魔術書を売る
「ダリ爺ー! いるー?」
僕はダリ爺の魔法具店に入るとカウンターの奥に向かって叫ぶ。
朝早いためか、店内には誰もいない。
「なんじゃい、お主か。こんなに朝早くからどうしたんじゃ」
「魔術書が出来たから、持ってきたよ」
「なんじゃと!?」
ダリ爺は驚いた声をあげる。表情も少し驚いた風になってた。
僕は持ってきた魔術書をダリ爺に見せる。
「まさか一日で持ってくるとは…ついてきなさい」
そう言うとダリ爺は僕を裏庭に案内した。ずいぶんと広い裏庭だ。
「ここでお主の魔法を見せてもらおうかの」
魔法を見て金額を判断するという。望むところだ。
「それじゃあいくよ」
僕は大きく息を吸い込む。そして吐き出す。
『豪火球』
口から吐き出された炎は綺麗な球を形成し数十秒のあいだ燃え続ける。
「なるほどのう、ブレイジング・スフィアか。火魔法を風魔法で包み形状をコントロールした上で、内部に風を供給することで燃焼時間と威力を向上させているというわけか」
ダリ爺は僕の魔法を見て分析を始める。
「見事じゃ。それで、この魔術書は売ってもらえるということで良いのかの?」
「うん、いいよ。いくらで買ってくれるの?」
「今回は特別に売値で買ってやろう。12000ドニーでどうじゃ」
12000ドニーはそれなりの大金だ。文句はない。ダリ爺にそれでいいと告げる。
「商談成立じゃな。代金は銀行振込にするか?現金にするか?」
ダリ爺が支払い方法を尋ねてくる。僕はまだ銀行登録をしていないから振込はしてもらえない。
「現金でお願い。少し崩してもらえると助かるな」
二人は応接室に移動する。そこでダリ爺は現金で支払いをしてくれた。
角金貨1枚、円金貨5枚、角銀貨3枚、円銀貨4枚、角銅貨2枚を渡してくれる。
僕は受け取ったお金をポケットにしまいこんだ。
少しじゃらじゃらするけど仕方ない。普通は12歳で金貨を使う買い物なんてしないからね。
「ねえ、少し店内を見て回ってもいい?」
せっかくなので商品を見てみることにする。気になるものがあったら買ってみるのもいいかもしれない。ちょうど懐もあったまったしね。
魔導書の陳列棚を見てみる。
〈火炎弾〉 50ドニー
〈風刃〉 40ドニー
〈荒天招来〉 10000ドニー
〈纏雷〉 200ドニー
〈治癒〉 80ドニー
どうやら魔導書の値段は内包されている魔法によってかなり差があるみたいだ。
僕は10ドニーの1番安い魔導書を手に取ってみる。
最安値の魔導書には〈着火〉と書かれていた。
僕は考える。火起こしは面倒な作業だ。
コツを掴めばそんなに難しい作業ではないけど、火が成長するまでに時間がかかるし、その間離れているわけにもいかない。急ぎで火が必要なときは待っている時間がすごくもどかしい。
この魔導書があれば火起こしにかかる時間が短縮できるかもしれないと思い、何かの時のために5冊ほど買っていくことにする。
他にも店内を見て回っていると、気になるものを見つけた。
「超越鞄だ!」
メタバッグは異空間にものを収納することができる鞄だ。その容量は様々だが、その鞄の見た目以上に物をしまうことができ、どれだけ入れても重さが変わらない。
非常に高価であり、持っている人は少ない。
店頭で売っている中で一番大容量の鞄はトランクケース型のメタバッグで、50メトル立方の収納空間があるみたいだ。
値段は100万ドニー。さすがにお高い。
欲しいけど、そのためにはもっと稼がなくっちゃね。
「…魔法開発がんばろう」
決意を口にする。
魔法具店をあとにした僕は山に向かう。
纂術士ユールは特訓をするの巻、はじまりだね。
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