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現代で忍者やってた俺が、召喚された異世界では最低クラスの無職だった  作者: 空地 大乃
第一章 忍者召喚編

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第五十五話 忍者と黒尽くめの男

 なんとか口を割らせようと、その手段を考えていたところで、またもや聞き覚えのある声。

 振り向くと、やはりあのババアの姿だ。


「全くこんな時間にやかましいったらないねぇ。目が覚めてしまったのじゃ」


 そして婆さんが近づいてくると――モブ五人が急に姿勢を正した。


「お前たち突然どうしたんだよ?」

「し、知らないのですかい兄貴! あの人には逆らっちゃいけないって、スラムじゃ常識なんでさぁ!」

 

 そうだったのか。最初見たときはただのエロババアにしか思えなかったのにな。


「おやおや、バーバラが酔いつぶれるなんて珍しい事もあるもんだ。あんた、この後一体あの子と何する気だったんだい?」

「へ?」

「あ、兄貴! まさか姉御と、そ、そういう関係だったのかよ!」

「いやいやちげーよ! ただちょっと酒場いっただけだ! 酔いつぶれたから送ろうとしただけだし! そしたらなんかこの連中に追い掛け回されたんだよ!」


 一応大体は本当のことだからな!


「我は知っておるぞ! 確か交尾するとか言っていた気がするのじゃ!」

『なにーーーーーー!』


 おいこらネメア! 余計な事を言うな!


「痛いのじゃ」

「誰が悪いんだ誰が」


 とりあえず拳で頭蓋をグリグリしておく。反省しろ。


「流石兄貴だ! 幼女にも全く容赦がない!」

「当然だ、兄貴に掛かれば例え幼女相手でも事件に変わる!」

「鬼畜でドSなのじゃこやつは」

「クッ、言わせておけば!」


 大体幼女相手で事件に変わるって完全にヤバいやつだろ!


「さて、くだらない話はとりあえずここまでさね。そいつ、中々口が硬そうじゃな。そういうのはこのババアに任せておけばいいのじゃよ」

「へ? お、おい――」

「いいからどいてるんだね」


 そして婆さんは俺を押しのけるようにして、口を噤む男の前に立ち。


「あん? なんだこのババアは」

「やれやれ、口の聞き方を知らないガキだねぇ」

「うっせぇクソババァが! 老い先短いババアに興味は――ギッ!」


 その先は、あまりに凄惨だった。こういっちゃなんだが、俺が考えていた手よりも遥かに惨たらしく残酷な手を婆さんはやってのけた。

 

 勿論婆さんにはこの連中を取り押さえるだけのパワーなんて本来ない。だからこそ、薬に頼ったのだろう。

 

 小道具は色々準備されていたようで、特にどれだけ離れた場所にいても思わず集まって貪りたくなる匂いを発する薬は、瞬時に蟲を呼び寄せ、男に群がっていった。薬には蟲の咬む力を強める効果もあるので男は生きたまま少しずつ肉を食いちぎられていく事になる。


 ちなみにその蟲とはいかにもスラムにいそうな雑食のあれだ。黒い悪魔だ。それが大量に男に群がっているのだ。黒い海に飲み込まれていくのだ。


 そんな拷問を受け続けたことで、男はそれから間もなくして口調が滑らかになり、全身血まみれといった状態でありながらも全てを話した。


 それによると、この件も全身黒ずくめの男が関係しているらしい。ただ、正体は全く判らないそうだ。


「ふむ、基本は生け捕りが望ましいようじゃが、最悪死体でも引き取るようじゃな」


 これだけの拷問をしておいて、ババアは涼しい顔だ。


「まあ、こうなったらこれを上手く使うべきだろうねぇ。死体を持っていって、それで納得してもらうのさ」

「おいおい冗談だろ? 俺に死ねって事かよ?」

 

 事も無げに婆さんがいうので、俺も思わず突っ込んだ。流石にこんなところで死ぬ気はない。


「別に本物に死ねと言ってるんじゃないさ。こんだけいれば一人ぐらいあんたに体格が似てるのもいるしねえ。顔もある程度骨格が似ていれば、知り合いに上手くやってくれるのがいるのさ。色々と世話を焼いた事もある男さ。頼めば今日中になんとかしてくれるだろうさね」


