表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代で忍者やってた俺が、召喚された異世界では最低クラスの無職だった  作者: 空地 大乃
第一章 忍者召喚編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/238

第二十七話 忍者、都に繰り出す

 明朝、俺はメイドが来る前に影分身の俺と入れ替わり、訓練に関しては分身に任せることにする。


 こういうことするとよく、分身のほうが嫌がるみたいな展開があったりするが、実際はそうはならない。分身も俺の意志から生まれた存在だから最初からそうと決めていれば、そのとおりに行動してくれるし本体がメインである以上、逆らうような事はないからだ。


 まあそんなわけで、俺は分身に訓練を任せた後、衣装室で選んだ無難そうな服に着替え、前もってマーキングしていた場所に時空転移の術で移動する。


 これで、本体の俺が見つかることはない。そしてまた仮面で、ということはなく。昼間から街中を仮面でうろついていたら逆に怪しいしな。


 だから今回は体遁・変化の術で別人になりすます。便利な変化の術だが、この術で変化をするには当然、俺自身が変化をする相手をイメージする必要がある。


 城内では兵に化けて情報集めをしたりしたけど、街に出るとなると下手に城の人間に化けるのは芳しくない。


 なぜなら場合によっては知り合いに出くわす可能性もあるし、そうでなくても城の人間が昼間に街中をうろついていたなんて話になれば面倒なことになる可能性が高いからだ。


 だから今回は、城内で見てきた兵士のパーツを上手く組み合わせて、全くの別人になりすまして情報集めをすることにする。


 これなら誰かと被ることはないしな。


 さて、そんなわけで街に繰り出したはいいが――改めてみるとやはりかなり広い。それに人も多い。城内で色々情報を集めている時に知ったが、この帝都だけで人口五十万人を超えるらしい。


 どうりで人の数が多いわけだ。車がないとはいえ馬車はわりとひっきりなしに馬車道を走ってるしな。


 市街では、基本人が端を歩く形が暗黙のルールとして成り立っているようだ。まあ、こんだけ馬車が走っていればな。


 馬の種類も中々に面白い。勿論普通の馬もいるが、頭に角を生やした一角馬(ユニコーン)に引かれた馬車も見る。


 勿論数は多くないし、いかにも裕福そうな貴族御用達といった感じもあるけどな。


 後は大きな蜥蜴に引かれてる馬車もあるけど、これは車体部分が大きく、見た目はバスに近い。多くの客を乗せて走らせる専用の蜥蜴って感じなのかもな。


 そんな異世界っぽい雰囲気を楽しんだりもしたが、本来の目的を忘れては駄目だな。何か屋台が見えていい匂いもしてきたけど忘れちゃだめだな。


 うん、それにそもそも俺にはこの世界の金がない。金がなきゃ何も買えない。当然だな。


 そういえばフォクロベアを倒して遺体を次元収納に入れっぱなしだったな。これ、もしかしたら金になるかな? こっちの世界の金も今後情報を集める上で必要になるかもだしな。


 ふむ、とりあえず闇雲に動き回っても仕方ないな。時間も限られているし、情報集めするにも、しっかり計画的に動かないと。


 とりあえず必要な情報は魔物が金銭に替えられるかどうか、後はシェリナの呪いの解き方と、帝国の裏事情だな。王国や魔族の関係が本当なのか? なども知っておきたい。


 後は当然一番重要なのは英雄召喚と称されている異世界からの召喚魔法についてだ。


 ただ、これは重要度が一番上であると同時に、そうやすやすと聞いては回れないことでもある。


 帝国が国を挙げて行った儀式だからな。そんなものを調べ回っている人物がいるなんて知れたら、すぐに皇帝の耳に入ってもおかしくない。


 だから、これに関しては先ず召喚魔法について知ってそうか、それでいて信頼できそうな人物か? というのを見極めた上で、聞いていくことになるだろう。尤もまずはそういった人物を見つけないと話にならないわけだが。


