いの時には師匠がサポートしてくれて、猫さんが他の近づくモンスターを凄いスピードで駆逐してくれる。私がかろうじて戦えているのはそのおかげだ。
ダンジョン、怖い所だ。お墓や森の中の石碑といったフィールド上のモンスター沸きポイントとは比べ物にならない。
隣で戦う猫さんはとんでもない強さだった。
猫さんの武器は左右に装備した爪。攻撃範囲は私の剣より狭いけれど、攻撃力は段違い。懐に入り込んでは連撃を叩き込み、瞬く間にモンスターを倒してしまう。
さすが師匠の言うところの「我が最大の力」だ。
あれ、「我が最大の力」?
……うちの師匠、改めてひどいな。
「こっひー、お前、強えにゃ」
何体目かのレッサーデーモンを倒した時、猫さんが褒めてくれた。
「え、いえいえそんなことは」
めちゃくちゃに強い猫さんにそう言って貰えるのは嬉しいけれど、師匠と猫さんがいるから戦えているのであって一人では一瞬でダンジョンの藻屑になってしまう。
ん、ダンジョンだと藻屑って言わないか。ええと、肥やし? それも違うかな。
私がレッサーデーモン一体を倒す間に猫さんなら五体位倒してしまいそうだ。実際には待っててくれるしレッサーデーモンが五体もいたら一大事だけど。
「いや、たいしたもんだにゃ。まだ初めて半月ってとこだにゃ? 初見相手の対応も見事にゃ」
どうやら本当に褒めてくれているらしい。嬉しいね。
「えへへ~」
「まーな! 師匠がいいからな!」
「はい!」
いえーい、と師匠とハイタッチを決める。
「あーにゃ。これで師匠がコレでなかったらもっと 強くなるんだろーけどにゃあ」
「まーな!」
「まーな、じゃねーにゃ。なごみーのことは褒めてねーのにゃ」
猫さんがべし、と師匠を叩いた。
「師匠はともかく弟子は大したもんだにゃ。なごみー、あいつやるぞ」
「お、猫さんがそういうなら」
あいつ?
師匠と猫さんの間でなにやら相談が交わされたようだ。
「三階のボスに行くにゃ。こっひー、お前が倒せにゃ」
三階の奥の部屋には例によって大きなおどろおどろ魔法陣が敷かれていた。
「タイマン張らしてやるにゃ。安心して戦えにゃ」
ばりばりばり、と画面に雷のエフェクトが入り、魔法陣の中央に何かが現れる。
見た目は大きな犬だ。ただ、同じ大きな犬であるヘルハウンドとは比べ物にならない。
ヘルハウンドが狼みたいに大きな犬だとすれば、現れたそれは牛くらいあるんじゃないだろうか。
<バーゲスト>
それが雷を纏った大犬の名前だった。
開戦と同時に<バーゲスト>が放ってきたのは雷の範囲魔法。
私のHPバーが大きく削れる。直ぐに師匠の回復魔法が飛んでくるけれど、自分でも<回復促進>のスキルを使う。
<回復促進>は戦士系のスキルで、取得しておくとHPの自然回復が早くなる。また一定値以上でアクティブな<スキル>として使用することができるようになり、魔法ほど一瞬ではないけれど、かなりの速さでHPを回復することができる。
まだ私のスキルは低いけれど、師匠の魔法と合わされば回復効率はかなり高くなる。
範囲魔法はやっかいだけど私の武器は剣なので接近して戦うしかない。そして近づくと今度は雷属性を纏った爪の攻撃が来る。
バルキリーコヒナの鎧と師匠の魔法で軽減されて、それでも受けるダメージは結構なものだ。
二発、三発連続して受ければ私の最大HPを超えてしまうだろう。
一発受けてしまったら必ず離脱だ。
防御力も高くてなかなかダメージが通りにくい。でも焦らず少しずつ削っていくしかない。
爪、牙、雷の範囲魔法と雷のブレス。バーゲストの攻撃方法はこの4種類。
よし見切った、と思ったのもつかの間。バーゲストは動きを止め、ぐるぐると低いうなり声を上げ始める。
見たことのない行動。止まっているからと言って突っ込むのは最大の悪手。距離を取って盾を構える。
ぐおおおおおん!
