表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/237

第四話 忍者の俺が無職かよ!

「――その、無職というのは、この世界においてもそれなりに多いクラスではあるのですが……」


 俺が一人目を白黒させていると、イグリナが無職についてを説明してくれる。


「正直、無職というのはこの世界における最底辺のクラスに位置づけされており、ステータスの数値も低く、更に無職である限り、今後LVが上がることはない、という制限までつきます。当然ですが、他の皆さんがクラスが決まると同時に得られるであろうスキルも、そして称号も一切つくことはない、それが無職です」

「……はあ、それは中々散々ですね」

  

 聞いてるだけで不遇とかそういうレベルを超えた、救いようのない職業だって事はよくわかる。まあ、職業無職になるわけだから、強いわけがないと言えばそうだが――


 でも、俺、現代では忍者だったからね! と、そんな事声を大にして言うわけにもいかないし、とりあえずは受け止めるしかないな。


「(……はあ、それにしてもわざわざ召喚したのに無職みたいなゴミが混じってるなんて、本当、さっさと死ねばいいのに――)」

「……あれ? 今何かいいました?」

「え? いえ別に何も言ってませんよ? どうしてですか?」

「あ、いえ、空耳でした」

「そうでしたか(チッ)」


 うん、わかりやす! いや、たしかにこのイグリナ、声にこそ出してなかったけどね。

 

 でも、現代で忍者やってた俺は当然、読唇術ぐらいは余裕でつかえる。それで、この女の唇を読んだわけだ。声に出さなくてもそれで判る。


 本当ある意味わかりやすいよな。尤も最後の舌打ちは普通にしてたけどな。まあ、周りには聞こえない程度だけど。


「残念な結果ではありましたが、気はしっかりお持ちになって。きっと貴方にもいいことがありますよ(さっさと死ねクソ野郎)」


 うん、本当白々しいな。てか、いちいち建前を口にした後、唇の動きだけで本音言うなよ。

 全く、一応は相手も第二皇女だし、とりあえずは笑顔で対応して、その場から離れたけどな。


 で、階段を下りた先では、焔 熔巌(ほむら まぐま)鉄胴 鎧(てつどう がい)山野 鼠助(やまの きゅうすけ)の不良三人衆がニヤニヤして待ち受けていた。


 マグマはメラメラと燃えるような真っ赤な髪が特徴的な目付きの悪い奴だ。肌が褐色で長身で引き締まった体つきをしている。

 ユウトを敵対視してるみたいだが、さっき俺にも因縁つけてきたな。


 こいつは確かさっきの儀式で爆裂戦士のクラスを手に入れたんだったな。


 そしてガイは学校一の巨体を自慢している男だ。角ばった厳つい顔をしていて、茶髪でイガグリみたいな髪型をしている。

 

