第二百二十六話 さらわれた子どもたち
「全員散れ!」
カテリナが叫んだ。直後に起きた爆発――激しい衝撃が駆け抜けたが土遁で壁を作って衝撃から身を守った。
「おい! 大丈夫か!」
俺は声を上げて全員の無事を確認した。カテリナが危険を知らせたようだが結構な爆発だった。
「だ、大丈夫っす」
「こっちも大丈夫っすよ」
ピサロとマイラは無事なようだ。しかし改めて口調似てるなこいつら。
「……問題ないカテリナ様も無事」
「あぁ。大丈夫だ」
カテリナとハーゼも問題なしと。怪我もそうでもないか。全員それ相応の使い手で助かった。
「気に入らねぇ――俺様の大筒を喰らって無事なのがまことに気に入らぁああん!」
するとタイホウとかいうデカブツが叫びだした。全く声も出かければ爆発まで引き起こす。本当に近所迷惑な奴だ。
「落ち着けタイホウ。それよりもあいつだ。あの忍者。先ずはあいつだ」
「あんな奴軽く捻り潰してやるわ」
「そうだな。そもそもあいつは影分身だ。おそらくもう姿も維持できない。あと少しで消えるだろう」
デカブツの片割れが戦況を分析しているな。あいつは雰囲気的に陰陽師か。全く異世界来たのに相手が和風すぎだろう。
「よっしゃ! ならこれでさっさとくたばれ!」
タイホウが俺に向けて大筒を撃ってきた。馬鹿の一つ覚えみたいに同じことしやがって――そう思った直後景色が変わった。何だこれ?
「わわ! 一体なんすか!」
怪訝に思った直後にマイラの声。視線を走らせると砲弾の軌道にマイラの姿があった。あいつ! 俺とマイラの位置を入れ替えたのか!
「畜生! 体遁・飛脚の術!」
俺は走る速度を上げて疾駆した。砲弾とマイラの間に割り込み、直後爆散した――
「し、シノビーーーーン!」
「あはは、やったぜ! これで戦力が一人減ったな!」
「あぁ。後はどうとでもなるだろう」
「それはどうかな?」
「は?」
タイホウの間の抜けた声がした。俺は既にタイホウの後ろを取っていた。そして首を霧咲丸で掻っ切ってやる。
「ゲホッ――な、ばか、な、おれさま、が……」
「馬鹿か。お前だからだよ。大砲撃つしか能のない武士さんよ」
タイホウが地面に倒れた。もう起きてくることはないだろう。後はもう一人か。
「どういうことだ。今のは変わり身でもなかったはずだ。分身があの攻撃に耐えるなど」
「そうだな。だが俺は本体だよ」
「なんだと?」
陰陽師が動揺しているな。やはり気づいてなかったか。クリア神父のとこにいた化け物には少々手こずったが全員燃やして急いで駆けつけた。
そのタイミングでタイホウが大筒連射していた。それを逆に利用して俺は分身を消して入れ替わったのさ。
まぁ忍気の違いで勘のいい奴にはバレる可能性があったから賭けだったが上手く言ったな。タイホウも頭は空っぽなようだからあっさり倒せた。
「後はお前だけだな。覚悟の準備は出来たか?」
「ごめんだね」
そう言って陰陽師があさっての方に碁石を投げた。あんなの隠し持っていたのかよ。
その直後飛んでいった筈の碁石が目の前で落下し陰陽師の姿がなかった。なるほど投げた碁石と入れ替わったのか。
しかしあいつ、どうやら俺以外の動きには気がついていなかったようだな。
「あれ? そう言えばハーゼはどこに行ったっすか?」
「追いかけて行ったよ。今頃仕留めてるだろうな」
「もう終わった」
言ってる側からハーゼが戻ってきた。体は血で汚れている。誰の血かは聞くまでもないか。
「仕事が早いっすね」
「そうだが――生け捕りの方が良かったかも知れないぞ。情報が知りたいしな」
「ハッ! 申し訳ありませんカテリナ様。つい――」
カテリナの話を聞いてハーゼが肩を落とした。カテリナの言葉は効くようだな。
「問題ないさ。どっちにしろ奴らの居場所はもうわかってるしな」
そう言いつつ俺は海を見た。間違いなく子ども達も船に連れて行かれただろうな。
「うぅ。まさかこんなことになるなんて」
「仕方ない。俺も疑ってはいたがここまでやれるとは思ってなかったからな」
「というかあんた本物なんっすか?」
「そうだよ」
ピサロが聞いてきたから答えた。そして一緒にいた神父も無事だと教える。
「それでこれからどうする?」
「勿論子どもたちを助けるっす。それに――」
そう言ってマイラが目を伏せた。分身の記憶は俺にもある。どうやらマイラはペデルとグリルとは顔なじみだったようだな。
「私もマイラの意見に賛成だ。それにいい加減いいようにやられることに飽き飽きしていたころだ」
「奇遇だな。俺もだよ。こうなったらさっさと船に乗り込んで蹴りをつけないとな――」
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