第二百二九話 鉄壁のアイアンウォール号に乗り込め!
ボートに乗りケントとバーバラがアイアンウォール号に近づいていった。
「こうやってみると随分と重厚な船だねぇ」
アイアンウォール号を見上げながらバーバラが感想を述べた。ケントも目を凝らして船の外観を確認する。黒鉄の船といった表現がピッタリとハマる巨大な黒船だった。
ケントとバーバラは左舷側から乗り込もうと考えている。船の横には鎧の装飾が施されていた。慎重にボートで近づく。
「ここから上がる必要があるな」
「いけるかい?」
「俺はなんとかなるがバーバラは?」
「あたいを誰だと思ってるんだい。問題ないよ」
バーバラの頼もしいセリフにケントがフッと笑みを浮かべた。ケントが甲板を見上げ腰を落としボートを蹴り跳躍した。不安定な海の上にも関わらず人間離れした跳躍力を見せるケント。
そして甲板に着地した。同時に船が大きく揺れたが、なんとかバランスを保つと周囲を見渡した。
「ようこそアイアンウォール号へ」
「そしてサヨナラだ」
「――やれやれだな」
甲板で待ち構えていたのは分厚い鎧を着込んだ海賊たちだった。ケントが思わず肩を竦める。
「バーバラ! 待ち伏せだ少し待っていろ!」
「むしろ好都合さ。そっから離れな!」
ケントが下のバーバラに向けて忠告するが予想と反した答えが返ってきた。
「行くぜ! グレネードーーーーーー!」
叫びバーバラが跳躍した。この時点でケントはバーバラの考えを察し得意のフットワークで海賊たちから離れた。
「逃げる気か」
「逃げられると思うなよ」
「勘違いするな」
そう言って海賊たちの頭上を指差すケント。何事かと海賊たちも視線を上げるとそこにバーバラの姿があった。
「インパクトぉおぉぉぉおおおおお!」
甲板に着地すると同時にバーバラが愛用の戦斧を振り下ろすと甲板が爆ぜた。
「うわッ!」
海賊たちの間から悲鳴が上がり重たい鎧ごとふっ飛ばされていた。ゴロゴロと転がる海賊たちだが思いのほか頑丈だったようで立ち上がり武器を構え直す。
「チッ。これでも倒せないなんて面倒だね」
吐き捨てるようにバーバラが言った。鎧が思ったよりも頑丈なのか海賊たちの実力なのかといったところだがとにかくこの連中を片付けなければ先に進めない。
「お前らは奇襲のつもりかもしれないがバレバレなんだよ」
「たった二人で乗り込んできて一体何が出来ると思うんだ?」
「そうだなお前たちを倒すぐらいは出来るかもしれない」
海賊の声に答えケントが左足を前に出し構えを取った。ボクシングにおけるオーソドックススタイルである。
「何だ? まさか俺等あいてに素手でやるつもり――」
一人の海賊が声を発した瞬間、その目の前にケントの姿があった。
「フンッ!」
鎧にケントのボディーブローがめり込んだ。衝撃で鎧が砕けており腹部に重たい拳が突き刺さっている。
「グボゥ――」
海賊の身がくの字に折れ曲がりドサリと倒れた。意識は完全に刈り取られている。
「貴様!」
「やるねぇ――ブーメランアクス!」
ケントの力を認めつつバーバラが戦斧を投げつけた。回転しながら残りの海賊共をなぎ倒し戦斧がバーバラの手に戻っていく。海賊たちは今の一撃でもう立ち上がることは出来ないようだった。
「今度こそやったね」
「あぁ。最初のダメージが大きかったんだろうさ」
そう言ってケントが親指を立てるとバーバラも二カッと笑って返した。
「でもこれであのボートは使えないね」
海上で流され遠ざかっていくボートを確認しバーバラが呟いた。
「元々ここまでは一方通行のつもりだった問題ない」
「ま、後先考えるなんてらしくないからね」
そしてケントとバーバラが走り出した。
「ところでこのままどこに向かうんだい?」
「さぁな。ここからはいきあたりばったりだ」
「本当かよ。ま、それもあたいららしいかもね」
そんなことを話しながら船内に乗り込む二人。すると早速敵の海賊が出迎えてくれた。
「たった二人で乗り込むとは舐められたもんだ」
「こっから先は通さんぞ!」
「いや通る――ランスジョルト!」
ケントが加速し体ごとぶつかるように突撃してパンチを放った。その威力は凄まじく正面を塞いでいた騎士姿の海賊が壁や天井に叩きつけられた。
「全くあたいの出番がないね」
「此処から先、頼りにしてるさ」
そして二人は更に奥へと進んでいく――