バーゲストのうなり声が大きくなり、周囲にずがんずがんといくつもの雷が落ちる。でもそれは雷属性の攻撃魔法ではなかった。
落ちたいくつもの雷は地面に吸い込まれずその場にとどまって形を作る。
現れたのはヘルハウンドの群れ。十体以上のヘルハウンドが一斉に、私に向って炎を吐こうと口を開けた。
しかし、次の瞬間。
ぐおおおおおおおおう!
雄たけびが先ほどのバーゲストの咆哮をかき消すかのように響き渡り、ヘルハウンド達が皆恐れをなして硬直した。
「心配すんなにゃ、こっひー。タイマン張らせてやるって言ったにゃ?」
猫耳に猫髭、人の姿をした獣の女王「猫さん」が、ニヤリと笑ってそう言った。
猫さんが使ったのは恐らくヘイト集めのスキルだろう。ヘルハウンド達は一瞬の硬直を逃れたものの、抱いた恐れから猫さんに向かっていくことを余儀なくされる。
次々と吐き出される炎のブレス。でも、猫さんはダメージを受けない。
ちがう、受けてないんじゃない。凄い早さで回復している。
私の使う<回復促進>とは別のスキルだ。猫さんの爪がヘルハウンドを引き裂くたびに、HPが回復していく。HPだけじゃない、MPもだ。
攻撃するたびにHPとMPを吸収、結果連続して放たれる大技。相手を倒せば倒すほど強くなっていく、その姿は正に獣の女王だ。
おっと、見惚れている場合じゃない。
私は私の敵を倒さなくては。
私の動かす<コヒナ>さんがきりり、と相手を見やる。
その視線に気圧されて、配下を失った<バーゲスト>が、一歩後退ったように見えた。
**
「お疲れ、こっひー」
人型猫耳美少女の猫さんが手を挙げてくれた。
「ありがとうございます!」
その手に向ってハイタッチを決める。
猫さんと師匠に守られながらの戦いではあったけれど、私は見事強敵バーゲストの討伐を果たしたのであった。
バーゲストはマジックアイテムやお金とは別に紙の切れ端を持っていた。
T E R E S I A
と書かれている。恐らく三階から四階へと進む合言葉だろう。どうやら合言葉は人の名前のようだ。TERESIA。これはテレジアさんだろう。さっきの合言葉も人の名前で確か……。うん、忘れた。でも両方人の名前だ、と思ったのは覚えている。
第三階層のボスだけあって落とすマジックアイテムも良さげな効果が付いているものが多い。これは全部持って行かなくてはなるまい。ほくほく。
「バーゲスト、こんな帽子落としたのですが、どうでしょう。良いものに見えます」
私はその中でも一番かかっている魔法効果の多い帽子を被って二人に見せてみた。
染められていないので生成り色だけど、師匠が被っている紫の魔法使い帽子と同じ型の物だ。
「おっ、これはなかなか」
「ほー、バーゲストのドロップとは思えない性能だにゃ」
モンスターの落とす魔法のアイテムにはランダムで様々な効果が付く。ランダムなので効果がいっぱいついていても良いアイテムだとは限らない。
「攻撃力アップ」「攻撃速度アップ」「回避率アップ」みたいに上手く揃えば戦士系のアバターにとって優秀なアイテム、と言うことになる。
この辺りがよくわかんないのでとりあえず持って帰ってきてしまうのだ。
自分では使えないけれど他のプレイヤーさんに売れそうな物は師匠がお友達のお店に持って行って換金してくれる。ほとんどは二束三文だ。
でもバーゲストのマギハットはMPの自然回復を早めたり消費MPを抑えたりと魔法使いさんには便利そうな効果が揃っていた。
「これならプレイヤーメイド超えるね。4,5万ゴールドにはなるんじゃないかな」
「うおおお、4,5万ゴールド!」
今までで一番高く売れたのは5千ゴールドの金属籠手だったので、一気に十倍だ。
「こっひーテンションたけーにゃ。うん、でもそんくらいはするにゃ。お宝といっても過言ではないにゃ」
「うおおお、お宝!」
「コヒナさんが魔法使いなら即採用レベルなんだけどな。戦士用としては使えないからなあ」
「むむむむむ」
