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第三十七話 忍者! 幼女と帝都へ行く

「シノビンだ、傭兵をやっている。狩りで森に入っていて帰ったところだ、これが証明の魔石、問題ないよな?」


 出たときと同じ北門で、門番の男に説明する。

 正直言えば、別に時空転移の術で戻ればいいだけの気もするが、今回は後ろのネメアもいる。


 俺についてくることになった以上、人間社会の常識というのもある程度知っておいてもらう必要があるだろう。その為、街に入る基本的なやり方をみせてやってるわけだ。


「あ、ああ、魔石については判った。こんなの持って帰るのは商人を除けば傭兵ぐらいだしな。だけど、な、その後ろのちびっこくて可愛らしい幼女は、一体何だ?」


 やっぱりそう来たか。これはもう間違いなく聞かれると思ったよ。

 大体普通、幼女を連れて出歩く傭兵なんていやしないしな。子連れの狼的なアレじゃあるまいし。


 だが、勿論これも抜かりはない。事前にしっかり決めておいたことが――


「うむ! 我はこのシノビンの牝奴隷なのじゃ!」

「……はい?」

「つまり、我はこの男の、肉奴隷なのじゃ!」


 一瞬俺の笑顔と時が固まった。

 は? え? え? ちょ、何言っちゃってんのこいつ! ちょっと待――


「――そうか、お前もか」

「……はい?」


 しかし、そんな俺の肩に手を置かれ、親指を立てていい笑顔で、同士よ――という目を向けてきやがった! 


 結果的に――門は問題なく抜けれた。





「お・ま・え・は、一体どういうつもりだ!」

「い、痛いのじゃ! 何するのじゃ! 幼女虐待じゃ! 鬼畜蹂躙じゃ!」


 とりあえずネメアの頭を両側から拳でホールドしてグリグリの刑に処してやったが、こいつ、どこでそんな言葉覚えやがった!


「我はお前がどうして怒っているのか理解出来ないのじゃ!」

「開き直る気かよ! お前さっき自分で何言ったか胸に手を当てて考えてみろ!」


 キレ気味にそう伝えると、律儀に胸に手を当てた後、首を傾げた。


「何もおかしなことはないのじゃ。大体、人間の男は牝奴隷や肉奴隷が好きと聞いているのじゃ」

「だから何の情報だそれは! お前のおかげで、俺はあの変態門番と同類に思われただろ!」


 あの野郎しまいには、今度少し払うから俺にもその奴隷貸してくれよ、とかいいやがったからな! 完全にそういう奴隷だと思われただろ!


「そもそも事前にちゃんと決めておいただろ! お前の事はとりあえず俺の妹としてごまかすって!」

「――そんなの怪しすぎなのじゃ。大体我とお前では全然似てないのじゃ。設定が甘すぎなのじゃ! そんな適当な設定通じないのじゃ!」


 くっ! こいつ人間に興味なさそうな癖して設定とかそこをダメ出ししてくるかよ!


「とにかく、今後は素直に妹で通せ。似てないなんて異母兄妹とかでもなんとかなるんだから」

「むぅ……」

「返事は?」

「善処するのじゃ」


 こいつ、俺の真似しやがって……ふぅ、まあいい。

 過ぎたことをいつまで言い争っていても仕方ない。


 とにかく、目的の狩りは終わったことだし、ギルドに戻るか。






◇◆◇


 予想通りスラムでは、ネメアの姿に目の色変えた連中が寄ってきて、目をギラギラさせて、アレはギンギンにさせて近づいてきた。だから予定通り全員ぶっ飛ばしておいた。


 ネメアも加わりたそうだったけど、そこは却下した。こいつの場合やりすぎる可能性もあるしな。


 飯を食べたおかげで大分回復したらしいしな。その状態で人化解かれても厄介以外の何物でもない。


 ただ、殺気だけはばら撒いていて中にはそれにあてられて気絶したり、糞尿を道に撒き散らしたやつもいた。きたねぇな~ま、ネメアもそれぐらいは許容範囲って事で許したけど。


