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朝食


「おはようなのです。リコお姉ちゃん、エリスお姉ちゃん」


 そう挨拶をしたのは黒髪をおさげにし、肩に垂らしているまだ幼さの方が先立つ感じの女の子。背もまだ伸び切ってはいないのだろう。身長は150にも満たない。まあ、家族の中では最年少の13歳なのだが当たり前だが。顔立ちもまだ成長の余地を残しつつも現時点でもとても柔和で可愛らしく、あちらの世界だったらネットが騒然となるレベルのアイドルフェイスだ。


「おはようナナ」

「ふふ、今日はちゃんと起きられたのね」

「だって、今日は久しぶりに皆とギルドに行く日なのです」


 ナナは、まだ眠いのか目を片手でこすりながら、子猫のように大きな口を開けて欠伸をする。楽しみにしていたのだろう。それでもキチンと既にナナの正装である黒ローブをしっかりと着込んでいた。俺はそんなナナに微笑みながら天眼を使う。




【ナナ】

種族 :人間

性別 :女性

年齢 :13歳

HP :250

MP :876

力  : 95

防御 :168

魔力 :872

早さ :120

器用さ:230

知力 :725

魅力 :422


武器適正

剣 :E

槍 :E

斧 :F

弓 :D

格闘:F

杖 :A


魔力適正

火 :S

水 :S

土 :S

風 :S




 ナナはいわゆる天才という奴だ。あらゆる魔法を使いこなすばかりでなく、魔導具の作成なども手掛け、王国では知らぬ者はいないレベルの頭脳を持つ。先ほどの冷蔵庫も原理などは全てナナが考えてくれた。


「だから僕、ちゃんとノアちゃんも連れてきたのです」


 そう言って目をこする方の手とは別の手で、もう一人の少女をぐいと前に引っ張る。


 ノアと呼ばれた少女は未だ目を開けずにフラフラと揺れている。アッシュブラウンのショートカットはボサボサだ。服はナナに着せてもらったのだろう、着るというよりかは引っ掛けるという言葉がピッタリで、その形のいいおへそなどが丸見えとなっている。ノアは出るとこは出ているが、女性としては長身のモデル体型だから着せるのには苦労しただろう。


「ノア、そんなに眠いなら顔を洗ってきなよ」

「うーん、わかったよリコ姉」


 眼を閉じたまま答えるノア。シャキッとしていれば小麦肌のスポーティな美少女にしか見えないのだが。俺はすこしばかりドギマギとしながら天眼を使用する。




【ノア】

種族 :人間

性別 :女性

年齢 :15歳

HP :650

MP :  0

力  :640

防御 :188

魔力 :  0

早さ :620

器用さ: 30

知力 : 25

魅力 :450


武器適正

剣 :F

槍 :F

斧 :F

弓 :F

格闘:S

杖 :F




「くそっ、ダメか」


 そのステータスを見た瞬間、思わず小さく呟いてしまう。相変わらずの知力と器用さの低さに目を覆いたくなる。その前にナナを見てしまったからなおさらだ。何故か出会ってからまったく変化していない。一体どうなっているのだろう、これは転生と並ぶこの世界の謎だ。俺も既に諦めてはいるのだが、昨日何気なく久しぶりにおまじないをしてしまったから少しばかり期待してしまったのだ。


「ノアとナナも起きたのか」


 そんな中、入浴を済ませたアレクが戻ってきた。少しばかり濡れた髪がいつも以上にその艶をましている。その色気を直に目にしたら、街中でキャーキャー言われるのも納得してしまうだろう。精神がアラフォーおっさんの俺ですら、ドキッとしてしまうぐらいだ。


「おはようなのです、アレクお兄ちゃん」

「はよー」

「うん、二人共おはよう。ちょうど浴室を使い終わったところだから、朝食前に顔を洗ってきなさい」


 アレクの言葉に「はーい」、「わかりましたのです」と二人は素直に従い、浴室へと向かっていく。それを見て、俺はすこしばかり家長としての自信が揺らぐ。17歳にして、この落ち着きよう。幼き頃にアラフォーの意地で年長風をふかしまくってたので、アレクもエリスも俺を姉としてみるが、正直言って俺が前世で死ぬ前の年齢よりも精神は成熟しているだろう。


「後はスタンだけだね」

「スタンなら、昨日の夜に出掛けたままですね」

「またか」


 スタンとはウチの次男坊だ。気ままな性格で遊び人気質であり、よく夜の街に繰り出しては酒や煙草、香水の匂いを漂わせて朝帰りしてくる。家族思いで善良な男ではあるから、そこまで心配していないが。それに前世では少しばかりコミュ障の陰キャだった俺にとって、スタンのそんな生き方はすこしばかり憧れるものがある。生まれ変わった今でも、この体なので実践することは無理なんだけどね。


