表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/32

第9話 転生者

「研究は捗ってるかしら?」


研究室で作業をしていると、ロザリア様がひょっこりと顔を出された。

本当に何の前触れもなくひょっこりと。


「ロザリア様!?」


私や研究員達は一斉に椅子から立ち上がって会釈する。

まだ子供とは言え、タラハの名門貴族の一人娘でクプタ王子の婚約者だ。

座って対応するのは失礼にあたる。


「ああ、いいのいいの。私の事は気にしないで研究は続けて頂戴。別に邪魔をしに来たわけじゃないからね」


来る事自体が作業の妨害以外何者でもないのだが、その言葉は飲み込んで、周りの者は席に着くよう指示を出して私が対応する。

一応、今やっている研究に関しては私がトップなので。


「ロザリア様。本日はどういった御用件でいらっしゃったのでしょうか?」


「実はね。今日は貴方に聞きたい事があってやってきたの」


「私に、ですか?」


「ええ、出来たら二人でゆっくりと静かな場所で話がしたいんだけど」


暗に場所を変える事を求められる。

とは言え、研究関連の施設にそんな場所はない。

仕方ないので私は施設近くにある私室にロザリア様を案内した。


「へぇ~、これがターニアの部屋かぁ。結構質素な感じね」


修業時代に厳しくしつけられたせいか、質素倹約が身についてしまっている。

その為衣類は別にして、私の部屋は置物などないシンプルな感じになっていた。


「それでお話とは?」


机の椅子を勧め、ロザリア様には座って貰う。

当然椅子は一脚しかないので私は立ったままだ。


「ズバリ聞くわ!貴方って転生者よね!?」


「……は?」


いきなり意味の分からない事を言われて首を捻る。

転生者って何?


「人知を超えた超魔力!それって転生チートなのよね!?」


転生チートって何?


今一言っている事が掴めない。

まあロザリア様は少々大人びた所もあるが、まだまだ子供の年齢だ。

ひょっとしたら、何かの遊びなのかもしれない。


「隠さなくってもいいのよ!私も転生者だから!」


ロザリア様はノリノリだった。

やっぱりまだまだ子供なんだと分かり、少し微笑ましくなる。

ここは私も話に合わせて上げる事にしよう。


「ええ、実はそうなです」


「やっぱり!クプタからとんでもない魔法を見せられたって聞いた時、そうなんじゃないかと睨んでたのよ。それで種の件で私の中で確信に変わったんだけど、中々そう言うのって聞き辛いじゃない?違ってたらなんか恥ずかしいし。あー、でも良かった。やっぱりそうだったのね!」


ロザリア様は一気にまくしたてると、椅子から立ち上がってくるりと私の前で一回転してみせた。

そして手を私の方へ突き出し、掌を見せて来る。


その上には小さな丸い水晶の様な物が置かれていた。

さっき迄は手にしていなかったのに、一体いつの間にこんな物を握っていたのだろうか?


「水晶……ですか?」


「ふふ、レンズよ。錬金術で変化させたの」


「錬金術?」


私は眉根を顰める。

聞いた事のない名称だからだ。

不明な術ではあるが、その後の変化させたという言葉が何かのヒントなのかもしれない。

まあ遊びの中の不思議な技に、ヒントも何もあった物では無い気もするが。


「ほら!アニメとかでやってたあれよ!貴方も見た事あるでしょ!?その錬金術が私の転生チートなのよ!」


また知らない単語が出て来た。

ごっこに付き合うなら意味は理解しておいた方が良いのだろうが、まあそう何度も付き合う気は流石に無いので、サラリと流しておけばいいだろう。


「凄いですね」


「何言ってるのよ!貴方の魔法の方がよっぽど凄いじゃない!」


「いえいえ。私の魔法では変化させるなんて芸当、到底できませんから」


どういう変化をする設定なのかは分からないが、取り敢えず褒めておく。

子供の相手をする時は、褒めて自尊心をくすぐっておけば大抵上手く行く物だ。


「まあ仮にも転生チートだからね。でもこれ、大きな欠点があるのよね」


「欠点ですか?」


「そう!発動させるには魔力が必要なのよ!でも私は魔力が生まれつき小さくて、私の魔力じゃガラス球を小さなレンズに変える位が精一杯なのよね。それでお願いがあるのよ!」


ロザリア様は私に近づき、背伸びをして私の顔を覗き込む。

その目は穢れなくキラキラと輝いて眩しい。

まさに夢見る少女の眼差しだ。


「私に出来る事でしたら」


「貴方のその強大な魔力を、少し貸して欲しいのよ!そうすればきっと私の夢がかなうわ!」


「魔力を……ですか?」


「ええ、私に流し込んでくれるだけでいいの!」


「それでしたら……」


ロザリア様の肩に手を置き、彼女の体へと魔力を流し込んだ。

遊びではあるが、魔力は本当に流し込む。

形だけだと、文句を言われそうだと思ったからだ。


「あ、違う違う。今は材料もスペースも無いから、貰っても何もできないわ。そうだ!明日私の屋敷に来て頂戴!そこで魔力をお願いよ!」


「はぁ……」


どうやらこの遊びには、明日も付き合わされそうだ。

しかも屋敷にまで態々足を運ぶ必要があった。

まあロザリア様関連の事であるから、長官に言えば半休位はくれるだろうから別に構わなけど。


「じゃあ約束よ!私は明日の準備があるから帰るわね!」


そう言うとロザリア様は嵐の様に去って行く。

元気な方だ。


私は魔導長官の執務室に向かう。

明日の許可を貰うために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 7話でピクニックに誘うために私室に入ってますので, これでは部屋が(研究所と自宅?)あるという感じ?に 読み取れますが(そうだったらすいません)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