 と、いうわけで、まあとりあえずは道の途中にあった市街地図に目を向ける。

 ふむふむ、どうやらここは帝都ドライムという名前らしいな。今更だけどようやくこの都市の名前を知ったぞ。あと帝都という認識は普通に予想通りだった。


 そして丘の上に位置する城や宮殿があるのが帝都の北側、そこから少し南の高台の位置にあるのが貴族区、それと反対側に位置するのが迷宮区。


 俺たちが最初に攻略に向かうという迷宮がある場所だな。


 後は一番下に広がる市街地には、商業区、教会区、学区、居住区がある形だ。


 商業区は文字通り市場だったり様々な店が並ぶ地区、教会区には教会堂や大聖堂がありちょっとした公園なんかもあるようだ。


 学区は学園があり、また図書館なんかもここにある。う~ん図書館は気になるところだけど、公に開かれてる場所だし、俺の知りたい情報がそこで手に入るかは別だな。


 大体図書館で簡単に手に入るような呪いが掛けられているとは思えないし、帝国で実は裏ではこんなこと計画してますなんて大々的に公開されてるとも思えないしな。


 異世界からの召喚魔法なんてなおさらだ。


 居住区は敢えて確認するまでもないか。ただ、居住区は一等居住区、二等居住区、三等居住区と分かれているようだな。


 まあ、みるからに一等が一番上って気もするけどな。ただ、気になるのは三等住宅区の南側が灰色に染められていて、特に何も表記されずドクロマークだけ描かれていることだ。


 なんだこれ? ふむ、わからない時は――


「少しすみません、そこの美しいお嬢様」

「あら? 私のことかしら? うふふっ、お上手ね」

 

 声を掛けたのは優しそうな貴婦人だ。予想通り、これなら話を聞けそうか。


「実は、少しお伺いしたい事がありまして、宜しいでしょうか?」

「いいですわよ。私でお答えできることなら」


 日傘をもった彼女が優雅に微笑む。


「はい、実はこの地図なのですが、このグレーに塗りつぶされていてドクロのマークが記されているここには何があるのでしょうか?」


 指で示して尋ねる。すると形の整った細い眉をひそめ、どこか嫌悪感のある顔を見せる。


「……貴方、帝都は初めて?」

「はい、今日やってきたばかりで右も左も判らなくて」

「そう……それなら覚えておくといいわね。その場所はスラム街――この都の掃溜めのようなところね。興味本位で近づいたら駄目よ? 三等区で暮らしてるような下民よりも更に底辺で、罪人も多く潜んでるわ。犯罪の温床みたいな場所なんですから」


 ふむ、品のいい貴婦人ってイメージだけど、やはり平民は馬鹿にしている雰囲気もあるんだな。


 まあこういう世界ならそれも仕方ないか。ただ、スラムか――そこに関しては本当に危険だという意味で忠告はしてくれているようだな。


「ありがとうございます。少し気になっただけなので――ですがおかげで助かりました。勿論それが判れば近づいたりしません。貴方のような御方に出会えてよかった」

「ふふっ、そう? お役に立てたなら嬉しいわ。それでは気をつけてね」


 心にもない事を言ってしまったが、貴婦人は機嫌良さげに去っていった。


 ふむ、しかしこのあたりは一等住宅地の近くだからか、やはり治安はいいのだろうな。あんな感じの女性も普通に歩いているし。


 とは言え、これで俺が最初に行くべきところは決まったな。

 そう、勿論、スラム街だ。

 

 何せ俺が先ず求めているのはあのシェリナの呪いの解き方、それに帝国の真相だ。そんな情報はこんな治安のいいところで掴めるとは思えない。

 

 むしろスラム街ぐらい非合法的な場所のほうが情報が集まる可能性が高いしな。蛇の道は蛇とも言うし。

 

 さて、それじゃあその危険地帯に行ってみるとするか。






◇◆◇


「よぉ兄ちゃん見ない顔だなぁ」

「ひゃひゃひゃ、たった一人でわざわざこんなところに来るたぁ、悦んでオークの群れに飛び込む牝の姫騎士、とはこのことだぜ!」


 うん、とりあえずスラム街にやってきたけど、凄いな数歩程度歩いただけで絡まれたぞ。そしてなんだその妙なことわざみたいなのは! 雰囲気的に飛んで火に入る夏の虫と同じ意味っぽいけど、そもそも悦んでるし! 大体牝の姫騎士って何か意味が被ってるだろ!