「そっか。なら、ノアとナナが戻ってきたら朝食にしようか。帰ってきたら、勝手に食べるでしょ。残ったら誰かが食べてもいいし」


 そんな時、玄関の開く音がして男の声がした。


「帰ったぜー」

「どうやら不良少年が帰ってきたみたいですね」


 そういって、アレクが苦笑する。真面目なアレクにとっては、スタンの行動は自身のモラルと反するのだろう。だが、幸いにして正反対なタイプでも二人の仲はいい。出会った当初は少々険悪だったけど。


「お帰り、スタン」

「おう、今戻ったぜ姉貴。どうやら朝食には間に合ったみたいだな」


 少しヨレヨレとなったシャツを着こんだ茶髪の少年。背は180には満たないが、細身に見えるその体はよく鍛えられ、引き締っている。釣り目がちな勝気な瞳で、まだどこか悪戯小僧のような雰囲気を残している少年だ。容姿はアレク程ではないが、十分美少年といえるだろう。

スタンが近寄ってきたとき、案の定酒や煙草、香水の混ざった匂いがした。その匂いに俺は少し顔をしかめる。前世では煙草は吸わなかった。煙草の煙は主流煙より副流煙の方がうんたらかんたらというやつだ。そんなことを思いつつ、スタンのステータスも確認する。




【スタン】

種族 :人間

性別 :男性

年齢 :16歳

HP :723

MP :152

力  :346

防御 :312

魔力 :142

早さ :881

器用さ:817

知力 :302

魅力 :314


武器適正

剣 :A

槍 :B

斧 :B

弓 :A

格闘:A

杖 :B


魔力適正

火 :B

水 :B

土 :C

風 :A




 スタンはスピードと器用さに特化した、シーフやレンジャータイプだ。実際、トラップなんかも一瞬で見抜き解除してしまう。魔法や戦闘といった他の能力も高く、何でもこなせるオールラウンダーとしてウチでは活躍してくれている。


「あっ、スタン兄だー」


 顔を洗い、目が覚めた二人が戻ってくる。ノアは髪もしっかりと梳かされており、見てくれはとにかく完璧な美少女となっていた。


「これで全員揃ったね」


 アレク、エリス、スタン、ノア、ナナ、そして俺。この6名が今現在共に暮らしているメンバーだ。あのスラムで出会い、共に生きてく中で強い絆で結ばれた俺のこの世界での家族。そして、この国で最強の冒険者パーティーとして知られるストレイキャッツの全メンバーでもある。


「ま、とりあえず飯にしようぜ。なんも食ってないから腹減っちまった」

「そうですわね。せっかく、姉様が作ってくれたお料理、新鮮なうちに頂きましょう」


 そうだな、せっかく全員揃ったのだから食事にしよう。出来るだけ皆で一緒に食事をするのが、ウチのルールだからね。俺はエリスやナナに手伝ってもらいながら、料理を取り分ける。アレクも食器などを整えてくれ、食事の準備が済んだ。全員テーブルにつき自分用の椅子に座ると、両手を合わせ食事の前の挨拶をする。


「いただきます」

「「「「「いただきます」」」」」


 俺のいただきますの後に皆が続く。当然、この世界にそんな風習はない。しかし、ウチでは俺がやっていたせいか、皆もそうするようになっている。これを他の人たちは当然奇異の眼で見てきたが、今ではストレイキャッツの団結力を高める儀式として知られ、真似する冒険者パーティーもいるらしい。


「ほいひー。リコねえ、ほれおいひーよー」

「ノア、食べながら喋らない。お行儀が悪いよ」

「ふぁーい」


 挨拶と同時にパンとベーコンエッグをサンドし、口へとかき込んだノアが歓喜の声をあげる。その頬はリスのように膨らんでしまっている。ノアには度々女の子としての自覚を促しているのだが、まったく改善が見られない。その隣で、小さな口でサラダをモグモグと食べるナナ。その姿は小動物のようでとても可愛らしい。


「リコお姉ちゃんの料理、僕も大好きなのです。特に僕、このサラダのカリカリが好きなのです」

「クルトンね」


 アレクとエリスは、上品な作法で落ち着いて食事を楽しんでいた。この二人は富裕な生まれで、教養なども幼少期に身についているのだ。スタンもどこで覚えたのか、最近いつのまにかテーブルマナーを身につけていたが、ウチではそんなことはせず、普通に食べている。俺もあまりそういうのは得意でないので、王宮などに呼ばれたりすると緊張して喉に通らなくなってしまう。やはり、普通が一番だ。


「スープもとてもよくできてますわ」

「うん、姉さんの料理はとても美味しいね」

「そうだなあ。どんな美食より、こうしてウチで食う飯が一番だなあ」


 皆、とてもうれしいことを言ってくれる。毎回褒めてくれるので、毎日とても作り甲斐がある。次も頑張ろうと思いながら、昔のことも思い出した。目覚めて早々、この世界で餓死しかけ、神殿の配給を求めて駆けずり回りながら物乞いをし、昆虫や鼠を喰らった日々のことを。ホントによく乗り切ったものだ。今のセレブな暮らしぶりとは雲泥の差だなあ、と感慨にふけりながら、俺は自分の作ったスープに口をつけた。



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