 さらりととんでもないことを言う婆さんだな。つまり替え玉って事かよ。


 でもそれってつまり――


「身代わりになるやつは殺すってことか?」

「は? 全く、あんたもそういうところは甘ちゃんじゃな。何を言い出すかと思えば」

「いや、勿論俺だって必要なら仕方ないかもとは思うが、しかし――」

「言っておくけど全員殺すよ」

「……はい?」

 

 




◇◆◇


 朝が来た。俺はベッドから起き上がり、頭を押さえる。昨日の内に大分アルコールは飛ばしておいたと思ったが、やはりまだ頭が少し痛む。


 まぁ、この程度で済んでまだ良かったと見るべきかもしれないけどな。


 結局――今日も城については分身に任せてある。本当は今日から迷宮攻略が始まるので、出来れば本体の俺が参加しておきたかったところだけどな。


 ただ、一日で回れる人数には限界があるため、予定では二日間使っての攻略となる。


 全員いっぺんに挑むのではなく班分けして順番に攻略していくわけだ。


 うちのクラスは全部で三十九名だが、基本的には五人一組で、それだと一名足りないため、一組だけは四名となる。


 つまり全部で八つの班が出来るというわけだな。

 

 なぜ班になるかに関しては、大体迷宮攻略というのはパーティーを組んで挑む場合が多いため、そういった連携に慣れておくためという話だ。


 ちなみにこの班に関してはこれまでの訓練を元にあの鬼軍曹が組分けしたようだ。俺的にはそれだけでも一抹の不安があるんだけどな。

 

 本当は、それがどんな分け方なのか気になったというのもあって、分身に調査させていたんだが。


 結局、何者かによって消されてしまったので調べられずじまいだ。


 城に関してはこんな感じだ。今日先ず四班が攻略に向かい、そして明日は残った四班が攻略していくこととなる。


 俺としては出来れば明日になって欲しいところだけどな。今日はもう予定を入れてしまったし。


 それにしても――改めて俺は昨日のことを思い出す。


 結局あの後、婆さんから話を聞き、後のことは婆さんに任せる事に決めた。そして俺はバーバラを送り届けた。一応念のためスラムのあの五人が見張りをしてくれるとは言っていたが、心配だったから分身も一体近くに控えさせた。


 まあ、結局何も起きなかったけどな。婆さんが上手くやったのだろう。

 

 俺は婆さんの言葉を思い起こす。

 全員殺す――残酷なようだが、恐らく甘いのは俺の方なのだろう。それにあれはスラムとして必要なことだ。あの婆さんだって俺に協力しているし、バーバラだってそうだ。


 それである以上、ここで中途半端な形で奴らを逃したらスラムそのものが危ない。婆さんは多分今回の件がそれぐらいのことだって気がついている。


 だからこそ婆さんは俺の身代わりの死体を用意する事に決めた。今ならまだそれで済む話だと判断したからだろう。


 勿論そうなると、俺がまだ生きているということやスラム、バーバラ、婆さんに通じている事を知っている者が一人でもいるのは不味い。だからこその手段だ。


 婆さんの仕事は早かったようで、スラムに入る前に倒した連中も仲間が動いて回収したらしい。


 ただ、今回俺を追い回していた連中の数は多い。それだけの人間が消えて怪しまれないのか? と思ったりもしたが。


『この帝都には五十万人もの人間が住んでんだ。その中からこんなゴロツキ連中が百や千消えたところで誰も何も思いやしないさ』


 それが婆さんの答えだった。確かに全体で見れば些細な数だもんな。


 どっちにしろ俺も婆さんにはこれから出入りする場合は顔を変える事を約束した。

 それを特に疑問とも思ってなかったようだな。俺ならそれぐらい可能だろうなといった目で見ていた。


 中々鋭い婆さんだよ本当――





「むぅ! 朝はこれだけとは寂しいのじゃ!」

「我慢しろよ。朝からあんなにバクバク食われたら、こっちの食材も持たないんだから」

「むぅ~」


 文句を言いながらもネメアは唐揚げをパクパクとよく食べた。焼きおにぎりもよく食べた。これらは昨晩の内に分身が作り置きして次元収納にしまっておいてくれた。グッジョブ俺。