「おいおい、いきなりナイフやら剣やら穏やかじゃないな。こんな往来でそんなもの抜いて、通報でもされたら面倒なことになるのはそっちじゃないか?」


 とは言え、俺を囲んでるのは五人。どうとでもなる人数だけど、一応はそれらしいことを言っておく。


「はあ? これは驚いた。とんだ間抜け野郎もいたもんだぜ!」

「全くだな、よりにもよってこのスラムで通報とはな」

「ひゃひゃひゃ、スラムじゃ死体が転がるなんて日常茶飯事だってのになぁ。死体漁りはいても、死体を見てわざわざ通報するやつなんざいねぇよボケが!」

「そういうこった。この中に法なんかねぇ完全に弱肉強食の世界よ」

「お前みたいな弱者は俺達みたいな強者に狩られる運命ってことだ。さあ! どうすんだ! 殺されてぇのか! それとも有り金全部おいて命乞いするか!」

 

 あ~なるほどなるほど。やっぱスラムというところは、そういうところなのね。何かやたらごついのが歩いていたり、戦士っぽいのも歩いていたりするし、目がイッちゃってるのも多いしな。


「でもまあ、それならそれでわかりやすくていいか」

「は? 何言ってんだテメェは? 恐怖で頭がどうかしちまったのか?」

「うん、じゃあとりあえず強者の言うことを聞いてもらうとするか」

「だから、お前状況わかって――」





「本当、生意気言ってすみませんでした」

『すみませんでしたーーーー!』


 今、俺の前では正座したヒャッハーなチンピラ達が土下座して声を揃えて詫びを入れてきている。


 尤も正座も土下座もこの世界にあるかは知らないけどな。今こいつらがやってるのは俺が教えてそうさせた。


 弱肉強食らしいからな。そうなるとどっちが上かはしっかり教えておく必要がある。


「あ、あのもういいですか? この体勢、脚が痛くて……」

「いいわけないだろ。大体お前らの理屈で言えば、強者の俺に殺されても文句言えない状況なんだぞ?」

「す、すみません命だけは本当勘弁してください」

『勘弁してください!』


 本当自分の事となると形振り構わずだな。まあ、ステータスを見る限りLVも二桁ようやく届いているぐらいだし、称号も窃盗犯とか抜師とか恐喝者とかそんなのばかりだったしな。


 全体的に小悪党って感じだ。殺すとかいいながら実際に殺したことはないタイプだろ。


「まあいいや。別に本当に命を差し出せと言ってるんじゃない。このスラムは弱肉強食なんだろ? だったら今は俺が強者だ、だから俺の必要なものを差し出してもらう」


 スラムのルールはわかりやすくていいからな。


「差し出すと言われても……こんなカスの吹き溜まりにいるような俺達ですぜ? 金目の物なんてありませんし……」


 自分でカスって言っちゃうか~ユウトが聞いたらなんていうかな。いや、ユウトの場合下手したらこのスラムを変えようとかいいそうだな。見せないほうがいいな絶対。


「別に俺が欲しいのは金じゃないさ」

「金じゃない、そ、それじゃあ尻ですかい! 尻を差し出せと言うんですかい!」

『ひぃいぃぃいい!』

「なんでだよ! なんで金か尻の二択なんだよ! おかしいだろ!」


 揃いも揃って両手で尻を隠して悲鳴を上げるなよ。お前らの尻なんて欲しくないよ!


「そ、それじゃあ、一体何が?」

「情報だよ」

「情報?」

「そうだ、色々と知りたいことがあってな。それを教えてほしい」

「ほぉ……」


 俺がそこまで伝えると、その男は突如その眼を光らせ、一言呟いた後にこう続けた。


「それで? いくら出す、げふぉっ!」


 いきなり態度変えて、立場もちゃっかり変えようとしてきたから顎を蹴り上げた。

 

 あが、あが、と外れた顎を必死に戻そうとしている。

 

