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鮮血の刃  作者: 黒崎揄憂
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夜の町の乱闘

 シオンは再びセドリックの方を向いた。セドリックからも魔力は感じられる。よほど油断しなければ勝てない相手ではない。シオンは足を踏み出してセドリックに突っ込む。右手に握られたサーベルに光の魔力を込める。


 光の一閃。刃はセドリックの腕で防がれる。一閃を防いだセドリックの左腕は灰のようになる。吸血鬼が光の魔法を受けた時の現象だ。それと同時に風の刃がシオンの頬をかすめた。斬撃のあと、シオンはのけぞる。


「ふっ。」


 と、セドリックは笑う。シオンの向こう側。風で炎の壁に穴があく。そこを狙ってもう一人の魔物ハンターが突っ込んでいった。光のように白く美しい女性魔物ハンター。カナリアだ。


「ナイスだ!カナリア先生!」


 その姿をとらえたシオンは叫ぶ。その直後に態勢を立て直す。今立ち向かうべき敵は目の前にいるセドリック。シオンはサーベルを振るい、セドリックはそれを捌く。さすが吸血鬼。身体能力から段違い。サーベルに伝わる力があまりにも強い。


 再び刃を返すシオン。セドリックはそれを素手でいなし、シオンは衝撃でビルにたたきつけられる。隙を見つけたセドリックは風の刃を叩きこむ。立ち上がれないシオンにとどめを刺すかのように追撃。あわよくば血を……


「させるかよ!」


 立てなくとも手を触れることはできる。セドリックがシオンの間合いに入る。その瞬間を狙った。シオンがセドリックに触れ、そこに光の魔力を集める。シオンくらいであれば吸血鬼の致死量の光を作り出せる。


「ぐっ!?」


 触れられたセドリックは激しくせき込む。当然だ。光の魔法によってセドリックの細胞が破壊され、触れられた部分から灰と化す。


「痛いか?恨みはないが血を吸われそうになれば自己防衛くらいはするさ。」


「くそ……アンダーウッド……」


 セドリックはその言葉だけを残し、灰となる。触れられた部分から放射状に灰の部分が増えて、しまいには完全灰となる。ディサイドの町で吸血鬼が一人倒された。



 炎の壁を越えたカナリア。その向こうに見える吸血鬼アンダーウッドを追跡する。路地に回っても足音でわかる。カナリアの聴力は常人のそれをはるかに上回る。


「待ちな!私から逃げられるなんて思わないことだね!」


 ヒールのある靴を履いたカナリア。そのカナリアが吸血鬼であるアンダーウッドとの距離をじわじわと縮めている。アンダーウッドはほんの少し身の危険を感じた。どうするか。アンダーウッドは路地に入ったところでカナリアを迎え撃つ態勢に入る。


「来いよ!俺はここにいる。」


 カナリアが来る直前、アンダーウッドは言った。曲がり角からカナリアが現れる。魔力は昂ぶり、アンダーウッドを切り裂かんばかりの激しさを持っている。


「巻かないんだ。でも、それでいい。」


 カナリアはにやりと笑い、魔力を放出。銃の形を成した炎は、その先端から太陽のような光を放つ弾丸を撃ち出した。それが乱射される。


「炎と光、すなわち太陽。耐えられるかい!?吸血鬼!」


 その弾丸を見切るアンダーウッド。集中しており、避けることが困難だと判断。アンダーウッドは炎の壁を張った。


 カナリアの撃った弾丸は炎にかき消されて同化される。それを見たカナリアは炎の銃をさらに大きくつくりかえ、一点集中の弾丸を放つ。弾丸は炎の壁を貫通。路地に大爆発が起こる。ゴミ箱などに引火し、その場は大惨事となる。


「まずい!ここは退く!」


 アンダーウッドはカナリアに目視されないまま飛び上がる。路地を形作るビルは比較的低い。その上にアンダーウッドは飛び乗った。


 炎の壁が少し晴れる。カナリアはアンダーウッドの様子を確かめたかった。彼は生きているのか。それとも弾丸で討ち取ることができたのか。カナリアは炎を突っ切った。


 誰もいない。灰すら残っていない。生死の確認ができない。カナリアはビルの上にも目を配る。いた。比較的低層のビルの屋上にアンダーウッドはいた。


「……何をしているんだ?」


 カナリアはアンダーウッドの様子を気にしていた。上からカナリアを襲撃する様子は全くない。それどころか、こちらを気にしている様子すらない。


 低層のビルにいるアンダーウッドは手帳のページを1枚破って何かを書き、空に飛ばした。紙飛行機の形の手紙、コンダクター。魔法を使える者たちのよく使う連絡手段。彼は一体何をしているのか。



 アンダーウッドが屋上へと跳び上がるとき、ある人物も彼の姿を見ていた。オフィスビルの窓際で三つ編みが揺れる。


「今夜も何か起こるのね。」




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