 筋トレが趣味という男でもあるな。

 こいつは確か重鋼戦士というクラスを手に入れたんだったな。何か見た目通りって感じだ。


 そしてもう一人のキュウスケはこのふたりに比べるとかなり背が低い。俺達の教室で一番低いかもしれない。


 普段から背中を丸めて移動しているから特にそう思えるかもしれない。顔は鼠のようで髪はソフトモヒカンにして灰色に染めている。そして目が細く出っ歯だ。


 手に入れたクラスは吸収士という名称だったな。かなり特殊なクラスらしく、あの性悪姫様も育ち方次第でかなり強くなれると言っていたぐらいだ。


「よぉ、無職(・・)。どうだ異世界にきて無職になった気分はよ?」


――チッ、やっぱこいつら俺とイグリナの会話聞いていたんだな。


「あ~あ! それにしても驚きだな~あの皇帝陛下にあんだけ啖呵切っておきながら、その本人がまさか職業無職とはなーー!」

「キキキキキッ! 無職とか超ダセーし! 一体こいつどの面下げて俺達の前に立ってるんだか!」


 三人が俺を嘲笑し始めた。特にマグマは周囲に聞こえるぐらい大声で俺が無職であることをアピールしている。


 まあ、なんとなく予想はついてたがくだらないことをする連中だな。


「……シノブ、大丈夫か?」


 すると、ケントが俺に近づいてきてそう聞いてきたんだけどな。


「はぁ? うっせぇなデカブツが! てめぇは関係ないだろすっ込んでろ!」

「……あ?」


 あ、やべぇ、ケントは確かにああ見えていいやつなんだがな、なめられて黙ってるようなタイプでもない。


「おいおい、こいつも何か調子にのってないか?」

「キキキッ! 拳闘士なんて微妙なクラスの癖に、よく偉そうに出来るなぁ」

「全くだ、何が拳闘士だ、それってつまりあれだろ? ボクサーって事だろ? はははっ、異世界でボクサーとか笑えねぇ。知ってるか? 蹴りがない組めない投げれない絞めれない、その時点でボクサーなんて戦士として不完全なんだよ! 実戦で使い物にならねぇそんな欠陥品が偉そうにしてんじゃねぇ!」


 マグマ、よりによってケントにそれを言うとは――ケントは現場で知り合った職人のすすめで実はボクシングジムに通ってる。

 

 ケントが唯一家族に許してもらってるわがままだと本人は言ってるけどな。それも自分の腕っ節でいずれプロになって家族に恩返ししたいって思いからだ。


 そして実際ジムでもケントはそうとう期待されてたようだしな。そんなケントにボクシングを侮辱するような発言は、逆鱗に触れるのと一緒だぜ?


「……だったら、試してみるか?」

「おもしれぇ、この爆裂戦士のマグマ様とやりあおうってのか?」


 一触即発の空気がその場を支配した。でもまいったな。きっかけは俺だし、やっぱとめといた方が――


「君たちいい加減にしないか!」


 と、思ったらユウトがやってきて仲裁に入ってきた。う~ん、流石根は真面目だ。


「一体何を考えているんだ! 今は同じクラスでそんな馬鹿げた真似をしている場合じゃないだろう!」

「そうよ! ユウト様の言うとおりだわ!」

「本当、男子って野蛮だよな」

「け、け、け、けん、か、は、よ、良くないと、お。思います」

「全くだ。べ、別にユウトの肩を持つわけじゃないが、ちょっとは状況を考えるのだな!」


 そして追従するように親衛隊の女子から批難の声が殺到した。

 それに、チッ、と舌打ちを見せるマグマだが。


「くそ、余計な邪魔が入って興が削がれたぜ。たく、流石伝説の勇者様は言うことが違うねぇ~」

 

 そんな捨て台詞を吐きながら、三人はその場を離れた。と、言っても神殿内にはいるんだけどな。


「全く、今は皆で協力していかないといけないというのに、ケント君、君も君だ、あんな連中の挑発にのるなんて」

「……悪い」

「いや、待て別にケントが謝ることじゃねぇよ。あいつらがお前を侮辱したんだから、それに、下を正せば原因は俺だしな」


 するとユウトがハッとした表情を見せ、かと思えば突然俺に向けて頭を下げてきた。


「は? なんで頭下げてるの?」

「すまない! 確かによく考えたら今のは僕が真っ先に止めるべきだった。大体、無職だからってあんな馬鹿にするような真似許されるわけがない」


 ああ、そういうことか。それにしても本当こいつは素直というか愚直というか。


「だからいいって。それになってしまったもんは仕方ないし、何言われても気にしてないよ」

「でも……」


「さてお前たち、これで全員クラスが判明したな。一人だけ期待はずれが混じってもいたが、とにかくこれでお前たちは自分のステータスが確認出来るようになった」


 俺とユウトがそんな話をしていると、あのマジェスタとかいう爺が声を上げた。何か普通に喋ってるみたいなのに、脳内に直接響いているような妙な感じだな。


 あれも魔法の一種か? それにしても、期待はずれって明らかに俺のことだよな。

 それを聞いたあの三人は勿論、他の生徒の中にもクスクスと笑い出すやつも出てきた。

 

