第九十話 集え仮面シノビー!
仮面シノビー――多くの人間の目の前に姿を晒し、謎を残したまま去っていった突然のヒーローの登場に、広場は一時騒然となっていた。
それを見ていたケント、彼はシノビーの正体については当然気がついており、だが、なぜかクラスメートの中でもマイ以外は全く気がついていないことに若干頭の痛いものを感じた一人だ。
とは言え、ここまで来たらもうケントにはシノブを信じることしか出来ない。
そう思っていたのだが――その矢先、何やら宮殿のある方向から轟音が鳴り響き、今度は騎士や兵士が色めきだっていた。
それから少ししてケントの耳に入ってきた事。情報は錯綜していたようだが、ただ、一つだけ確かなのは城の近くに建設されていた塔が破壊されたらしいということ。
それにもきっと、シノブが関係していることだろうなと、ケントは考えたのだが、その矢先、ケントは二人気になる存在を目にすることとなる。
それは、少年と幼女という組み合わせだったのだが――幼女の特徴がシノブから聞いていた魔獣が幼女化した姿というのに似ている気がしたのだ。
更に言えば、もう一人の少年も、髪の色や、顔が違っているものの、シノブと同一人物な気がしてならなかった。
そして、だとしたらこれが分身というものかもしれない、と考え、そしてどういうわけか妙な胸騒ぎがした。
少しだけ迷ったが、ケントはどうにもそれが気になってしまい、結局ケントは二人の後を追うことを決める。
ただ、いくらなんでもケントもそのままの姿でいくわけにもいかず。
すると、追っかけている途中で運良く偶然、仮面屋を見つけることが出来た。流石帝都だけあって、どうやらこういう専門的な店もあったようであり、そこでケントは何かあった時のために、迷宮内でこっそりと懐に忍ばせておいた戦利品、宝石と交換で仮面を一つ手に入れることに成功する。
急いでいたのでお釣りはいらないと告げると、店主は随分と喜んでいたが――
それにしても自分がまさか仮面に頼るとは、と頬を掻くケントであった。
だが、ただ、冷静に考えれば確かにこの仮面一つでも、どうやら意外とバレないものらしいという事はシノブをつまりシノビーを見た周りの様子からなんとなく察してはいた。
なので、意外とそういうものなのだろうと考えることにし――そしてケントは二人を追いかけたわけだが……。
「……俺は、仮面シノビー二号だ!」
そう宣言した後、微妙な空気がその場を支配した。
あれ? と額から汗がこぼれおちるケントであったが。
「ほ、本気か、け、いや、仮面シノビー二号……」
一応、シノブの分身は話を合わせてくれたようだが、どこか呆れ顔でもある。
その様子に、まさかやらかしてしまったか? と考えるケントであったが。
「……仮面シノビー二号か、フッ、君! 言っておくがね!」
すると、白騎士がケントを指差し語気を荒げた。若干不機嫌そうであり、分身のシノブも、あ~あ、といった声を漏らす。
これは、あっさりバレてしまったか、とつばを飲み込むケントだが。
「君も随分と目立っているようだし、かなりイケてるとも思うけど! それでも圧倒的にかっこよくて目立っているのは、この僕だからね!」
「……は?」
だが、その反応は二人の斜め上を行っていた。どうやら、白騎士はケントもとい仮面シノビー二号をかっこいいと判断し、対抗心が生まれてしまったようだ。
「……馬鹿で助かったなシノビー二号」
「……そうだな――」
一応は分身のシノブがさっきまで苦戦を強いられていた相手ではあるのだが、オツムの方に関してはちょっぴり残念なようだ。
「……ところでもう一人はどうした?」
「うん? あぁ、知ってたか。あいつは先に行かせた。本体のほうがちょっと大変みたいだからな」
「……そうか」
「どうでもいいが、折角助けに来てくれたところ悪いが、こいつは相当に強いぞ。大丈夫か?」
「……俺は世界チャンピオンになる男だぞ?」
