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第七十五話 迷宮支配王

 巨大な門の前にいた男は、自分は迷宮を支配する王だといい出した。


 いきなり何かとんでもない爆弾放り込まれた気もしないでもないけどな。


「ふぇ、迷宮を支配する王って、も、もしかして! 迷宮支配王(ダンジョンマスター)っすか!」

「ふむ、地上の者からはそうも呼ばれているようだな」

「ひ、ひぇええええぇえええぇええ!」


 マイラは今にも卒倒しそうな程に仰天した。中々リアクションが大きいなこの騎士。


「落ち着け、一々騒ぎ過ぎだぞマイラ」

「な、何を呑気な事を言ってるっすか! 迷宮支配王っすよ! 迷宮災害の中でもトップクラスのヤバい奴っす! 帝都がピンチっす!」


 あ~たしかにそう言われてみれば、迷宮災害に迷宮支配王の誕生ってのがあったな。

 確か地上を侵略したりするんだったかな。


「マイラがこう言ってるんだけどな、あんたもやっぱりいずれ地上に出て侵略するつもりなのか?」

「……私の責務はこの門を守り続ける事。それ以上でもそれ以下でもない。故に、この門を離れるつもりもなければ、地上を攻めようなどという考えもない」


 やはりそうきたか。そもそもマイラは驚いていたが、本気でその気があるならとっくに行動に移していてもおかしくないしな。


「俺達以外にも誰かこの地にきたことはあるのか?」

「ある」

「そいつはどうしたんだ?」

「私に挑んできたが返り討ちにした。死ななかったのは評価に値するが、それ以後はみていないな」

「それはいつ頃の話だ?」

「細かい時など覚えてはいないが、少し前の事だ」

「す、少し前って事は、一年とか二年ぐらい前っすか?」


 マイラも落ち着きを取り戻したようで、このミストラルという迷宮支配王に質問するが。


「……私とお前たちでは時の流れにかなりの隔たりがあるな」


 つまり、少しといっても一年か二年などではないということか。雰囲気的に十倍以上は差があると見るべきか? 十年~二十年前、下手したらもっと前ということもあるか。


「そいつはどんな奴だったんだ? 特徴とか何かあったのか?」

「……獅子の形をした剣をもっていたと記憶している」


 獅子の剣……やはり皇帝か。つまり皇帝はこの迷宮がどんな迷宮かは知っていたという事だな。


 その上で俺たちに挑戦させたんだからな。全く食えない奴だ。


「どちらにしろこの門を抜けるにはあんたを倒すほかないってことか」

「そのとおりだが、やめておくことだな。どれほどの刀を持っていようが、貴様ではこの私を倒すことなど不可能だ」

 

 はっきりと断言しやがったな。どんだけ自信あるんだ? まぁ、とりあえず――


「ステータスを見ようとしているなら無駄なことだぞ」

「――ッ!?」


 あっさりバレた……しかも、たしかにステータスが全く見れない。


「……参ったな。これは中々大変そうだ。だけど、この先に進めなければ、この迷宮を出れそうにないしな」


 中々不気味な存在だが、必要ならやるしかないしな。


「……そんな事か。ただここを出たいだけなら、この階層のどこかに出口に通じる転移陣がある。それを使えばいい。むしろ万が一この門を抜けることが出来たとしても、そんな事をすれば脱出が遠のくだけだぞ」

「へ? そうなのか?」

「そんな事で嘘など言わん」

 

 ミストラルが浩然たる態度で告げてくる。う~ん、たしかにそんなことで俺たちを騙しても仕方ないか。それに敵意があるならとっくに何かしら行動に移しているだろう。


 つまり、この男は迷宮支配王とされる存在ではあるけど、かといって地上で何かしようとする気はなく、とにかくここで門を守っているだけだと、そういうわけだ。


 それを放っておいていいのか? と思わなくもないが、皇帝が一度ここに来ていて、しかも倒そうとしていたということは、あの皇帝も何らかの理由でこの門を抜けたいと思っているということだ。


