第四十六話 そうだ、尻を捧げよう
「腹いっぱいなのじゃ~~~~」
「あ~はいはい、よござんしたね」
辟易しつつ適当に返事する。たく、流石にこれだけ料理すると少しは疲れるな。後半はもう俺一人で猪肉と格闘してたし。
「いや~でも本当に美味かったですぜ兄貴!」
『お兄ちゃんありがと~~~~』
子供にもお礼を言われた。スラムでも子供は素直なんだな。
「油断しちゃ駄目ですぜ兄貴、スラムは子供だって平気で大人を騙すんですから」
「何だ俺は騙されたのか?」
「う~ん、まあ、今のは素直な気持ちだと思いますけどねぇ。一度心を開くと可愛いもんだったりもするんでさぁ」
ま、そうだろうな。今も転がってるネメアをツンツンしたり飛びついたりして楽しそうだしな。勿論ネメアを同じ子供としてみているからだろうけど。
「でも、ちょっと虚しくなりますぜ」
「うん? どうしてだ? モブB」
「なんなんすかその呼び方!」
顔のデカいモブ顔Bが喚いた。いやモブだろ? 普通ならあっさりやられるヒャッハーな一人ぐらいの雰囲気だぞ。
「全く、大体俺の名前はモブーですぜ」
「モブじゃねぇか」
「ちなみに兄貴、俺はモブダーですぜ!」
「俺はモブッスっす」
「モブジャイだな」
「お前ら揃いも揃ってモブかよ! 兄弟かなんかかよ!」
『いえ、全然』
きっぱりと声を揃えて否定したな。そうなると偶然なのか、すげー偶然だな。
「うん? となるとお前も?」
俺は残りの一人にも聞く。
「はい、俺は――サンシタです!」
「モブじゃねーのかよ!」
んだよそれ! そこはせめてモブで統一しろよ! モヤッとするな!
「まあ、いっか。それで、なんで虚しくなるんだ?」
「いや、だってほら、今日が終われば明日が来るじゃないですか」
「うん、当たり前だな。殴っていいか?」
「どうして! いや、そうではなくてですね。え~とつまり今日どれだけうまい食事にありつけても結局明日からは同じ生活が待ってるなと、そういうことなんですよ」
「あ~確かにそうだな。あの餓鬼達だって、普段はまともな飯にもありつけないのが殆どだしな」
なるほど、そういうことか。確かに今日はネメアに食べさせるついでに、勝手にスラムで使えそうな場所を借りているかわりに振る舞っただけだ。
だからといって明日からもずっとここで料理を振る舞い続けるのかと言えば別にそんな事はない。今日はたまたまそうだったってだけだ。
別に俺はお腹すかしてそうな子供たちの為に、とかそんな博愛の精神でやったわけでもない。大体そんな事をしていたらキリがない。今のこれだって別にスラムの子供全員に食事が行き渡ったというわけでもないんだしな。
尤もユウトだったらこの状況をみたら嘆いて、なんとかしなきゃ! とか余計な使命感に突き動かされそうだけどな。
まあ、それはそれとしてもだ――
「何だお前たち、子供に関しては思うこともあるのか?」
「そりゃまあ、俺らはもうこんなですがね」
「せめて子供たちぐらいには何というか、元気でいてほしいってのはあるんですわ」
「ま、思っているだけっすけどね。俺たちに何が出来るわけもない」
そんな事を語りだす。なるほど、こいつらもどこかで諦めている口か。
「そうかよ、ま、でも情けないよな。思うだけで、最初から諦めてんだから」
「そ、そんな事言われたって俺達に何が出来るって言うんですかい? 何もないんですよこんなスラムじゃ」