 全く、先が思いやられるな。


 とは言え、とにかく全員一旦ステータスを確認して、それを報告する話となった。といっても、口頭ではなく、ステータスを開いた時点で閲覧許可にすれば誰からでも見れる状態になるらしい。


 で、ステータスの開き方はステータスオープンと唱えればいいとの事で、仕方ないから俺も試してみることにする。

 

 すると、俺の頭上に半透明のウィンドウみたいなのが現出した。これで確認出来るのか。本当ゲームみたいだな。


「おお! 流石勇者様だ! 素晴らしいステータスをお持ちですな」

「ええ、やはり伝説の勇者様は違います」

「え? そ、そうなのかい? 僕にはよくわからないんだけど……」


 そしてやはり大臣と性悪姫様の注目はユウトに向けられた。ただ、どれだけ高いと言われても基準がわからないな。


 それを察したのか、隣に立つ騎士がこの世界の平均的なステータスというのを教えてくれたわけだが。



ステータス

名前:ノーミン

性別:男

レベル:3

種族:人間

クラス:農民

パワー:20

スピード:10

タフネス:20

テクニック:20

マジック:0

オーラ :0


スキル

耕す、農業の知識

称号

農奴



 これがこの世界で尤も多いタイプのステータスのようだ。そして騎士曰く、このステータスでは一対一ではゴブリンにも勝てないとのこと。


 うん、やっぱゴブリンいるんだな。しかもお約束の雑魚の代表だ。


 そして、これがユウトが見せていたステータスだな。



ステータス

名前:ユウト ミツルギ

性別:男

レベル:20

種族:人間

クラス:勇者

パワー:280

スピード:350

タフネス:250

テクニック:330

マジック:250

オーラ :280


固有スキル

聖なる加護、聖剣召喚

スキル

聖魔法、聖なる付与、聖十字斬、聖鎖剣

称号

導きし者、邪を滅す剣士、清廉潔白




 う~ん、ステータスで見るとやはり圧巻だな。比べるのもあれだが只の農民とは格が違いすぎる。


 おまけになんだこのいかにも勇者然としたスキルの羅列は、称号も多いし。それに固有スキルというものまであるな。


 どうやら本来固有スキルというのはあるだけで称賛されるぐらいの希少なものらしいな。しかも大体その効果は他のスキルに比べて強力なんだとか。


「こ、これは!」

「ケント様も、これは、す、凄いぞ!」

「これで本当に拳闘士なのか?」


 俺がしげしげとユウトや他のクラスメートのステータスをチェックしていると、今度はケントの方でざわめきがおきた。


 正直ケントはクラスが決定した時点ではそこまで注目されてなかったようだが――



ステータス

名前:ケント カンザキ

性別:男

レベル:18

種族:人間

クラス:拳闘士

パワー:380

スピード:340

タフネス:400

テクニック:370

マジック:0

オーラ :220


固有スキル

三分間の死闘、怒涛のラッシュ、クリンチ、パーリング、ウェービング、マシンガンジャブ、カタパルトパンチ、ドリルブロー、居合カウンター、ハルバードロール、ランスジョルト、スイッチ、(ウィップ(フリッカー)ジャブ)、(クレイモアチョッパー)

スキル

拳強化、オーラの拳、動体視力強化、スピーディーフットワーク、フェイント、コンビネーション、意識飛ばし

称号

ヘヴィーパンチャー




 固有スキル多いな! だけど、そのどれもが地球でもともとケントが使用してた技だな。固有スキル扱いなのもそのためかもしれない。


 それよりも注目すべきはLVとステータスだな。先ずLVはざっと見た限りユウトに次いで高く(同LVのはもう一人いるが)、そしてステータスに関して言えばパワー、タフネス、テクニックはユウトより上だ。