「むぅ、しかしこのおにぎりというのは本当に素晴らしいのじゃ。いくら食べても飽きないのじゃ」

「そんなに好きなのか?」

「うむ、我はこの米なら毎日でもいけるのじゃ。味噌汁もいいのじゃ! 米も味噌も懐かしい感じがしていいのじゃ!」

「そんなものかねぇ……」


 ただ、米にしろ味噌にしろ、使いすぎると在庫が切れるからな。好きなのはいいがある程度は考えてもらわないとな。


 すると、部屋のドアをノックする音。開けると、誰もいなかったがメモ書きだけが残されていた。逆に俺が残しておいたメモ書きは消えていた。


 昨晩の内にまた聞きたいことがあるかもしれないから、そのときはメモに残すと言っておいたからだ。


 この状況で更に調べ物を頼むなんて俺も図太いなと思う。ただ、しばらく直接顔を合わせるのは控えたほうがいいのは確かだ。だからメモでやり取りした。


 そして頼んだことは例の呪術師の事だ。朝起きて分身の記憶がはっきりしてきたからな。


「引き渡しは――午後の1時か……」


 メモを見て思わず呟く。随分と早く連絡がついたものだな。まあ、あれこれとあの連中から聞いていたしな。


 これは俺の偽物の遺体を相手に引き渡す時刻だ。場所にしてもスラムではなく、商業区の奥まった所。やはり目立たない場所を選んできたようだな。


 俺にこの情報が届いたのは、昨晩俺も遺体の引き渡しには同行させて欲しいと頼んでいたからだ。


 これはケジメみたいなものだ。自分のせいで結果的に話が大きくなっているんだ。それなのに全て他人任せとはいかない。


 それに黒尽くめの男の正体も気になる。まあ実験段階の薬を飲ませるような組織とも違うだろうけど、自分の目で確認しておきたい。


 勿論、同行といっても堂々とついていくわけじゃない、忍者らしく忍んでの同行だ。


「今日は昼飯を食べた後、ネメアはここで留守番だ。出来るよな?」

「むぅ、なんでじゃ、狩りなら一緒に行くのじゃ!」

「狩りじゃねぇよ。いいから大人しく待ってろ。今日は流石に同行させるわけにもいかないし、無駄な分身も作れない。出来るだけ力は残しておきたいんだよ」


 俺がそう告げる。俺が毎回生み出しているのは分身だと、軽く説明はしていた。ネメアは魔法のようなものと捉えているようだけどな。


「……ふん、仕方ないのじゃ。その代わり、昼は豪勢なのを頼むのじゃ!」

「……そうだな、スラムでは流石に作れないし、仕方ない。早めになると思うけど、今日は外食だ」


 おお! とネメアが目をキラキラさせた。ただし店は俺が選ぶ。というより、選んでいる。実はこの世界にしては珍しいようだがランチ限定食べ放題の店を見つけていた。これならネメアでも大丈夫だな――





