第三十二話 忍者と愚か者と乱入者
ふむ、この様子だとやはり鑑定持ちの仲間を連れてきてたんだな。
ま、それはなんとなく判っていたけどね。めっちゃ視線感じてたし。
「どうした? 自分のクラスがバレてビビったのかい? シノビンちゃんよ」
なんか勝手に盛り上がっているところ悪いけど、普通に想定内だからな。
そもそも、自分のステータスはある程度はいじれること判ってたし。だから名前も今の名前に合わせておいたからな。
だったらなんで職業はそのままなのか? という話だけど、むしろここはごまかして違うクラスにした方がややこしいことになるかもしれないと思ってのことだ。
やっぱ知ってる無職の方が堂々と出来るしな。それがこうやって鑑定でバレたからって、別にどうということはないしな。
「そう、でも別にだから何って感じだけどね。無職でも、狩りぐらいは出来るんだし」
「……なるほどな。その様子だと、やっぱテメェはどっかのボンボンかなんかだろ? 無職でステータスが最弱な分、金に物を言わせてマジックアイテムや魔装具なんかを揃えたんだ。図星だろ?」
図星だろと言われても、全く違うんだけどな。でも、無職が狩りを成功させたりするとそういう風に思われるんだな。
「俺が狩りにきたってのはどうして判ったのかな?」
「そんなもの、森に入っていってまた戻ってくるのを見れば予想できるさ。ギルドで依頼書見てやってきたんだろ?」
「まあそうだけど、それで君たちの目的は何だい? 一人相手にこんなに大勢で囲んで、ちょっと大人げないんじゃないかな?」
「は、好きに言ってろ。俺らの目的は、テメェが狩りで手に入れた素材と、狩りに使用しているマジックアイテムや魔装具、それに有り金全て頂戴することよ」
ま、予想はしていたけどやっぱそんなところか。尻はいらないみたいだけどな。
「……それを渡せば、見逃してくれるのかい?」
「ああ、多少は苦しまないように殺してやるよ」
全く答えになってないな。もう殺す前提だしな。
「随分と簡単に殺すとか言えるんだな。もしかして、これまでも同じことをやってきたとか? 最近腕のいい傭兵が現れないときいたけど、何か関係あるのかな?」
「はん、そんなの当然よ。どれだけ腕が良かろうと、大勢仲間集めて囲んじまえば殺れないやつはいないしな。将来性のあるやつなんかも早めにぶっ殺すのが俺たちのやり方だ。迷宮探索なんかのライバルを増やさないためには」
「ま、相手が女なら、殺す前にやることはやるんだけどな」
「そういう意味なら、お前が男で残念だぜ。無職で女なら、色々遊びようがあっただろうからなぁ」
そして一斉にゲラゲラ笑い出す。解ってはいたけど、こいつら全員屑だな。それは看破の術でもよくわかる。揃いも揃って犯罪の称号ばっかりだ。
総じて人殺しや大量殺人犯なんかの称号がついているしな。勿論強姦魔もセットでな。
「ふぅ、全く、どこの世界でもやっぱ屑は屑ってことか」
「あん? 何だとテメェ?」
「一応聞いておくけど、殺すつもりで来てるなら、当然殺される覚悟もあるんだよな?」
「は? 無職が調子に乗って何いっちゃってんの? いくら道具に頼っていようが、使わせなければテメェなんて――」
だが、その先を言う前に印は結び終え、まずは俺の左側に向かって――
「火遁・火吹の術」
「へ? あ、ギャァアアァア!」
「あづい、あぢぃいよおぉおぉおお!」
俺の口から吹き出された炎が、傭兵の五人をあっという間に飲み込んだ。
別に俺は殺すと決めれば躊躇いなんてない。勿論必要に迫られたときだけだが、今回はまさにそれだろ。それに事前に確認だってしている。傭兵たるもの命を奪うも奪われるも自己責任。ましてや、相手が先に仕掛けてきたなら称号的にも影響はない。
あとに残ったのは、五つの消し炭だけ。奴らの人数は二十人。それが四方に五人ずつ配置されているが甘かったな。
俺相手にそれじゃあ、あまりに少なすぎるし、采配だって大間違いだ。五人ずつの雑兵なんて、俺からしたらただ無駄に戦力を散らしているだけにしか思えない。
「風遁・風刃乱舞の術!」
そして今度は反対側の五人の間を駆け抜ける。俺の両腕には湾曲した風の刃が現出していた。
「は? な、なんだ?」
「い、今一体何を、て? へ? 指が――」
「え? な、ん、で? 俺の、から、だ、に、線、が、へ?」
そして少し遅れて、五人の全身に無数の斬線が刻まれ――乱切りにされた肉塊が地面に投げ出されていった。
これで、残りは十人か。
「な、なんだこりゃぁあああぁあ!」
「ち、畜生! 道具を使ってる様子なんてまるで見えなかったぞ!」
「ば、化物だ! この野郎は! 人の皮を被った化物だ~~~~!」
おいおい、一体どっちがだよ。散々人殺しを繰り返してきたような連中に言われたくはないな。
とはいえ、あのギルドであった連中が、真っ先に逃げ始めやがった。後ろにいた連中は、ま、待ってくれよ! 置いてかないでくれ! なんて叫んでいるが、悪いが、一人も逃がす気は――ッ!?