「アホらしい。結局最初から考えることをやめてるだけだろ? 大体何も出来ないだって? 言っておくが俺が今日振る舞った料理の食材は全て魔物の肉だ。つまり料理法はともかく外に出て魔物でも狩れば食材は手に入るんだ。お前たちが本気で何かしたいと考えてるなら、こんなところでうだうだしてないで狩りにでもいけばいいだろうが」
俺がそう言いのけると、モブ達の中で、特に兄貴兄貴と呼んでくるほうが妬むような目を向けてきた。
「俺達は兄貴とは違う。そんなに強くねぇ、魔物の狩りなんて出来やしませんぜ」
それを聞いて、妙にイラッと来た。
「俺が強いと思うなら、なんで最初に俺がここに足を踏み入れた時、絡んで来たんだよ? 言っとくが真っ先に金を寄越せだなんだ言ってきたのはテメェらだぞ」
「そ、それはまだ、俺達が兄貴の強さを知らなかったからですよ」
「そうかよ。だったら、魔物の強さだって知らないだろが。俺と同じように挑んでみろよ」
「そ、そんなの無理に決まってらぁ!」
「あ~たく、イライラする連中だな! おい、わかったからお前、ちょっとそこで構えろ」
思わず俺が怒鳴りつける。は? と狼狽えてるのがわかるが、さっさとしろ! と怒鳴ったらナイフを抜き構えだした。
「いいか? 今から俺はホーンラビットだ。そしてこの腕から拳までがホーンラビットの角だ。勿論俺の出す力もホーンラビットに似せたものだ、お前、そのナイフで俺をなんとかして見ろ」
「へ? ちょちょ、ちょっと待ってくれよ! そんないきなり!」
「いくぞ! おらっ、これがホーンラビットの突撃だ!」
慌てふためくモブーか、モブダイか、とにかくモブだが、俺は容赦なく拳を突き出したまま突撃。
すると、メリメリと俺の拳が奴の腹を捉え弾かれるように後方に飛んでいった。
「おい! 何してんだ! ちゃんと躱せよ!」
「ゲホッ、そんな、いきなり無茶……」
「無茶じゃねぇ! 簡単に諦めてんじゃねぇ! 骨が折れたわけでもねぇんだ、さっさと立てよ! おいお前らも何ぼけっと見てる! 狩りは別に一人でやんなきゃいけないなんてルールはねえんだよ! 相手してやっからお前らも構えろ!」
『え、えぇえええぇええええぇええ!?』
残りの四人も驚きの声を上げる。全く何をビビってるんだか。俺はホーンラビットとほぼ同じ力しか出してないっての。
「おら! 目線を逸らすな! そんなことじゃ突き刺されて死ぬぞ! こんな感じにな!」
「ひぃいぃぃいい!」
「見てから躱そうとするな! しっかり次の動きを予測しろ!」
「よ、容赦ねぇ……」
「ぎゃああぁああ尻がぁあああああ!」
「ふざけるな! ばっちぃなこら! 敵に背を見せるな馬鹿!」
「もう無理、も、もう持たないよぉおおおぉ」
「嫌な言い方するな! 動けないと思ってるうちはまだ動けんだよ!」
「う、兎は性欲強いらしいぜ! どうだ!」
「関係ねぇええええええぇえ!」
『ウギャアアァアアアァアア!』
結局それから暫く俺はモブ連中(+サンシタ)を相手に突撃しまくった。
そして――
「どうしたこら! まだ一撃も貰ってねぇぞ! お前ら普段悪ぶって偉そうにしてるくせにその程度かよ!」
「ち、ちくしょおぉぉおおお!」
遂に、俺の突撃を避けた奴が、横からナイフで飛びかかり反撃を試みてくれた。
俺はそれを受けて――派手に吹っ飛んだ。そして地面を転がる。
「へ? あ、当たった……て、しまった! 兄貴ィィイィいい!」
モブが叫んだ。だから――
「んだよ、うっせぇなぁ、そんな大声上げなくても聞こえてるよ」
『兄貴いいぃいぃぃいいい!』
あっさり起き上がってみせる。当たり前だ。あんな攻撃で死ぬか。かすり傷一つ負ってないしな。