「ふぅ、我は満足なのじゃ~~~~!」


 昼飯を食べ終え宿に戻るなり、ネメアがベッドに横になった。

 それにしても、あの店主涙目だったな。最後に二度とくるな! とキレ気味に怒鳴られた。


 あれはもう間違いなく出禁だな。間違いなく今日は赤字だろうし。


「じゃが、シノビンの料理に比べたら三流だったのじゃ! 腹いっぱい食えたからまだマシ程度なのじゃ!」

「それ、あの店主の前で言わなくてよかったよ」


 傷口に塩塗るようなものだし。


「さて、我は一眠りするのじゃ。その間に、さっさとやることを片付けてくるのじゃ!」

「――ああ、そうだな。まあ、大人しくしておけよ」


 そして俺は、ネメアを残して、遺体の引き渡し場所へと向かった。






◇◆◇


 それにしても、偽物とは言え、自分の遺体を引き渡す現場を観察するというのも妙な気分だな。


 商業区の路地裏を抜けた先。まるでスラムのように怪しい空気漂うそこが俺を引き渡す場所だ。


 このあたりは商業区という事もあって、そこそこ高い建物も多い。俺はその内の一つ、その屋上に身を潜め観察している。


 勿論気配も消しているし、隠れ身も使用済みだ。


 ちなみに婆さんは来ていない。まあ、当たり前だけど。流石に浮くし、追いかけてきた中に婆さんみたいのはいなかったしな。


 だから中にいてもおかしくなさそうな屈強で強面の漢が四人、黒尽くめの男を待っている。


 約束の時刻までは、もう間もなくだと思うけどな。教会堂も午前とお昼、そして夕方には鐘を鳴らすのだが、一度鳴らした後、一時間後にまた鳴るというのが決まっている。


 お昼の鐘は、昼の12時に先ず最初の鐘がなり、午後の1時にまた鐘がなる。


 その鐘がなるころには、相手も姿を見せるはずなんだけどな。今のところ全くその気配がない。


 本当に来るのか? 

 俺がそんな事を思っていると、ついに午後の1時を知らせる鐘の音が鳴り響く。だが何かが来る気配は感じな。術にも反応はない。


 おいおい、遅れてくるのかよ、え?


「約束通り、遺体を受け取りに来たぞ。本当なら、生け捕りの方が良かったのだけどな」


 四人の男たちが驚いている。それは俺も一緒だ。四人の男たちの正面には、既に黒尽くめの男がいた。だけど、こいつ一体いつ来たんだ? 俺にすら、全く察知できなかったぞ。


 念の為、偵知の術だって展開していた。

 それなのに――一体どうして!?


「お、お前一体どこから出てきたんだ?」

「どこからでもいいだろう。それより、遺体を確認させてもらうぞ」


 男たちは、一瞬顔を見合わせるも、すぐに表情を戻し布でくるんでいた遺体を地面に寝かせた。


 最初の驚きはともかく、それ以降は上手くやっている。表情からも怪しい雰囲気は感じない。


「……こいつか、なるほどな、まあいい。ところで、お前らの方は四人だけなのか?」


 遺体を確認した後、黒尽くめの男が彼らに確認する。やはりそこは聞いてくるか。でも――


「この手の取り引きでぞろぞろやってくるわけがないだろう。俺達が報酬を受け取り、それを後で山分けだ」

「……そうか」


 黒尽くめの男は一応納得したのか、遺体を肩に担ぎ、袋を一つ放り投げた。


「死んでいるからその分報酬は減るぞ。五十万ルベルだ」


 袋を渡された男たちはしっかりと中身を確認する。そして金額があっていることを確認したら、確かにな、と言い残して去っていった。


 黒尽くめの男も特に何かする様子も見せず、そのまま踵を返し歩きだす。


 ここからが重要だ。俺は奴の後をつける。油断ならない相手なのは、きていたことに気が付けないことからよくわかる。


 だからこそ、知っておく必要がある。こいつが、一体何者なのか。


 それにしても、妙に入り組んだ場所に入るな。こうなると上からは厳しい。

 一旦地上に戻り、上手く周りに溶け込みながら、相手を尾ける。


 あれだけの大荷物を抱えているんだ。見失うわけがない。


 黒尽くめの男が角を曲がった。俺も後を追う――が。


「な! いない、だと!?」


 驚愕する。俺の尾行に間違いはなかった筈だ。それなのに、奴がいない。それどころか――正面には壁、つまり行き止まりだ。


 それなのにどうして? 壁は七、八メートルぐらいはあるが、あんな荷物を抱えて飛び越えたとでも――


「随分と必死に尾けてきたものだな」

「――ッ!?」


 弾かれたように振り返る。自然と目が限界近くまで見開かれる。


 そんな馬鹿な、どうしてそんなところにいる! しかも一連の動きを見て感じたことがある。まさかとは思っていたが、こいつ――


「さて、偽物の遺体を運ぶのも疲れていたところだ。折角だから少し話すかい? 本物さん(・・・・)

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