 倒せる倒せないは別問題だが、もし俺がここで門を開ける事が出来たとしても、結局皇帝を喜ばせるだけってことだ。


 それは正直癪だしな。


「判った。信じるよ、ところでここは迷宮のどのあたりになるんだ?」

「地下二十五階層だ」


 二十五か……つまり、二十層ぐらいあの穴から落ちてきたって事か。


「色々ありがとうな。ついでにその転移陣の場所も教えてもらえるか?」

「調子に乗るな、それぐらいは自分で探せ。それに、基礎となる場所以外、迷宮の構造は常に変化する。それを事細かに憶えてなどいない」


 基礎となる場所か。恐らくあの穴なんかも含まれているんだろうな。


「判った、ありがとうな。それにしても迷宮支配王といっても、特別悪いヤツというわけでもないんだな」

「……私の目的がこの門を守ることというだけだ。迷宮支配王にも意思がある。全てが全て同じ考えというわけではない」


 なるほどな。ミストラルは特に他種族や迷宮攻略者に敵対意思はないようだが、勿論、門を無理やり通ろうとでもしない限りだが。


 他の迷宮支配王はまた別って事か。当然だろうけどな。


「シノブ、本当にこのままにしておくっすか?」

「あぁ、正直無理してまでここを通る理由がないしな。それに皇帝だって来てるようなところだ。帝国も周知してるんだろ」

「そ、それが本当ならそうっすけど……」

「間違いないだろ。獅子の剣というのを知っていたんだから。それともマイラが挑んでみるか?」


 俺が尋ねると、マイラがちぎれんばかりに首を左右に振った。


「無理に決まってるっす!」

「じゃあとりあえず出る為の転移陣を探すって事で決まりだな。じゃあ、俺達はいくぜ」


 俺はそう言い残しその場を去る。ミストラルは特に何も答えなかったけどな。

 マイラは不安そうだけど、とにかくここを出るほうが先決だ。


 門があるこの空洞もかなり広いが、来た方とはまた別に、移動できる道が用意されていた。

 

 それを進むと、今度は分かれ道に出る。流石に終始一本道って事はないな。

 やっと迷宮らしくなって来たとも言えるけど。


「ど、どっちにいくっすか?」

「マイラはどっちだと思う?」

「え、そ、そんなこと急に言われても――こ、こっちっすかね?」

「じゃあそっちだな」

「へ! そんな適当でいいんっすか!」


 いいんだって。こういうのは勘が大事。なんとなくマイラの勘に頼るほうがいい気がして――


――ヒュン!


「ははっ、中々手荒い歓迎だな」


 いたんだけど、マイラの示した法を数歩進んだら、壁から矢が飛んできた。トラップって奴だな。

 

 刀で切りおとしたから、俺もマイラも怪我はないけど。


「うぅ、やっぱりあたしが選ばないほうが良かったっす!」

「そんなことないって。もしかして違う道は落とし穴だったりもっと手痛いトラップだったかもしれないしな」


 こう言う時は良い方に考えた方がいいしな。

 とは言え、俺もちょっとは慎重に移動する。怪しいところは武遁で手裏剣を作り投げつけて確認していった。


「な! 天井から槍っす!」


 正確には槍付きの天井が落ちてきたってとこだな。


「壁から手が!」


 すげー一杯出てきたな。気持ちわる。


「地面に巨大なトラバサミが!」


 本当物騒だな。


「わ、罠多すぎっす……」

「結構物騒だったな」


 全部事前に回避したけどな。それに罠が多い分、魔物は出てこなかったし。


 そして、横穴のような道を抜けた先には、またちょっとした空洞があったわけだが。


『ウキー! ウキー!』

「な、何か変な鳴き声が聞こえるっす……」

「まぁ、変なと言うか見るからに猿だな」


 空間内には天然の柱のような物が多数並んでいて、その上に猿が数匹ずつ乗り、俺達を見下ろしていた。


 大きさは、俺の世界でよく見るタイプの猿よりは一回り以上大きい。毛は茶色で腕が長いな。


 とりあえず、看破してみるか――


「ウキャーーーー!」

「へ?」

「マイラ!」


 そんな事を考えていたら、突然地面が盛り上がり、猿が中から飛び出してきた。

 こいつら地面に潜んでいたのかよ! しかもマイラに手を伸ばし――


「ウキャ、キャキャキャキャーーーー!」


 嬉しそうに戦利品を持って、直ぐ様逃げ出してしまった。そんなこいつらのステータスは――



ステータス

名前:ハンズモンキー

レベル:28

種族:魔物

クラス:獣系

パワー:360

スピード:620

タフネス:220

テクニック:580

マジック:0

オーラ :220


固有スキル

高速剥ぎ取り

スキル

投石、散弾投石、岩砕き、土潜み、強制性交

称号

盗人猿、群れをなす者



 そう、ここで重要なのは高速剥ぎ取り。

 こいつら、どうやら相手の着ている物を瞬時に剥ぎ取る性質があるようで、しかもそれは相手が女の場合顕著であり――


「き、キャァアアアアアァアア!」


 そして猿に鎧を剥ぎ取られ、下着姿だけになってしまったマイラがその場でしゃがみ込んでしまった。


 全く、なんてエロ猿だ!

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