 しょうがないから頭を殴って顎を戻してやった。痛そうに呻いていたけどな。


「情報は、タダで、よ・こ・せ」

「も、勿論ですぜ兄貴。ほんの冗談でさぁ」


 首根っこ掴んで威嚇したら答えてくれる気になったようだ。

 それにしてもいつから俺がお前たちの兄貴になったんだ。


「さて、とりあえず知りたい情報は一つ一つ聞いていく。いいな?」

「へ、へい――」


 固唾をのむゴロツキ達。俺の様子から一体どれだけの事を聞かれるのかと思ったのだろう。

 そんな連中に先ず俺が聞いたのは――


「……とりあえず、この国の通貨について教えろ」

「……はい?」

「聞こえなかったか? 通貨について教えろと言っているんだ。まさか知らないのか?」

「へ? いや、まさか。学のない俺たちでも通貨ぐらい知っていますぜ。と、いうか、常識じゃ――」

「誰が常識知らずだこら!」

「ひぃい!」


 全く、仕方ないだろ。こっちはこの世界についてまだよく知らないんだ。

 帝国からもこういった基本的な事は意外にも教えてもらってないしな。


「ふぅ、まあ不思議に思うのも仕方ないかもだが、実は俺」

「は、はい」

「記憶、喪失なんだぁ……」


 遠くを見るようにして告げる。そう、困ったときにはやはりこれだ。


「記憶、喪失なんですかい?」

「ああ、そうだ」

「記憶、喪失なのに、わざわざスラムに?」

「こまけーことはいいんだよ! いいからとっとと教えろ!」

「へ、へい!」


 と、いうわけで先ず通貨について聞いた。

 まず、通貨単位はルベル。使われている貨幣は銅貨、銀貨、金貨の三種類。


 ただし特殊金貨として白金貨が使われる場合もある。


 そして三種類の貨幣に関してはその価値が記されていて、一ルベルから五十ルベルまでは銅貨。百ルベルから千ルベルまでは銀貨、五千ルベルから十万ルベルまでは金貨がそれぞれ存在するようだ。


 つまり五五万六六六六ルベルがあった場合。十万ルベル金貨が五枚、一万ルベル金貨が五枚、五千ルベル金貨が一枚、千ルベル銀貨が一枚、五百ルベル銀貨が一枚、百ルベル銀貨が一枚、五十ルベル銅貨が一枚、十ルベル銅貨が一枚、一ルベル銅貨が六枚という形になるそうだ。

 まあ、これはあくまで例で実際は銀貨の方が多くなったりとかもありえるわけだが。

 

 ちなみに白金貨は億超えの取引の時に額を決めて印字をするタイプだそうだ。だから通常は出回らない。


 まあ面倒だからとりあえずルベルって単位だけ覚えときゃいいな。

 ちなみに通貨、どうやら世界中どこでも統一されているらしい。これに関しては言語も特殊なものを除けばほぼ統一されているそうだ。


 うん、異世界七不思議の一つだな、通貨統一と言語統一。いや、この場合ふたつか。


「うん、よくわかったありがとうな。それにしてもいくら常識とは言えよくここまで知ってるな」

「あ、俺、元は商家の生まれなんで」


 どうりで。それが今はスラムで生活か。人生どう転がるか判らないな。


「それで聞きたいことというのは以上ですかい?」

「は? 馬鹿言うなよ。こんなのはただの世間話だよ。決まってんだろ?」


 揃いも揃って、えぇ~って顔をした。だけど当然だろ。もっと聞きたいことがあるんだから。


 とはいえ、基本的なこととはいえ情報はくれたからな。正座からは解放してやる。


 喜んでたけど、足を崩そうとしても痺れてどうしようもないみたいだな。うん、誰もが一度は通る道だ。


「さて次に知りたいことだが――」


 俺は肝心な帝国と王国の戦争の事。それと呪いについてを聞いてみたんだが――


「戦争があるかもしれないって話は耳にしますが、大した事はしりませんぜ」

「魔族と王国が手を組んで、帝国を滅ぼそうとしてるって噂ぐらいはあるけどなぁ」


 その程度か。微妙に食い違ってるのもあるが、これも伝言ゲームみたいに情報が少しずつずれていくのはよくあるからな。


 ただ、そんな話があるわりにのんびりしてるよなこいつら。


「……不安はないのか?」

「う~ん、まあ成るようにしかならないって感じでさぁ」

「それに帝都もそこまで騒いでいないしな」


 確かにな。本当にそんな有事が近づいているなら、街中ももう少し緊張感がありそうだし。


「じゃあ呪いに関しては?」

「そっちに関してはさっぱりでさぁ。大体俺たちに魔法についての学があると思いますかい?」


 ……思わないな。


「そうか、まあ大体は判った。じゃあ最後に、今の情報についてもっと詳しく聞けそうなところは知らないか? あと魔物の素材なんかを買い取ってくれるところを教えてもらえると嬉しい」

「だったら傭兵ギルドですぜ! その両方で当てはまるのはそこしかないですからね!」


 ……なるほど、傭兵ギルドか――

遂に忍者が外に!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