拳を掲げケントが述べる。本来なら逃がすべきかもしれないが、どういうわけかシノブには今のケントに心強いものを感じた。
「ふっ、でも仲間が増えたところで僕はかまわないよ。一人が二人になったところで、僕の技が見破れるわけもない」
すると、白騎士が微笑を浮かべ、そして再び構えを見せる。周囲の分身も同じように身構えている。
「第二ラウンド開始ってところか」
「……十二ラウンドまで、続ける気はないけどな」
するとケントも、後ろ足を引き、オーソドックスなボクサースタイルで挑む姿勢を見せる。
その時だった――
「どりゃぁぁああぁあああ!」
何かが木々の中から飛び出し、その斧で白騎士達を払い除けていく。
だが、それは全て分身だったようで、結局姿を消したのは分身だけであった。
「チッ、どいつもこいつも、一体どうなってるんだい!」
すると不機嫌そうにその仮面の人物が声を上げる。
突然の乱入者に、分身のシノブは額を押さえた。
「……最近は仮面つけるのが流行ってるのか?」
「いや、そういうわけじゃないと思うんだけどな」
ケントが不思議そうに口にするが、分身のシノブは却下した。
ただ、ケントの言うように乱入者もまた顔に仮面を身に付けている。ただ、性別が異なるのはその声とやたら大きな胸と谷間で理解が出来た。
「これはまた、お仲間でしょうか?」
すると、残った分身の中の一人が改めて彼女に問いかけてくる。
それを認め、仮面の彼女は鼻を鳴らし答えた。
「フンッ! いけすかない騎士様だねぇ。あぁそうさ、あたいもこの二人の仲間! 仮面シノビー二ご――」
「……言っておくが、二号は俺だぞ」
威勢よく名乗りを上げようとした仮面の女だが、ケントがあっさりとその座は自分が手にしていることを告げた。
二号さんは何人もいらないのである。
「…………」
すると、一瞬の沈黙。微妙な空気が間に流れるが。
「あ、あたいは、か、仮面シノビーピンクさ!」
遂には自分を指差しそう名乗った。これでも本人は一生懸命考えたのかもしれないが、自分で口にしておきながら耳まで真っ赤だ。
「……凄い人気だな仮面シノビー」
「喜んでいいのか……大体何でピンクなんだよ……」
二号と来てピンクである、普通なら三号といきそうなものだが、世の中ままならないものである。
「さぁ、あたいが来たからにはもう大丈夫だよ。てか、あんた誰だい?」
「俺は仮面シノビー二号だ」
「だったらあたいはピンクだよ」
「おかしなところで張り合うなよ。それとこっちは――」
とりあえずシノビーピンクが二人の下へやってきてくれたので、分身のシノブがケントに説明し、ケントについても簡単にだがピンクに教えてあげる。
「……噂の傭兵ギルドのマスターが彼女か」
「いや、なんであたいの正体そんなすぐに判ったんだい……」
「むしろどうして判らないと思ったんだよ……」
分身のシノブが呆れ眼で返した。
「やれやれ、随分と仲間が増えたみたいだけど、まさかこれからまだ増えたりするのかな?」
すると、白騎士が三人を眺めながらそんな事を聞いてきた。ただ、その顔に浮かべた笑みに変化はない。特に慌てた様子もなく余裕そのものだ。
「……流石にもういないさ」
そして、ケントが一歩前に出て答える。中々凄みの感じられる口ぶりだ。
「そう? それにしてもお仲間にピンクだったかな? 貴方のようなお美しい女性までいたなんてね。本当にこんな戦場にそぐわない可憐な一輪の華がね、ふふっ、どうかな? 良ければその仮面を外して、僕と甘く楽しい夜を過ごしてみるというのは?」
「ケッ、ごめんだね。あたいはあんたみたいなすかした男が一番キライなんだ。それに、可憐な華だって? 勘違いするんじゃないよ! あたいはそんな上等なものじゃない、踏まれて踏まれて、それでも枯れずにたくましく成長した雑草、それがあたい、仮面シノビーピンクさ!」
5人そろうと巨大ロボに乗って!みたいな展開予定はおそらくありません(´・ω・`)