「全く、大げさな連中だな。大体俺があんなのでどうにかなるわけないだろ」
「え? あ、確かにそうですよね。所詮俺の攻撃なんて……」
「だけど、まあ、ホーンラビット相手なら上手く行くんじゃないか? 一撃で倒すのは厳しくても、何度も当てれば十分倒せるぜ」
俺がそう伝えると、ナイフを持ったモブは目をパチクリさせるが。その後、一瞬ニヤッと頬を緩める。
だが――
「で、でも兄貴、やっぱ実戦とは違うし、一撃で無理なら……」
すぐに我に返ったようにぐちぐちいい出した。全くしょうがない連中だな。
「うん? ああそうだな。確かに実戦のホーンラビットはここまでの威圧は込めてこないだろうしな。だから、もうちょい気は楽だろうな」
『――へ?』
五人が揃いも揃って間の抜けた反応を見せる。全く、本当に仕方のない連中だ。
「なんだ気がついてなかったのか? お前らと戦いながらも俺は徐々に威圧を高めていったんだよ。さっきお前がナイフで反撃してきた時、俺の威圧はホーンラビットなんかよりずっと込めていた。それでもお前たちは俺に向かってこれたんだ。これならホーンラビット相手にしてもビビることはねぇよ」
説明してやったが、理解できていないのかポカーンとしている。何だ仕方ない連中だな。
「だから、お前らはもうホーンラビットぐらいなら相手にできる力はあるってことだよ。というか元々それぐらいの力はあったんだ。お前ら盗賊や追剥や破落戸――まあ、褒められた物じゃないけどそういうクラス持ちだから、ステータスにはそれなりに恩恵があるんだよ。後はコツさえ掴めれば狩りぐらいはこなせるって事だ。それに一人じゃなくパーティーでも組んでやれば更にやりやすくなるだろうしな」
全く、ここまで説明しないとわからないなんて、面倒な奴らだな。
「う、うぉおぉおおおおぉおおおお、兄貴~~~~!」
「うわ! 何だお前! 飛びつくな気持ち悪い!」
『兄貴! バンザイ! 兄貴! バンザイ! 兄貴! バンザイ! 兄貴! バンザイ! 兄貴! バンザイ! 兄貴! バンザイ! 兄貴~~~~!』
「だ~~! 抱きつくな! 突然何してんだお前ら!」
「兄貴! 俺、兄貴になら尻ぐらいいくらでも差し出せますぜ!」
「俺もだ!」
「俺もっす!」
「いくらでも使ってくれ兄貴!」
「兄貴最高っす! サンシタも尻を捧げます!」
「んなもん、いるかぁああぁあぁあああ!」
俺の絶叫がスラムにこだました。そして、何故かその様子に涙してる住人がいたりした。なんでだよ!
「これが男の、尻の友情なのじゃ!」
真の友情みたいに言ってんじゃねぇええぇえええ!
霧隠れ流忍び豆情報~忍のお仕事の巻~
忍者は普段は表の顔を持ちしっかりと社会に溶け込んで生きている。その為、忍者だからといって勉学などを疎かにすることは許されない。そして一度仕事が舞い込めば忍者装束を身に着け仕事に取り掛かる。近代忍者の主な仕事は、要人警護、テロ防止、犯罪組織への潜入、調査、殲滅、妖怪退治、不倫調査、買い物代行、猫探し、薬草採取など多岐にわたり、当然だが下忍より中忍、中忍より上忍の方が難易度の高い仕事を割り当てられる。
父「シノブ!仕事だ!重要任務だぞ!」
シノブ「久しぶりだな、どんな仕事だ?警護か?それとも潜入か!」
父「近所のスーパーが特売日なのだ!卵がこことこことこのスーパーで一人ワンパック限定で安い!これを全て買ってくるのだ!」
母「シノちゃんお願いね~」
シノブ「忍者の仕事じゃね~!」