そんなに良いものなのか。魔法使いかあ。
「ま、どーするかは帰ってから考えるにゃ。さて、三階のボスも倒して一段落なわけにゃが」
「そういえば暗号っぽいの書いた紙が出ましたよ!」
次の階も行ってみたい、という思いを込めて言ってみたけれど。
「流石にこの先はまだ無理だにゃ。次の階ではレッサーデーモンが雑魚扱いだにゃ。狩りをつづけるならこの階だにゃ」
「そうですかー」
流石にそれはそうか。
「にゃあ。そうがっかりするなにゃ。強くなったら来たらいいにゃ」
「はい。そうします」
強くなったら、か。確かに猫さんと私では強さに天と地ほどの差がある。
「猫さんの、HPとかMPを吸い取るのは何かのスキルなんですか?」
「おにゃ、よく見てたにゃ。そーだにゃ。<吸命爪>と<吸精爪>を交互に使うにゃ。武器も同じ能力があるものを使って効果を重複させてるのにゃ」
「猫さんは自分を回復するスキル入れてない代わりに攻撃力に特化させてるんだ。その分吸収も大きくなるんだけど、普通はあんなことしないんだよ? 猫さんは少しおかしいんだ」
ネオデではパーティーを組むこともできるけれど、基本的にソロで活動できるようにスキルを構成するのが普通だ。回復スキルを削るとは思い切ったことをする。
「うるせーにゃ。お前ほどじゃねーにゃ。まあ、珍しいスキル構成ではあるにゃ。魔法スキルも必要になるし、MP管理も面倒にゃ。こっひーならできるだろうけどにゃ」
「ほんとですか!」
「でも、剣じゃできないよ。爪専用のスキルだから」
「むむむ」
悩ましい。やってみたいことがいっぱいだ。
「猫さん、ほんのちょっとだけ、三階行くのダメかな。折角パスワード手に入ったんだし、見るだけ。アレ見せてあげたい」
師匠が何やら興味深いことを言い出す。
「アレ、ですか?」
「またおめーは! そんな言い方したら見てみたくなるだろーがにゃ!」
「そーだそーだ、見てみたくなるでしょうがー!」
どうしてくれるんですか。責任取ってくださいよ、まったくもう。
「俺、どのみちもう落ちないとなんだよ。その前に見るだけ。どうかな、コヒナさん」
「行ってみたいです!」
「おおう、食い気味」
「ったくしょうがねーにゃ。こっひー、オレより前に出るなにゃ? なごみーが姿隠しの魔法掛けるけど、それも過信すんなにゃ。デーモン族にはバレるにゃ」
「わかりました!」
わーい。わくわく。
「じゃあ、行く前に一つだけ。さっき、このダンジョンができた経緯話したじゃない?」
師匠がまた何かうんちくを語りだした。
「はい」
男の人に捨てられた女の人が世界の破滅を望んだ、そんなお話だった。
「あのお話はマディアの大図書館で見れる話なんだけどね。悪魔を呼び込んだって言う女の人、名前書かれていないんだ。でも別の図書館によく似た物語が書かれた本があって、それには名前が記されている。テレジアさんって言うんだ」
「えっ? テレジアさん、ですか?」
テレジアさん。
Teresiaさん。
その名前は、さっきバーゲストが落とした紙に記載されていた合言葉だ。
なぜ悪魔の封印の合言葉に、悪魔を呼び込んで世界を滅ぼそうとした人の名前が使われているんだろう。
次回はキャットザチャリオットの第四部なんですが、タイトルどうしようかなーとなやんでます。
テレジア、でもいいなあと。中身は変わらないのですけどね。
こぼれ話
ナゴミヤさんのジャイアントストラケルタは「ロッシー君」
コヒナさんのストラケルタは「ナンテー君」ですが、プロットの段階ではそれぞれ
「サンチョ君」と「パンサ君」でした。
コヒナさんが「それ、馬の名前じゃないですよ」と言うつっこみを入れるシーンがあったのですが、直前に私のやっている某ソシャゲの至上命令で同じネタが出たので回避しました。
後一か月早かったら予言みたいで自慢できたのになあ!
次回、また少々開いてしまうと思います。
時間見つけて書いてまいります。
また見に来ていただけたらとても嬉しいです。




