そもそもの始まり
湊くんが餌付けし始めたわけ
昨日も結局全部クッキーを食べてしまった。罪悪感しかない…。
そもそも、なぜ私に毎日毎日お菓子を食べさせ、感想を聞いてくるのか。
湊お兄ちゃんの味見役として、私は優秀すぎたんだ。たぶん。
始まりは私が6歳、お兄ちゃんが12歳のころ、私の実家のパティスリーに遊びに来たこと。
母親同士の仲が良かった事もあり、時々遊びに来ていた。
おばさんは癒し系美人。私の平凡なお母さんとは違い、お人形のようなお顔。笑えば花がほころぶような笑顔。怒っても可愛い。
その息子の湊お兄ちゃんも、お母さん譲りの大きくてパッチリした目に、やや癖のついた密色の髪の毛。言うなれば絵本の中の王子様。
両親が仕事で忙しく、なかなか構ってもらえず、寂しい思いをしていた私は、優しくてカッコいいお兄ちゃんに、すぐになついた。
「ほのちゃん、おじさんに教えてもらって、ホットケーキ焼いたんだ!食べてくれる?自信ないんだけど…。」
ほわほわと湯気をあげ、メープルシロップとバターの甘い香りが鼻をくすぐる。
私は絵を描いていた手を止めて、その匂いがする方向をむく。
「わー!凄く美味しそう。湊お兄ちゃん、これ食べていいの?」
お店のケーキの余り物ではなくて、私のために作ってくれたお菓子。
一口食べると、心の中から冷たいものが流れて、代わりに暖かく優しいものが広がった。
「どうかな?始めて焼いたから…。」
なかなか感想を言わない私を見て不安になったのか、湊お兄ちゃんがチラチラこちらを見ながら話かけてくる。
ううん。そうじゃないんだよ。
「すっごく美味しいよ!湊お兄ちゃん、こんなに美味しいホットケーキ焼けるなんてすごいねー。お父さんと同じパティシエさんになれるね!そしたら、私が毎日湊お兄ちゃんのお菓子、味見してあげる!」
幼かった私は嬉しくて嬉しくて、こんな約束をしてしまったのだ。
幼き日の私よ。なぜもっと考えて物事を話さなかったのか。
それから10年。
私、花街ほのか16歳、湊お兄ちゃんこと、前沢湊22歳。
10年も、ほぼ毎日お菓子を与えられた私は現在進行形で、永遠のダイエッター、永遠の子ブタちゃんなのですよ…とほほ、です。
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仕事の関係上、不定期更新ですが、どうぞヨロシクお願いします(*^O^*)