第二百三十二話 乗り込まれた三人
バーバラとケントがアイアンウォール号に向かった後、リョウ・カコ・チユの三人は海賊船で逃げ回りながら二人の帰還を待っていた。
「二人ともいつ戻ってくるかな」
「無事だといいんですが……」
「きっと大丈夫だよ。二人は強いもの」
不安がなかったわけではないが、それ以上に信頼があった。ケントもバーバラもきっと笑顔で戻ってくると信じていた。
その時だ。三人の乗る海賊船に、何かが引っかかる音が響いた。見ると鉄製の鉤爪のようなものが縁に掛かっていた。
「やった! 戻ってきたんだよ!」
喜びの声を上げたのはチユだった。しかしリョウは怪訝な顔を見せる。
「おかしいよ。二人なら声ぐらい掛けてきそうなんだけど――」
その直後、次々と縄のついた鉤爪が船に掛かり、ガシャガシャという金属音と共に、鎧騎士たちが船上に乗り込んできた。
「やれやれ、まさかこんなガキどもに引っ掻き回されていたとはな」
いかにも騎士然とした風貌の男が三人を見て語る。リョウの表情がこわばった。
「そんな、ここまで乗り込んでくるなんて……」
「ど、どうしよう」
狼狽する三人。それに対して騎士たちは剣を抜き、じりじりと間合いを詰めてくる。その数、五人。
「戦うしかない。ここには僕たちしかいないんだ!」
リョウの決意に、カコとチユも覚悟を決める。
「それなら付与魔法・デフェード!」
カコが魔法を発動。仲間たちのタフネスが上昇し、防御力が強化される。
「そんな子ども騙しで俺たちがやられると思うなよ!」
鎧騎士たちが詰め寄る中、チユが動いた。
「聖霊召喚!」
彼女を守護する聖霊が現出し、光を帯びてチユに寄り添った。
「ターゲットショック!」
カコの電撃が鎧騎士の一人に付与され、痺れた男が悲鳴を上げる。
「金属の鎧……そうか! ネイチャーライトニング!」
リョウが自然魔法を発動。空から雷が落ち、もう一人の騎士が感電して煙を上げた。
「これで残り三人!」
「このガキが! プロテクトチャージ!」
鎧騎士の一人が突撃体勢に入り、オーラをまとってリョウへ突っ込んでいく。
「自然魔法・ストロングウィンド!」
リョウの風魔法が発動し、強風が突撃を受け流す。が、勢いを完全には止められず、リョウは身を翻して避ける。突進は舵に激突し、激しい音を立てた。
「チッ、ネズミみたいにチョコマカと……」
「付与魔法・ターゲット――」
「させるかよ!」
カコが魔法を唱えようとした瞬間、離れた場所にいた鎧騎士が跳躍し、頭上から剣を振り下ろす。
「死ねッ!」
「キャッ!」
「ホワイトシールド!」
チユの緊急防御が間に合い、光の盾がカコを守った。
「お前は厄介過ぎる! プロテクトチャージ!」
チユを狙う突撃――だが聖霊が前に立ち、鎧騎士を弾き飛ばす。
「このままじゃ埒があかん! お前ら、やるぞ!」
「あれだな? デルタリンク!」
「確かに、あれなら――」
鎧騎士たちが動き出し、リョウ・カコ・チユを囲むようΔ型の陣形を組む。その身体から発されるオーラが共鳴し、重厚な螺旋の気流が形成されていく。
「来る……! この気配、ただの突撃じゃない!」 「連携型の必殺技……三位一体だよ!」
「ど、どうしよう」
「そうだ――僕が合図したら飛んで!」
そして三人の騎士が一直線に突進する。螺旋状のオーラをまとった三重突撃――
「デルタリンク・トリプルスラストォォォ!!」
リョウは素早く仲間たちに視線を送りチユとカコが頷く。
刹那――
「今だ! 自然魔法・ストロングウィンド!」
風が爆発的に吹き上がり、跳躍した三人の身体を宙に押し上げた。 突進は空振りし、突き抜けた三人の騎士がその勢いのまま甲板を蹴り抜けそうになる。
その瞬間、リョウがさらに詠唱する。
「自然魔法・シーウェーブ!」
海がざわつき、船の周囲に高波がうねり始めた。 渦潮を伴った海流が船体を包み込み、船体に残っていた五人の騎士たちを一気にさらっていく。
「うわあああああっ!」
「しまっ――」
海面へと弾き出された三人の鎧騎士は、濁流に巻き込まれて姿を消した。
三人は甲板に着地する。全身を風に包まれていたことで衝撃は抑えられたが、呼吸は荒く、魔力も限界に近い。
「な、なんとか……なったね」
「うん……リョウくん、すごい……」
「助かった……でも、また来るかも」
三人は構え直し、緊張感を解かない。
空を見上げる。 アイアンウォール号からはまだ、バーバラもケントも戻ってきていない。
「一難は去ったけど……まだ終わっちゃいないね」
リョウの言葉に、チユとカコが静かに頷いた。船はリョウの起こした風を受けて動き続ける――