『ギャァアアアァアアァア!』
思わず、そう俺は思わず上空へ飛び上がってしまっていた。それは尋常じゃない気配を感じたからだ。
そしてそれは間違いではなかった。俺が飛び上がった瞬間、先ず俺の後ろにいた連中が一様に肉片と化し、逃げ出そうとした前の連中も四人の体が切り刻まれ絶命した。
唯一、この中で一番偉そうにしていた男が生き残ったが、それでも両手両足が切り飛ばされ、全身も深く切り刻まれている。
だが、そんな男よりも――これを行った存在だ。その影は森の奥から飛び出してきて、半死半生の男と、空中漂う俺を交互に見やった。
それは、黄金の獅子だった。
「そ、そんな、魔獣が、しかも、も、森の主が、どうして、こ、こんなところに――」
生き残った男が思わず吐露し、それが俺の耳に届く。森の主、あの獅子がか。
俺が、改めて黄金の獅子を確認したその瞬間、跳躍し、森の主とやらが男に向けてその前肢を、爪を、振り下ろした。
ヒッ、と情けない声を男が上げた瞬間、地面が大きく陥没し、血飛沫と肉片が舞った。
うぇ、ありゃもうミンチだな。
それにしても――威力と攻撃範囲が半端ないな。最初の一撃といい、今とどめを刺した一撃といいな。
とりあえず――看破の術で相手のステータスをチェックする。
ステータス
名前:ネメアレオン
性別:雌
レベル:45
種族:魔獣
クラス:獅子の魔獣
パワー:1520
スピード:1480
タフネス:1500
テクニック:1250
マジック:0
オーラ :2200
固有スキル
百獣王の咆哮、獅子一掃爪塵
スキル
完全物理反射、爪牙超強化、全属性耐性、砕牙、(自然回復)
称号
百獣の王、森の主
固有スキル
・百獣王の咆哮
百獣の王としての威厳が篭った咆哮。範囲内の相手は恐怖に支配され、放った王は自らを鼓舞させステータスを大きく増加させる。
・獅子一掃爪塵
爪の一振りで、扇状に広範囲へ爪の斬撃を飛ばし切り刻む。
スキル
・完全物理反射
物理攻撃を完全に反射する。
・爪牙超強化
爪と牙が大きく強化される。
・全属性耐性
全ての属性に耐性がつきダメージを抑える。
・砕牙
全てを噛み砕く牙。攻撃範囲が広い。
称号
・百獣の王
獣の王たる称号。マジック以外のステータス値が大きく向上する。
・森の主
その森を支配するもの。主と認められた森にいる間はどれだけ傷ついても自然に回復していく。
つえーなおい! そりゃあんな連中じゃ一溜まりもないな。全く、なんだってこんなのがこんな場所にいるのか……。
LVもそうだけど、ステータス値もマジック以外はこれまで戦った誰よりも高い。
それにマジックが0と言ってもスキルと称号がヤバいな。
マジック以外のステータスが大きく向上っていうのもそうだけど、自然回復も厄介だし、何より物理攻撃完全反射ってなんだよ。
無効じゃなくて反射ってのがまた嫌らしいな。おまけに全属性耐性と来たもんだ。どうやって倒すんだこれ?
『グオォオォオォォオオォオオオン!』
と、思ったらいきなり百獣王の咆哮使ってきたよ。ヤベェ、すげぇゾクゾクする。
こんな感じはわりと久しぶりかもしれない。ただ、恐怖は与えられてないな。むしろちょっと興奮しているぐらいだ。
まあでも、こっちも少しは本気を出さないと、油断して喰われましたじゃ泣くに泣けないしな――
果たして忍者はこれに勝てるのか~!