 まあとにかく、傭兵ギルドへと再びやってきた。おっと、壁の修理はしっかりと終えて――


「グベラァアァアアアァアアアァアア!」

「ギヤァアアアァアアア!」

「ブヒィッィイイイィイイ!」


 と、思ったら今度は壁に連続で三回ほど穴があき、三人の屈強そうな男が吹っ飛んでいった。一人は丸々として豚っぽかったけどな。


 そして、地面をバウンドしてゴロゴロ転がって、ピクピクと痙攣している。


「ふん! その程度の腕しかないくせに、三人がかり程度であたいをどうこうしようなんて三千億年早いんだよ!」


 そしてこの声だよ。改めて確認するまでもないが、視線を声の方に向けると、バーバラも俺に気がついた。


「うん? 驚いたね、まさか五体満足で戻ってくるとはねぇ。丁度いい、馬鹿が現れてムシャクシャしてたんだ。結果を聞いてやるからとっとと上がんな!」


 そして前と同じように有無を言わせない雰囲気でそんな事言われた。


 全く、こんなんじゃ壁がいくつあっても足りないんじゃないのか?


「ふむ、人間にも中々強いものが転がっとるのじゃな。ま、我ほどじゃないがな!」

 

 そして隣では、ネメアが少しだけ高ぶった声で得意げに語る。


 この様子だと、やはりバーバラはかなり強いのだろうか? まあとにかく、今度はちゃんと扉から中に入る。


 そしてカウンターで待つバーバラの前に向かった。


「それにしても、あの転がってる連中は一体何をしたんだ? 今度は素材をごまかしてるって感じでもないよな?」

「ふん、ただの発情した獣だよ。三人がかりで襲えば、無理矢理でもやれると思ったんだろうさ。そのおかげで、一生使い物にならなくなるんだからザマァないよねぇ」


 いや、一体何をしたんだ……とりあえず、あの連中の男の象徴が使い物にならなくなっているのは間違いないんだろうな。


「それより、あんたこそ一体なんなんだいその子は?」


 すると、案の定バーバラもネメアに気がついて聞いてきた。

 まあ、そうだろうな。でも、今度こそちゃんと――


「我は、この男の性奴隷なのじゃ!」


 俺は思いっきりカウンターに頭をぶつけた。

 こいつ! 何も判ってねぇ!


「なんだい奴隷を買ったのかい? それにしても、こんな小さな子を、人の趣味にとやかく言う気はないけど、感心しないねぇ!」


 すると今度はカウンターが思いっきりぶっ壊れました。バーバラが思いっきり殴りつけたからです。気にしないとかいいながら思いっきり切れてんだろ! 

 

「待て待て勘違いするな。この子は俺の妹なんだよ。ただ、ちょっとおかしなことを口走る癖があってな」

「痛いのじゃ! グリグリはやめるのじゃ~~!」


 俺はさっきよりも更に力を込めて、こいつの頭蓋骨を締め付けた。万力の如くな!


「我は妹のネメアなのじゃ、間違いなく妹なのじゃ、奴隷は嘘なのじゃ、つい調子に乗ったのじゃ、そう言えと今命令されたのじゃ、痛いのじゃ」

「何か言わされてる感が凄いねえ」


 相変わらず一言余計だからげんこつした。バーバラがやたら不審そうに見てくるけどな。


「大体、兄妹にしては全く似てないねぇあんたら」

「い、異母兄妹なんだよ」

「異母兄妹ねぇ、それにしたって違いすぎじゃないかい? 髪の色や瞳もさっぱりだしねぇ」

「だから設定が甘いといったのじゃ」


 だまれ、お前いいからちょっと黙れ。


「とにかく、奴隷でないのは確かだ。間違いなくな」

「ふ~ん、ま、確かにみたところ奴隷の首輪もないしね。まあ中には不可視の効果をつけてる貴族もいるけど、あんたそんなタイプにもみえないしねぇ」


 どうやら奴隷云々については信じてもらえそうだ。そして奴隷はやっぱ首輪されてるんだな。でも不可視にしておくと首輪が見えなくなったりもするのか。だから門番は信じたんだな。同類だとな!


「理解してくれて助かった。それで、本題だが依頼をこなしてきたんだ。それを先ず見てもらっていいか?」

「構わないさ。それじゃあここに置きな」

「……ここにか? しかしかなりの量だぞ? カウンターも壊れてるし」


 俺がそう伝えると、バーバラは肩をすくめ。


「大げさだね。かなりといっても、二、三羽狩れていれば上等だろ? まあでも、確かにカウンターは壊れちゃったしねぇ」


 いや、壊れちゃったというか、あんたが壊したんだろ。後、ニ、三羽ねぇ……これ、実際の量みたらなんて言うだろうかね……。

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