 スピードも殆ど違いがないな。技が拳頼みだから、武器が限定されるという欠点があるけど、それにしてもかなりのものだ。


「チッ、ユウトもケントも調子に乗りやがって」

「まあまあ、マグマだってかなり強いぜ?」

「キキキッ! 俺っちなんてステータス低めだぜぇ……」


 あの三人の内、マグマはユウトとケントのステータスをみて悔しそうだな。



ステータス

名前:マグマ ホムラ

性別:男

レベル:18

種族:人間

クラス:爆裂戦士

パワー:350

スピード:220

タフネス:240

テクニック:160

マジック:0

オーラ :300


固有スキル

絶対爆裂

スキル

火力強化、火力吸収

称号

爆裂王

 

ステータス

名前:ガイ テツドウ

性別:男

レベル:16

種族:人間

クラス:重鋼戦士

パワー:270

スピード:120

タフネス:450

テクニック:110

マジック:0

オーラ :180


固有スキル

全身鉄化

スキル

鎧強化、盾強化、シールドバッシュ、鉄壁の防御、デコイ、力溜め、重圧

称号

難攻不落


ステータス

名前:キュウスケ ヤマノ

性別:男

レベル:15

種族:人間

クラス:吸収士

パワー:80

スピード:180

タフネス:70

テクニック:220

マジック:0

オーラ :0


固有スキル

生命力吸収、ステータス吸収

スキル

吸収率増加、窃盗

称号

吸い尽くす者



 あの三人のステータスはこれだな。マグマはLVこそケントと同じだが、全体的にはケントに負けてる部分が多い。


 ただ、固有スキルやスキルはかなり特殊な感じがするな。


 ガイは見た目通り、防御特化型と言えるだろう。タンク役としては最適と言えるかもだが、スピード面では不安が残るか。


 キュウスケに関してはかなり特殊だ。本人が言うように初期ステータスこそ低いが、固有スキルが不気味過ぎる。


 生命力はともかくステータス吸収は使いようによっては後々の影響が大きそうだ。

 それにしても窃盗って……


「おお! 聖女様も素晴らしい!」

「聖天魔法など、私、初めてみましたぞ!」


 女子が多く集まってる向こうでは、特に魔法使い風の連中が騒ぎ出してるな。


 特に多くに囲まれているのはチユだ。



ステータス

名前:チユ ヒジリ

性別:女

レベル:13

種族:人間

クラス:聖女

パワー:40

スピード:60

タフネス:50

テクニック:30

マジック:320

オーラ :200


固有スキル

聖天魔法

スキル

聖威、聖供

称号

慈愛の聖母



 ステータスはマジックとオーラ以外軒並み低いが、ここはやはり固有スキルの希少さが際立っているんだろうな。

 ユウトも聖魔法は持っていたが、聖天魔法は固有スキル扱いだけあってそれよりも更に希少らしいし。流石聖女ってところか。


「ところでシノブ様、貴方のステータスもそろそろ見せてもらって宜しいでしょうか?」


 で、俺が何となしにステータスに一喜一憂している生徒たちを見ていると、やっぱ来たよ性悪皇女様が。


 無職だから嫌な予感がして、一応一度は開いたけど、閲覧許可だしてなかったんだよな。どうせ無職だし、もしかしたら忘れてくれるかもと思ったんだが、そうは問屋が卸さなかったか。


「おうそうだ! おいシノブ何やってんだ。皆が見せてるんだから早く見せろよ」

「おう! 男らしくないぞ! それでも筋肉か!」


 うん、筋肉ではないな。


「キキキッ! さっさと吐いたほうが楽になれるってもんだぜ?」


 俺はどこの容疑者だよ。とはいえ、ここまで注目されたらごまかしきれないか。


 しゃ~ねぇな。結局逆に注目されちまったけど。


「判ったよ。ほら許可だ」



ステータス

名前:シノブ キリガクレ

性別:男

レベル:1

種族:人間

クラス:無職

パワー:5

スピード:5

タフネス:5

テクニック:5

マジック:0

オーラ :0

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