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転生したら『王都』でした。・・・え?

作者: 一欠片( ひとかけら )

転生したら『王都』になっちゃったという意味の分からないお話です。思いついちゃったんだからしかたない。

大丈夫そうな方だけお読みください。


異世界転生。


いいですよね、夢があって。勇者になって世界の危機を救ったり、現代の知識を生かして大金持ちになったり、あるいはのんびりスローライフなんてのも楽しそうですね。


実はかくいう私も転生者なんです。まあ、私の場合はそんなたいした者ではないですけどね。おっと失礼。たいした物ではないんですけどね。



転生したら『王都』でした。



王都に転生してきたのかって?ああ、違います違います。

ある者が貴族に転生するように、またある者は魔王に転生するように、私は『王都』として新たな人生を歩んでいるのです。


・・・ご理解いただけない、というよりは信じられないといったお顔ですね。

それではちょっとだけ、私の生活をご紹介しましょう。



まずは軽く自己紹介から。

私の名前は、水野 美谷子。転生前のことは面白味がないので省略いたしましょう。現在の・・・職業と言えばいいのか身分と言えばいいのかは分かりませんが、王都をやっています。

王都の名前はウィンデルン。商業が盛んですね。あとは、計画的に整備された美しい水路があるので、「水の都」とも呼ばれたりしていて、観光で来る人も多いです。

え、私の名前?いやいや、偽名じゃないですよ。偶然です偶然。たぶん、おそらく、きっと、メイビー。


こほん、そんなことよりも私の普段の生活を見ていきましょう。


朝目覚めるとまずはホットコーヒー。基本ですね。嘘ですね。

眠ることもなければ飲食もできません。当然です、王都ですから。


私の生活のほとんどは「見る」ことです。朝から晩を通り過ぎまた朝まで王都の人々の様子を見守る。これに尽きます。


最近のお気に入りは、朝にまだ幼い第三王女様のかわいらしい寝顔を眺め、昼は子供たちがサッカーに似たようなスポーツでワイワイ騒ぐのを応援し、夜にお風呂上がりのイケメン新米冒険者を眺めることです。

・・・い、いいじゃないですか別に。お風呂は覗いてませんから!本当ですよ?


ちゃんといいことだってしてます。この前だって、子供を救ったんです。


路地裏で少女が1人の男に襲われそうになっていました。周りに気づいてる人はいません。しかし、王都の私に見通せない場所などありません!(たとえお風呂の中だろうと)


私は少女を守らなきゃと必死で思いました。本当に必死で、必死で、必死で、気づいたら男の周囲の土が盛り上がって、男は土に埋もれていました。王都って動けるんですね。びっくりしました。


少女は驚きながらも無事に家に帰れたようで安心しました。男は埋めっぱなしにしておいたのですが、少女の親から通報を受けた、現場を見にきた兵士に連行されて行きました。

土に埋まるのが好きな変態と誤解を受けていたのはかわいそうですが、ささいなことでしょう。


さて、私の意思で王都でも動けるとお話したところですが、意識して動かそうとしなくても影響を与えてしまうこともあるのです。



あれは孤児院の子供たちを見ている時のことでした。この孤児院では、将来子供たちが自立できるようにと読み書きや計算などの教育をしています。

まだ小さな子供たちには、文字や言葉に興味を持ってもらえるように、シスターによる物語の読み聞かせも行われています。


元の世界でも昔話や童話が好きだった私は、この世界のお話はどんなものなんだろうかと興味を持ち、子供たちに混ざって読み聞かせをこっそり聞いてみました。



『三匹のオークと王女様』



なんでしょう。タイトルから嫌な予感しかしませんでした。少なくとも子供が読むものではない気がします。しかし、シスターはニコニコしながら読みはじめます。いいのでしょうか。



ある日、三兄弟のオークは森の中で木の実や山菜などの食べ物を探していました。すると、1人の男が血まみれで倒れていました。心配したオーク達は慌てて駆け寄ります。近づくと、男の腕には1人の赤ん坊が抱かれていることが分かりました。

その男は誰かが寄ってきた音に気づき、こう告げます。

「この赤ん坊は、キーファ王国の王女様だ。大臣がクーデターを起こし、他の王族は殺されてしまったが、なんとか王女様だけは護衛騎士の私が連れ出して逃げてきた。・・・自分はもうすぐ死んでしまうだろう。王女様をお守りし、成長したらこのことを伝えてくれ。頼む。」

男はすでに視力を失っていました。自分が話している相手が魔物だとすら気づかなかったのです。オーク達は戸惑いました。しかし、男の必死な様子に心を打たれ、引き受けました。男は、まもなく満足気な顔で死にました。

オーク達は一生懸命赤ん坊を育てました。そして、王女が10歳になった頃、騎士の言葉を伝えました。王女は助けてくれた騎士や亡くなった王族のために、国を取り戻す決意を固めます。

三匹のオークは愛しい娘のため、共に戦うことを誓いました。国に戻る道中、人や魔物に襲われたり、国に戻ってからも魔物に唆された姫として国の人間に信用されず、数々の苦難が三匹と1人を襲います。

しかし、大臣の襲撃から身を呈して王女を守り続け、三匹は人々の信頼を得ていきます。大臣が国を治めてから高い税金に苦しめられていた国民は、とうとう、心やさしいオーク達と共に立ち上がる決心をします。

三匹のオークと国民は力を合わせて大臣を破り、王女は国を取り戻します。その後、国民と三匹のオーク達は仲良く幸せに暮らしました。




号泣しました。「うわあああん、ごめんよオーク。偏見で決めつけてごめんよおおお。」心の中で思わず叫んでしまいました。


泣いただけならまだよかったのです。王都に異変が起こりました。水路からドバドバと水が溢れてくるのです。そう、まるで私の感情に呼応するように。国民大パニックです。


幸い、すぐに泣きやんだので被害はあまり大きくなりませんでした。ですが、申し訳ないことをしたものだと思います。もっと立派な王都にならなければ。あの三匹のように。そう心に決めたものです。


こういう風に振り返ってみると、なかなか愉快な生活を送っている気がしますね私も。王都に転生してきた時は、「なんだよ!転生って、もっとこう、ちゃうやん。別の選択肢色々あるでしょ!逆ハーレムよこせ!」と荒れていましたが、今となってはいい思い出です。


さて、少しは皆さんに私のことを信じていただけたでしょうか?まあ、王都に転生なんて無理な話だとは分かっていますがね。


それでも、ほんのちょっとでも、私の話を楽しんでもらえたなら。また、聞きに来てください。


とある異世界の、おもしろい王都の人々の話を用意してお待ちしています。










気が向けば続き書きます。

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