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物語のはじまり

よろしくお願いします。

「これは、なに?」


おつかいの帰り道、山の中を歩いていたら黒くて四角い物体を見つけた。

それは手の平よりも少し大きく、厚さは指と同じくらいだった。

珍しい物だったので家に持ち帰ることにした。

家でいろいろ触ってみると、急に黒い物体が光り出した。


「な、なんだこれ!」


さらに驚くべきことに、光った部分を触って見ると指の動きに応じて映っているものが変化していく。


「どうしよう。とんでもないものをひろってしまったかも」


計り知れない価値がありそうなものを持って帰ってきてしまったことに恐怖を覚えつつも、

僕は黒い物体への好奇心が抑えきれない。万が一にも壊してしまわないよう、指の力加減には細心の注意を払う。

夢中になって調べていると、その黒い物体でたくさんの”絵本”が読めることが分かった。


「字が読めない…僕が知っている言葉じゃない」


書いてある文字が読めないことに落胆したが、その絵は今まで読んだことのある絵本よりも格段に綺麗で迫力満点で、

なによりも物語がずっと続くことに感動した。

字が読めなくても絵を見るだけで大まかなストーリーが理解できてしまうほど場面ごとに細やかに描かれていて、僕はその絵本から目をそらすことなんて出来なかった。

黒い物体を持ち帰ってしまったことに対する罪悪感は、一瞬のうちに消えてしまった。



--



黒い物体を拾って3年が経った。


「いよいよ僕も冒険者になれる!」


黒い物体で読める絵本を1年で全て読み尽くしたとき、僕は成り上がり人生への憧れを抱いた。

どの物語も面白かったが、特にお気に入りなのは主人公が特別な力を得て周りを圧倒していく物語だ。

主人公がお人好しすぎる物語が多かったけど、総じて仲間に恵まれていて、自分を馬鹿にしていた人達を見返したり、偉い人たちに認められたり、信念を貫き通す姿は格好良いと思った。

絵本を読んでいる途中に黒い物体が急に真っ暗になって何も反応しなくなった時は絶望したけど、黒い物体を裏返しにして光を当て続けるとまた絵本が読めるようになることに気づいた時は泣きそうになる程嬉しかった。

そうして僕は冒険者になるべく、2年の間ひまができては特訓に明け暮れた。

絵本で見た修行やトレーニングはなるべく真似をした。

指一本で逆立ちをするなんて芸当は僕には出来なかったけど、腕を斜め後方にぶら下げながら全力ダッシュしてみたり、祈りを込めた正拳突きを何回もしたりした。

そうして心技体を整えた僕は12歳の誕生日を迎えた今日、街の冒険者ギルド目指して家を出た。


「行ってきます!!」


徒歩2時間かかる距離だけど、足取りは羽根のように軽かった。


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