希望号船長とコンピュータ・ジュークによる「悪夢」
近頃、この学校では不思議なことが起こる。
昨日まで元気だったある生徒が、今日は急性肺炎で死んだとか、つまずくところなどないところでつまずいてすっころび、足の骨を折ったとか───
それはまだよいほうだ。
ついこの間などは、3年G組のある男生徒が、同じクラスの生徒を刺し殺すなんてことも起きたし───
なんとも薄気味の悪い学校になったものだ。
そんなある日の午後。
私は昼休憩になったので、教室から出て図書室に向かった。
階段を降りる途中、私は目を見張ってその場に立ち止まった。
まだ階段を降りきらないところに、女生徒がひとり、仰向けになって倒れていたからだ。
彼女の服は、ところどころナイフのようなもので切り裂かれていた。
なんとも気持ちの悪いのは顔であった。
皮でもはがされたように、顔面は血ドロで真っ赤なのである。
その鮮血の上に白目を向いたふたつの白い丸があり、ひとつの大きく広げられたただの穴と化した口があった。
そして、首には小刀が深々と突き刺さっており、その根元からは未だに赤黒いものが、定期的にドクッ! ドクッ! と噴出している。
「キャ───ッ!」
すると、遠くのほうから絹を裂くような女の悲鳴が上がった。
どうやら、またもやかわいそうな犠牲者が見つかったらしい。
今まで静かだった学校が、その瞬間から急にざわめき出した。
また向こうでも誰か殺されたらしい。いや、自殺か?
他殺だとしたら、いったい誰が何目的で、こうも次々と罪を重ねるのだろう?
私は女生徒の死体を目の前にしながら、そんなことを考えていた。
「!!」
その時、急に私は背中に激痛を感じた。
うしろを振り向こうとしたのだが、あまりの痛さに階段から転げ落ちてしまった。
「悪魔の仕業だ! 悪魔がこの学校に乗り移ったんだ!!」
薄れて行く意識の中で、私はそんな声を聞いていた。
その声は耳元で怒鳴っているようにも聞こえたし、遠くから聞こえてくるようでもあった。
そして、その一瞬後、私の意識は完全に途絶え、最期の鼓動も打ち終わる───
「悪魔の仕業だ! 悪魔がこの学校に乗り移ったんだ!!」